映画 1940年代 アメリカ

2009年6月 6日

哀愁の湖

1 1945年<アメリカ>

監督

ジョン・M・スタール

出演

ジーン・ティアニー

コーネル・ワイルド

ジーン・クレイン

ヴィンセント・プライス

ダリル・ヒックマン

ストーリー

若い流行作家リチャード・ハーランは友人の弁護士のグレンからニューメキシコの別荘に招待される。そこへ向かう列車の中で自分の著書を読んでいた美しい女性を見染めるが、彼女は偶然同じくグレンから招待されていた。列車を降りて、その女性エレンと妹のルース、2人の母親ベレント夫人に紹介される。エレンは地方検事のクィントンと婚約していたが、リチャードと恋に落ち、結婚した。リチャードは足の悪い弟ダニーを溺愛していたが、結婚後エレンとダニーを連れて自分の別荘「月の裏」へ生活の場を移す。しばらくは愛情溢れた日々が続いていたが、そこへルースとベレント夫人がやって来た。その頃からエレンは異常な心理状態となり、夫の愛を独占しようと、2人に冷たく当たり始める。ある日、ダニーとポートに乗って湖に出たエレンは、ダニーが湖に飛び込んで泳いでいるうち溺れたのを見殺しにするのだった…。

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列車での出会い。リチャード(コーネル・ワイルド)と、エレン(ジーン・ティアニー)

恐ろしきものは、女の「嫉妬深さ」である。ここまで完膚なきまでに嫉妬深いと、かえって潔いと思ってしまうのは、私も“女”だからであろうか。

とにかく嫉妬深い。リチャードの弟ダニーが療養所から別荘「月の裏」へ移れると医者から太鼓判を押されると、自分は新婚旅行も無しなのに、夫はダニーを溺愛し自分ばかりに重荷を負わせると医者に不満をぶつけ、医者の口から「月の裏」行きをやめるよう言ってくれないかと懇願する。そのくせ話の途中でリチャードが入って来ると、ダニーの「月の裏」行きを喜んでみせるその狡猾さ。

結局、「月の裏」では幸せは得られなかった。

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       溺れるダニー(ダリル・ヒックマン)

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      見殺しにするエレン(ジーン・ティアニー)

リチャードが良かれと思って呼んだエレンの母親と妹ルースには際限なく冷たく当たるし、2人が滞在を数日で切り上げて帰った後には、湖で溺れるダニーを見殺しにする。ダニーが完全に湖に沈むまで見守る姿は、夫の愛情を独り占めにしようという魂胆のすざまじさを垣間見ることができる。結局リチャードの気配に気づいて湖に飛び込むものの、ダニーは帰ってくるはずもなく…。

その後、辛い思い出の別荘をたたんで、エレンの実家に身を寄せる2人。ふさぎ込み、エレンともろくに話さなくなったリチャードを疑惑の目で見るエレン。彼の愛が冷めた?そこにルースの一言が。「子供でも出来たら…」見事エレンは妊娠する。リチャードの笑顔も戻った。しかし、母体が弱く動けない日々、段々お腹が膨らんで醜くなっていく体…。その間にリチャードとルースは親しくなっていく。疑惑、嫉妬の日々。そしてついにエレンは故意に階段から落ち、子供を死産させる…。

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エレンの嫉妬は際限を知らない。ついには自殺するのだが、周到にもかつて婚約していたクィントンに手紙をしたため、ルースがエレンを殺害したようにもっていく周到さはお見事と言うしかない。

しかし、映画を追っていくと、エレンは決して「悪女」ではないのだ。ただ、“愛”が過ぎるだけのこと。それが周囲を破滅に追いやっていくのだが、彼女が「悪」を全て被るにはちょっと可哀そうなのだ。

母親とルースは、エレンの“愛情が過ぎて相手の周囲を破滅させかねない”性を知っていながら、それを放置しているし、おまけにルースはリチャードに気があるというのを隠そうとしていない。

それに、いくら執筆を手伝ったからって、結婚して初の本の献辞が妻でなく違う女(ルース)に捧げられていたら、エレンじゃなくても怒り心頭だと思うのだ。本の舞台がメキシコで、「家中が憎しみに満ちていて嫌になった」と、ルースが来週から旅行する場所もメキシコってのはどうだろうか。そりゃあ、ルースがリチャードを誘惑したとエレンが思っても不思議ではあるまい。その嫉妬心がむき出しになり、リチャードに知れた時、エレンは彼にとって疑惑の女となるのではあるが。

エレンが“愛するが故に”リチャードに誘導されるがまま全てを告白するのと、ラストの生ぬるさが、この映画がいま一つ「傑作」たりえない要因だろう。“愛するが故に”全てをはぐらかし、隠し、騙して自殺する。これだとグッとサスペンスになり、エレンも徹底した「悪女」に昇華するのだが…。

徹底してエレンを「悪女」にしてやれなかったのが、つくづく残念である。

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2009年6月 4日

過去を逃れて

2 1947年<アメリカ>

監督 ジャック・ターナー

出演

ロバート・ミッチャム

ジェーン・グリア

カーク・ダグラス

ロンダ・フレミング

リチャード・ウェッブ

ストーリー

ニューヨークの私立探偵ジェフは、賭博場を経営するウィットに彼の情婦キャシーを連れ帰る依頼をされる。しかしジェフはアカプルコでキャシーの虜になり、2人は愛し合い、サンフランシスコへ逃げるが、キャシーは追ってきたジェフの同僚を殺して彼の前から消えてしまう。その後ジェフは名前を変え、小さな町でガソリンスタンドを経営し、献身的な恋人にも恵まれ静かな生活を送っていたが、ウィットに見つけ出され新たな仕事を依頼されるのだった。しかし、そこにはなんと何も無かったようにキャシーが昔の姿のまま立っていた…。

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アカプルコの出会い。ジェフ(ロバート・ミッチャム)と、キャシー(ジェーン・グリア)

― これぞ“夢の女”、キャシー。

どことなく幼さが残るが絶世の美女。寂しげだが誘うような瞳。完璧な肢体…。ジェフは一目で恋に落ちた。逢引きするたびに思いが募る。そんな彼女が4万ドルを着服し、ウィットを銃で撃って逃げたとは考えられなかった。

「信じて…」キャシーは憂いを含んだ瞳で訴える。

しかし、ジェフの同僚がウィットがポンと出した調査費用1万ドルの半分を主張しにサンフランシスコへ現れた時、夢は覚めた。キャシーは同僚を殺し、去った。4万ドルも着服していた。

それから随分時が流れた。ジェフはウィットに見つかってしまった。彼の傍らには昔と何も変わらないキャシーがたたずんでいた。キャシーはウィットに過去を洗いざらい話してしまっいた。ウィットに借りがあるジェフは仕事を引き受けなければならなかった。

「仕方がなかったの…」キャシーは変わらぬ瞳で訴える。

しかし、ジェフが仕事に取り掛かるとキャシーの本性が見え始めるのであった…。

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― これぞ“悪夢の女”、キャシー。

虫も殺せぬような柳腰の美女が、凄絶なまでの“悪女”の面をさらしていく。もうキャシーに“夢”を持っていないジェフをどこまでも、どこまでも追い詰める。ウィットの部下と結託し悪事を働く。邪魔者は躊躇なく殺す。「保護者」であるウィットも例外ではないのだ。

ジェーン・グリアが、“タフ”なロバート・ミッチャムに完全に勝利した“悪夢の女”を魅力的に演じて、この映画は傑作になった。キャシーを軽蔑しつつも「保護」する、馬に目のないウィット役のカーク・ダグラスも“悪の魅力”に溢れていて惚れる。

暗い結末まで目が離せない。これぞ「フィルム・ノワール」の醍醐味!!

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2008年9月17日

僕は戦争花嫁

3 1949年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ケイリー・グラント

アン・シェリダン

マリオン・マーシャル

ランディ・スチュアート

ウィリアム・ネフ

ストーリー

第二次大戦後の米軍占領下の西ドイツ。フランス軍のアンリ・ロシャール大尉がハイデベルグの米軍司令部にやって来る。彼は除隊前の最後の任務のため、以前にも組んだ米陸軍婦人部隊のキャサリン・ゲイツ中尉と再び組むことになる。彼らは道中様々なトラブルに見舞われるが、かろうじて任務を遂行する。喧嘩ばかりしていた彼らだが、司令部への帰途、突然お互いへの恋愛感情を自覚し、即座に結婚を決意するが…。

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任務遂行途中のアンリ・ロシャール大尉(ケイリー・グラント)と、キャサリン・ゲイツ中尉(アン・シェリダン)

しかし、米国軍人が外国人と結婚するとなると、軍司令官の許可が必要なのだった。アンリとキャサリンは膨大で複雑な結婚申請書をただちに提出するが、書類は一週間経っても何の音沙汰もない。アンリは苛立つばかりだ。なんとキャサリンに気があったラムジー大尉が彼女のためを思って申請書を隠したと彼女に告白した。ラムジー大尉はキャサリンに金属製のトレイで思い切り殴られて、その件は落着した。

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結婚申請書がやっと許可を下り、2人は無事結婚に漕ぎつけることになる。しかし、一日3回の強行軍だ。まずハイデベルグ市長の立ち会う民事婚、次にキャサリンが希望した米軍付属の教会で、最後はアンリが希望したフランスの教会で。

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ところがその夜、アンリと共にフランスのホテルの一室にいたキャサリンに米国への帰国命令が下る。

翌日、2人はアメリカ領事に相談へ行く。どうすればアンリはキャサリンと共に米国に入国できるのか?アンリは米国に預金がないし、観光ビザでは働けない。フランス人移民の人数枠は向こう2年埋まっている。永住ビザを取得するためには、配偶者が生計を支える証明が必要だ。アメリカ領事は、公法第271号が適用可能だという。「戦争花嫁」に関する法律だ。アメリカの海外派遣軍に属する人物の配偶者はアメリカ入国を許可される。その配偶者の性別の規定はないのだ。

早速アンリは「男性戦争花嫁」として、入国管理局に申請書を提出し、米国への入国が認められるが…。

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― この作品は、性別への屈辱と、「軍」の官僚主義への批判と挫折の物語に持っていき、なんとか体面を保っていますね。それじゃなきゃ「赤ちゃん教育」と同じ、ただの「男性受難物語」ですよ。

書類は女性用しかなく、入国の個人面談のとき「妊娠しているか?」「婦人科の病気は?」と軍曹に戸惑いながら質問され、アンリは大真面目に答えるのだ。船に乗るため、バスで移動するときにも「ロシャール夫人」となり、係官に「何かの間違いだ」と言われ、アンリは答える。「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。公法第271号が認めている。」と。係官も書類を見せられ、「何か変だが法的には問題がない」と認めてしまうしかない可笑しさ。

しかし、そこからがアンリの「男性戦争花嫁」としての悲劇が待っていた。中継地に着くと、キャサリンと一緒に泊まれると思ったのもつかの間、“規則”のため別々に泊らなくてはならなかった。仕方なく扶養家族宿舎に泊まろうとするが、女性ばかりだ。アンリは生憎「男性」で、相部屋を断られ宿泊まで拒否される始末。

「男性」であることへの屈辱と、「軍」の“規則”の鉄壁が待っていたのだ。

アンリは次に士官宿舎を訪ねるが、これも“規則”で宿泊を拒否。兵卒宿舎を訪ね、親切な兵卒の手引きでやっと寝られるかと思いきや、別の兵卒に起こされ、これも“規則”で泊められないと追い出される。しかも、米国軍人の配偶者はドイツのホテルに泊まることができないのだ。結局、女性専用宿舎で受付の女性士官の編み物を手伝って夜を過ごすことになる。(アンリは行く先々で、「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。…」を機械のように繰り返し話すが、相手にしてはもらえないのだ)

翌朝、乗船が始り、アンリもなんとか審査をパスすることができた。しかし、海軍兵士との間でいざこざが起き、アンリは乗船拒否される羽目に。苦肉の策にキャサリンが考え出したのは、アンリの「女装」。馬の尻尾の毛を切りカツラを作り従軍看護士官の制服を手に入れアンリに着せた。「女」の姿だが、どこまでも“素”で通すアンリの可笑しさ。

…しかしこの作品、製作中トラブルが絶えなかったようで(監督・出演者の病気や、イギリスのスタジオでの撮影の苦労など…)、映画全体から受ける印象はいつものパリッとした「ホークス節」が影を潜めているのが残念だ。一種の「重さ」が付きまとうのである。「スター」のアップがほとんど無く、引きの画面だけがただただ続くし、コメディーなのにアンリが可哀そうになってくるのである。「可笑しさ」と書いたエピソード以外は笑えないのだ。

それに、アン・シェリダンが「汚れた顔の天使」から見たら、“大人の女”になったというより、“老けた”という印象なのが気になった(病気にかかったせいもあろうか)。彼女が今一精彩が無かったのも残念なうちの一つだ。

結局残ったものは、ケイリー・グラントの「女装」だけという映画だったな。

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2008年9月14日

ヒズ・ガール・フライデー

3 1940年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ケイリー・グラント

ロザリンド・ラッセル

ラルフ・ベラミー

ジーン・ロックハート

ヘレン・マック 

ジョン・クオレン

ストーリー

シカゴ・モーニング・ポスト紙の女性敏腕記者ヒルディ・ジョンソンは久しぶりに彼女と離婚した同紙編集長のウォルター・バーンズの許を訪れた。彼女は他人の秘密を暴く記者稼業に嫌気がさし、堅実なサラリーマン、ブルース・ボールドウィンと明日この街を離れ結婚し、普通の主婦に落ち着く旨をウォルターに告げる。しかしウォルターはまだヒルディに未練があり、彼女に一つだけ記事を書く約束をさせる。明朝、警官殺しで処刑されるアール・ウィリアムズの取材だ。早速取材に訪れ、アールと単独会見したヒルディだったが…。

※ ネタバレです

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婚約者ブルース(ラルフ・ベラミー)、元夫ウォルター(ケイリー・グラント)、ヒルディ(ロザリンド・ラッセル)

ウォルターは新卒で入って来たヒルディを腕によりをかけて花形敏腕記者にし、やがて彼女と結婚。しかし、「私生活」がないと言ってヒルディが離婚を申し出たので、物分かりの良い夫らしく離婚に応じた男だが、しかしヒルディが“再婚して家庭に入る”となると、まだまだ「女」としても「敏腕記者」としても未練があったウォルターはたちまちヒルディを引き留めにかかる。最後に一つ記事を書いてほしいと彼女に頼むのだった。今一番ホットな話題の、明朝に処刑される「警官殺し」のアール・ウィリアムズの記事だ。

ウォルターはビジネス上の取引― ブルースの保険にウォルターが加入する代わりにヒルディが記事を書く ―を持ち出し、2人の気を引きつけ、ヒルディはウォルターの思惑通り記事を書くことに…。

13早速裁判所の記者室を訪れたヒルディは記者仲間から歓迎される。

アールの情報を聞き出し、保安官助手を買収して、アールに単独インタビューを試みる。するとアールは凶悪な人物ではなく、警官殺しは故意ではなく単なる事故だったことが分かる。そんな中ブルースが窃盗の罪で警察に捕まる…。

ウォルターの仕業だと気づいたヒルディは記事を書くことをやめ、釈放されたブルースと待ち合わせした駅へ行こうとする。すると、けたたましい銃声が!!なんとアールが脱走したのだった。記者魂が爆発したヒルディは一目散に現場へ直行。スクープをものにするのだった…。

一方、選挙を控えた市長はなんとしても凶悪犯の処刑で人気を得たい。アールを逃した保安官を罵っていると、一人の男が登場する。その男は知事の処刑延期の書を持っていた。しかし、市長はそれを握りつぶしにかかり、アールを射殺すると宣言した…。

そしてブルースはまたも警察に捕まっていた。今度はウォルターが送ったセクシーな女性と“いちゃつきの罪”でだ。今度こそブルースの許へ急ごうとするヒルディの許へ、なんとアールが窓から侵入してきたのだ。拳銃を向けられて絶体絶命のヒルディ…。

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― ベン・ヘクト×チャールズ・マッカーサーの有名な戯曲「フロント・ページ」の2度目の映画化。この戯曲は今作を合わせ4回映画化されている人気作品でもある。(31年「犯罪都市」、74年「フロント・ページ」、88年「スイッチング・チャンネル」)ただし、主人公の1人ヒルディ・ジョンソンが女に変わっている。有名なラスト・シーンも大幅に変えられているのが特徴。それが結果的に成功している。

そして、マシンガントークに次ぐマシンガントークの連発である。なにせ皆の話す速さが半端じゃない。言葉の洪水である。音楽なんぞ入る暇がないほどだ。特にウォルターとヒルディの2人の会話は音楽的なくらい心地よい早さだ。ただ1人ブルースのみがゆったりしていて「仲間外れ」なんである。

結局アールをかくまい、「スクープだぞ!!」とウォルターに乗せられたヒルディは仕事の鬼と化し、迎えにきたブルースのことなど忘れ、ただひたすらタイプライターを叩くのである。ヒルディのいるべき場所。それはやはり“仕事”の現場なのだ。プルースとは当然破局。

ヒルディの記者としての優秀さは、アールとの単独インタビューの場面で十分証明される。(ここだけはゆったりと時が流れる、秀逸な場面だ)ウォルターが放したがらないはずだ。

脇を固める記者連中の節操も何もあったものじゃない態度と人間らしい感情の比較の巧さ。アールと一度会っただけで恋人にされてしまった優しき女性モリーの、ヒルディには分かる女性ならではの訴えの健気さ。市長と保安官の策略の愚かさ、みな素晴らしくピタリとストーリーにはめ込まれている。

特にヒルディとウォルター、ブルースの三角関係のバカバカしさには爆笑だ。(ブルースの母親も入れると四角関係か)。あまりにあっさりウォルターの策略にハマるブルースのおかしさ、それがウォルターの仕業だと分かり仕事を放り投げてブルースを迎えに行こうとするヒルディだが、そのたびに邪魔が入る絶妙のタイミングのおかしさ。

結局、ウォルターと元の鞘に納まって、事件解決後すぐ新婚旅行へ行こうとする2人に(最初の結婚では新婚旅行は仕事に化けた)皮肉な結果が待っているのも良い。

流石、ハワード・ホークス!!と叫びたくなるような、1時間半、一気に駆け抜ける爽快感に浸れる映画だ。

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2008年2月 6日

悪魔の往く町

11947年 <アメリカ>

監督

エドマンド・グールディング

出演

タイロン・パワー

コーリン・グレイ

ジョーン・ブロンデル

ヘレン・ウォーカー

ストーリー

スタントン・カーライルは職を転々としてきた男だが、ある時、見世物小屋に職を得る。偽読心術師のジーナとその夫でアルコール依存症のピートと組むことになった。しかし以前彼ら夫婦は暗号を使い一世を風靡したことがあると聞いたスタントンは、ジーナに2人で組むことを提案するが…。

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ジーナ(ジョーン・ブロンデル)に、組むことを提案するスタントン(タイロン・パワー)

このスタントン(以後、スタン)という男、口も上手い。客を呼ぶのにはちょうどいい男だ。

ジーナに暗号を使って2人で組むことを提案したが、夫のピートが絶対に教えないと言う。しかし、ピートはひどいアルコール依存症だった。ジーナは“暗号”を売って、彼を入院させたい考えだ。

2_2そこでスタンは再びジーナに提案する。この一座からの独立も持さない考えのスタン。ジーナは迷った。彼女は迷ったとき必ずタロットで占う。不吉なカードが出た。ピートが死ぬというものだ。ジーナはやめると言った。それを受けたスタンも表向きは、それならやめようと言う。しかし、ジーナにはお見通しだった。彼はやめる気など更々なかったのである。

ある夜、スタンは仲間から酒を買う。その時ピートがふらりと現れた。酒を道具箱に隠すスタン。ジーナに止められ誰も酒を飲ませてはくれない。禁断症状が出ていた。スタンは酒をピートに渡す。

しかしそれは、ジーナがショウで使うアルコールだった。

ピートは翌朝ジーナの占い通り亡くなってしまう。泣き崩れるジーナ。彼に渡す酒を間違えたとは決して言えないスタン…。

…そして2人は“暗号”を使いコンビを組み、次々と客を驚異の渦に巻き込む。

ある日、警察が「獣人」の扱いで苦情があったと小屋に立ち入ってきた。“暗号”を使い始めて更に口が立つようになったスタンが警官を軽くいなし、立ち去らせることに成功する。薄い衣装だと逮捕されそうだったモリーもこれには感謝した。

モリーはスタンが“暗号”を習得する間手伝っていたこともあり、2人の距離は急速に接近する。

  意識しあう、モリー(コーリン・グレイ)と、スタン

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しかし、それがモリーとコンビを組んでいた男とジーナの逆鱗にふれ、2人は結婚させられ、小屋を追い出される。失業か…と思っていたがスタンが気づく。“暗号”を使って“芸”ではなく、堂々と“読心術”をするのだ。こんな粗末な見世物小屋ではなく、一流の店で…。

12_2その客の中に、この奇術に興味を持った1人の女がいた。

ある日、その女に呼び出される。「心理カウンセラー」リリス・リッターだ。

彼女は患者の言葉をレコードに記録していた。それを知ったスタンはリリスとある取引をする…。

モリーがジーナを滞在先のホテルへ呼んでいた。仲直りするスタンとジーナ。だが、ジーナのタロット占いが始まるとスタンは動揺する。ピートと同じカードが出たのだ。仕事を変えるのは良くないと忠告されるが、怒ったスタンはジーナを追い出してしまう…。

ジーナのカードの宣告に恐れをなしたスタンは、リリスに助けを求める。一通り話し終え、平常心を取り戻したスタンは、リリスと立てた計画を実行する。「霊との交信」だ。

店で、ジーナの患者の老女を餌にし、亡くなった娘がここにいると言う。そしてトランス状態に陥る…。

町は、スタンの噂で持ちきりだった。果たして嘘か真か…。

スタンはリリスの手引きで、町の権力者グリンドルと会う。初めはグリンドルはスタンを脅した。しかし、リリスから得た情報をグリンドルに突きつける。すっかりグリンドルはスタンのことを信じてしまい、交霊所の建設費に15万ドルもはずんだ。ラジオ局までスタンのために買うと申し出た。ただし、条件つきで。35年前に亡くなった愛する女性の姿を見せてくれたら、というとこだった。金はリリスに預けた。

17 スタンはモリーを上手く丸め込んで、女性に変身させた。遠目なら分からない。

グリンドル邸の庭園で、再会は行われた。

しかし、良心の呵責に耐え切れず、モリーは正体を明かしてしまう。だまされたと悟ったグリンドルはスタンに詰め寄る。もみ合いになり、スタンはグリンドルを殴って気絶させ逃走した…。

モリーには荷造りし、駅で待つよう指示し、スタンはリリスの許へ向かった。

あと一歩だったのに…と悔しがるスタン。しかし今は逃げなければならない。リリスは預かっていた金をスタンに渡した。そして彼は駅に向かう…。

    スタンを気遣うリリス(ヘレン・ウォーカー)

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しかし、駅に向かう途中タクシーの中で金の入った封筒を開けると、1ドル札が150枚入っているだけだった…。してやられた。

リリスはスタンをも上回る金の亡者だったのだ…。

警察にも手配され、スタンには逃げ回るだけの人生が始まった…。

― 飽くなき金の欲望を描いた秀作です。

照明の当て方も、不安を煽る音楽も、「フィルム・ノワール」っぽいんですが、この作品はちよっと違う。犯罪は一切起こらない。

口八丁手八丁で生きてきた男が、あるきっかけが元でビッグチャンスに挑む。そして見事に成功。金持ちになる。しかし、その成功では飽き足らず、まだまだ金儲けを企む。それを支えるもう一人の同類の女…。

妻はもう耐えられずに、男から離れようとする。しかし、男に「今までは照れていえなかったけれど、心から愛している」と言われ、町の権力者の以前愛した女にされてしまう。しかし、良心の呵責に耐え切れず正体を明かす…。何もかも崩れ去った瞬間…。

男と同類の女は、更に上をいっていた。彼の金をピンはねしたのだ。詰め寄る男…。しかし、心理カウンセラーをしているこの女、男を精神が病んでいるとして病院送りにしようとする。おまけに警察まで呼んでいた…。

男は妻を安全な所まで逃がし、自分も逃げる人生の始まりだ。食事が喉を通らない。3日間何も食べなかった。そこで、酒を飲む…。そうして男は転落の一途をたどる…。最後は哀れなまでのうらぶれっぷりだ。

タイロン・パワーといえば、「天下の二枚目」、映画は弱きを助け悪をくじく「怪傑ゾロ」のイメージが強いが、このどうしようもない男スタンを熱演である。最後には顔の相まで違っているからたいしたもんだ。

意外と彼は胡散臭い役も上手いのではないか。「情婦」などもそうだった。「血と砂」では、敬虔なリンダ・ダーネルがいながら、色気のリタ・ヘイワースになびいた。「日はまた昇る」では、不能の男を演じている。意外と演技の幅が広いではないか。ただの二枚目俳優ではないのかも。ジョン・フォード監督の「長い灰色の線」も名演であった。

また、30年代、ワーナー・ブラザーズでギャング映画やミュージカル映画で活躍したジョーン・ブロンデルが熟女(ジーナ)となって戻ってきたのもうれしい。

タイロン・パワーの妻役のコーリン・グレイはおとなしく、あまり“華”がないのが悔やまれる。しかし、夫に耐えつつ付いていく妻…という役割では適役かも。

心理カウンセラー、リリス・リッターを演じたヘレン・ウォーカーは、冷たい感じの美女ですね。悪女にはぴったりという感じだ。

しかし、この作品は日本未公開なんだそうで。何故に?

人間の飽くなき欲望を、これでもかと描いた意欲作なのに、タイロン・パワーが熱演なのに…。アメリカでは評価が高い作品なのに…。(「フィルム・ノワール」のジャンルに入ってますが…)

このような秀作が日本の観客の前で上映されなかったとは、つくづく残念である…。(WOWOWさん、ありがとう。)

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2007年11月28日

女性No.1

No1 1942年 <アメリカ>

監督

ジョージ・スティーヴンス

出演

スペンサー・トレイシー

キャサリン・ヘプバーン

フェイ・ベインター

レジナルド・オーウェン

ストーリー

サム・クレイグとテス・ハーディングはニューヨーク・クロニクル紙の記者である。サムはスポーツ欄を、テスは国際ニュース欄を担当している花形記者で、2人の記事は大きな見出しで報道され互いに人気を競っていたが、紙上で喧嘩もしており一度も会ったことはなかった。ところがある日、ふと顔を合わせたとたんサムはテスに一目ぼれ。サムは彼女を野球に誘うことに成功したが、テスは野球のルールさえ知らなかった…。

※ ネタバレです。

Womanoftheyear1

           野球場でのデート

サム(スペンサー・トレイシー)とテス(キャサリン・ヘプバーン)

テスが無事野球のルールを覚えたところで、時間切れ。彼女はとにかく忙しい女性なのだ。しかし、9時に来てと名刺を渡され有頂天のサム。バラの花束を持って駆けつけるが、彼女の家はお客でいっぱいだった。色んな言語が飛び交い、サムは居場所がない。さっさと帰ってしまうサム。

翌日、出勤したサムの部屋にはテスからのワインの贈りのものが。そんな気遣いに満足するサム。しかし、テスの許に行こうにも彼女の秘書が邪魔をする。やっと会えたと思ったら、講演の楽屋に迎えに来てという。その後はまた講演に駆け回る彼女を空港に送りに行くが、何故か秘書も一緒だ。何故自分に送らせたのか彼女に問うと、「お別れのキスのため」と言うではないか。彼女もまたサムに惹かれていたのだ。キスをして別れる2人…。

そして初めての2人きりのデート。サムはテスのことが知りたくてうずうずしていた。彼女のことを知って、ますます愛が深まるサム。

No_4そして翌日…。テスに求婚するサム。テスは受け入れた…。

結婚式の日取りは全てテスと秘書が決めてしまっていた。明日だ。

なんとテスの父親は警察の車の先導付きでやって来る始末。しかもいられる時間が12分しかないという、あわただしい結婚式だった。テスにも電話が入り、サムはこの結婚はちょっと様子が違う…と思わせた。しかし結婚は結婚だ。2人は“夫婦”になったのだ。

結婚後のとりあえずの住家はテスの家だ。メイドがなんと呼んでいいか迷う。テスは「クレイグ夫人」になったのだ。そして、寝室と消えるテス…。

そこへ、行方不明になっていたユーゴスラビアの要人ルベック博士がやって来る。感激の再会だが、サムは全く知らない。寝室へ向かうサムを、ルベック博士のボディガードが驚かせる。押されて入った寝室の2人を見て驚愕するサム…。

新婚初日にして落ち着かない夜だ。ユーゴスラビア領事も駆けつける。この乱痴気騒ぎにサムは耐えかね、行きつけのバーの仲間を呼ぶ。彼らの登場にいぶかしげに思うテス。とうとうテスの方から、2組を追い出そうと言うのだった。

サムの仲間の計らいで、2人が新婚初日と知ると、皆出て行ってくれた。

― サムはシカゴでアメフトの取材。それが終わるとまっすぐに家へ帰った。新しい帽子をかぶって。

テスは秘書と原稿をあげている 最中だ。

          まだまだ甘い2人…

No_7

サムはテスに新しい帽子を素敵と言ってもらいたかったが、テスは一通りほめただけでまた仕事に戻った…。

メイドがいないので、自分で食事を作るサム。そこに秘書が現れ、テスの分と自分の分も頼むと言うではないか。しかし怒るより作るしかないサム…。

仕事が終わったテスはサムの許へ戻る。「そういえば自分も昨日シカゴに行っていた」と言うではないか。サムが時間を聞くと、一緒に帰れるはずだった。テスはそこまで気が回らなかったと言う。サムが「一緒に帰ろうとしないのが問題だ!!」と怒ると、テスは「昨日は恋しいと思わなかった」と言った。しかし、まだ新婚だ。小さな問題に過ぎないとつとめて思うようにしているサムがいた。

― 翌日の朝、サムは寝坊した。テスの様子が少しおかしい。「最近よく衝突するのは2人きりだから?」と聞いてくる。そして唐突に「子供はいらない?」と言うではないか。反対するわけがない。テスは「実はもう…」と言う…。妊娠だ。これほど喜ばしいことはない。しかし、サムが「男の子がいいな」と言うと、テスは「男の子よ」と答えた。そんなに早く分かるものなのか?…と思っていたら、テスがギリシャ難民の子を養子にしたと言って連れてきた。驚くサム。その子を養子にしたいきさつをただ黙って聞くしかない…。

2人きりで話しをした。サムは、この子を返そうと言う。しかし、テスは譲らない。この養子縁組は人道的な…サムは話をさえぎった。あの子が気の毒だ。兄弟がいるならまだしも、こんな冷たい家庭で実の子の代わりにされて、と。テスは、今さら返したらバカみたいだ。私は人助けがしたいの、と言う。サムは、分かっている。君は何でも一生懸命だ。人類愛の一割でも家庭に向けてくれれば…と言いかけたところで、テスの秘書から電話が入って、子供の件はひとまずお預けとなり、家にとどまることになる。

なんと、テスが今年の「女性大賞」に選ばれたのだ。喜びを爆発させるテスに、サムの顔は浮かない…。

No_4パーティ当日…テスは着飾り美しかった。しかし、子供を1人残してパーティへ行く…というテスの考えにサムは切れた。テスのエスコートより子供を選んだのだ。「女性大賞の受賞者は女じゃない」と言って。

そしてサムは子供を、「ギリシャ難民 児童施設」へと返してしまった。友達が迎えに出て喜んで走っていく子供…。その頃パーティでテスは表彰を受けていた…。

テスが家に帰ってもサムはいない。2人の仲むつまじい姿を撮りたいカメラマンたちがずっと待っている…。いくら待ってもサムが現れないので、仕事着に着替えることにしたテス。クローゼットの中のサムの衣類が無い…。サムは出て行ったのだ。仕事場に入ると、子供もいない…。何かかがおかしい…。

No_2

子供を取り戻しに、「ギリシャ難民 児童施設」に行くテス。しかし、子供はテスと一緒には行かないと言って去っていった…。去ったサムと子供…テスがしたことのない挫折だ。

テスの母親代わりのエレンがテスに来てほしいと電報を打ってきた。一緒に行ってほしいというテスに、仕事で抜けられないと言うサム。一緒に行かないとエレンが変に思うと言うが、サムは「初めはね。そのうち察する。」と冷たい。テスは結婚をどうしても完璧なものにしたい。ほころびを直したいのだ。しかし、サムは結婚はパッチワークとは違うと言うだけだ。僕らの結婚は完璧どころか結婚ですらないと吐き捨てる。

そして、ついに2人は“別れのキス”を交わし、別れた。

エレンの家へ着いたテス。エレンはテスに「どうやら結婚式がありそうよ」と言う。テスは、自分の知っている人かと尋ねる。エレンとテスの父親の結婚式だったのだ。エレンの「分かち合う人がいなきゃ成功してもつまらないわ。賞をもらってもむなしいだけ。」と言う言葉が胸に痛い。

神父の言葉、エレンの姿、サムの態度…自分の結婚の失敗は全てこの自分にあるのだと気づくテス。そしてテスはサムの許へ急ぐのだった…。

― 父親が外交官だったため、幼い頃から世界を回り、才女の誉れ高いニューヨークの新聞記者と、ごく普通の学歴の男だが、スポーツ・コラムを書かせたら右に出るものはいない同じ新聞社に勤める男。ふとしたことで紙上で喧嘩になり、主幹に呼ばれ喧嘩はやめて和解せよと顔を合わせたとたん恋に落ち、電撃的に結婚した2人。

初めは戸惑いながらも、これが彼女の「仕事」だからと我慢していたが、段々と意見の一致をことごとく見なくなり、別れる。サムの“常識”は、テスには当てはまらないのだ。テスの“常識”は、サムの“非常識”でもある。そんな形だけの妻が、今年の「女性大賞」を貰うだと?外でいい顔をして仕事漬けの、家庭を顧みたことがない女が、「女性大賞」とは!なんたる傑作な話だ。

甘い「新婚時代」は、たしか…と考えてしまうほど遠く思える。それもサムが我慢をしていた期間だけの話だ。テスはあくまでもテスなのだ。「クレイグ夫人」にはなれなかった。

これは、結構怖い話ですね。環境の違う男女は、あくまでも合うことは無いということでしょう?それに、「結婚」に縛られたくない女が結婚しても、失敗は目に見えているということでもある。あくまでも女が「自分自身」を通すなら、結婚すべきではないと。

サムは良い夫になろうと頑張った。しかし、その声がテスには届かなかったのね。しかし、エレンと父親の結婚で、自分の過ちに気づく。そして「良い妻」になろうと、サムの引越し先まで押しかけて、もう一度「愛しているわ、結婚して。」と、今度はテスの方から求婚するのだ。しかしサムの態度は厳しい。するとテスは、「今度は妻に徹する」と言う。「家事なんて簡単。バカでも出来るわ。」と、のたまうのである。

しかしテスは、「バカ以下」だった。今まで家事なぞしたこともないお嬢様。トースターに入れたパンは宙を飛び、コーヒーは泡まみれ…。

結局(というか)やっぱり、サムが大きな包容力を見せて、「テス・ハーディング・クレイグ」になればいいと言って、一件落着と収まるのだが、この話は今の“キャリア・ウーマン”にも大いに通じることだわねぇ…。「働く女」は“結婚”が果たして幸せなのかを問いかける映画でありました。

No_3

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2007年11月25日

フィラデルフィア物語

Photo 1940年 <アメリカ>

監督 ジョージ・キューカー

出演

キャサリン・ヘプバーン

ケーリー・グラント

ジェームズ・スチュアート

ルース・ハッシー

ストーリー

フィラデルフィアの大富豪ロード家のトレイシーは、同じく上流のC・K・デクスター・ヘイヴンと恋に落ち結婚したが、たちまち破綻した。それから2年…トレイシーが貧困から身を起こして出世したジョージ・キトリッジと結婚することとなる。「スパイ」というイエロー・ジャーナリズムの記者となり南米へ行っていたデクスターは、彼女が誤った結婚をするのを止めようと帰ってくる。彼はトレイシーの父親の醜聞をダシに「スパイ」の記者マコーリー・コナーと、その恋人で写真班のエリザベス・インブリーを連れて、トレイシーの結婚の記事を書くため、ロード家へ乗り込む…。

※ ネタバレです

Photo_2

デクスター(ケーリー・グラント)と再会するトレイシー(キャサリン・ヘプバーン)

2人の結婚が破綻したのは、トレイシーが人の欠点を許容することが出来ず、強く完璧な人格をデクスターに求め、それが出来ない彼が酒に溺れたためだった。しかしデクスターは酒断ちに成功し、いまだ愛しているトレイシーの結婚を止めようと南米から帰国したのだ。

ところがトレイシーは大のマスコミ嫌い。デクスターが連れてきた2人が兄の友人ではなく、「スパイ」誌の人間だと分かると、彼女の頭はフル回転。ヘンテコな上流階級を演出し、2人を完全に煙に巻くのだった。

マコーリー・コナー(ジェームズ・スチュアート)を煙に巻くトレイシー

Photo

そしてマコーリーが作家志望で過去に一冊本を出版していると聞いて、デクスターの祖父が建てた図書館に勉強に出かける好奇心旺盛な才女でもある。たまたま、トレイシーの父親のことを調べようとやって来たマコーリーと出会う。彼の本を読んで、どうやらマコーリーに興味を持ったトレイシー。

Photo_4そしてロード家のプールで2人で泳ごうかという時、ちょうどデクスターが結婚祝いを持ってやってくる。トレイシーとデクスターは最初の結婚のことで段々けんか腰になっていく。その場を逃げ出すマコーリー…。デクスターは、自分はトレイシーの伴侶ではなく、女神に仕える僕だと分かり酒に溺れたのだと言う。結婚がダメになったのは彼女のせいだというのだ。

トレイシーも負けてはいない。再婚相手のジョージは貧しいが野心があるし、なによりも“愛している”。こんな事は初めてだとトレイシーは言うが、デクスターはひるまない。そして彼の最後の一撃だ。君には致命的な欠陥がある。弱さへの偏見、忍耐力のないところだと。最高の女になりたければ人間の弱さを学べ。失敗は君の内なる神性が許さない、女神でいたいからだ…と言って去っていった。

残されたトレイシーは、ちょうどやって来たジョージに、「結婚したら世の中の役に立つ人になりたい」と言うが、彼はそんなことはしなくていいと言う。君は女神だ。僕は君を崇拝していると…。

トレイシーは、女神ではない。崇拝はいらない。ただ愛されたいだけなのだ。ジョージは何も分かっていない。

結婚式の前夜祭に行く前、トレイシーの両親が2人仲良く談笑している。それに納得がいかないトレイシー。浮気を繰り返す父親を許せないのだ。なんと、父親にまでデクスターと同じことを言われてしまったトレイシー。何とか涙を我慢するが、みんな、どうしたの?とつぶやくしかない…。

前夜祭…トレイシーは酒を浴びるほど飲み、偽りの喜びを見せ、マコーリー・コナーはデクスターの家へ行く。プールでの一件が気になっていたのだ。そして彼もトレイシーに惹かれている1人だったのだ。デクスターと何の気なしに話すベロベロに酔ったマコーリー。しかし、そのおかげでマコーリー達はトレイシーの父親の醜聞記事を抑える為、結婚式の取材に来ているのだと気づかされた。激怒したのはマコーリー。そして、結婚式の取材を止められるかも知れないと教えたのはデクスター。2人はトレイシーのため協力する。

Photoリズとデクスターが忙しく脅迫のタイプを打っている間、トレイシーとマコーリーはロード家へ行き、2人きりでパーティを開く。今度はトレイシーがマコーリーに噛み付く。マコーリーは「俗物」だと。そして“教授”と呼び続ける。

しかし、トレイシーに参ってしまったマコーリーは、「君は素敵だ」と言う。「その瞳、その声、立ち姿や歩き方にも気高さがある。本当は君の中では炎が燃えているんだ。激しい情熱の炎が。」「生と温かさと喜びに満ちた生身の女なんだ。」そして口づけを交わす2人…。そのとき2人は一瞬恋に落ちた…。

デクスターがロード家に着いたとき、ちょうどジョージも着いた。電話をしても出ないからだという。すると、プールから上がったばかりと思われるガウン姿のトレイシーとマコーリーが現れた。デクスターは平気な顔だが、ジョージは怒り心頭だ。トレイシーを部屋へ送り届けたマコーリーはジョージに殴られそうになり、代わりにデクスターに殴られた…。

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― そして結婚式当日…トレイシーは2日酔いで式に挑むことになる。そして、昨夜のことを全て見ていた妹から“夢の話”として、耳を疑いたくなるような話を聞かされる…。そして「脅迫書」を送った「スパイ」誌の社長からは、“負け”を宣言されるが…。

― 「赤ちゃん教育」が乱暴な“秀作”だとしたら、この作品は“丁寧な名作”だろう。ストーリー運び、登場人物の書き分け…完璧に近いものがある。

2年前に離婚した夫が、イエロー・ジャーナリズムの世界に足を踏み入れ、元嫁の結婚式を彼女の父親の醜聞をダシにゆすられ、取材せざるを得なくなる…。彼はこの結婚を止めたかったので、これ幸いと記者と写真家を連れて行く。そして再会…。彼の作戦は成功するのか?

トレイシーは、気丈な才気溢れる女神と崇められる女性。しかし、他人の失敗を許せないという欠点を持っている。しかし、デクスターとマコーリーの出現で、自分自身が失敗を繰り返す。

デクスターは最初の結婚に疲れ酒を飲みすぎたが、リハビリして更生し、元妻を取り戻そうとしている。

マコーリー・コナーは、作家志望の「スパイ」誌の記者だ。しかし、あくまでも“作家”にこだわる彼は、トレイシーの結婚式の記事を嫌々書きに来たのだ。そして、トレイシーに身近に接するたび彼女に惹かれていくのだった。

しかし、トレイシー役のキャサリン・ヘプバーンとデクスター役のケーリー・グラントの火花散るプールでの“喧嘩”は壮絶だ。早口でまくし立てる2人には脱帽する。ほぼケーリー・グラントが勢いで喋るが、それが上手いのなんのって。トレイシーに見せる少しの“軽蔑”が心に痛い。言い返せないトレイシーにも同情してしまう。

ロマンティックな場面もバッチリ用意している。“階級の差”を破るつかの間の恋愛。マコーリー・コナーとトレイシーの一瞬輝く愛情だ。マコーリーはトレイシーのことを「女神」ではなく「女王」のような女性と形容する(意味はまったく変わらないのだ)。

ストーリー運びも快調の一言だ。最後まであきさせない。意外とケーリー・グラントの出番が少ないのが心残りか。

Photo_2結局、トレイシーが自ら破ろうとした“階級の差”は大きかったようだ。大人の解決を望んだジョージに対して、「さようなら」をしている。彼との結婚が破談になると、何を血迷ったかマコーリーがプロポーズするが、これも断って、結局は“上流社会の男”“トレイシーを今度こそ操縦する男”のデクスターの元に収まるのだ。

この作品では、アカデミー主演男優賞を獲得した、ジェームズ・スチュアートが何か胡散臭い抱腹絶倒な演技に釘付けだ。

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2007年10月 6日

赤い河

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監督 ハワード・ホークス

出演 ジョン・ウェイン

モンゴメリー・クリフト

ジョーン・ドルー

ウォルター・ブレナン

ジョン・アイアランド

ストーリー

南北戦争の14年前。開拓者のダンソンとグルートは2人でテキサスの緑野に大農場を作る希望に燃え、レッド・リヴァーに向かう途中、インディアンの攻撃の手から逃れた少年マシューに出会い、ダンソンは彼を一緒にテキサスに連れて行った。南北戦争も終わり、ダンソンは広大な土地と莫大な家畜を持っていたが、南部には牛肉を買う市場が無かった。今や成人したマシューが戦争から帰ると、ダンソンはミズーリへ家畜一万頭を移動させるという大胆な計画をぶち上げ、牧童たちを雇い、大移動が始まった…。

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ダンソン(ジョン・ウェイン)とマシュー(モンゴメリー・クリフト)

しかし、旅は過酷だ。牧童たちの不満もありながらも、ダンソンの“絶対的”な力でミズーリを目指すが、あるとき牧童チェリーの一言でマシューが揺れる。何もミズーリでなくても、カンザスにも鉄道が来ている。ずっと西のアビリーンにも、と。だがあくまでもダンソンはミズーリにこだわった。牧童の死亡するたびにダンソンは牧童を埋葬し聖書を読んだ。牛の暴走もあった。雨が降り続き食料も少なくなってきた。それでもミズーリを目指し旅は続いた。

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ある日、インディアンの襲撃から辛くも逃れた男がダンソンたちの前に現れた。彼の話によると、「赤い河」から北へ行けば良かったと言う。旅の途中にそれほど危険がなくカンザスまで行ける道があるという。アビリーンまで鉄道が来ていると彼も言った。仲間割れが始まる。ダンソン以外は皆アビリーンへ心が飛んだ。そしてついに弾と食糧を奪い逃亡する牧童たちが出た。ダンソンはチェリーに彼らを連れ戻すよう命令し、またミズーリへと旅を続けた。こうなればもう“執念”の旅だ。

「赤い河」を渡った翌日、チェリーが逃亡者たちを連れて戻ってきた。ダンソンが彼らを「縛り首」にすると言うと、マシュウがそれに強く抵抗した。そしてついにマシューはアビリーン行きを決めた。自分がダンソンに代わって指揮を執るのだ。グルートさえダンソンを見捨てた。ダンソンはマシューに、いつか必ず現れてお前を殺すと言い残し、一人取り残され、皆はアビリーンへと向かった。

そして、ダンソンが現れるのを恐れながら旅を続けた。

ある日、インディアンの攻撃にさらされている一団を発見する。それを救ったマシューたち。そしてマシューは一団の気の強い女テスと恋に落ちる。テスは彼に関することは何でも知りたがった。特にダンソンとのことを。マシューも素直に彼女に何でも話した。

              マシューとテス(ジョーン・ドルー)

3しかし、再びアビリーンへ向け旅立った時にはテスは置いていかれた。

そして一週間後、人手を集めてマシューを追ってきたダンソンがテスの一団に行き当たる。テスはダンソンと徹底的に話し合った。2人は何もかも洗いざらい思いをぶちまけた。テスはダンソンと一緒にマシューを追うことを許された。

マシューたちはその後二週間も何もないところを行った。アビリーンなんてあるのかと疑問に思えた瞬間、鉄道が、汽車が走っていた。そしてついにアビリーンへ着いた…。

- 一人の男の怨りつかれたような“執念”の物語。

14年前拾ってやった少年を息子同然に育てながらも裏切られ、殺そうとする男をジョン・ウェインが迫力たっぷり、かつ繊細に演じている。彼の実年齢よりも上の(たぶん)初老の無骨な男をよく演じきった感がひしひしと伝わってきた。この作品の彼の演技は素晴らしいの一言だ。特にクライマックスのマシュー(モンゴメリー・クリフト)との対決のシーンは抜群に良い。牛をかき分けて進んでくる彼の姿は迫力に満ちているとともに、優雅でさえあるのだ。ジョン・ウェインがこんなに優雅な男だったとは!

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そして特に印象に残ったのは、テスと語り合ったとき残していった女を亡くして悔やむシーンだ。テキサスを開拓しようと決意したとき、女が「一緒に行く。仕事を手伝う。どんな苦労でも耐えられるから連れて行って」とすがってもダンソンは「呼び寄せる」の一言で彼女を置いていく。そして数時間後にインディアンによって彼女を失うのだ。テスもマシューに置いて行かれた女、「別れるのがつらかった」と言ったとき、ダンソンは「ナイフに刺されたように…」とつぶやく。ジョン・ウェインの心が引き裂かれたような表情、これが女心に染み入るのだ。彼の繊細な演技の勝利だ。

牛の大移動の壮大さ、それを彩る自然の雄大さ。開拓時代の強い女。復讐に燃える一人の男。本物の男たちの物語。西部劇の醍醐味がこの映画には全てといっていいほど詰まっているのではないだろうか。物語の展開に不安を覚え、すっかり虜になっていた。楽しいひと時を過ごした。満足した。

そしてモンゴメリー・クリフトは、トム・クルーズに瓜二つなのであった。ちょっとした発見…。

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2007年9月30日

絶海の嵐

Photo 1942年 <アメリカ>

監督

セシル・B・デミル

出演

ジョン・ウェイン

レイ・ミランド

ポーレット・ゴダード

レイモンド・マッセイ

ストーリー

1840年、弁護士のキング・カトラーは、弟のダンとフロリダのキー・ウエストを中心に、貨物船を難破させ積荷の引き揚げを請け負って、暴利をむさぼるという悪事を働いていた。ある日、ジャック・スチュアート船長の貨物船「ジュビリー号」がカトラー兄弟のため難破し、ジャックは負傷し、カトラー家とは違い純粋に難破船の積荷の引き揚げを父の死後引き継いでいる男勝りのクレボーン家の娘ロキシーに助けられ、それが縁で二人は恋に落ちるが…。

※ ネタバレです

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男勝りのロキシー(ポーレット・ゴダード)とスチュアート船長(ジョン・ウェイン)

積荷を失ったスチュアートは、一ヶ月の航海の後、チャールストンへ行くことになった。偶然にもロキシーもチャールストンの叔母の許に預けられることになっていたのだ。スチュアートはロキシーに夢を打ち明ける。将来の夢の船、蒸気船「南十時星号」の指揮、デヴロー海運の後継者、そしてロキシーとの未来。2人はチャールストンで落ち合うことを確かめ合い、別れた。

― チャールストン。ロキシーと妹ドルシラは社交界へと入る。ロキシーはデヴロー提督に会い、スチュアートを売り込むことばかり考えていた。そこで、トリヴァー弁護士を紹介される。スチュアートが別れる前に、“ライヴァル”と言っていた男だ。ロキシーは彼を無視し、提督の娘に紹介してくれるよう頼むが、デヴロー提督は病気で療養中の身で、デヴロー海運の代理をトリヴァーがやっていた。そこで、ロキシーが思いつく。トリヴァーに近づけばいいのだと。

そして連日のデートが始まる。ロキシーは「南十字星号」のことしか頭になかったが、トリヴァーはロキシーの魅力の虜になってしまい、しまいには自分たちのハネムーンのことを言い出す始末だ。しかし、そこにスチュアートがチャールストンに着いたとの知らせが入り、トリヴァーはデヴロー海運へと急ぐ。

       スチュアートとトリヴァー(レイ・ミランド)

4

トリヴァーがデヴロー海運に着いたときには、スチュアートが「ジュビリー号」の難破の件で釈明を迫られていた。サボターシュ行為だというスチュアートだが、提督は納得しない。別の部屋で処分を待つよう言い渡し、トリヴァーたちと会議に入る。海運事故が多いのはやはり、カトラー一味のせいだということで、その証拠を掴むためトリヴァーとスチュアートがキー・ウエストで「南十字星号」に乗り込み、その尻尾を掴むというトリヴァーの案を採用する。それまではスチュアートは一航海士として他の船に乗り込むことになった。

社交界のパーティでついにロキシーとスチュアートは再会する。しかしスチュアートが次にのる船がボロ船で一航海士なのを知ってロキシーは激怒する。トリヴァーが2人の仲を裂こうとしていると思ったのだ。しかし、社交界の中ではトリヴァーとロキシーが婚約したことになっていた…。必死でその噂を打ち消すロキシー。「私は男の中の男と結婚するのだと。」と言いスチュアートにすがりつき、彼が航海する船長に式を挙げてもらおうとしたとき、プライドをズタズタにされたトリヴァーに邪魔され、式は流れ、ロキシーは海に放り出され、船はスチュアートだけを乗せて出航した…。

トリヴァーは「南十字星号」に乗る為、ロキシーはスチュアートに会うため、キー・ウエストに帰ってきた。早速トリヴァーはカトラー一味の洗礼を浴びる。ロキシーの機転がなければ、間一髪のところで命を無くすところだった。そしてカトラーは不穏な動きを見せ始める…。

                  これが巨大イカとの格闘だ!

3 ― う~ん…これは、「ジョン・ウェイン」の映画とは言いがたいなぁ…。レイ・ミランド・ポーレット・ゴダードと肩を並べてキャスティングされてますが、2人よりも扱いが下ですね。何よりも、ジョン・ウェインが“愛”に嫉妬して、正義の人じゃなくなるんですよ。そりゃまずい展開ですねぇ…。規模の小さい男の役…どう考えても似合いません。最後は巨大イカに襲われて死んじゃうし…。おいおい…ってな感じです。(その巨大イカもチャッチイのよ)「駅馬車」から3年、“男”を次々へと演じ、着々と大スターへの道を歩んでいるのに、この映画は“異色”ですね。

そして、話はエピソードのてんこ盛りで壮大なんだが、なんだか監督のC・B・デミルだけが張り切って、「海洋の“風と共に去りぬ”」を作りたいと切望したような感じなんですね。だから、「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ役の最終選考まで残ったポーレット・ゴダードが、スカーレットさながらテクニカラーにその姿が映える。そして他の出演者が霞む…という悪循環を作り出しています。

C・B・デミルの壮大な映画が好き…という人にはお勧めですが、ジョン・ウェイン・ファンにはどうでしょう?DVDに付いていたパンフレットによれば、公開当時はジョン・ウェインをメインにはしていなかったようですね。1950年にリバイバル公開されたとき、ジョン・ウェインをメインに持ってきて、再び興行的に大成功を収めた。と、あります。1950年には堂々たる“主演”。リバイバルでは、巨大イカとの格闘は売りにされなかったのね…。

ちなみにこの作品は、1942年度のアカデミー賞特殊効果賞を獲得しています。

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2007年8月12日

白熱

1 1949年 <アメリカ>

監督

 ラオール・ウォルシュ

出演

 ジェームズ・キャグニー

 ヴァージニア・メイヨ

 エドモンド・オブライエン

 マーガレット・

                ウィチャリー

ストーリー

凶悪殺人ギャング団の首領コーディ・ジャレットは、一味と共に財務省の郵便列者を襲い、現金30万ドルを強奪した後、母親と妻ヴェルナの待つ山の隠れ家に逃げ、警察が突き止めたと見るや、瀕死の部下を残して逃亡した。Tメンはこの事件をジャレット一味の仕業と推定し、ロスのホテルに潜む一味を発見したが、逃げられてしまう…。そしてコーディは捜査を免れるため、イリノイのホテルの強盗として自首し、2年の刑に服すが…。

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山荘での妻ヴェルナ(ヴァージニア・メイヨ)と

                 コーディ(ジェームズ・キャグニー)

コーディは至極頭の切れる男だが、行き過ぎたマザコンと、父親の血筋の訳の分からない“頭痛”に悩まされてもいた。母親には、部下に弱みを見せるな、“最高”になれと言われている。そのように努力もしてきた男だ。コーディの妻は「金」と見ると使うものと思っている。もちろん自分にたっぷりと。そして組織のNo.2の男ビッグ・エドと出来ていた。

12山荘に“足”のつかない部下を置いてきたのは間違いだった。出発するとき「殺し」を命令したはすが、嘘の銃弾に騙された。そして差し入れされたタバコから、一味に足がつく。

そこで考えたのが、コーディがイリノイ州の給料泥棒と一緒に“仕事”をしていたと自首するのだった。かくしてコーディは2年服役することになる…。しかしTメンの執念も相当なものだ。コーディに、潜入捜査員をつけることにした。2人は裁判所で肩をぶつけ合う。それが初めての出会いだった。

刑務所の休憩時間。ジャレット一味の話に華が咲く。コーディが口読みの出来る仲間に探りを入れる。ビッグ・エドが万事取り仕切っているということだ。思わずカッとなるコーディは、喧嘩を売りに行こうとするが、潜入捜査員パードに止められる。

14 しかし、パードにとって“やばい”瞬間が待っていた。新入者は注射を受けることになっているのだが、彼が挙げた男が腕にアルコールを塗る係りではないか。相手には迷惑極まりないが、とっさに他の受刑者と格闘を繰り広げてみせ、独房送りになる。それに独房から戻ってきて、刑務所から送られてきた記録係の写真を全く無視している。コーディたちに促されて、写真の女性がそうだと分かる始末。勝手にブロンドからブルネットに染めて…とぼやき、事なきを得たが、危ない橋を渡った。

今度は“ジャレット一味”ならぬ“ビッグ・エド一味”が仕事をしたらしいと連絡が入る。

動かぬ証拠…。この仕事の分け前はコーディにも分けると、一味が賛成はしたが、ビッグ・エドは、コーディを殺そうとしていた。そして、ヴェルナと熱い抱擁を交わす…。それを全てコーディの母親が見ていたのだ。

刑務所の作業所…ビッグ・エドの息のかかった囚人が、作業をしているコーディの上に重い滑車を滑らせていく…。そして、コーディめがけて落とした。しかし、それをパードが救った。そして、コーディの許へ母親が面会へ来た。

17母親は話し始めた。度胸はないと思っていたのに、ビッグ・エドとヴェルナが一緒に逃げたこと。ビッグ・エドには用心したほうがよいこと。彼は、コーディが出所したら命が危ないのは分かっている。ボスの座を乗っ取らないと安心できないことも。

ここから出たら“最高”になるんだよと、いつもの言葉。しかし、母親が自らビッグ・ボスを殺すと言った衝撃…。コーディが叫んでも母親は振り返らずに面会室を出て行った…。

そして仕事に戻ると、母親の声が木霊し、頭痛が彼を襲う。パーデイのやさしい励ましに、潜入捜査員とは知らず彼の事を信頼していくコーディ。

夜になるとコーディーはパードに脱獄の話を持ちかけてきた。

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パードはその話に上手く乗り、自分は電気工学に強い。だから発電機に細工して脱獄すればいいとそそのかす。そして2人は手を組む。後日面会に来た、パードの“妻”に、発信機付きの逃走車を手配させた。

  母親の死に動揺するコーディ

20しかし、思わぬことでこの脱走劇は中止となる。コーディの母親が死んだのだ。コーディは食卓をはいずり、転げ落ち、看守を次から次へと殴り倒し、「俺はここから出て行くんだ!」と叫びながら、ようやく捕まり独房へと運ばれていった。

拘束服で、ベッドに寝かされたコーディ。仲間が食事を運んでくる。食欲がないと言って、スープも飲まないが、次に来るときには“銃”を持ってこいと言う。

警察の医師の判断は、コーディは極めて凶暴とのこと。今夜、精神科医が来て病院へ送られることになっていた。…精神科医との面会中に仲間が食事を運んできた。寝たままじゃ嫌だというコーディに、精神科医は拘束服を解いてもいいと言う。解いている途中で腕に銃を忍び込ませ、コーディは自由になった。そして医師に電話をさせ、仲間を呼び出し、精神科医を人質に、あっという間に刑務所から脱出した。“仲間”のパードにとってこれは予想外の出来事だった。車には“発信機”がついていない…。しかし、警察にとってはツイていた。パーディの役目は「密着潜入」だったのだ。

老夫婦の家を襲い、新しい服を着て、彼らはコーディの家へと向かう。

一方、共謀してコーディの母親を殺したビッグ・エドとヴェルナは、コーディの脱獄に戦々恐々だ。ビッグ・エドは強がっているが、ヴェルナはすぐ逃げ出したいという思いに駆られていた。ビッグ・エドが眠るために部屋へ行くとヴェルナは家から逃げ出し、車庫へ向かった。そして…コーディが彼女の口を塞ぎ、「戻った」と言った。そしてヴェルナの手引きで家へ入り、あっさりとビッグ・エドを殺した。

そして、昔からの手下と脱獄した仲間で次の“仕事”へ取り掛かる。科学工場の給料日の金庫を狙うことにコーディは決めた。外出禁止で警察にも連絡が取れず焦りだしたパード…。しかしコーディは彼のことを信用しきっていた。パードが目をつけたのが、ヴェルナの壊れたラジオだった。試しに直させてくれと頼み、了解を得る。それを発信機に作り直し、“仕事”の車に取り付けた。途中でスタンドに寄り、鏡に何かを書くパード。そしてまた出発…。

                “仕事”に使うガス・トラック

22スタンドの店主が鏡の書き込みに気づき、警察はコーディたちの車を追いかける。ガス・トラックと警察の逆探知の追いかけっこが始まる。しかし、コーディの方が早かった。化学工場に着くや、金庫をバーナーで焼きあけようとしている。気が気でならないパード。だが、やがて警察も到着。そしてパードの身元も警察の人間だと割れてしまう。弟のように可愛がった男が“警察の人間”だと…?段々自制心を無くして行くコーディ…。

― キャグニー、一世一代の名演!!素晴らしいの一言です。マザコンで精神異常の気がある犯罪者。この人物設定が成功の鍵を握っていましたね。いつも母親に「最高におなり」と言われて育ち、それに報いようとする。“妻”はあくまでも性的欲望を満たす道具。そして“男の世界”にどっぷりつかったボスでもある。

そして、潜入捜査員のパードのコーディに対する驚きと、自分のあずかり知れぬ所で“仲間”になってしまった焦りと、思うように警察に連絡を取れない焦り。

ヴェルナの、何が何でも生き延びようとする“女”のたくましさ…。ビッグ・エドの反目…。

これらの要素が幾つも集まって、ストーリーを段々と盛り上げていく。ラオール・ウォルシュ監督は、ギャング映画の巨匠ですね。この映画は1949年の作品なので、遅れてきたギャング映画ですが、素晴らしい出来ですよ。

映画の最後「やったぜ、ママ、最高だ!!」は、映画史に残る台詞とラストシーンですね。

う~ん…素晴らしい映画だった。

…色々と忙しく時を過ごしていたら、巨匠監督が2人お亡くなりになってたんですね。イングマル・ベルイマン監督と、ミケランジェロ・アントニオーニ監督共にご冥福をお祈りいたします。

― 傑作ギャング映画特集、これにて終了。次にご期待を…。

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