1941年 <アメリカ>
監督
ラオール・ウォルシュ
出演
ハンフリー・ボガート
アイダ・ルピノ
アーサー・ケネディ
ジョーン・レスリー
ストーリー
インディアナの農家の息子から、凶悪な銀行強盗犯となったロイ・アールは、8年ぶりに特赦で出所し、仲間のビッグ・マックがお膳立てしているロスの高級リゾート・ホテルの強盗の片棒を担ごうとしていた。若い手下のベイブとレッドの待つキャンプ場へ行く道中のガソリンスタンドで出会ったグッドヒュー老夫婦の足の悪い孫娘ヴェルマに愛情を抱くが、先を急いだ。キャンプ場へ着くと、ベイブが連れて来た女マリーが邪魔だった。そして、強盗の手引きをするホテルのフロント係、メンドーサの気の小ささも気になるロイドだが…。
ロスへ向かうロイ・アール (ボギー)
晴れてシャバに出た彼がすぐに向かったのは、昔の仲間ビッグ・マックのところだった。しかし、マックはロスにいた。元警官のジャックが全てを手引きして、ロイは指定された場所、ロサンゼルスの金持ちが集まる行楽地へと出発した。途中で自分の故郷の土地に寄るが、面が割れるくらいの“有名人”ぶりだ。
ネバダ州境付近で、ロイの車は一台のオンボロ車を追い越す。ガソリンの補給にスタンドへ着いたロイの車。思わず彼は背後に広がる山脈に見とれた。シェラ・ネバダ山脈だ。その後に彼が追越した車がやって来た。グッドヒュー老夫婦と孫娘のヴェルマの3人だ。そのときは挨拶程度で終わり、ロイは急ぎロスへ出発した。
目的地へ着き、早速ビッグ・マックの手下2人- レッドとベイブに合うロイ。しかし、そこには女がいた。ベイブが連れて来た女だ。彼はこれが気に入らない。
金をやって送り返せと言うが、彼女は何かと役に立つという。そして、強盗団の一味、ホテルのフロント係りメンドーサによれば、客は満杯、金庫には宝石や金が唸っているということだ。
レッドはロイと“仕事”が出来るので喜んでいる。ロイは彼の少年時代からのヒーローだったのだ。しかし、ロイはそっけない。
マリーをめぐって対立する二人
レッドがロイの言うとおり、マリーをロスへ送り返せと言うが、ベイブはそんな事は出来ないと答える。しかし、今は「仲間割れ」しているときではない。一番帰りたくなかったのがマリーだ。彼女が直接ロイに会いに行った。
ロイの許へ行ったマリー。彼女の切り札は、自身も“仕事”のことを知っていること。それにメンドーサは口が軽いということだ。それを知ったロイは仕方なくマリーを置くことにした。
マリー (アイダ・ルピノ)
メンドーサがロイに紹介された。ホテルの見取り図をもらい、逃げ道にシェラ・ネバダ山脈を超えるという案が出る。誰も山越えでロスへ行くとは思わないと言うのだ。ロイも思わなかった。
そして、ロイはホテルのフロントへさりげなく行き、メンドーサににらみを効かす。彼はそれだけで汗だくだ。小心者の“匂い”がする。ロイはメンドーサに良い印象を感じなかった。
バンガローへ帰る途中、人だかりが出来ていた。車の事故だ。その当事者は、グッドヒュー老夫婦と孫娘ヴェルマだった。どうやら足の悪い内反足の娘が運転していたらしい。しかしロイの押しの一手で100ドルを巻き上げた。愛らしいヴェルマにほのかに愛情を募らせるロイ。
その足で、ビッグ・マックの許へ行くロイ。久しぶりの再開に2人とも喜びを隠せない。しかし、マックは病気がちだ。早速“仕事”の話に入る。マックは、「手に入れたらお前が運ぶんだ。まっすぐ、ここに。無理なら電話しろ」と。失望させるなとマックが言うが、ロイは俺が失望させたか?と返す。そこに昔なじみのドクターがやってくる。マックに薬を処方して、ロイと2人になった。マックはとても悪いという。全ての機能が低下している。ロイはふと聞いた。内反足は治るのか?と。ロイは真剣だ。手術すれば、金がかかるが治るという。
ドクターが帰って、マックがロイに封筒を渡した。自分になにかあったら読め。どうするか書いてあると。
翌朝、ドクターを連れて、グッドヒュー家を訪れたロイ。早速診察に当たる。グッドヒューの爺さんが、手術代は望めぬこと、彼女には恋人がいることをロイに打ち明けるが、ロイは、そんなことはかまわないと言う。そして、ヴェルマが飛び出してきた。手術で直ると。喜びに溢れる家族。そのなかロイは1人出て行った。
喜ぶ家族(中央、ジョーン・レスリー)
ロイがバンガローへ帰ると、人の気配がした。マリーだった。レッドとベイブのいざこざに巻き込まれ、頬に傷を負っていた。
邪魔な女と、そんな若手で“仕事”が上手くできるのか不安になるロイ。彼は決心し、マリーをロスへ送り返すことにした。
マリーは今夜は、ロイの部屋のキッチンで寝泊りすることになった。
翌朝、ロイの唸り声とも言える寝言で目が覚めたマリー。ロイは近くのバス停留所まで送ると言うが、マリーは話し出した。ベイブと逃げてきたけど、私は男運がないみたい。でも今は違う。あなたに会ったから、帰らない。付いて行くと言う。勇気のある告白だったが、ロイは何も言わない。そしてマリーは支度をする…。
しかし涙があふれ出て、支度どころではない。ロイに拒絶されたと思ったマリーの悲しみはいくばくか。マリーはロイにしがみつき、お願いだからロスには送り返さないでと言うが、ロイはマリーに向かって言う。自分には計画がある、君抜きの。今さら変えることは出来ない-と言うのだった。それで良いんなら…。マリーはこの条件を喜んで飲んだ。
グッドヒュー家にロイは律儀に通っていた。ヴェルマの手術が終わったのだ。彼女に会ったロイ。近々大きい“仕事”があるが、それが終わったら…ヴェルマへのプロポーズだ。「君と結婚したい」と。しかし、ヴェルマは恋人のことを引き合いに出し、拒絶した。うなだれるロイ…。
バンガローにいると、電報が届いた。メンドーサからだ。“仕事”は今夜決行だ。
レッドとベイブに指示を出すロイ
金庫に集中しろ、人間は俺がさばく。それが俺の仕事だ- と言って、ロイを先頭にレッドとベイブはバンガローを後にした。
その頃、メンドーサは金庫の鍵を開けて彼らを待っていた。ホテルに着いたレッドとベイブは何の苦労もなく、金庫に入り込んだ。ロイは目を光らせて人の出入りを見張っている。車の中で待っていたマリーは、客がホテルに入るとクラクションを鳴らし、ロイに伝える。人質になっていく客。そこに警備員が現れ、ロイは拳銃を出して威嚇した。すると人質の女が悲鳴を上げた。警備員はとっさに拳銃を抜くが、ロイの拳銃の腕のほうが確かだった。急いで立ち去る強盗団。メンドーサまでついて来てしまった。直ちに警察に連絡され、焦りながらも冷静に、後ろに警察の車がやってこないか確かめながら車を走らすロイ。しかし、前の3人は焦りだけしかなかった。行くべき道を違え、車の運転を誤り、車は大破し炎に包まれた…。ロイはあくまでも冷静だった。マリーが動揺する中、所詮は小物だ、と言ってのける。この仕事は奴らには荷が重すぎたと。
翌朝、マリーは男達のことで眠れなかったようだが、ロイはすっきりした面持ちだった。3人は死んだ。そして警察が嗅ぎつける前に宝石を渡し、金を手に入れ、全て解決だ。マリーにも分け前があるという。別れる前に渡すと。ロイは東部に行くという。マリーが自分も付いて行くと言うと、自分と一緒だと苦労するばかりだといってはぐらかす。何があろうとあなたについていく。決心は変えないとマリーは言うのだ。
ビッグ・マックの所へ宝石を持っていったロイ。しかし、出たのは以前ロスへ行く前に仲介をした元警官のジャックだった。新聞の記事を見せられ、メンドーサが生きていることを知ったロイ。…そしてマックはこと切れていた…。この時のためにロイに託された封筒を開け、電話をかけた。するとジャックが拳銃でロイを脅し、宝石の入った箱をよこせと言ってきた。銃の打ち合いになった。ロイは腹に傷を負ったが、宝石は彼のものだった。ジャックは死んだ。
ドクターに傷の手当をしてもらい、彼に促されヴェルマの足の調子を見に行くロイ。しかしそこには、もう“愛らしい”ヴェルマはいなかった。享楽的に踊りを楽しむ“ただ”の女がいただけだ。
マックの指示した所へ宝石を持っていったロイ。しかし、宝石は渡しても金はすぐには渡せないという。マックの後釜が決まったのだ。とりあえず手付金の200ドルを貰い、宝石の1つを頂戴し、彼は出て行った。
そして車に戻ると、待っていたマリーの指に頂戴した指輪をはめた。愛が芽生えた瞬間…。
新聞の一面ににロイたちの“仕事”が載った。警察も焦り始めている証拠だ。ロイの腹の傷も良くはならない。そして、ついに“仕事”の犯人の身元が割れた新聞は写真つきで書きたてた。「狂犬 ロイ・アール」!
ロイの身を心配するマリー
2人はそんなことも知らず、“仕事”が全て終わったことに喜んでいた。これで無事東部へ行ける。彼はガソリンを入れに外へ出た。そこで、2人が連れていた犬の名前など知らぬ店の店員が名前を呼んで可愛がっている。不信に思うロイ。彼から新聞を取り上げ、ようやくその意味が分かった。
そこで彼女の身の安全を図って、ロイはマリーをラスベガスで待たせ、金を受け取ったら迎えに行くという方法をとることにした。マリーは怖いから一人にしないでと懇願したが、お尋ね者は問答無用で撃ち殺されるから、一緒にいては危ないと説き伏せた。そしてマリーをラスベガス行きのバスに乗せ、自分は車で出発した。しかしラジオのニュースで、警察が大捜査網も引いたと聞き焦り始めていた。そして彼は、シェラ・ネバダ山脈へと向かわざるを得なくなった…。
― ボギー、ついに「主役」へ昇格!!いや、ビリングはアイダ・ルピノのほうが一番なんですけどね…。でも、堂々とした主役です。
特赦で出所したはいいが、ろくな職業に就けるわけもなく、やはり昔の家業が待っていた。彼の“上司”とも言うべき、ビッグ・マックから“仕事”の依頼が来て、ロスへひた走るロイ・アール。その途中、ボロ車の愛らしい娘に淡い恋心を抱いたりしながら、ロスへ着けば、待っていたのは邪魔な女と頼りになるのか分からない部下3人。そんな環境で“仕事”とは…。それに、このリゾート地にいる「不幸を呼ぶ犬」パードがロイにすっかりなついてしまった。この犬が後々ストーリーに絡んでくることになるんですね。
ボロ車のグッドヒュー老夫婦の愛らしい孫娘ヴェルマに恋心を抱き、内反足まで直してやるとは、シャバに出て少し舞い上がった姿を書きたかったのか?愛情を得たくて心が乾いていたところを書きたかったのか…。足が治ったとたん、何の魅力もない女に変わり果ててしまったヴェルマと、いつまでも変わらない愛を誓うマリーとの対比も見せ処の1つでしょう。そしてロイもついにマリーの愛に応える。“愛情”に対し、なかなか人間味のある“凶悪犯”なんですね。
マシンガンのシーンも出色ですね。若者がマックの贈り物としてマシンガンを出してきて、使い方を知っているか?とロイに聞く。ロイは、そのマシンガン・ケースをトトトン…と叩き、10年前のことを思い出したと言う。ある仕事の準備中に裏切り者が出た。そいつを許せなかった仲間が、マシンガンを取り出し、裏切り者に近づいて引き金に手を触れた。それだけで銃弾が飛び出すと、したり顔でメンドーサに向かって言う。マシンガン・ケースをトトトンと叩くだけなのに、緊張が走る。
一応“仕事”には成功したが、小物たちの哀れな末路。しかし、そのなかでも一番の小心者のメンドーサが助かる皮肉。そして物語はラストへテンポ良くなだれ込む…。上手い脚本ですね。ジョン・ヒューストンと、原作のW・R・バーネットです。ヒューストンはこのあと、ボギーの決定打「マルタの鷹」を監督することになります。
「化石の森」のデューク・マンティから、ようやく長い階段を上がって「主役」を得たボギーの渾身の演技も素晴らしい。脚本と配役が整って、ワーナーは宣伝部に「ボガートは今日からスターだ」と言ったとか。
当時は、アイダ・ルピノのほうがスターだったので、彼の名前が最初に来ない(ビリング一位ではない)最後の映画でもあります。
とにかく、ボギーは「主役」でなくちゃ!!
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