1938年 <アメリカ>
監督 マイケル・
カーティズ
出演 ジェームズ・
キャグニー
パット・オブライエン
ハンフリー・ボガート
アン・シェリダン
ジョージ・バンクロフト
ストーリー
貧民屈の少年ロッキーとジェリーは、貨物列車に忍び込み、積んであった万年筆を盗んで逃走したが、ジェリーだけが上手く逃げられ、ロッキーは捕まり感化院に送られた。これが2人の運命の分かれ路であった。時がたち、今や押しも押されぬギャングの頭目となったロッキーは、刑務所から放免され久しぶりに世間へ出てきた。そして、あのとき逃げたジェリーは神父となって、貧民屈の初年たちの指導をしていてた…。
※ ほとんどネタバレです。
悪徳弁護士と面会中(左、ジェームズ・キャグニー)
フレイザー(ボギー)
悪徳弁護士フレイザーと組んで金を強奪し、彼だけが捕まり刑務所に入れられた。しかし、フレイザーは有力者に話をつけ、3年で出所できるように計らった。怒り心頭のロッキーだが、彼が捕まると強奪した貸金庫の金は没収になる。10万ドルだ。服役する代わりに、自分が出所したら10万ドルは返せと言う。俺を騙すな、と念を押して。
― 3年の時がたち、ロッキーは釈放された。せわしない下町の故郷に帰ってきた。そして、彼は足を教会へ向ける。教会では、少年たちが賛美歌の練習に余念がなかった。そしてそれを指導しているのが、少年時代の友人、ジェリーだった。彼は今はすっかり更正しており、神父の道へ進んだ。指導が終わると、少年たちは一気に外へと走り出た。貧民屈の少年たちのようだ。
15年ぶりの再会
ジェリーが部屋へ戻ると、ロッキーも続いた。そして、「15年間気になっていたが、万年筆はどうした?」と聞いた。ロッキーはジェリーに遠慮でもしてたのか15年も会わなかったのだ。住所が変わり検閲されるから手紙も書かず、彼を見つけても声を掛けなかった。
昔話に華が咲くが、子供が神父を呼びに来た。子供の不良化を防ぐために、レクリエーションをしているのだ。「耳が痛い」とロッキー。ジェリーは、「祈ってたよ」と言う。そしてジェリーはロッキーに部屋を紹介し、店へ急いだ。
ロッキーは早速、そのアパートへ部屋を借りに来た。ドアを叩き部屋を見せて欲しいと言ったが、案内の女性に何故か見覚えがあった。
掃き溜めに美女(アン・シェリダン)
なんと、それは少年時代散々からかった、オテンバ娘少女ローリー・マーティンだった。今は美しく成長し、魅力的な女性になっていた。
そしてロッキーはその足で、フレイザーのいる店へとやって来た。10万ドルを取り返すためだ。フレイザーはロッキーの登場に動揺を隠し切れないが、とにかく彼を部屋へ通した。この店はキーファーという影の実力者が経営する店だ。ロッキーは早速10万ドルの話に入るが、フレイザーは、金は突然なので手許には無い。だが週末までに用意するから、それまで今ある金500ドルをロッキーに渡した。ロッキーは仕事も用意してくれと言う。そういう約束だったのだ。彼が刑務所に行っている間、フレイザーが稼ぐ…。しかしフレイザーは今、キーファーの店で働いている。しかしロッキーは、約束したのはお前とだ。俺の面倒はお前が見ろ…と強気だ。約束は守ってもらうと強く念を押しすロッキー。
フレイザーが言葉を濁したとき、キーファーが部屋へ入ってきた。ロッキーの仕事はキーファーが世話をすることになった。そしてロッキーはキーファーに送られながら部屋を出て行った。すると、フレイザーは電話をかけた。ロッキーを殺せという命令だ。
…せわしないし下町。貧民屈の少年たちが今日も幅をきかせて歩いている。新聞を読みながら歩いてきたロッキーに目をつけ、財布を奪う。ロッキーはたちまち渋い顔になる。
昔も今も少年たちのたまり場は変わらない。盗んできた財布を開けて金を山分けにしようとしたところ、ロッキーが現れた。リーダーの少年に金を回収させ、自分を知らしめた。“ロッキー・サリヴァン”だと。たちまち少年たちの心を掴んだロッキー。
そしてロッキーの部屋で少年たちとランチを取っていると、ジェリー神父が尋ねてきた。神父が今日はバスケットの試合の日だと少年たちに誘いをかけに来たのだ。しかし、少年たちは動こうともしない。するとロッキーは金を餌に彼らを試合へ引っ張っていき、試合の中でこの世の洗礼を受けさせる。彼らはすっかりロッキーの舎弟になった気分になった。
…そして、試合見物に来ていたローリーとロッキーは一緒に帰る。話しながら歩いているとき、ロッキーは1人の男の気配に気づく。アパートの前まで来ると男たちがたむろしている。彼はローリーを別のアパートの中へ入れ、自身はドラッグ・ストアーに入る。男たちは、この店でロッキーを始末するつもりだったが、ロッキーの機転で難を逃れる。しかし男たちはロッキーを片づけたと思い、フレイザーに「彼を始末した」と電話を入れる。フレイザーは満足げにニヤリと微笑んだ…。
フレイザーが家へ帰ってきて車から降りると、ロッキーが電光石火の早業で現れた。フレイザーが所有するすべての鍵を取り、彼の部屋の金庫を開けさせた。あくまでも10万ドルを返させる気だ。しかし現金の10万ドルはなく、彼は証券で金を貯めこんでいたのだ。そして金庫の中のものを全て手に入れた。
彼はフレイザーにキーファーへ電話をかけさせ、フレイザーが彼に、ロッキーが明朝行きます。11時に銀行から10万ドル引き出して渡してくださいと言う。フレイザーはロッキーの人質になった。命がかかっている。フレイザーの額に汗がにじみ、電話を握る手は震える…。
翌日、11時にロッキーがキーファーの店へやって来た。弱みを握られたキーファーは10万ドルを払わずにはいられなかった。尾行しなきゃ人質は返すと言って、彼は店を出て行った。すると、キーファーは警察に電話をし、ロッキーが身代金10万ドルで弁護士を誘拐したという情報を提供した。
ロッキーが部屋へ帰る途中の階段で、刑事らしき男たちを見た。同じアパートに住んでいる少年を呼び、そして10万ドルを封筒に入れ、少年に“巣”に隠すよう託した。そして、刑事たちがロッキーの部屋へ入ったが、何も出てこなかった。しかし情報提供があった手前、ロッキーを警察へ連行し、尋問が行われた。“人質”のはずのフレイザーは旅行中。警部が白状しろと詰め寄ると、弁護士を呼ぶと言った。フレイザーだ。
ようやくキーファーの許へ戻ったフレイザー。キーファーがロッキーを、誘拐の現行犯で彼を検挙したと言ったのを聞いてフレイザーは青ざめる。金庫の中の全てをロッキーが握っているのだ。それをバラされたらどうなるか?町はひっくり返る。ロッキーの件は間違いだったとして、彼を釈放させた。
…“巣”では、少年たちが「フレイザーがロッキーによって誘拐」という号外を読んでいた。するとあの封筒の中身は「金」か…。彼が刑務所行きになれば自分のものになる…というずる賢い少年もいるなか、ロッキーは現れた。封筒を返させ、少年たちに、このことは何も知らないんだと言い聞かせた。俺たちは「仲間」だと言い、皆と握手するロッキー。そして大金をやり、帰った。
10万ドルを部屋の中に分散して隠しているとき、ジェリー神父がやって来た。神父の話は、少年たちがバスケットボールの試合に来ない…というものだった。そこへローリーがやって来て、少年たちを見かけたと言う。ビリヤード場で、札ビラを切って近所の子にビールをおごっていた、と。
そしてビリヤード場にジェリー神父が現れる。「試合に行かないのか?」と聞くと、行くものもあれば、そのままビリヤードをやり続けているものの方が多数だった。彼らは着飾って、ゲームに金を賭けていた。神父の話を聞き、神妙になる少年たちだったが、「試合」へは行かなかった…。
ロッキーとローリーは相思相愛の仲になっていった。ある店に2人で行く。ローリーの新しいドレスは輝くようだ。そしてふとロッキーが用があると言って消えた。
楽しく踊る二人
キーファーの部屋へ行ったのだ。キーファーは、全てを水に流そうと言う。警戒するロッキーだが、話は聞くことにした。金庫から持ち出した書類の行方だ。用心のため預かっておくとロッキーにかわされた。キーファーが何が望みだと聞くと、最初の約束通り半分もらうということだった。ロッキーもこの店の共同経営者となったのだ。しかし、そんなことを許す2人ではない。書類を取り戻すまでだ。
ある日ジェリー神父の許に、新しいレクリエーション・センターの寄付金として1万ドルが配達された。神父はロッキーの“店”へ出向いた。1万ドルを返し、そして驚いたことにロッキーに対して宣戦布告したのだ。子供たちを悪の道から救うためには、フレイザー誘拐事件の真相を究明する、と。そうすれば、色々な悪事が法律の前にさらされる。君も巻き込まれて、こっぴどくやっつけられると言った。
ロッキーは、出来ると思うならやるがいいと言う。俺に遠慮はいらない、と。そして2人の友情は終わりを告げたが、神父は昔のよしみで頼みがあるという。少年たちに金をやるなというのだ。彼を崇拝させたくないからだと。頼む…と言い、店を出て行った。
“悪”を告発するため、新聞社を回る神父。ついに支援してくれる新聞社を獲得した。新聞に、「神父、真の改革運動を提唱」と一面に載った。新聞は勢いを増し、「ロッキー調査を叫ぶ市民の声」「市政を蝕む暗黒街を暴露」と、次々にジェリー神父の望んだ通りの展開になっていった。
黙っていないのが、ローリーだ。豪華なコートを羽織ながら、ジェリー神父に詰め寄る。悪いのは彼じゃない、感化院に入れられたから犯罪者になったと、彼の耳には痛い言葉を投げつける。皆がなんと言おうと私たちだけは彼を愛している、と。神父も「愛している」と言うではないか。子供の頃から愛していた。一緒に喧嘩をし、盗みもした。神に誓って言うが、彼のためになるならなんでもすると言う。命だってやる。だが、子供たちが同じように悪い環境にいる。ロッキーのようになって欲しくない、と。子供たちを救ってやりたい。犠牲には出来ない…。
新聞は益々騒ぎ立てた。「ロッキーがいかに市を牛耳っていたかを暴く」「公聴会 今夜!」などなど。
ジェリー神父の、市政の腐敗を攻撃するラジオを聴きながら、ロッキー、キーファー、フレイザーが3人並んでいた。キーファーは強がり、フレイザーは額に汗をにじませタバコをふかし続け、ロッキーはその2人を観察していた。激しい神父のフレイザー誘拐事件の追及に及ぶと、キーファーはついにラジオを切った。そしてキーファーは神父を消すと言った。ロッキーはそれは許さないと言う。するとフレイザーが、先走ってもしょうがないと話を挟んだ。しかし、キーファーは益々熱くなる。とにかく神父に手出しはさせないと言ってロッキーは部屋を出たふりをした。フレイザーがそれを確認して、ロッキーを殺し、神父を捕らえ、書類を手に入れるという解決法を吹き込んだ。それを聞いてロッキーは出てきた。思わず拳銃を手にするキーファー。しかし、ロッキーの銃弾のほうが早かった。キーファーは崩れ落ち、死んだ。
そして、フレイザーもロッキーの手にかかって、無残に死んでいった。ついに2人を手にかけたロッキー。後は逃げるだけだった。
警官との銃撃戦にもつれ込んだ。催涙弾を放たれ、いぶり出す気だ。しかしロッキーは最後まで抵抗をやめない。そこにジェリー神父とローリーが現れた。神父はロッキーと話をさせて欲しいと言う。ジェリー神父は話しかけた。「出て来い」と。しかし、ロッキーはそれどころではなかった。催涙ガスに警官の発砲。そしてついに神父はロッキーの許へ行った。
ジェリー神父はロッキーに自首を勧める。君は負けたと言って。警察の声にロッキーは、出て行くと言え、警官を下がらせろと神父に言い、一緒に行くと負けを認めた。ジェリー神父に肩を抱かれ、出て行こうとするロッキー。しかし、最後に待っていたのは、神父を盾にして出て行くことだった。ロッキーは簡単には“負け”を認めないのだ。
しかしロッキーは神父を「伏せろ!」と言って突き飛ばし、逃げた。そして銃弾が足に当たり、御用となった…。彼の拳銃には弾は一発も入っていなかった。
ロッキーは「死刑」となった。“巣”の少年たちは未だにロッキーを英雄視していた。英雄らしく死ぬと。
― 死刑当日、ジェリー神父が特別許可をもらって会いに来た。彼は最後の頼みを言いに来たのだ。心を持ってくれと。最後の瞬間に泣き喚いてくれと。臆病者になれと。これは、天国で生まれる勇気だと言って。君と私とむ神だけが知る勇気だと。子供たちの期待を裏切ってくれと。ロッキーを軽蔑させたいと言うのだ。― そして“時間”が来た…。
電気椅子に向かうロッキー
― この映画を観て、混乱してしまいました…。う~ん…当時の映画における規制もあるのでしょうが、この映画はねぇ…。とにかく混乱です。
「神父」というものは、なんて罪深い人種なんでしょう…。子供たちの為だと言っては、ロッキーに願うだけで、与えない。子供たちが自分の手に負えないからといって、ロッキーに頼る。“裏切り者になれ”と。“臆病者になれ”と。
ロッキーがジェリー神父にした行為は、“子供たちの為”というより、その後の神父のためですよ、これは。彼が15年も神父に会うのを避けていたのは、彼と知り合いだということで、悪い噂が立ってはいけないという思いがあったのでは…とも思いました。それなのに…ああ、それなのに…。ロッキーを愛してはいるけど、彼の事を何も理解出来なかった男でしたね。この神父は。
子供の頃、ロッキーだけが捕まって、自分は負い目があったので自首しようか…共犯がいると刑も軽くなるし…とロッキーに相談したところ、やめろ。お前のほうが早く走っただけのことだと、ジェリーをかばうやさしさを何故分からなかったのか。子供たちを救おうと思ったなら、何故ロッキーも救おうとしなかったのか?彼なりの無情な“救い”はしましたけどね。彼が「偽善者」に見えてしょうがなかった。
そして、警察との銃撃戦で、彼がロッキーの許へ行く。君が殺されるのを見ていられないと言いながら。しかし、最後の場面ではちゃっかり居るんですよ。一粒の涙なんか流しちゃったりして。彼の方が、実は“英雄”きどりなんですよ。
新聞も、フレイザー誘拐事件で随分世間に“悪の廃絶”を訴えたような感じを与えましたが、これも怪しい。新聞社というのは一度売れたら、同じような記事がどんどん出てくる。しまいには、イエロー・ジャーナリズムのように、世間を炊きつける。これは神父の思いとは関係なしに、ロッキーの死刑まで、“売らんがな”の記事になっていってる。少年たちの読む新聞はまさにそうなってますね。
― 悪役ボギー第2弾。頭の切れる悪徳弁護士の役です。ロッキーと2人で強奪した10万ドルは、現金ではなく、証券で貯め込んでいた。今や10万ドル以上です。しかし、その金は渡したくない。そして殺そうとする。失敗してロッキーが現れると、とたんに弱気になる。危機が訪れると、額に汗をかきタバコを猛烈にふかし、落ち着かなくなる。しかし、キーファーにロッキーと神父殺害を持ちかけて、バレたら町がひっくり返るという書類を取り戻そうとする冷静さも持ち合わせている。段々貫禄が出てきた感じがしましたね。ブレイク寸前という感じです。
キーファー役の、ジョージ・バンクロフトは、そろそろキャリアの終わり頃でしょうか。演技に切れがなくなっていますね。同じタイプの優秀な俳優ヴィクター・マクラグレンが彼にとって代わるのがこの頃ですかね。
― そして、キャグニーは、やはり素晴らしいの一言。なんと少年時代から演じているんです。神父役のパット・オブライエンは別の少年が演じてましたが。そう言われれば、彼には“少年っぽさ”がありますね。それが魅力の1つにもなっています。そして、ダンサー特有の動き。彼のダンス・スタイルはテキパキとしたコマのようなダンス。その動きが役に説得力を持たせています。彼の喋り方もダンスと同じですね。それが少年たちの崇拝のもとになる。もたもたしていた動きや喋りだったら、誰もついてこないでしょう。彼のパキッとした“存在”が光りました。
「神父」が“偽善者”だということを知った映画でしたね…。
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