ジェニファー・ジョーンズさん死去
| 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)
監督 ルイス・マイルストン
出演 リチャード・ウィドマーク
ジャック・パランス
カール・マルデン
レジナルド・ガーディナー
ロバート・ワグナー
ストーリー
第二次世界大戦下、米国海兵隊B中隊は南太平洋のある島に上陸した。上陸後、日本軍のロケット砲の集中砲火をあび前進出来なくなる。意外である。敵軍にロケット砲の装備はなかったはずだ。任務に着いた中隊長アンダースンは、洞穴の中にいる日本人将校らが降伏を求めているとの情報を得る。アンダースンは小隊を率いてその洞穴へと赴くが…。
中隊長アンダースン少尉(リチャード・ウィドマーク)
日本のロケット砲が無尽蔵に飛んでくるという、ちょっとありえない設定の映画だったが、戦争の無情さは良く描けていると思った。
戦争から逃げたいと願いながら戦わずにはいられない男。それを知りながら見ているしかない男。ガダルカナルの生き残りの部下たち。日本兵の執拗な攻撃にあい、一人、また一人と死んでいく…。
アンダースンはガダルカナルの戦いで、44人中7人しか帰還させられなかったことに頭を痛め、戦争から逃げたいと願いながら逃げられず、何かあると片頭痛を発症させるまでになっている病人である。しかし、今作戦もガダルカナルの生き残りを再び連れて、島を占領し、日本兵を捕虜にする役目を負っている。彼らを失う恐怖とまた戦わねばならない。辛い立場だ。
“ドク”はガダルカナルでのアンダースンの命の恩人だ。“ドク”は、アンダースンの心の内を知りながら、彼に言われるがまま薬を処方してしまう。本当は薬などではアンダースンの片頭痛を癒すことは出来ないと知りながら。そして島に上陸すると、何やらメモを書き始める。アンダースンに宛てたものだ。
“ドク”(カール・マルデン)
“コンロイ”“ピジョン”“坊や”は、ガダルカナルの生き残り組だ。特にコンロイは教師時代のアンダースンの教え子で、彼には大変世話になっていた。どもりを直し、卒業生総代にまでなった。上陸前は戦いを放棄しようとするが、アンダースンに励まされ、そしてアンダースンの戦う姿に勇気を得て立ち上がる。
“ピジョン”はボクサー上がり。“坊や”は姉がハワイで日本人と結婚したことから傷つき、敏感になっている。“ピジョン”は“坊や”を「俺のマネージャー」と呼び可愛がっている。
戦場でウイスキーを作るのを生きがいにしているツワモノもいる。しかし、いざ戦いとなると彼ほど頼れるものはいないという。
そんな男たちと通訳、従軍記者を連れ、日本兵のいる洞穴へやって来たアンダースン。しかしこの洞穴から、生き地獄が待っていた…。
嘆く“ピジョン”(ジャック・パランス)と“坊や”
捕虜を司令部に送り届けるまでに、ガダルカナルの生き残りが一人、また一人と死んでいく。“坊や”は日本兵を皆殺しにしようとし、“ピジョン”にたしなめられるものの自滅して果てる。“ドク”も例外ではなかった。衛生兵とて戦争の犠牲になるのだ。彼は従軍記者に書きかけのメモを託して亡くなった。
その間にも日本のロケット砲は止む気配を見せず、司令部をいらつかせる。捕虜を連れ帰って尋問するが、なしのつぶてだ。しかし、自決した将校から獲得した地図と、“坊や”の遺品から出てきた洞穴にあった地図を照らし合わすことによって、ロケット砲の場所を特定しようとする試みが続くが…。総攻撃までのタイムリミットはあと55分…。
その間、本隊に帰った“コンロイ”がロケット砲により、死んだ。アンダースンが教師時代どもりを直す言葉として使った「希望は万人の母なり。皆それを胸に活きるべし」という言葉をアンダースンに残して…。
“ドク”と“コンロイ”の死がアンダースンを追い詰める。吐き気に襲われ自暴自棄になる。しかし、“ドク”の残した遺言めいたメモがアンダースンを再び駆り立てる…。
リチャード・ウィドマークが、片頭痛に苦しみながらも何かに突き動かされるように戦う男を熱演している。特に温厚で誠実な教師時代から、島へ上陸前の心の弱さをさらけ出す表情、しかし上陸後は頼れる中隊長としての顔、仲間を失い片頭痛に苦しむ姿、しかし仲間の死を乗り越え、さらに前進する姿は、個性派から演技派への道をひた走るウィドマークの姿と重なる。素晴らしい。
日本のロケット砲の場所を探し当てるのは、実に呆気なかったが、その間までの105分間(映画は114分)は流石巨匠ルイス・マイルストンである。ひっぱりにひっぱり、アンダースンの苦悩、その他兵士の個性、日本兵捕虜の個性を充分に描き切っている。
日本兵の描き方も特に偏ったところがなく、捕虜になって辱めをうけるよりは最後は自決する…というのは、1951年当時外れのない描き方で驚かされる。
まぁ、日本兵の苗字に少しおかしいものがあったのと、ガダルカナルの戦いの後で日本軍にロケット砲を無尽蔵に降らせることが出来る余力があったのか疑問だが、それにせよ、戦闘場面は迫力いっぱい、ウィドマークも迫力いっぱいで満足のいく出来であった。
| 固定リンク | コメント (14) | トラックバック (0)
監督 サミュエル・フラー
出演 コンスタンス・タワーズ
アンソニー・アイスリー
マイケル・ダンテ
ヴァージニア・グレイ
ベティ・ブロンソン
ストーリー
娼婦ケリーは逃げられないよう彼女を丸坊主にした売春宿の主人を殴り倒し、自らの稼いだ金を取り戻してそこを立ち去った。それから2年後、彼女はグランドビルという小さな町へシャンパンのセールス嬢の姿で現れた。しかしそんな彼女の正体を見抜いた警部のグリフは彼女と一夜を過ごした後、町を去るように告げる。だが更生を決意したケリーは町に住まいを見つけ、身障児施設の看護婦として働き始める。子供たちとも馴染み始めた彼女の前に、町の若き富豪グラントから思わぬ誘いが。過去さえも気にしない彼の結婚の申し込みにケリーはOKするが…。
金を奪い返すケリー(コンスタンス・タワーズ)
実にショッキングな幕開け。
女が男をバッグで殴打を繰り返す。そのうち頭からカツラが取れる。彼女はスキンヘッドだった。男が倒れる。女は自分の稼ぎを奪い、カツラを被り整える。そして満足そうな笑みを浮かべる…。女は娼婦だ。
2年後、実に魅力的な女性がバスから降りてくる。町の名前はグラントビル。スモール・タウンだ。彼女はシャンパンのセールスで生計を立ててるが、警部のグリフは彼女の正体を見抜く。そして一夜を共にする。彼はこの町から早く立ち去るように警告するが、ケリーは部屋を見つけ、看護婦の仕事も見つけ、グラントビルに住みつくようになる。
ケリーは決意したのだ。グリフの家の鏡で自分の顔を見たときに。穴があくほど見つめた。お金や男、酒に疲れ、希望も救いもない荒みきった表情の自分がいた。グリフが最後の客だと決めた。この町で生まれ変わるのだと。
子供たちに慕われるケリー(中央、コンスタンス・パワーズ)
彼女の評判は上々だ。身障児の子供たちに好かれる看護婦。面倒見の良い同僚…。
彼女の過去を知っているグリフはケリーに辛く当たるが、あるパーティでケリーは町の有力者グラントと運命的な出会いをする。すぐに2人は恋に落ちる。
パーティで、グリフ(左、アンソニー・アイスレー)とグラント(中央、マイケル・ダンテ)に出会うケリー
ケリーはグラントに過去を告白する。しかし、グラントは結婚してほしいと言ってきたのだ。君を愛してている。自分も清廉潔白の身とはいえない、ケリーの過去と未来は丸ごと僕が引き受ける。君以外考えられない、と。
迷うケリーだったが、心は決まった。彼のプロポーズを受けた。家の鍵も貰い、幸せに浸るケリー…。
ある日、夕食を作りにグラント邸に行ったケリー。彼女は思わず目にしてしまう。グラントが少女にいたずらをしていたのを…。実はグラントは小児性愛者だったのだ。グラントはケリーに言う。「娼婦と倒錯者は同じ世界の住人だ。我々ならうまくやれる、後ろ暗い者同士の結婚だ。」
ケリーはグラントを受話器で殴り殺した…。
― 娼婦という過去からの脱却として、選び愛した男が小児性愛者で、彼女の過去など関係なく愛してくれていると思っていた女には、男の告白は怒りしか湧いてこなかった。思わず受話器に手が伸びた。彼と結婚すれば完璧な女に変身するはずだったのに、“娼婦”だったから彼女は愛されたのだった。
ケリーがグラント邸に入り、少女とグラントを見つけ、グラントが告白し、殺人に至るまで、先日グラントが病院で録音したケリーと子供たちの歌が流れている。それは戦慄ものだ。
身体障害を持った子供たちの純粋無垢な世界と、一見平和そうに見えるが、実は偽善の渦巻くスモール・タウンの世界。そして娼婦から足を洗った女と、町の人々の尊敬の的であった男の性倒錯者という秘密。そうした対比を通じて、アメリカの病巣を書きだしたかったと思うのだが、いまいち成功しているとは思えないのである。
第一、ケリーの犯罪で町が騒然とする姿がさらりとしか描かれていないし、町の人たちは皆善良であった。証言に来て嘘をつくという女性がいたが、家に帰ると「嘘をついた…」と泣き崩れる。金を貸してもらった同僚は、ケリーの力になりたいとまで言う。クリーンな町にやって来た邪悪な娼婦に善良なスモール・タウンが裏の顔を見せるという主題が、薄められている感は否めない。
警部グリフだけが「過去は消せない」ということを知っている。ケリーが全てグラントに告白したと言うまで、結婚は反対、30分以内に町を出ていけ、町が汚れると彼女に言い放つ、スモール・タウンの偽善も知り尽くした男だ。このグリフという男は傑出した人物である。
サミュエル・フラーお得意の暴力に彩られ、「ショック集団」から引き続いてスタンリー・コルテスの見事な撮影と、ポール・ダンラップの甘美で残酷な音楽が異彩を放つ問題作であることには間違いはないと思うが、つくづく残念な出来であった。
| 固定リンク | コメント (6) | トラックバック (0)
監督 ギャヴィン・フッド
出演 ヒュー・ジャックマン/テイラー・キッチュ/ダニエル・ヘニー/リーヴ・シュレイバー/ダニー・ヒューストン/ウィル・アイ・アム/リン・コリンズ/ケヴィン・デュランド/ドミニク・モナハン/ニー/ライアン・レイノルズ
ストーリー
150年以上にわたり、兵士として幾多の戦場を駆け抜けてきた2人の兄弟がいた。兄ビクターと弟ローガン。2人は驚異の肉体再生能力と戦闘能力を持つミュータントだ。2人は幼少の頃、ある悲劇をきっかけに兄弟であることを知り、特殊能力が覚醒する。長い戦争人生の途中で謎の軍人ストライカーが現れ、<チームX>への参加を持ちかける。<チームX>はストライカーの命のもと、さまざまなミッションを行うが、あるとき非人道的な任務を巡ってローガンは<チームX>を離脱する。それから6年、ローガンはカナダの山奥で女教師ケイラと静かに暮らしていた。しかしビクターが現れ、ケイラを殺し、ローガンを挑発する。復讐を誓ったローガンにストライカーが接触し、ビクターを倒すために手を貸すと言ってきた。それはローガンの骨格に、超合金アダマンチウムを移植し、最強の戦士に改造することすることだった…。
アマダンチウムを移植し、<ウルヴァリン>に生まれ変わったローガン(ヒュー・ジャックマン)
「X-MEN」以前の物語。ひ弱な少年ローガンが父親に降りかかった事件から、自分の能力に目覚めていく。その隣にはいつも兄ビクターがいた。
アクション映画としては良く出来ています。ヒュー・ジャックマン、ムッキムッキですよ。たいていの女性ならあの厚い胸板をみせられたら、つい惚れてしまいますよ。
他のキャラクターも個性的なミュータントがズラリと勢ぞろいして楽しめる。しかし、ウルヴァリン(ローガン)、最初から女の趣味が悪かった。なにもおっさんみたいなジーンだけではなかったのね。ケイラ、プスです。
ウルヴァリンと、兄ビクター(リーヴ・シュレイバー)
しかし、話が中途半端で終わってしまった。兄弟対決があるのか…と思いきや、終わり?これは続編が絶対あるとみたね。さしずめ「X-MEN ファイナル・ディシジョン」以降の話かな。それじゃなきゃ、「X-MEN」シリーズと話が繋がらないものね。
最後に、「これで終わり~っっ?」って思いっきり叫んでしまった作品。次の兄弟対決に期待。
| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)
監督 サミュエル・フラー
出演 ピーター・ブルック
コンスタンス・タワーズ
ジーン・エヴァンス
ハリー・ローデス
ジェームズ・ベスト
ラリー・タッカー
ストーリー
精神病院で起こった殺人事件の犯人を突き止め、ピューリッツア賞を取るために、新聞記者ジョニーが1年間の訓練を受け、狂人として病院に潜入して真実を探ろうとする。自分の恋人キャシーを妹と偽り、面会に来させて外部との連絡に使い、他の患者と接触して情報収集に励むのだが、彼らの狂気の姿と異常な環境の影響で、次第に自分自身の精神のバランスを崩していくのだった…。
キャシーの夢を見てうなされるジョニー(ピーター・ブルック)
― 神は滅亡を願うとき、まず人を狂人にする。
エウリピデス 紀元前425年 ―
自分の恋人キャシーを無理やり妹に仕立て上げ、妹への異常な関心が原因で精神病院へ入ることに成功した新聞記者ジョニー。新聞社も上司も協力的だ。それもこれも、この病院で起こった殺人事件の犯人を突き止め、記事にし、ピューリッツア賞を取ろうという目論みのためだ。
彼は早速、病院の廊下で3人の殺人の目撃者に接触することにする。
まずスチュワートという青年に接触する。
彼は南部農民の息子で、趣味は南北戦争ゲーム。自分を英雄スチュワート少将だと信じている。
実は、朝鮮戦争に出兵し、共産主義陣営のスパイをしていた男だった。
彼からは、白いズボンを見たとの証言を得た。病院で白いズボンをはいてる人種は限られている。殺人犯は医者だろうか?
2人目は、「差別と民主主義は別物。クロは出ていけ」とスローガンをかがげる黒人青年トレント。趣味は枕カバーの収集。
彼は南部で唯一の黒人学生で、人種差別で迫害された揚句、自分をKKKの一員と思いこむようになったのだった。
トレント(右から2人目、ハリー・ローデンス)
彼から聞き出せたのは、殺したのは医者ではなく看護人だということだった。
最後に接触したのは、ボーデン博士。趣味はスケッチ。精神年齢は6歳程度。
だが実は、原爆の研究でノーベル賞を受賞した物理学者で、現代を代表する一人だ。
彼から全て聞き出せ、達成感に浸るジョニー。すぐにでも出所し、記事を書きたいところだが、殺人者の名前が出てこない。ついには面会に来た恋人キャシーを本当の妹と思ってしまった。
目撃者の患者と親しく接するうちに、彼の精神状態は正気から遠くなりつつあったのだった…。
― う~ん…これはキツイ映画だ。
そもそもジョニーは初めから常人ではないんだね。精神病院に潜入して、殺人の犯人を探るため1年間も狂人になりきるための訓練を受けるなんて、とてもまともではない。
自信を持って潜入したものの、精神病患者と親しく接するうちに、自分も狂気の世界へと引きずり込まれていくのは当然の報いといってもいいだろう。
正常に戻るのを辛抱強く待って接した3人の患者は、ジョニーの目論み通りふと正常に戻り、彼の問いに答えるのだが、正常でいる時間が持続しない。それでジョニーの入院日数は増え続け、幻聴・幻覚に悩まされていく…。
ついには、ジョニーは病院の廊下で雷雨に打たれる幻想を見、正気を失っていくのだ。
制作されたのは60年代だが、ジョニーが接した3人からは50年代の代表の匂いが漂ってくる。朝鮮戦争、黒人問題、原爆の悪夢…。(朝鮮戦争へ出兵したスチュワートは日本へ立ち寄っていて、「東京暗黒街 竹の家」からの映像の転載がみられる)
この作品は、50年代の悪夢を映し出した映画といってもよいだろう。
撮影のスタンリー・コルテスの陰影のはっきりした映像が印象的だ。
精神的にはかなりキツイが、サミュエル・フラーの代表作に間違いない出来の映画である。
| 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)
監督 サミュエル・フラー
出演
バーバラ・スタンウィック
バリー・サリヴァン
ディーン・ジャガー
ジョン・エリクソン
ジーン・バリー
ストーリー
1890年代。力が物を言う西部開拓時代のアメリカ、アリゾナ州コーチス郡。そこは女ボス、ジェシカが牛耳る町だ。彼女は大牧場を経営するかたわら、賄賂で政治家をてなづけ、40人の荒くれどもからなる武装集団を従えていた。ある日、郵便強盗を逮捕するため、2人の弟と共にこの町へやって来た連邦保安官のグリフは、町で暴れ無法の限りをつくしていた男ブロッキーの逮捕に貢献する。しかしプロッキーがジェシカの弟だったことからすぐに釈放され、郵便強盗として逮捕された保安官助手はジェシカの手下によって殺されてしまう。一方グリフの上の弟ウェスは鉄砲加治屋の娘と恋に落ちる。やがてグリフとジェシカも惹かれあうが…。
女ボス、ジェシカ(バーバラ・スタンウィック)
大平原をゆっくり進む粗末な2頭立て馬車。その姿に黒い雲がかかる。その向かいから勢いよくジェシカを先頭に40頭の馬が土埃を残して走り去る。馬車に乗っていた3兄弟はすっかり汚れてしまって、街に着くと公衆浴場へと急ぐがそこにはジェシカの弟ブロッキーが酒に酔い街を破壊していた…。
ハワード・ホークス的な西部劇の趣があるが(登場人物が歌を披露するしね)、それを裏切らない映画の出来である。
女ボスの姉の威光の陰で傍若無人な振る舞いに及ぶ弟。その弟を歩き方一つでビビらせる男グリフ。無敵の男として有名なグリフ。連邦保安官として正義を実行するが、銃には決して頼らないのだ。もう10年も人を殺していない。しかし、弟の逮捕も無情にジェシカの力ですぐに釈放になってしまう矛盾に唇を噛みしめる。
コーチス郡ではジェシカの力が物をいう時代だが、1890年代という時代ははニュー・フロンティアの時代。グリフは自分が時代遅れの人物だと悟っている。だからボネル家3兄弟の末弟チコには銃を持たせたくない。彼は父親の許へ農夫として送られることになる。
ボネル3兄弟。グリフ(バリー・サリヴァン)、チコ(ロバート・ディックス)、ウェス(ジーン・バリー)
グリフとジェシカは初めて言葉を交わしたときから、恋に落ちる。
そして、保安官のローガンとジェシカの尋常なざる関係。ローガンはジェシカを愛しており、彼女のために悪事を働いてきた男。しかし、グリフとジェシカが妖しい関係になると、グリフを殺そうとし、ジェシカに愛を乞う。だがジェシカの気持ちはグリフにあり、ローガンは小切手一枚でお払い箱になる。なんとも哀れな結末である。
そしてジェシカの弟ブロッキーは、グリフに恨みを持ち暴走は止まらない。最後は姉のジェシカを盾にグリフに戦いを挑む。
ジェシカを人質にグリフに戦いを挑むブロッキー(ジョン・エリクソン)
最後は意外な展開でグリフVSブロッキーの幕は閉じる。
― ストーリーも素晴らしいが、なんといっても魅力的なのが、女ボスのジェシカを演じるバーバラ・スタンウイックである。毅然としている女ボスだ。税金のほとんどを自分のものとし、政治家に賄賂を気前良く送る女でもある。数々の悪行を重ねているが、グリフ役のバリー・サリヴァンとの会話と絡み合う視線はセクシャルだし、黒ずくめの衣装でで馬にまたがる姿はとてもかっこ良くシェイプされていて、50歳とは到底思えない。
グリフが保安官助手を殺した男を逮捕しに、ジェシカの領地にやってくる。すると突然の竜巻が2人を襲う。ジェシカの馬は暴れ、落馬し引きずられるジェシカ。これをスタントマンに頼らず自分で演じたんだから大したもんだ。尊敬せずにはいられない。
バリー・サリヴァンも好演。実に味わい深い顔をしており、鋭い眼光が印象的。
スペクタクルでもあり、濃厚な恋愛劇・憎愛劇でもある。そして青少年の非行に警鐘を鳴らした作品でもあると思う。
| 固定リンク | コメント (9) | トラックバック (0)
監督 サミュエル・フラー
出演
リチャード・ウィドマーク
ジーン・ピーターズ
セルマ・リッター
マーヴィン・ヴァイ
リチャード・カイリー
ストーリー
ニューヨークの地下鉄を舞台にスリを働くスキップは、キャンディという女から財布を抜き取るが、中には共産圏スパイ団の機密ファイルが入っていた。物をスラれたことに気づいたキャンディは雇い主ジョーイに知らせたが、共産圏スパイである彼は全力を挙げてそれを取り戻すようキャンディに命令する。スリの現場を目撃してていたFBIは、キャンディが知らぬ間にスパイの手先となっていることを知っていので、この機に一挙にスパイ組織の全貌を掴もうと捜査に乗り出した。彼らは裏事情に精通しているモーというネクタイ売りの女から、スリはスキップの仕業であることを聞き出し、キャンディをおとりに彼からフィルムのありかを吐き出させようとするが…。
スリに及ぼうとするスキップ(リチャード・ウィドマーク)
何も知らぬキャンディ(ジーン・ピーターズ)
これほどまで政治色を濃く出した映画は、当時としては珍しいのではないか。“冷戦”まっただ中の時代、しかし、“冷戦”を真正面から取り上げた映画というのは無かった。(と、いうか日本に入ってこなかったのかもしれないが…)
だがこの作品は、ずばり“冷戦”に切り込む。FBI対共産圏スパイ組織である。いや、スキップ対共産圏スパイ組織か。
共産圏スパイ組織の機密マイクロフィルムを偶然スッた男スキップは前科3犯で、今度捕まると終身刑の身である。このスキップがマイクロフィルムの価値を知った。気が治まらないのはそれをスラれたキャンディである。彼女はスキップがスッた物の価値を分かっていない。しかし、雇い主の昔の男ジョーイから最後までやり抜くのが彼女の仕事だと言い聞かされ、仕方なくモーに大金を払いスキップの居所を聞き出し、マイクロフィルムの入った封筒を取り戻すべく奔走するのだった。
しかし2人は恋に落ちてしまい、キャンディはマイクロフィルムとジョーイの正体を知る。一方追い詰められたジョーイはスキップの居所の口を割らないモーを殺す。
殺されるモー(セルマ・リッター)
スキップからマイクロフィルムを奪い返し警察のおとりとなったキャンディはジョーイと会い、彼にマイクロフィルムを渡すが、1コマ足りなかった。激怒するジョーイはキャンディに乱暴を働き、殺そうと銃を放つのだった…。
共産圏スパイ組織の機密フィルムをめぐる、キレのあるスリルとサスペンス。そして見事なまでの暴力描写。女性がここまで乱暴に扱われる映画も珍しい。最初はスキップに不意に殴られ気絶し、次はジョーイに乱暴される。殴られ、投げ飛ばされ、命の危険にさらされる。そしてスキップ対ジョーイの死闘はリアルである。スキップの鉄拳がボキッ!ボキッ!とジョーイに重くのしかかる。スキップの鉄拳はキャンディの痛恨を晴らすかのようだ。
それにこの映画は、強烈な恋愛映画でもある。スキップの家に忍び込んだキャンディがスキップに不意打ちを食らわされる。その後の2人はとてもロマンティックである。強力な磁力で惹かれあう。もう後戻りは出来ない。強烈なキス、キス、キス…。反目しながらも唇を重ねる。キャンディはスキップの身を案じてマイクロフィルムを取り返し、スキップはキャンディの恨みとばかり、ジョーイに襲いかかる。
リチャード・ウィドマークは1950年代に入ってから役の軌道修正をしてきてますね。社会の底辺で生きる男ながら、同情の余地はたっぷりある男として「街の野獣」から方向転換、ビリングも一位。堂々としたスターの仲間入りをした訳ですね。そして珍しい“金髪の男優スター”でもあったんですな。当時男優スターに金髪はいなかった。(アラン・ラッドぐらいしか思いつかない…)
ジーン・ピーターズのキリッとした女っぷり、セルマ・リッターの哀しい老女っぷりも、この映画の見所。
しかしなんといっても、強烈な暴力シーン、強烈なキスシーンに心奪われる映画である。
| 固定リンク | コメント (24) | トラックバック (1)
監督 ジュールス・ダッシン
出演
リチャード・ウィドマーク
ジーン・ティアニー
クーギー・ウィザース
フランシス・L・サリヴァン
ハーバート・ロム
ヒュー・マーロウ
ストーリー
いつも一獲千金を夢見ているハリー・ファビアンはナイトクラブ「銀狐」の客引きをしている。そのナイトクラブの歌姫メリーはハリーの恋人で、彼が堅気になることを願っている。レスリングの試合場で客引きをしていたハリーは八百長試合に憤慨する世界的な伝説のレスラー、グレゴリウスを見て、彼を担ぎ上げ一儲けしようと企んだ。グレゴリウスとの話し合いは上手くいったが、どうしても興行には400ポンド必要だった。ナイトクラブの主人ノセロスに頼むと、200ポンドを作ってきたら後半分は出してやろうと言われとりあってくれない。方々金策に駆けずり回ったが、誇大妄想狂的なハリーの話に乗るものはいなかった。しかし、彼はノセロスの妻ヘレンに会い、彼女はノセロスと別れて新しいナイトクラブを開きたい、ついては200ポンドを出すから警察に手を廻してナイトクラブの経営許可証を獲得してほしい、そして一緒にやっていこうと持ちかけられる。金の欲しいハリーはこの申し出に同意して、ヘレンには偽造の許可証を渡し、ノセロスから200ポンドを得、待望のレスリング興行へ乗り出すのだった…。
ハリー(リチャード・ウィドマーク)に現実的になれと言うメリー(ジーン・ティアニー)
400ポンドをめぐって壮絶な騙し合いが始まる。ハリーを客引きに雇っているナイトクラブ「銀狐」の主人ノセロスをその妻エレンが騙す。そしてエレンをハリーが騙す。更にハリーをノセロスが騙す…。
見事400ポンドを手にし、レスリングの興行権を手にしたハリーは、「ファビアン興行会社」を立ち上げ意気揚揚。しかしロンドンのレスリング興行を一手に担っているのはクリストという男。早速ハリーの許へケチをつけにやって来た。だが、ハリーには味方がいた。伝説のレスラー、グレコリウスである。実はクリストとグレゴリウスは親子だった。ハリーを信じて疑わないグレゴリウスにクリストは引き下がる。
しかし、ノセロスはクリストと組んでいた。2人は古い仲だったのだ。ノセロスは200ポンドを作ったのが妻のエレンであることを知っており、彼女とハリーの仲を疑っていた。狡猾な彼は200ポンドを出資する代わりに共同経営者になっていたが、それを「やはり金にならない」と言って反故にする。
妻エレンとハリーの仲を疑うノセロス(フランシス・L・サリヴァン)
ハリーはノセロスの口車に乗せられ、グレゴリウスが忌み嫌うレスラー、ストラングラーを興行に引き込むことにする。そうすればノセロスの金は安泰のはずだった。
グレゴリウスにも彼の弟子ニコラスと試合することを承知させた。しかしノセロスは手を引いた。ついにハリーは恋人メリーがせっせと貯めていた金を盗み出し、それをストラングラーのギャラに充てる。しかし、ハリーの練習場でストラングラーがグレゴリウスにケチをつけ始めたのがきっかけで、2人は死闘を演じることとなる。そのおかげでグレゴリウスが死んだ。
黙っていないのが息子のクリストだ。彼はその場から逃げたハリーに賞金を懸ける…。
一方ノセロスと別れ、新しいナイトクラブに命を捧げたエレンだったが、開店前に経営許可証が偽造であることが警官にバレるのだった。愕然とするエレン…。
騙し、騙された3人の男女、ハリー、ヘレン、ノセロスには破滅しか待っていなかった。
ハリーを騙したノセロスはヘレンに去られ自殺し、ノセロスを騙したヘレンはハリーに騙され夢破れノセロスの許へ帰るが時すでに遅し、ヘレンを騙しノセロスに騙されたハリーは偶然の事故とはいえグレゴリウスを失い追われる身に。
「成功したい」「追われる人生からおさらばしたい」と、一攫千金の夢を追いすぎたハリーはとにかく徹底して“運”に見放された男でもあった。やくざな世界でしか生きられず、金策は口八丁で他人頼み。ようやく“運”が向いたと思ったら、なんと騙されていたとは!!
夢叶って意気揚揚の男から惨めに追われる男に大変身の、ハリー・ファビアン役のリチャード・ウィドマークが上手い。興行主としての幸せに溢れた顔、ノセロスが手を引くと言った時の焦り、ヘレンを騙す時のずる賢い顔、恋人メリーから金を盗む時の悪意に満ちた顔、そしてグレゴリウスを死なせクリストから追われる立場になった時の顔…。
とにかく彼は追われていた。走っていた。映画の冒頭からロンドンの街を走り抜けていた。最後は追われて、追われて、走りに走り、そして走る。汗が滴り落ちる。本当にリチャード・ウィドマークが走りまくる。彼は足が速いね。彼が走ってるだけで、映画に疾走感が出て、説得力が出る…なんて思うのは贔屓目か。
ノセロス役のフランシス・L・サリヴァンも妻を愛しすぎた男として好演。ヘレン役のクーギー・ウィザースも崩れた女の感じが良かった。(名前は読み取れなかったが)グレゴリウス役の俳優さんも堂々とした“これぞ伝説のレスラー”という感じが良く出ていたし、息子クリスト役のハーバート・ロムの無慈悲な男も良かった。ただ、ジーン・ティアニーが急に容色が衰えた感じがして残念だった。
ダッシン監督のキレの良い演出が伝わる作品。
| 固定リンク | コメント (17) | トラックバック (0)
監督 ビリー・ワイルダー
出演
ウィリアム・ホールデン
グロリア・スワンソン
エリッヒ・フォン・
シュトロハイム
ナンシー・オルソン
ストーリー
ハリウッドのサンセッド大通りに面するある邸宅のプールに、若い脚本家ジョー・ギリスの死体が浮かんだ。死んだ彼はそのいきさつを語る。失職ライターのジョーは映画会社への脚本売り込みも意の如く進まず、貧窮のどん底にあった。ある日月賦の払込み不足から自動車会社の男に追いかけられたジョーは、サンセット大通りにある荒れ果てた邸宅に逃げ込む。そこにはサイレント映画の大女優ノーマ・デズモンドが、執事のマックスと共に過去の夢に生きていた。ジョーが脚本化だと知ると、ノーマは主演を念願し自ら書いている「サロメ」の脚本をまとめるようジョーを邸に住み込ませることにした。若いジョーにとって、この妄想狂の老女の相手は空虚な生活に違いなかったが、ずるずるとハマり、ノーマと抜き差しならない関係に落ち込んでいくのだった…。
死体が語る…。ジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)
壮絶すぎるほど“グロテスク”な物語。
世間から忘れられたサイレント映画の大スター、ノーマ・デズモンドと彼女に仕える忠実な執事マックス。ところがノーマは自分が過去の人物だとはまったく気づいていない。ファンレターは来るし、映画の構想もある。ただ依頼がないだけ。しかしノーマは強気である。サイレント映画の偉大さを語り、自分が映画界に返り咲く自信は満々である。
過去に生きる女、ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)
ビリー・ワイルダー監督はとっても意地悪である。“これでもか”というように、ノーマ・デズモンドを「過去」の偉大なる大スターとして描いている。すなわち、「今」は落ちぶれ忘れ去られた人物として。
ノーマ・デズモンドの周りは全て時代ががっている。彼女の許に集まる友人はこれまたサイレント映画時代の化石である。バタスー・キートン、アンナ・Q・ニルソン、H・B・ワーナー…。ノーマが観る映画も自分の映画だけである。(そしてそこに映された映画は、皮肉にも執事役のシュトロハイムが監督し未完に終わった「ケリー女王」である)
そして、ノーマの忠実な執事のマックスである。ノーマのことを「奥様」と言いかしずいているが、かつてはノーマを発掘し、自ら監督し、夫であった男なのである。この不気味な設定には絶句するしかないのである。そしてジョーにノーマの執事になった顛末を告白するシーンは、シュトロハイムのイミテーションである。
時代物の車で出かけるマックス(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)、ジョー、ノーマ
まるでノーマもグロリア・スワンソンのイミテーションのようだが、やがてジョーを愛しはじめたノーマが彼の心を繋ぎとめるために、水着美人(駆け出し時代やっていた)やチャップリンの物まねをしてみせたり(やはり駆け出し時代、チャップリンの映画にチョイ役で出演したことがある)する場面は鳥肌ものである。
そして、大御所監督セシル・B・デミルの登場である。グロリア・スワンソンとコンビを組んで大ヒットを飛ばした監督。実名での登場である。そしてノーマを「ヤング・フェロウ」と呼び、「サロメ」のひどい出来の脚本に弱りながらも巧みにかわし、彼女を手厚く迎える。
ノーマと、セシル・B・デミル監督
ノーマは、「サロメ」のことで呼び出しがあったのだと思いいそいそと撮影所に駆けつけ、皆から盛大に歓迎されるが、実はノーマの車をあるスターの映画に貸してもらえないかという皮肉に満ちたものだった。
ノーマのヒモとなり下がり恋もままならない、仕事にも嫌気がさしてくる、自分にもほとほと嫌気やさし邸を後にする決心をするジョー。一方ノーマは「サロメ」に傾倒していく。「サロメ」はノーマの命そのもの。「サロメ」を演じるため若返りの努力は狂気じみ、ついには「サロメ」そのものになってしまう幕切れは壮絶だ。
グロリア・スワンソンもシュトロハイムもよく役を引き受けたなぁ。2人は真の「プロ」である。
コメデイー映画の評価が高い監督だが、「深夜の告白」や「失われた週末」、それにこの作品のような“怖い映画”の方が好きである。実はビリー・ワイルダー監督の真価は、“怖い映画”の方にあるのだと思っている私である。
| 固定リンク | コメント (6) | トラックバック (0)
監督
ジョン・M・スタール
出演
ジーン・ティアニー
コーネル・ワイルド
ジーン・クレイン
ヴィンセント・プライス
ダリル・ヒックマン
ストーリー
若い流行作家リチャード・ハーランは友人の弁護士のグレンからニューメキシコの別荘に招待される。そこへ向かう列車の中で自分の著書を読んでいた美しい女性を見染めるが、彼女は偶然同じくグレンから招待されていた。列車を降りて、その女性エレンと妹のルース、2人の母親ベレント夫人に紹介される。エレンは地方検事のクィントンと婚約していたが、リチャードと恋に落ち、結婚した。リチャードは足の悪い弟ダニーを溺愛していたが、結婚後エレンとダニーを連れて自分の別荘「月の裏」へ生活の場を移す。しばらくは愛情溢れた日々が続いていたが、そこへルースとベレント夫人がやって来た。その頃からエレンは異常な心理状態となり、夫の愛を独占しようと、2人に冷たく当たり始める。ある日、ダニーとポートに乗って湖に出たエレンは、ダニーが湖に飛び込んで泳いでいるうち溺れたのを見殺しにするのだった…。
列車での出会い。リチャード(コーネル・ワイルド)と、エレン(ジーン・ティアニー)
恐ろしきものは、女の「嫉妬深さ」である。ここまで完膚なきまでに嫉妬深いと、かえって潔いと思ってしまうのは、私も“女”だからであろうか。
とにかく嫉妬深い。リチャードの弟ダニーが療養所から別荘「月の裏」へ移れると医者から太鼓判を押されると、自分は新婚旅行も無しなのに、夫はダニーを溺愛し自分ばかりに重荷を負わせると医者に不満をぶつけ、医者の口から「月の裏」行きをやめるよう言ってくれないかと懇願する。そのくせ話の途中でリチャードが入って来ると、ダニーの「月の裏」行きを喜んでみせるその狡猾さ。
結局、「月の裏」では幸せは得られなかった。
溺れるダニー(ダリル・ヒックマン)
見殺しにするエレン(ジーン・ティアニー)
リチャードが良かれと思って呼んだエレンの母親と妹ルースには際限なく冷たく当たるし、2人が滞在を数日で切り上げて帰った後には、湖で溺れるダニーを見殺しにする。ダニーが完全に湖に沈むまで見守る姿は、夫の愛情を独り占めにしようという魂胆のすざまじさを垣間見ることができる。結局リチャードの気配に気づいて湖に飛び込むものの、ダニーは帰ってくるはずもなく…。
その後、辛い思い出の別荘をたたんで、エレンの実家に身を寄せる2人。ふさぎ込み、エレンともろくに話さなくなったリチャードを疑惑の目で見るエレン。彼の愛が冷めた?そこにルースの一言が。「子供でも出来たら…」見事エレンは妊娠する。リチャードの笑顔も戻った。しかし、母体が弱く動けない日々、段々お腹が膨らんで醜くなっていく体…。その間にリチャードとルースは親しくなっていく。疑惑、嫉妬の日々。そしてついにエレンは故意に階段から落ち、子供を死産させる…。
エレンの嫉妬は際限を知らない。ついには自殺するのだが、周到にもかつて婚約していたクィントンに手紙をしたため、ルースがエレンを殺害したようにもっていく周到さはお見事と言うしかない。
しかし、映画を追っていくと、エレンは決して「悪女」ではないのだ。ただ、“愛”が過ぎるだけのこと。それが周囲を破滅に追いやっていくのだが、彼女が「悪」を全て被るにはちょっと可哀そうなのだ。
母親とルースは、エレンの“愛情が過ぎて相手の周囲を破滅させかねない”性を知っていながら、それを放置しているし、おまけにルースはリチャードに気があるというのを隠そうとしていない。
それに、いくら執筆を手伝ったからって、結婚して初の本の献辞が妻でなく違う女(ルース)に捧げられていたら、エレンじゃなくても怒り心頭だと思うのだ。本の舞台がメキシコで、「家中が憎しみに満ちていて嫌になった」と、ルースが来週から旅行する場所もメキシコってのはどうだろうか。そりゃあ、ルースがリチャードを誘惑したとエレンが思っても不思議ではあるまい。その嫉妬心がむき出しになり、リチャードに知れた時、エレンは彼にとって疑惑の女となるのではあるが。
エレンが“愛するが故に”リチャードに誘導されるがまま全てを告白するのと、ラストの生ぬるさが、この映画がいま一つ「傑作」たりえない要因だろう。“愛するが故に”全てをはぐらかし、隠し、騙して自殺する。これだとグッとサスペンスになり、エレンも徹底した「悪女」に昇華するのだが…。
徹底してエレンを「悪女」にしてやれなかったのが、つくづく残念である。
| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)
最近のコメント