2011年4月11日

シドニー・ルメット監督死去

1950年代から活躍した映画監督、シドニー・ルメットさんが9日、リンパ腫によりニューヨークの自宅で死去しました。

享年86歳。

Directorsidneylumet 1924年6月24日、ペンシルベニア州フィラデルフィア生れ。

幼少の頃一家でニューヨークに移住し、以後拠点にすることになる。

4歳で子役としてラジオドラマに出演。10代から子役としてブロードウェイの舞台に立った。

しかし、俳優活動に飽き足らなくなったルメットは、1950年代に演出家に転向する。黎明期のテレビドラマの制作に手腕を発揮し、売れっ子演出家となった。

1957年に初の劇場映画『十二人の怒れる男』を監督する。この作品でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞。一躍人気監督の仲間入りを果たす。テレビ演出家から転じた映画監督としては草分けであり、同時に非ハリウッド系の映画勢力であるニューヨーク派の旗手としての活躍が始まる。

その他の代表作に、1958年『女優志願』、1959年『蛇皮の服を着た男』、1964年『質屋』、『未知への飛行』、1973年『セルピコ』、1974年『オリエント急行殺人事件』、1975年『狼たちの午後』、1976年『ネットワーク』、1982年『評決』、2007年『その土曜日、7時58分』などがある。

1999年の『グロリア』では、主演のシャロン・ストーンがゴールデンラズベリー賞にノミネートされ、作品自体が駄作の烙印を押され、ルメット自身も終わった監督と見なされたことがある。(事実、1990年代は生彩を欠いた。)

アカデミー賞に4回、英国アカデミー賞監督賞に3回、カンヌ映画祭パルム・ドールに4回ノミネートされたが、いずれも受賞には至らなかった。しかし、2005年にはその生涯における業績を評価され、アカデミー名誉賞を贈られた。

ご冥福をお祈り致します。

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2011年3月31日

ファーリー・グレンジャーさん死去

ハリウッドの黄金期、1950年代に活躍した俳優、ファーリー・グレンジャーさんが3月27日、ニューヨークの自宅で老衰のため死去しました。

享年85歳。

Farleygranger007_2 1925年7月7日、カルフォルニア州サンノゼ生れ。

17歳のときにエージェントに見出され、1943年『北極星』でデビュー。

代表作に、ニコラス・レイ監督のデビュー作の1948年『夜の人々』、アルフレッド・ヒッチコック監督の1948年『ロープ』、1951年『見知らぬ乗客』、ルキノ・ヴィスコンティ監督の1954年『夏の嵐』などがある。

1950年代後半からはテレビ出演が多くなった。

2007年に自伝を出版し、パイセクシャルであることを明かすとともに、数々の有名人との恋愛関係を赤裸々に告白した。

ご冥福をお祈り致します。

― 『夏の嵐』より

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2011年3月24日

エリザベス・テイラーさん死去

ハリウッドの“大スター”、エリザベス・テイラーさんが、23日ロサンゼルスの病院で、うっ血性心不全のため死去しました。

享年79歳。

Elizabethtaylor31932年2月27日、イギリス・ロンドン生れ。

7歳の時、アメリカへ移住する。

1942年映画デビュー。1943年の『名犬ラッシー 家路』で注目を浴び、1945年『緑園の天使』で、美少女スターとしての地位を確立する。

1950年代に入ってからは、1950年『花嫁の父』、1951年『陽のあたる場所』、1952年『黒騎士』など、出演作はヒットに恵まれ、自身の美貌にも磨きがかかり、“世界一の美女”と呼ばれる。

『陽のあたる場所』で共演した、モンゴメリー・クリフトに影響を受け、演技に貪欲に取り組み、1956年『ジャイアンツ』では老け役に挑戦。それに続く1957年『愛情の花咲く樹』、1958年『熱いトタン屋根の猫』、1959年『去年の夏 突然に』と連続してアカデミー主演女優賞候補となり、アメリカを代表する女優に成長する。

1960年『バターフィールド8』と、1966年『バージニア・ウルフなんて怖くない』で、アカデミー主演女優賞を獲得。

1963年『クレオパトラ』では、史上初の100万ドルの出演料と“わがまま”、そしてリチャード・バートンとの不倫で話題になるも、映画は20世紀フォックスを破産寸前まで追い詰めた。

“恋多き女”としても有名。8度の結婚と7回の離婚を繰り返した。3度目の結婚相手マイク・トッドとは死別している。リチャード・バートンとは2度結婚・離婚した。

モンゴメリー・クリフトとはお互いに愛し合いながら、彼がゲイだったため結婚には至らなかったが、彼の死まで厚い交友は続いた。『ジャイアンツ』で共演したジェームズ・ディーンとも親交があった。2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンの“女神”で、2人は非常に親しかった。

1980年以降はエイズ撲滅を目指す慈善活動を積極的に行った。

愛称、リズ。

もうこんな“けた外れ”の大スターは現れないに違いない。

ご冥福をお祈り致します。

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2011年3月 1日

ジェーン・ラッセルさん死去

1950年代に活躍した女優、ジェーン・ラッセルさんが2月28日、呼吸不全のため、カリフォルニア州サンタマリアの自宅で死去しました。

享年89歳。

Janerussell11921年6月21日、ミネソタ州ビジミ生れ。

ジェーンが幼年期に、カルフォルニア州サンフェルナンド・ヴァレーへ移住する。父親が若くして亡くなったため、写真のモデル等をして家計を助けた。

1940年、ハワード・ヒューズが制作する映画『ならず者』のヒロイン・オーデションに合格。野性的で肉感的なヒロイン像を描いていたヒューズの好みにピタリと合った人選であった。

ヒューズは監督を交代させ、自身が監督となり、映画の宣伝のために胸元を大きく開いたジェーンの写真を大量にばらまいた。第二次大戦のため前線にいる兵士たち用にもブロマイドを制作し配布したため、ピンナップ・ガールとして一躍有名になる。

『ならず者』は、1943年に公開されるが、当時としては際どいシーンが検閲に触れ、公開禁止運動が巻き起こり上映中止に追い込まれた。しかし、この騒動でジェーン・ラッセルはセックス・シンボルとして躍り出た。

1953年の映画、『紳士は金髪がお好き』で、マリリン・モンローと共演。モンローに劣らぬ人気ぶりだった。

一方、熱心なキリスト教徒で、養子縁組の支援活動を行っていた。

代表作は、1943年『ならず者』、1948年『腰抜け二挺拳銃』、1952年『マカオ』、1953年『紳士は金髪がお好き』、1955年『紳士はブルーネット娘と結婚する』など。

ご冥福をお祈り致します。

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アニー・ジラルドさん死去

1950年代から100本以上の映画に出演した仏女優のアニー・ジラルドさんが2月28日、パリで死去しました。アルツハイマー病を患っていた。

享年79歳。

Ajirarudo06 1931年10月25日、パリ生まれ。看護師の訓練を受けたが、その後フランス国立高等演劇学校に学び、舞台女優に転身。映画デビューは1955年の『テーブルに13人』。

暗黒街の女を演じることが多かったが、1960年に出演したルキノ・ヴィスコンティ監督のイタリア映画、『若者のすべて』でイメージ・チェンジに成功する。この作品で共演したレナート・サルヴァトーリと、彼が1988年に死去するまで連れ添った。

母親、女性警官から弁護士、教師まで幅広い役柄を演じた。

代表作は、1960年『若者のすべて』、1962年『悪徳の栄え』、1975年『ル・ジタン』など。

晩年、アルツハイマー病を発病し、その闘病生活がドキュメンタリーとして撮影された。

ご冥福をお祈り致します。

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2010年10月 1日

トニー・カーティスさん死去

1950年代~1970年代にかけて活躍した俳優トニー・カーティスさんが、9月29日、ラスベガスの自宅で心不全のため死去しました。

享年85歳。

2

本名、バーナード・シュワルツ

貧しいハンガリー系ユダヤ移民のカーティスは少年時代は非行に走るが、更生し海軍に入隊。除隊後に演技を学び、エージェントに見出され1948年ユニバーサル映画と契約し、『裏切りの街角』の端役でデビューを飾る。

1950年代から甘いマスクの二枚目スターとして活躍、マネー・メイキングスターの上位に位置する売れっ子となる。1958年の『手錠のまゝの脱獄』での演技でアカデミー主演男優賞にノミネートされる。

代表作は、57年『成功の甘き香り』、59年『お熱いのがお好き』、60年『スパルタカス』、68年『絞殺魔』など。

結婚歴は5回で、53年に『魔術の恋』で共演したジャネット・リーとの間に生まれた次女は女優のジェイミー・リー・カーティスである。

2009年、著書「ザ・メイキング・サム・ライク・イット・ホット」で、『お熱いのがお好き』で共演したマリリン・モンローとの不倫関係を告白した。

晩年は画家としての評価も高かった。

1978年の『がんばれベアーズ大旋風』では、若山富三郎らと共演。来日もしている。

ご冥福をお祈り致します。

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2010年8月22日

王になろうとした男

2 1975年<アメリカ>

監督 ジョン・ヒューストン

出演 ショーン・コネリー/マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/サイード・ジャフリー/シャキーラ・ケイン

ストーリー

1880年代のインド、ラホール。英字新聞ノーザン・スターの特派員ラドヤード・キプリングは深夜のオフィスで独り原稿を書いていた。ふと背後に人の気配を感じ振りむくと、ぼろ布をまとった乞食のような男が立っていた。その男はピーチー・カナハンと名乗ったが、キプリングは何者なのかしばらくの間思いだせなかった。そうだ、ピーチーだ!しかし、何という変わりようだ。3年前のあの溌剌としたハンサムな青年の面影はどこにもなかった。ピーチーは椅子にかけウィスキーを一杯飲むと、信じられない物語を語り始めた。― キプリングとピーチーが出逢ったのは、ラホール駅でピーチーがキプリングの懐中時計を失敬したことからだった。その時計にはフリーメイソンのグランドマスターの紋章が刻まれていた。ピーチーは8日後にマルワルで、友人の軍曹仲間のダニエル・ドラポットにメッセージを届けてほしいと言い残すと、姿を消した。キプリングがドラポットに「ピーチーは南へ行く」というメッセージを言うと、ドラポットはデガンパーの首長を脅しに行くという。その言葉は本当だった。2人は逮捕されるが、キプリングの尽力で釈放となる。そして数日後、ピーチーとダニーは再びキプリングの前に姿を現す。2人は驚くべき計画を打ち明けた。カフィリスタンに行って王様になろうというのだ。アレキサンダー大王以来白人が足を踏み入れたことのないヒマラヤの奥にある土地だった。キプリングの誇大妄想だという言葉を2人は無視し、固い決意でカフィリスタンへ向かって出発した…。

17 カフィリスタンへ向かうピーチー(左、マイケル・ケイン)とダニー(中央、ショーン・コネリー)をキプリング(右、クリストファー・プラマー)が見送る

キプリングは別れの品に、懐中時計に付いていたフリーメイソンのグランドマスターの紋章をダニーに贈った。ピーチーとダニーは国境を越え、大河を渡り厳しい山岳地へと分け入った。雪が行く手を阻む。大雪崩を幸運に変え、ついにカフィリスタンに入った。とある集落へたどり着くと、英語の出来る男ビリー・フィッシュが飛び出してきた。ビリーは村の人々に英国軍人の偉大さを説いて回っていた。と、なれば話は簡単だった。ピーチーとダニーが村の敵という敵を倒すというのだ。村はすっかり歓迎ムードだ。女たちが踊り歌い、酒がふるまわれた。しかし、2人は王になるまでは酒と女を断つという宣誓をしたのだった。ポロが始まった。球以外は英国と変わらない。なんと球は敵の頭蓋骨だという。風俗習慣のあまりの違いにショックを受けるダニー。ピーチーは意外と冷静だ。

早速英国式軍事教練を男たちに施すピーチーとダニー。ピーチーが危うく女の誘惑に負けそうになったところで、敵のバシュカイ人を倒しに村を出た。バシュカイ人とあいまみえるピーチーとダニーの軍隊。見事な統制で敵を倒していく。ダニーが馬でバシュカイ人の中に突撃する。ピーチーは歩兵を率い銃で敵を蹴散らす。ダニーの胸に矢が突き刺さったが、彼は血を流さずびくともしないで戦い続ける。すると、バシュカイ人は戦いをやめ、ダニーの周りにひれ伏した。この国には、アレキサンダー大王(カフィリスタンではシカンダーと呼ぶ)がいつの日か息子を遣わすと約束したという伝説があり、ダニーこそその息子だという噂が瞬く間に広まったのだった。ダニーは“神の子”と崇められた。ピーチーとダニーは“神の子”を有効に使うことに決めた。

4      “神の子”の扱いについて相談中のダニーとピーチー

ピーチーとダニーの軍は敵を征服していった。軍紀も確立した。ダニーは“神の子”になった。次々に勝利を重ねるうちにもはや敵はいなくなった。ピーチーとダニーは貢物を受け、乙女にもてなされる身となった。

21貢物をする乙女にダニーが目を掛けた。美しい娘だった。名前はロクサーヌといった。アレキサンダー大王がめとった妻と同じ名前である。ダニーは益々彼女に興味を持った。しかしロクサーヌはダニーを恐れる。“神”の心は火で出来ている。その“神”に愛されると火が燃え移り、煙になって消えるという迷信を信じているのだった。

聖都から僧侶の一団がダニーの許へやって来た。“シカンダーの息子”に会いに来たのだった。カフィリスタンの高僧カフ・サリムが来いと言っている。今日すぐにダニーとピーチー2人だけで来いと。2人は軍隊無しでは心細かったがはったりを利かせ、通訳のビリーを伴ってカフ・サリムの許へ急いだ。

神殿に案内された2人。高僧カフ・サリム登場。すると、僧の一人がダニー向かって弓を放とうとする。慌てたピーチーは僧を突き飛ばした。僧の一団に鷲掴みにされる2人。服を脱がし、その肌に刃を突き立てようとしている。ダニーの肌が露わになった。胸にはキプリングから贈られたフリーメイソンのグランドマスターの紋章が光っていた。高僧カフ・サリムが、「シカンダー…」と言ったとたんひれ伏し、周りの僧侶が皆それにならった。グランドマスターの紋章は、この寺院に伝えられている“シカンダーの印”と同じだったのだ。

19                  “シカンダーの印”

カフ・サリムは“神の子”を認めた。ダニーは正式に“神の子”として迎えられた。戴冠式が厳かに執り行われた。寺院の財宝は全てダニーのものとなった。ダニーは法律を次々と作った。ピーチーは将軍になった。しかし、財宝を運び出せる季節になっても、ダニーは一向に“神の子”の座を降りようとはしなかった。財宝を運び出し“神の子”と決別しようとするピーチーの思いとは裏腹に、ついにダニーはロクサーヌとの結婚を決意する…。

6              “神の子”として戴冠したダニー

― クリント・イーストウッド、スティーヴ・マックィーンに続いて、この人も今年80歳なのねショーン・コネリー!!

結局は“王様”どころか“神の子”になって、誇大妄想と高慢に陥り身の破滅を招くダニエル・ドラボットと、最後まで友情に殉ずるピーチー・カナハンの信じられない冒険談。原作者のラドヤード・キプリングが冒頭と最後に顔を見せ、彼がダニーに贈ったフリーメイソンのグランドマスターの紋章がカギになっている、というのはなかなか面白い展開である。

しかし、ショーン・コネリー大活躍の映画というよりは、マイケル・ケインの方が活き活きと演じているような気がする…。ショーン・コネリーの方が“神の子”である訳だから、見せ場も多いし得な役回り…と思いきや、カフィリスタンまでの道のりではお荷物だし、“神の子”になってから勘違いも甚だしいし、実はとんでもない奴だったわけで。最後に見せる男気が華だったけれどねぇ…遅かったかも。いや、でも、だからストーリーがより面白くなった面もあるのだが、やはり実は幽霊のごとく存在するピーチーの方がお得だったといえる。狂言回しの役だし。そりゃ、マイケル・ケイン張り切りますわね。しかし役の交換は不可能といえるほど、2人がそれぞれの役にハマっていたのは確かである。

そしてこの映画は、監督のジョン・ヒューストンの色が濃い作品だと言わざるを得ない。文学作品の映画化というのは、ジョン・ヒューストンが大好きなことであるし、この映画の企画は長年温めていたものだという。最初予定されていたキャストは、ボギーとクラーク・ゲイブルで、ボギーの死により企画は一旦棚上げされて、「荒馬と女」の次の映画にとゲイブルが持ちかけたが、相手役を探し始めたとき彼が亡くなるという誠に不運な映画なのである。次に企画が持ち上がったのが70年代に入ってから、ポール・ニューマンのための企画としてであった。共演者はロバート・レッドフォード。しかしポール・ニューマンは主役2人のキャストはイギリス人が演じるべきであるとし、ショーン・コネリーとマイケル・ケインを推薦した― という経緯を持つ。実にジョン・ヒューストン念願の映画なのであった。

ショーン・コネリーの映画として紹介するのは今一つ気が引ける映画ではあるが、同年にコネリーが主演した『風とライオン』より断然こっちの作品のほうが面白かったので、紹介しちゃうのだった。

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2010年8月16日

マルホランド・ドライブ

72001年<アメリカ・フランス>

監督 デイヴィッド・リンチ

出演 ナオミ・ワッツ/ローラ・エレナ・ハリング/ジャスティン・セロウ/アン・ミラー/ロバート・フォスター/レイパエッテ・モンゴメリー/ダン・ヘダヤ/マイケル・J・アンダーソン/メリッサ・ジョージ/パトリック・フィッシュラー/ボニー・アーロンズ/リチャード・グリーン/レベッカ・デル・リオ

ストーリー

真夜中のマルホランド・ドライブ。車の後部座席に座る女は、突如運転手に殺されそうになる。その直後車は事故を起こし、傷を負い逃げた女は高級アパートの一室に忍び込んで身を隠す。部屋の住人である叔母を訪ねてハリウッドにやって来た女優志望のベティは、部屋にいた女を叔母の友人と思い込んでしまう。女は部屋に貼られていたリタ・ヘイワースのポスターを見て反射的に自分を「リタ」と名乗った。リタが叔母の友人ではないと分かったベティは混乱をきたすが、リタはベティに自分が事故で記憶喪失になっていると打ち明ける。リタのバッグには大金と青い鍵。ベティはリタが唯一覚えている言葉「マルホランド・ドライブ」を手掛かりに、失った記憶を取り戻すことに協力するが…。

41_3 リタ(ローラ・エレナ・ハリング)の記憶探しに協力するベティ(ナオミ・ワッツ)

“Winkies”-ハリウッドの“Winkies”に来たかったと話す男が登場する。聞き役は知り合い、もしくは友人だろうか?男は話し続ける。「この店を夢で見た。夢は二度見た、同じ夢だった。僕がこの店にいる。あたりは昼でもなく夜でもない、薄闇というのかな。店はこのままだ、明るさ以外は。本当に恐ろしかった。驚いたことに…君がそこに立っていた。」と、カウンターの方へ振り向く。「どっちの夢でも君は怯えてた。それを見て僕はもっと怖くなった。」「そこで気付いた。男がいるんだ、店の裏に。そいつのせいだ。壁の向こうに…奴の顔が見える。見たくもない顔だ、“夢”以外の場所ではね。…それだけだ。」

46          “夢”の話をする男(パトリック・フィッシュラー)

聞き役の男が、「実際にいるかどうか確かめに来たのか?」と聞く。男は「気が楽になるかと思って…」と答える。「それなら」と、聞き役の男が席を立った。男は緊張した。聞き役の男が急く。男は席を立って表へ出た。男は非常に緊張した面持ちで店の裏へ回った。息が荒い。と、突然塀の陰から非常に汚れた浮浪者の男が出現した。男は倒れた。死んでいた…。

18              浮浪者の男(ボニー・アーロンズ)

新進気鋭の映画監督アダム・ケシャーは憤慨していた。新作映画の主演女優を出資者のカスティリアーニ兄妹はあらかじめ決めていたのだ。「カミーラ・ローズ」その名前の女優が主役を演じるのだ。アダムが面白いはずがない。彼は中座し、カステイリアーニ兄妹の車を持っていたゴルフクラブでめった打ちし、破壊し、家へ戻った。しかし、嫁は浮気の真っ最中。彼女の宝物の宝石類をペンキまみれにし、家を出た。

19_2新進気鋭の映画監督アダム・ケシャー(ジャスティン・セロウ)

ベティは警察に電話を掛けて、昨日マルホランド・ドライブで事故があったか聞いた。確かに事故はあった。Winkiesでコーヒーを頼むと、リタがウェイトレスの名札から「ダイアン・セルウィン」という名前を思い出す。自分の名前かもしれないと言う。電話帳で調べると「D・セルウィン」は一件しかなくベティは早速電話をしてみる。留守電で声もリタのものではないようだ。翌日、その住所を訪ねることにする。

27         「ダイアン・セルウィン」に電話するベティとリタ

アダムはいつもお忍びで泊るモーテルに雲隠れするも、何故かクレジットカードが使えない。銀行口座も凍結されている。アシスタントに電話すると、“カウボーイ”に会ってみるといいと言われ、待ち合わせ場所へ車を走らせる。

“カウボーイ”登場。言葉通りカウボーイの格好をしている。そして言うのだった。明日仕事に戻れ。そして「カミーラ・ローズ」を見つけたら、“彼女だ”と言え。他のキャストはそのままでいい。主役だけは君の好きには出来ない。うまくやれば君はもう一回私に会う。間違えたらもう二回会うことになる、と。そして消えた。

38       アダムと会う“カウボーイ”(レイパエッテ・モンゴメリー)

翌日、ベティは叔母から紹介された演技のオーデションに見事合格。絶賛を浴び、成功の階段を上ろうとしていた。新作映画のオーデションをしているアダムと目が合うベティ。2人は何かを感じあう。が、アダムに紹介される寸前、リタとの約束を思い出し、ベティはその場を去る。

アダムの次のオーデションの女性は、「カミーラ・ローズ」だった。歌い出すカミーラ。アダムは“彼女だ”と言うしかなかった。

39           「カミーラ・ローズ」(メリッサ・ジョージ)

ベティとリタは「ダイアン・セルウィン」のアパートを突き止め、ベルを鳴らす。出てきたのは女性だったが、ダイアンではないという。リタを見ても無反応だ。ダイアンと部屋を交換したのだった。食器をまだ少し部屋に置いてあるが、しばらく彼女を見ていないという。交換した部屋へ向かうリタとベティ。案の定ベルを鳴らしても返事が無い。ベティは開いてる窓から中に入り、部屋の鍵を開けリタを入れる。部屋は暗く、嫌な匂いがたちこめていた。寝室へ入るとベッドに横たわる黒髪の腐乱死体があった…。

30                   横たわる死体…

半狂乱になったのはリタだ。彼女は髪を切り出した。それをベティが止め、金髪のカツラを被せた。似合っていた。そして2人は一線を越えた。キスをし、胸を触り、感じあった。ベティは「あなたに恋したの」「あなたが好き」と言う。事が終わり眠りに就く2人。ふとリタが、「シレンシオ…(お静かに)」と寝言を言う。「シレンシオ…楽団はいません…オーケストラも…」と言ったところで目を覚ました。「シレンシオ」と口が勝手に動く。起きたベティに「大丈夫よ」と言われても、「大丈夫じゃないわ」と答えるリタ。今すぐ一緒に来てほしいとせがむリタ。2人は“クラブ・シレンシオ”へと急ぐ。

42                  “クラブ・シレンシオ”

「楽団はいません」と言う司会者。ベティとリタは司会者の言葉に聞き入る。「すべて録音されている。楽団はいません」と。「オーケストラはいない。これらは何もかもまやかしです」と。「お聞きを」と司会者が手を上げた瞬間雷のような音が響き、ベティの体は大きく震え出す。鎮めようとベティの体を固く掴むリタ。

23                    「お聞きを」

4           リタはベティの体の震えを鎮めようとする

司会者は煙と共に消え、ベティの体の震えも止まった。そして“ロサンゼルスの泣き女”レベッカ・デル・リオが登場する。彼女は歌う。

しばらくは元気だったの 笑顔でいられたわ

でも ゆうべあなたに会って あなたの声を聞いた時…

私は取り乱さなかったわ

だから あなたには分からなかったのね

あなたを慕って泣いてることに

あなたを思って泣いているのよ

あなたは さよならを言って私を置き去りにした

私は一人で泣いている

泣いている ただ一人 泣いている

なぜなのかしら

あなたに会っただけで また私は涙にくれる

あなたを忘れたと思っていたわ

でもこれは本当のこと

以前にも況してあなたを愛してる

でも私に何ができるの あなたの愛は冷めてしまった

だから私は永遠に

あなたを慕って泣き続けるだけ

あなたを思って泣き続けるだけ

44          “ロサンゼルスの泣き女”レベッカ・デル・リオ

ベティもリタも泣いた。涙に暮れた。そしてベティは隣の席に置いてあったハンドバッグを取った。中には青い箱が入っていた。急いで部屋に帰り、鍵を取り出すリタ。ベティは消えていた。呼んでも何処にもいない。一人で鍵を開けるリタ。中身は真っ暗だ。箱が落ちた…。

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“カウボーイ”が、「よう、彼女 起きる時間だ」と、腐乱死体に呼び掛ける。

ノックの音がする。女がようやく起きて汚れた白いバスローブをはおる。ベティだ。部屋を交換した女が「3週間もどこに行ってたの?」と言いながら食器を取りに来た。「ダイアン」とベティを呼ぶ。「刑事が2人あんたを探してたわ」と言って出ていった。

「ダイアン・セルウィン」とはベテイだったのだ。

彼女は思い焦がれている「カミーラ」を見る。

「カミーラ・ローズ」はリタだった…。

9              「カミーラ」と愛し合う「ダイアン」

― 感覚が麻痺させられる映画。一筋縄ではいかないストーリー。妄想・夢・空想・回想・現実が絡みあって一見しただけでは混乱をきたすかもしれない。しかし、DVDの特典のリンチ監督の「音楽のように感じてほしい」「自分の感覚を信じていれば理解の扉は自然と開く」という言葉を鵜呑みにすれば、どうとでも解釈出来るストーリーでもある。ブルース・リーではないが、「考えるな、感じろ」というところであろうか。

あえて自分なりに考えると、2時間20分余りのうち前半2時間はダイアン=ベティが見た妄想・夢・空想で、後半20分が回想・現実であろう。前半は現実世界の出来事も少し入りつつも、幻想的であり続ける。リンチ節炸裂である。

しかし後半たった20分余りの怒濤のクライマックスは素晴らしいの一言である。リンチ監督の真骨頂ではあるまいか。

ダイアンという女性は、ジルバの大会で優勝して女優を目指しカナダから上京してきた野心家である。しかし、『シルヴィア・ノース物語』でカミーラに主役を奪われる。『シルヴィア・ノース物語』はカミーラの代表作になるが、それ以降ダイアンはカミーラと関係を持つようになる。そして彼女の主演作で脇役を貰うしがない女優になり下がっているのだった。カミーラを熱烈に愛しているが、彼女がダイアン以外の女と関係しているのを知り、おまけに新進気鋭の監督アダムと婚約するに至って、ダイアンのカミーラへの愛は憎悪に変わり、殺意が芽生える。

殺し屋を雇う。金は叔母の遺産から出る。大金を持っていたのはリタだったが、本当はダイアンが大金を握っていたのだ。殺し屋が仕事に成功したら“青い鍵”を届けるという。“青い鍵”は届けられた。しかしそれがダイアンを追い詰めていく…。

あの、「ダイアン・セルウィン」の部屋の腐乱死体は自分自身だったのだ。

ダイアンを追い詰める笑いっぱなしの老夫婦が怖い。映画の冒頭に彼女と一緒に笑いながら出てくるので、たぶん両親ってところだろうと思うけど、これもリンチ監督ならでは、である。

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※公開当時あまりの難解さに、リンチ監督からストーリーを理解するための10のヒントが提示された。

・映画の冒頭に注意を払うように。少なくとも2つの手掛かりがクレジットの前に現れている。

・赤いランプに注目せよ

・アダム・ケシャーがオーデションを行っている映画のタイトルは?そのタイトルは再度誰かが言及するか?

・事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ

・誰が鍵をくれたのか?なぜ?

・バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ

・クラブ・シレンシオで彼女たちが感じたこと、気付いたこと、下した結論は?

・カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?

・Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ

・ルース叔母さんはどこにいる?

これが全部理解できれば、「理解の扉は自然に開く」のは当たり前なんである。

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2010年8月10日

パトリシア・ニールさん死去

映画・舞台で活躍した女優、パトリシア・ニールさんが肺がんのため、8日死去しました。

享年84歳。

Photo_2 ノースウエスタン大学で演技を学びNYへ。さまざまな職業に就きながら下積み生活を送り、47年ブロードウェイでトニー賞を受賞し注目される。

その後ワーナー・ブラザーズと7年契約を結び、48年『恋の乱戦』で俳優時代のレーガン大統領と共演して映画デビューする。同年『摩天楼』で共演したゲイリー・クーパーと不倫関係となるが破局。しかしそのことが大々的に非難され、一時仕事に就けない時期もあった。

56年『群衆の中の一つの顔』でハリウッドに復帰する。61年の『ティファニーで朝食を』を経て、62年ポール・ニューマンと共演した『ハッド』でアカデミー主演女優賞を獲得する。

53年に作家のロアルト・ダールと結婚するが、30年連れ添った後離婚している。

70年代以降はTVムービーや日本未公開作品が多い。

ご冥福をお祈り致します。

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2010年8月 6日

ブルー・ベルベット

7 1986年<アメリカ>

監督 デイヴィッド・リンチ

出演 カイル・マクラクラン

    イザベラ・ロッセリーニ

    デニス・ホッパー

    ローラ・ダーン

ストーリー

赤いバラ、白いフェンス、青い空―。絵葉書のようなアメリカの典型的な田舎町ランバートン。大学生のジェフリーは父の急病のため帰郷し、病院へ見舞いに行った帰り、野原で人間の方耳を発見する。警察でウイリアム刑事に渡し、夜刑事宅を訪ねたジェフリーは、同家の娘サンディから「この耳の事件はディープ・リバー・アパートの7階に住む歌手がかかわっているらしい」と聞かされる。翌日彼は父親の店の備品を持ちだし、歌手ドロシーの部屋に害虫駆除だと称して入り込み、鍵を盗み出す。彼はサンディとスロー・クラブに行き、ドロシーが官能的に歌う「ブルー・ベルベット」を聞く。その後、ドロシーの部屋に忍び込んだジェフリーは、彼女が戻って来たのでクローゼットに隠れて覗き見をする。フランクという男が来て、卑猥な言葉をわめき、酸素吸入器を使い、青いベルベットを咥えつつドロシーを犯す…。そんな異常な世界にジェフリーは自らはまり込んでしまうのだった…。

15                 発見した“耳”

4      「ブルー・ベルベット」を歌うドロシー(イザベラ・ロッセリーニ)

9           ドロシーを覗くジェフリー(カイル・マクラクラン)

ドロシーが帰って来た。急いでクローゼットに隠れるジェフリー。彼女は疲れ切った様子で服を脱いだ。そこに電話が掛って来た。丁寧な言葉遣いで“フランク”と話すドロシー。“ドン”と話す彼女は心配げで“ドニー”をことのほか気遣っていた。再び“フランク”が電話に出ると、「彼に何をしたの?」と言葉を荒げるドロシーだったが、最後は丁寧語に戻っていた。電話を切ると、ソファーの下から写真を出して、そしてしまった。

ジェフリーは不覚にもクローゼット内で音を立ててしまう。ナイフを持ったドロシーがクローゼットを開ける。激しく問い詰められ、ただ「あなたに会いたかった」としか言えないジェフリー。服を脱がされ、ドロシーにパンツを下ろされる…。ジェフリーの体をまさぐり恍惚の表情のドロシー。しかしそれも激しいノックの音で中断される。再びジェフリーはクローゼット内へ。ドロシーは男を迎え入れる。

3        ノックの音で中断されたつかの間の恐怖の逢瀬

ドロシーは一脚の椅子を用意し、男にバーボンを注ぎ、部屋の明かりを消した。照らすのはローソクの明かりのみ…。男は「暗闇だ」と言い、椅子に座ったドロシーに脚を開くよう命令する。そして酸素吸入器を吸い、「マミー」とうめきつつ、ドロシーの着てた青いベルベットのガウンを咥え、彼女を乱暴に犯す…。終わった後は再び「暗闇だ」と言い、去っていった。

クローゼットから出たジェフリーはドロシーを起こす。ドロシーは挑発するように、彼に抱いてと迫る。「ぶって」と。「ぶって、お願い!」と。しかしジェフリーがそんなことは出来ないと分かると、フラフラと洗面所へ歩み去って、小声で「助けて…」と言うのだった。ジェフリーは帰り際、ソファーの下の写真を出し、それに付いている結婚証明書でドロシーと“ドン”が婚姻関係にあることを知る。

12_2                     「ぶって…」

帰り道、ジェフリーは今あった一連の出来事が本当だったのか信じられないでいた…。

どうやら、ドロシーの夫ドンと息子は昨夜来たフランクという男に監禁されている。ドロシーは死にたがっている。しかしそれを阻止するためフランクはドンの耳を切った…というのがジェフリーが出した結論だった。

ジェフリーは再びドロシーの許を訪れる。ドロシーに「素性も知らないあなたが好きなの」と言われ、「僕も好きだ」と応える。スロー・クラブでドロシーが「ブルー・ベルベット」を歌うのを聞いている。そこにフランクも来ていた。彼は青いベルベットを掴みつつドロシーの歌に涙していた…。

ジェフリーはドロシーの許へ行き、むさぼるように愛し合う。しかしアパートから出ていくところをフランクに見られた。ジェフリーはフランクに捕まってしまう。そこからジェフリーは異常な世界へと誘われるのだった…。

5_2            フランク(デニス・ホッパー)とドロシー

― 平和な日常と悪夢の非日常を行き来するジェフリー。事件の話をしていくうちにサンデイを愛し始める健全な青年。だが、ダークな魅力のドロシーにもどうしようもなく惹かれベッドを共にする好奇心の強い青年。なぜドロシーの家族はフランクに拉致されているのか?果たしてそもそもフランクとは何者なのか?不可思議な疑問がスパイラルのごとく渦巻く。しかし、ドロシーとフランクの暴力とSEXの異常な世界がそこにあれば、ストーリーがどう転ぼうとあまり興味をそそらない…というのが正直な感想だ。

はっきり言ってしまえば、平和な日常の住民には魅力を感じない。非日常の住民がとても魅力的だ。フランクの友人ベン、その周辺の人々。黄色いスーツの男。痛々しいドロシー役のイザベラ・ロッセリーニも良いが、この異常な世界にいざなう中心的な人物、フランク役のデニス・ホッパーの演技がとにかく暴力的で陶酔せずにはいられない。この映画はデニス・ホッパーでもっているといってよい。音楽のセンスも光る。

イザベラ・ロッセリーニは母親によく似てるね。

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