映画 1940年代 アメリカ

2009年6月 6日

哀愁の湖

1 1945年<アメリカ>

監督

ジョン・M・スタール

出演

ジーン・ティアニー

コーネル・ワイルド

ジーン・クレイン

ヴィンセント・プライス

ダリル・ヒックマン

ストーリー

若い流行作家リチャード・ハーランは友人の弁護士のグレンからニューメキシコの別荘に招待される。そこへ向かう列車の中で自分の著書を読んでいた美しい女性を見染めるが、彼女は偶然同じくグレンから招待されていた。列車を降りて、その女性エレンと妹のルース、2人の母親ベレント夫人に紹介される。エレンは地方検事のクィントンと婚約していたが、リチャードと恋に落ち、結婚した。リチャードは足の悪い弟ダニーを溺愛していたが、結婚後エレンとダニーを連れて自分の別荘「月の裏」へ生活の場を移す。しばらくは愛情溢れた日々が続いていたが、そこへルースとベレント夫人がやって来た。その頃からエレンは異常な心理状態となり、夫の愛を独占しようと、2人に冷たく当たり始める。ある日、ダニーとポートに乗って湖に出たエレンは、ダニーが湖に飛び込んで泳いでいるうち溺れたのを見殺しにするのだった…。

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列車での出会い。リチャード(コーネル・ワイルド)と、エレン(ジーン・ティアニー)

恐ろしきものは、女の「嫉妬深さ」である。ここまで完膚なきまでに嫉妬深いと、かえって潔いと思ってしまうのは、私も“女”だからであろうか。

とにかく嫉妬深い。リチャードの弟ダニーが療養所から別荘「月の裏」へ移れると医者から太鼓判を押されると、自分は新婚旅行も無しなのに、夫はダニーを溺愛し自分ばかりに重荷を負わせると医者に不満をぶつけ、医者の口から「月の裏」行きをやめるよう言ってくれないかと懇願する。そのくせ話の途中でリチャードが入って来ると、ダニーの「月の裏」行きを喜んでみせるその狡猾さ。

結局、「月の裏」では幸せは得られなかった。

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       溺れるダニー(ダリル・ヒックマン)

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      見殺しにするエレン(ジーン・ティアニー)

リチャードが良かれと思って呼んだエレンの母親と妹ルースには際限なく冷たく当たるし、2人が滞在を数日で切り上げて帰った後には、湖で溺れるダニーを見殺しにする。ダニーが完全に湖に沈むまで見守る姿は、夫の愛情を独り占めにしようという魂胆のすざまじさを垣間見ることができる。結局リチャードの気配に気づいて湖に飛び込むものの、ダニーは帰ってくるはずもなく…。

その後、辛い思い出の別荘をたたんで、エレンの実家に身を寄せる2人。ふさぎ込み、エレンともろくに話さなくなったリチャードを疑惑の目で見るエレン。彼の愛が冷めた?そこにルースの一言が。「子供でも出来たら…」見事エレンは妊娠する。リチャードの笑顔も戻った。しかし、母体が弱く動けない日々、段々お腹が膨らんで醜くなっていく体…。その間にリチャードとルースは親しくなっていく。疑惑、嫉妬の日々。そしてついにエレンは故意に階段から落ち、子供を死産させる…。

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エレンの嫉妬は際限を知らない。ついには自殺するのだが、周到にもかつて婚約していたクィントンに手紙をしたため、ルースがエレンを殺害したようにもっていく周到さはお見事と言うしかない。

しかし、映画を追っていくと、エレンは決して「悪女」ではないのだ。ただ、“愛”が過ぎるだけのこと。それが周囲を破滅に追いやっていくのだが、彼女が「悪」を全て被るにはちょっと可哀そうなのだ。

母親とルースは、エレンの“愛情が過ぎて相手の周囲を破滅させかねない”性を知っていながら、それを放置しているし、おまけにルースはリチャードに気があるというのを隠そうとしていない。

それに、いくら執筆を手伝ったからって、結婚して初の本の献辞が妻でなく違う女(ルース)に捧げられていたら、エレンじゃなくても怒り心頭だと思うのだ。本の舞台がメキシコで、「家中が憎しみに満ちていて嫌になった」と、ルースが来週から旅行する場所もメキシコってのはどうだろうか。そりゃあ、ルースがリチャードを誘惑したとエレンが思っても不思議ではあるまい。その嫉妬心がむき出しになり、リチャードに知れた時、エレンは彼にとって疑惑の女となるのではあるが。

エレンが“愛するが故に”リチャードに誘導されるがまま全てを告白するのと、ラストの生ぬるさが、この映画がいま一つ「傑作」たりえない要因だろう。“愛するが故に”全てをはぐらかし、隠し、騙して自殺する。これだとグッとサスペンスになり、エレンも徹底した「悪女」に昇華するのだが…。

徹底してエレンを「悪女」にしてやれなかったのが、つくづく残念である。

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2009年6月 4日

過去を逃れて

2 1947年<アメリカ>

監督 ジャック・ターナー

出演

ロバート・ミッチャム

ジェーン・グリア

カーク・ダグラス

ロンダ・フレミング

リチャード・ウェッブ

ストーリー

ニューヨークの私立探偵ジェフは、賭博場を経営するウィットに彼の情婦キャシーを連れ帰る依頼をされる。しかしジェフはアカプルコでキャシーの虜になり、2人は愛し合い、サンフランシスコへ逃げるが、キャシーは追ってきたジェフの同僚を殺して彼の前から消えてしまう。その後ジェフは名前を変え、小さな町でガソリンスタンドを経営し、献身的な恋人にも恵まれ静かな生活を送っていたが、ウィットに見つけ出され新たな仕事を依頼されるのだった。しかし、そこにはなんと何も無かったようにキャシーが昔の姿のまま立っていた…。

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アカプルコの出会い。ジェフ(ロバート・ミッチャム)と、キャシー(ジェーン・グリア)

― これぞ“夢の女”、キャシー。

どことなく幼さが残るが絶世の美女。寂しげだが誘うような瞳。完璧な肢体…。ジェフは一目で恋に落ちた。逢引きするたびに思いが募る。そんな彼女が4万ドルを着服し、ウィットを銃で撃って逃げたとは考えられなかった。

「信じて…」キャシーは憂いを含んだ瞳で訴える。

しかし、ジェフの同僚がウィットがポンと出した調査費用1万ドルの半分を主張しにサンフランシスコへ現れた時、夢は覚めた。キャシーは同僚を殺し、去った。4万ドルも着服していた。

それから随分時が流れた。ジェフはウィットに見つかってしまった。彼の傍らには昔と何も変わらないキャシーがたたずんでいた。キャシーはウィットに過去を洗いざらい話してしまっいた。ウィットに借りがあるジェフは仕事を引き受けなければならなかった。

「仕方がなかったの…」キャシーは変わらぬ瞳で訴える。

しかし、ジェフが仕事に取り掛かるとキャシーの本性が見え始めるのであった…。

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― これぞ“悪夢の女”、キャシー。

虫も殺せぬような柳腰の美女が、凄絶なまでの“悪女”の面をさらしていく。もうキャシーに“夢”を持っていないジェフをどこまでも、どこまでも追い詰める。ウィットの部下と結託し悪事を働く。邪魔者は躊躇なく殺す。「保護者」であるウィットも例外ではないのだ。

ジェーン・グリアが、“タフ”なロバート・ミッチャムに完全に勝利した“悪夢の女”を魅力的に演じて、この映画は傑作になった。キャシーを軽蔑しつつも「保護」する、馬に目のないウィット役のカーク・ダグラスも“悪の魅力”に溢れていて惚れる。

暗い結末まで目が離せない。これぞ「フィルム・ノワール」の醍醐味!!

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2008年9月17日

僕は戦争花嫁

3 1949年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ケイリー・グラント

アン・シェリダン

マリオン・マーシャル

ランディ・スチュアート

ウィリアム・ネフ

ストーリー

第二次大戦後の米軍占領下の西ドイツ。フランス軍のアンリ・ロシャール大尉がハイデベルグの米軍司令部にやって来る。彼は除隊前の最後の任務のため、以前にも組んだ米陸軍婦人部隊のキャサリン・ゲイツ中尉と再び組むことになる。彼らは道中様々なトラブルに見舞われるが、かろうじて任務を遂行する。喧嘩ばかりしていた彼らだが、司令部への帰途、突然お互いへの恋愛感情を自覚し、即座に結婚を決意するが…。

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任務遂行途中のアンリ・ロシャール大尉(ケイリー・グラント)と、キャサリン・ゲイツ中尉(アン・シェリダン)

しかし、米国軍人が外国人と結婚するとなると、軍司令官の許可が必要なのだった。アンリとキャサリンは膨大で複雑な結婚申請書をただちに提出するが、書類は一週間経っても何の音沙汰もない。アンリは苛立つばかりだ。なんとキャサリンに気があったラムジー大尉が彼女のためを思って申請書を隠したと彼女に告白した。ラムジー大尉はキャサリンに金属製のトレイで思い切り殴られて、その件は落着した。

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結婚申請書がやっと許可を下り、2人は無事結婚に漕ぎつけることになる。しかし、一日3回の強行軍だ。まずハイデベルグ市長の立ち会う民事婚、次にキャサリンが希望した米軍付属の教会で、最後はアンリが希望したフランスの教会で。

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ところがその夜、アンリと共にフランスのホテルの一室にいたキャサリンに米国への帰国命令が下る。

翌日、2人はアメリカ領事に相談へ行く。どうすればアンリはキャサリンと共に米国に入国できるのか?アンリは米国に預金がないし、観光ビザでは働けない。フランス人移民の人数枠は向こう2年埋まっている。永住ビザを取得するためには、配偶者が生計を支える証明が必要だ。アメリカ領事は、公法第271号が適用可能だという。「戦争花嫁」に関する法律だ。アメリカの海外派遣軍に属する人物の配偶者はアメリカ入国を許可される。その配偶者の性別の規定はないのだ。

早速アンリは「男性戦争花嫁」として、入国管理局に申請書を提出し、米国への入国が認められるが…。

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― この作品は、性別への屈辱と、「軍」の官僚主義への批判と挫折の物語に持っていき、なんとか体面を保っていますね。それじゃなきゃ「赤ちゃん教育」と同じ、ただの「男性受難物語」ですよ。

書類は女性用しかなく、入国の個人面談のとき「妊娠しているか?」「婦人科の病気は?」と軍曹に戸惑いながら質問され、アンリは大真面目に答えるのだ。船に乗るため、バスで移動するときにも「ロシャール夫人」となり、係官に「何かの間違いだ」と言われ、アンリは答える。「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。公法第271号が認めている。」と。係官も書類を見せられ、「何か変だが法的には問題がない」と認めてしまうしかない可笑しさ。

しかし、そこからがアンリの「男性戦争花嫁」としての悲劇が待っていた。中継地に着くと、キャサリンと一緒に泊まれると思ったのもつかの間、“規則”のため別々に泊らなくてはならなかった。仕方なく扶養家族宿舎に泊まろうとするが、女性ばかりだ。アンリは生憎「男性」で、相部屋を断られ宿泊まで拒否される始末。

「男性」であることへの屈辱と、「軍」の“規則”の鉄壁が待っていたのだ。

アンリは次に士官宿舎を訪ねるが、これも“規則”で宿泊を拒否。兵卒宿舎を訪ね、親切な兵卒の手引きでやっと寝られるかと思いきや、別の兵卒に起こされ、これも“規則”で泊められないと追い出される。しかも、米国軍人の配偶者はドイツのホテルに泊まることができないのだ。結局、女性専用宿舎で受付の女性士官の編み物を手伝って夜を過ごすことになる。(アンリは行く先々で、「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。…」を機械のように繰り返し話すが、相手にしてはもらえないのだ)

翌朝、乗船が始り、アンリもなんとか審査をパスすることができた。しかし、海軍兵士との間でいざこざが起き、アンリは乗船拒否される羽目に。苦肉の策にキャサリンが考え出したのは、アンリの「女装」。馬の尻尾の毛を切りカツラを作り従軍看護士官の制服を手に入れアンリに着せた。「女」の姿だが、どこまでも“素”で通すアンリの可笑しさ。

…しかしこの作品、製作中トラブルが絶えなかったようで(監督・出演者の病気や、イギリスのスタジオでの撮影の苦労など…)、映画全体から受ける印象はいつものパリッとした「ホークス節」が影を潜めているのが残念だ。一種の「重さ」が付きまとうのである。「スター」のアップがほとんど無く、引きの画面だけがただただ続くし、コメディーなのにアンリが可哀そうになってくるのである。「可笑しさ」と書いたエピソード以外は笑えないのだ。

それに、アン・シェリダンが「汚れた顔の天使」から見たら、“大人の女”になったというより、“老けた”という印象なのが気になった(病気にかかったせいもあろうか)。彼女が今一精彩が無かったのも残念なうちの一つだ。

結局残ったものは、ケイリー・グラントの「女装」だけという映画だったな。

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2008年9月14日

ヒズ・ガール・フライデー

3 1940年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ケイリー・グラント

ロザリンド・ラッセル

ラルフ・ベラミー

ジーン・ロックハート

ヘレン・マック 

ジョン・クオレン

ストーリー

シカゴ・モーニング・ポスト紙の女性敏腕記者ヒルディ・ジョンソンは久しぶりに彼女と離婚した同紙編集長のウォルター・バーンズの許を訪れた。彼女は他人の秘密を暴く記者稼業に嫌気がさし、堅実なサラリーマン、ブルース・ボールドウィンと明日この街を離れ結婚し、普通の主婦に落ち着く旨をウォルターに告げる。しかしウォルターはまだヒルディに未練があり、彼女に一つだけ記事を書く約束をさせる。明朝、警官殺しで処刑されるアール・ウィリアムズの取材だ。早速取材に訪れ、アールと単独会見したヒルディだったが…。

※ ネタバレです

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婚約者ブルース(ラルフ・ベラミー)、元夫ウォルター(ケイリー・グラント)、ヒルディ(ロザリンド・ラッセル)

ウォルターは新卒で入って来たヒルディを腕によりをかけて花形敏腕記者にし、やがて彼女と結婚。しかし、「私生活」がないと言ってヒルディが離婚を申し出たので、物分かりの良い夫らしく離婚に応じた男だが、しかしヒルディが“再婚して家庭に入る”となると、まだまだ「女」としても「敏腕記者」としても未練があったウォルターはたちまちヒルディを引き留めにかかる。最後に一つ記事を書いてほしいと彼女に頼むのだった。今一番ホットな話題の、明朝に処刑される「警官殺し」のアール・ウィリアムズの記事だ。

ウォルターはビジネス上の取引― ブルースの保険にウォルターが加入する代わりにヒルディが記事を書く ―を持ち出し、2人の気を引きつけ、ヒルディはウォルターの思惑通り記事を書くことに…。

13早速裁判所の記者室を訪れたヒルディは記者仲間から歓迎される。

アールの情報を聞き出し、保安官助手を買収して、アールに単独インタビューを試みる。するとアールは凶悪な人物ではなく、警官殺しは故意ではなく単なる事故だったことが分かる。そんな中ブルースが窃盗の罪で警察に捕まる…。

ウォルターの仕業だと気づいたヒルディは記事を書くことをやめ、釈放されたブルースと待ち合わせした駅へ行こうとする。すると、けたたましい銃声が!!なんとアールが脱走したのだった。記者魂が爆発したヒルディは一目散に現場へ直行。スクープをものにするのだった…。

一方、選挙を控えた市長はなんとしても凶悪犯の処刑で人気を得たい。アールを逃した保安官を罵っていると、一人の男が登場する。その男は知事の処刑延期の書を持っていた。しかし、市長はそれを握りつぶしにかかり、アールを射殺すると宣言した…。

そしてブルースはまたも警察に捕まっていた。今度はウォルターが送ったセクシーな女性と“いちゃつきの罪”でだ。今度こそブルースの許へ急ごうとするヒルディの許へ、なんとアールが窓から侵入してきたのだ。拳銃を向けられて絶体絶命のヒルディ…。

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― ベン・ヘクト×チャールズ・マッカーサーの有名な戯曲「フロント・ページ」の2度目の映画化。この戯曲は今作を合わせ4回映画化されている人気作品でもある。(31年「犯罪都市」、74年「フロント・ページ」、88年「スイッチング・チャンネル」)ただし、主人公の1人ヒルディ・ジョンソンが女に変わっている。有名なラスト・シーンも大幅に変えられているのが特徴。それが結果的に成功している。

そして、マシンガントークに次ぐマシンガントークの連発である。なにせ皆の話す速さが半端じゃない。言葉の洪水である。音楽なんぞ入る暇がないほどだ。特にウォルターとヒルディの2人の会話は音楽的なくらい心地よい早さだ。ただ1人ブルースのみがゆったりしていて「仲間外れ」なんである。

結局アールをかくまい、「スクープだぞ!!」とウォルターに乗せられたヒルディは仕事の鬼と化し、迎えにきたブルースのことなど忘れ、ただひたすらタイプライターを叩くのである。ヒルディのいるべき場所。それはやはり“仕事”の現場なのだ。プルースとは当然破局。

ヒルディの記者としての優秀さは、アールとの単独インタビューの場面で十分証明される。(ここだけはゆったりと時が流れる、秀逸な場面だ)ウォルターが放したがらないはずだ。

脇を固める記者連中の節操も何もあったものじゃない態度と人間らしい感情の比較の巧さ。アールと一度会っただけで恋人にされてしまった優しき女性モリーの、ヒルディには分かる女性ならではの訴えの健気さ。市長と保安官の策略の愚かさ、みな素晴らしくピタリとストーリーにはめ込まれている。

特にヒルディとウォルター、ブルースの三角関係のバカバカしさには爆笑だ。(ブルースの母親も入れると四角関係か)。あまりにあっさりウォルターの策略にハマるブルースのおかしさ、それがウォルターの仕業だと分かり仕事を放り投げてブルースを迎えに行こうとするヒルディだが、そのたびに邪魔が入る絶妙のタイミングのおかしさ。

結局、ウォルターと元の鞘に納まって、事件解決後すぐ新婚旅行へ行こうとする2人に(最初の結婚では新婚旅行は仕事に化けた)皮肉な結果が待っているのも良い。

流石、ハワード・ホークス!!と叫びたくなるような、1時間半、一気に駆け抜ける爽快感に浸れる映画だ。

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2008年2月 6日

悪魔の往く町

11947年 <アメリカ>

監督

エドマンド・グールディング

出演

タイロン・パワー

コーリン・グレイ

ジョーン・ブロンデル

ヘレン・ウォーカー

ストーリー

スタントン・カーライルは職を転々としてきた男だが、ある時、見世物小屋に職を得る。偽読心術師のジーナとその夫でアルコール依存症のピートと組むことになった。しかし以前彼ら夫婦は暗号を使い一世を風靡したことがあると聞いたスタントンは、ジーナに2人で組むことを提案するが…。

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ジーナ(ジョーン・ブロンデル)に、組むことを提案するスタントン(タイロン・パワー)

このスタントン(以後、スタン)という男、口も上手い。客を呼ぶのにはちょうどいい男だ。

ジーナに暗号を使って2人で組むことを提案したが、夫のピートが絶対に教えないと言う。しかし、ピートはひどいアルコール依存症だった。ジーナは“暗号”を売って、彼を入院させたい考えだ。

2_2そこでスタンは再びジーナに提案する。この一座からの独立も持さない考えのスタン。ジーナは迷った。彼女は迷ったとき必ずタロットで占う。不吉なカードが出た。ピートが死ぬというものだ。ジーナはやめると言った。それを受けたスタンも表向きは、それならやめようと言う。しかし、ジーナにはお見通しだった。彼はやめる気など更々なかったのである。

ある夜、スタンは仲間から酒を買う。その時ピートがふらりと現れた。酒を道具箱に隠すスタン。ジーナに止められ誰も酒を飲ませてはくれない。禁断症状が出ていた。スタンは酒をピートに渡す。

しかしそれは、ジーナがショウで使うアルコールだった。

ピートは翌朝ジーナの占い通り亡くなってしまう。泣き崩れるジーナ。彼に渡す酒を間違えたとは決して言えないスタン…。

…そして2人は“暗号”を使いコンビを組み、次々と客を驚異の渦に巻き込む。

ある日、警察が「獣人」の扱いで苦情があったと小屋に立ち入ってきた。“暗号”を使い始めて更に口が立つようになったスタンが警官を軽くいなし、立ち去らせることに成功する。薄い衣装だと逮捕されそうだったモリーもこれには感謝した。

モリーはスタンが“暗号”を習得する間手伝っていたこともあり、2人の距離は急速に接近する。

  意識しあう、モリー(コーリン・グレイ)と、スタン

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しかし、それがモリーとコンビを組んでいた男とジーナの逆鱗にふれ、2人は結婚させられ、小屋を追い出される。失業か…と思っていたがスタンが気づく。“暗号”を使って“芸”ではなく、堂々と“読心術”をするのだ。こんな粗末な見世物小屋ではなく、一流の店で…。

12_2その客の中に、この奇術に興味を持った1人の女がいた。

ある日、その女に呼び出される。「心理カウンセラー」リリス・リッターだ。

彼女は患者の言葉をレコードに記録していた。それを知ったスタンはリリスとある取引をする…。

モリーがジーナを滞在先のホテルへ呼んでいた。仲直りするスタンとジーナ。だが、ジーナのタロット占いが始まるとスタンは動揺する。ピートと同じカードが出たのだ。仕事を変えるのは良くないと忠告されるが、怒ったスタンはジーナを追い出してしまう…。

ジーナのカードの宣告に恐れをなしたスタンは、リリスに助けを求める。一通り話し終え、平常心を取り戻したスタンは、リリスと立てた計画を実行する。「霊との交信」だ。

店で、ジーナの患者の老女を餌にし、亡くなった娘がここにいると言う。そしてトランス状態に陥る…。

町は、スタンの噂で持ちきりだった。果たして嘘か真か…。

スタンはリリスの手引きで、町の権力者グリンドルと会う。初めはグリンドルはスタンを脅した。しかし、リリスから得た情報をグリンドルに突きつける。すっかりグリンドルはスタンのことを信じてしまい、交霊所の建設費に15万ドルもはずんだ。ラジオ局までスタンのために買うと申し出た。ただし、条件つきで。35年前に亡くなった愛する女性の姿を見せてくれたら、というとこだった。金はリリスに預けた。

17 スタンはモリーを上手く丸め込んで、女性に変身させた。遠目なら分からない。

グリンドル邸の庭園で、再会は行われた。

しかし、良心の呵責に耐え切れず、モリーは正体を明かしてしまう。だまされたと悟ったグリンドルはスタンに詰め寄る。もみ合いになり、スタンはグリンドルを殴って気絶させ逃走した…。

モリーには荷造りし、駅で待つよう指示し、スタンはリリスの許へ向かった。

あと一歩だったのに…と悔しがるスタン。しかし今は逃げなければならない。リリスは預かっていた金をスタンに渡した。そして彼は駅に向かう…。

    スタンを気遣うリリス(ヘレン・ウォーカー)

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しかし、駅に向かう途中タクシーの中で金の入った封筒を開けると、1ドル札が150枚入っているだけだった…。してやられた。

リリスはスタンをも上回る金の亡者だったのだ…。

警察にも手配され、スタンには逃げ回るだけの人生が始まった…。

― 飽くなき金の欲望を描いた秀作です。

照明の当て方も、不安を煽る音楽も、「フィルム・ノワール」っぽいんですが、この作品はちよっと違う。犯罪は一切起こらない。

口八丁手八丁で生きてきた男が、あるきっかけが元でビッグチャンスに挑む。そして見事に成功。金持ちになる。しかし、その成功では飽き足らず、まだまだ金儲けを企む。それを支えるもう一人の同類の女…。

妻はもう耐えられずに、男から離れようとする。しかし、男に「今までは照れていえなかったけれど、心から愛している」と言われ、町の権力者の以前愛した女にされてしまう。しかし、良心の呵責に耐え切れず正体を明かす…。何もかも崩れ去った瞬間…。

男と同類の女は、更に上をいっていた。彼の金をピンはねしたのだ。詰め寄る男…。しかし、心理カウンセラーをしているこの女、男を精神が病んでいるとして病院送りにしようとする。おまけに警察まで呼んでいた…。

男は妻を安全な所まで逃がし、自分も逃げる人生の始まりだ。食事が喉を通らない。3日間何も食べなかった。そこで、酒を飲む…。そうして男は転落の一途をたどる…。最後は哀れなまでのうらぶれっぷりだ。

タイロン・パワーといえば、「天下の二枚目」、映画は弱きを助け悪をくじく「怪傑ゾロ」のイメージが強いが、このどうしようもない男スタンを熱演である。最後には顔の相まで違っているからたいしたもんだ。

意外と彼は胡散臭い役も上手いのではないか。「情婦」などもそうだった。「血と砂」では、敬虔なリンダ・ダーネルがいながら、色気のリタ・ヘイワースになびいた。「日はまた昇る」では、不能の男を演じている。意外と演技の幅が広いではないか。ただの二枚目俳優ではないのかも。ジョン・フォード監督の「長い灰色の線」も名演であった。

また、30年代、ワーナー・ブラザーズでギャング映画やミュージカル映画で活躍したジョーン・ブロンデルが熟女(ジーナ)となって戻ってきたのもうれしい。

タイロン・パワーの妻役のコーリン・グレイはおとなしく、あまり“華”がないのが悔やまれる。しかし、夫に耐えつつ付いていく妻…という役割では適役かも。

心理カウンセラー、リリス・リッターを演じたヘレン・ウォーカーは、冷たい感じの美女ですね。悪女にはぴったりという感じだ。

しかし、この作品は日本未公開なんだそうで。何故に?

人間の飽くなき欲望を、これでもかと描いた意欲作なのに、タイロン・パワーが熱演なのに…。アメリカでは評価が高い作品なのに…。(「フィルム・ノワール」のジャンルに入ってますが…)

このような秀作が日本の観客の前で上映されなかったとは、つくづく残念である…。(WOWOWさん、ありがとう。)

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2007年11月28日

女性No.1

No1 1942年 <アメリカ>

監督

ジョージ・スティーヴンス

出演

スペンサー・トレイシー

キャサリン・ヘプバーン

フェイ・ベインター

レジナルド・オーウェン

ストーリー

サム・クレイグとテス・ハーディングはニューヨーク・クロニクル紙の記者である。サムはスポーツ欄を、テスは国際ニュース欄を担当している花形記者で、2人の記事は大きな見出しで報道され互いに人気を競っていたが、紙上で喧嘩もしており一度も会ったことはなかった。ところがある日、ふと顔を合わせたとたんサムはテスに一目ぼれ。サムは彼女を野球に誘うことに成功したが、テスは野球のルールさえ知らなかった…。

※ ネタバレです。

Womanoftheyear1

           野球場でのデート

サム(スペンサー・トレイシー)とテス(キャサリン・ヘプバーン)

テスが無事野球のルールを覚えたところで、時間切れ。彼女はとにかく忙しい女性なのだ。しかし、9時に来てと名刺を渡され有頂天のサム。バラの花束を持って駆けつけるが、彼女の家はお客でいっぱいだった。色んな言語が飛び交い、サムは居場所がない。さっさと帰ってしまうサム。

翌日、出勤したサムの部屋にはテスからのワインの贈りのものが。そんな気遣いに満足するサム。しかし、テスの許に行こうにも彼女の秘書が邪魔をする。やっと会えたと思ったら、講演の楽屋に迎えに来てという。その後はまた講演に駆け回る彼女を空港に送りに行くが、何故か秘書も一緒だ。何故自分に送らせたのか彼女に問うと、「お別れのキスのため」と言うではないか。彼女もまたサムに惹かれていたのだ。キスをして別れる2人…。

そして初めての2人きりのデート。サムはテスのことが知りたくてうずうずしていた。彼女のことを知って、ますます愛が深まるサム。

No_4そして翌日…。テスに求婚するサム。テスは受け入れた…。

結婚式の日取りは全てテスと秘書が決めてしまっていた。明日だ。

なんとテスの父親は警察の車の先導付きでやって来る始末。しかもいられる時間が12分しかないという、あわただしい結婚式だった。テスにも電話が入り、サムはこの結婚はちょっと様子が違う…と思わせた。しかし結婚は結婚だ。2人は“夫婦”になったのだ。

結婚後のとりあえずの住家はテスの家だ。メイドがなんと呼んでいいか迷う。テスは「クレイグ夫人」になったのだ。そして、寝室と消えるテス…。

そこへ、行方不明になっていたユーゴスラビアの要人ルベック博士がやって来る。感激の再会だが、サムは全く知らない。寝室へ向かうサムを、ルベック博士のボディガードが驚かせる。押されて入った寝室の2人を見て驚愕するサム…。

新婚初日にして落ち着かない夜だ。ユーゴスラビア領事も駆けつける。この乱痴気騒ぎにサムは耐えかね、行きつけのバーの仲間を呼ぶ。彼らの登場にいぶかしげに思うテス。とうとうテスの方から、2組を追い出そうと言うのだった。

サムの仲間の計らいで、2人が新婚初日と知ると、皆出て行ってくれた。

― サムはシカゴでアメフトの取材。それが終わるとまっすぐに家へ帰った。新しい帽子をかぶって。

テスは秘書と原稿をあげている 最中だ。

          まだまだ甘い2人…

No_7

サムはテスに新しい帽子を素敵と言ってもらいたかったが、テスは一通りほめただけでまた仕事に戻った…。

メイドがいないので、自分で食事を作るサム。そこに秘書が現れ、テスの分と自分の分も頼むと言うではないか。しかし怒るより作るしかないサム…。

仕事が終わったテスはサムの許へ戻る。「そういえば自分も昨日シカゴに行っていた」と言うではないか。サムが時間を聞くと、一緒に帰れるはずだった。テスはそこまで気が回らなかったと言う。サムが「一緒に帰ろうとしないのが問題だ!!」と怒ると、テスは「昨日は恋しいと思わなかった」と言った。しかし、まだ新婚だ。小さな問題に過ぎないとつとめて思うようにしているサムがいた。

― 翌日の朝、サムは寝坊した。テスの様子が少しおかしい。「最近よく衝突するのは2人きりだから?」と聞いてくる。そして唐突に「子供はいらない?」と言うではないか。反対するわけがない。テスは「実はもう…」と言う…。妊娠だ。これほど喜ばしいことはない。しかし、サムが「男の子がいいな」と言うと、テスは「男の子よ」と答えた。そんなに早く分かるものなのか?…と思っていたら、テスがギリシャ難民の子を養子にしたと言って連れてきた。驚くサム。その子を養子にしたいきさつをただ黙って聞くしかない…。

2人きりで話しをした。サムは、この子を返そうと言う。しかし、テスは譲らない。この養子縁組は人道的な…サムは話をさえぎった。あの子が気の毒だ。兄弟がいるならまだしも、こんな冷たい家庭で実の子の代わりにされて、と。テスは、今さら返したらバカみたいだ。私は人助けがしたいの、と言う。サムは、分かっている。君は何でも一生懸命だ。人類愛の一割でも家庭に向けてくれれば…と言いかけたところで、テスの秘書から電話が入って、子供の件はひとまずお預けとなり、家にとどまることになる。

なんと、テスが今年の「女性大賞」に選ばれたのだ。喜びを爆発させるテスに、サムの顔は浮かない…。

No_4パーティ当日…テスは着飾り美しかった。しかし、子供を1人残してパーティへ行く…というテスの考えにサムは切れた。テスのエスコートより子供を選んだのだ。「女性大賞の受賞者は女じゃない」と言って。

そしてサムは子供を、「ギリシャ難民 児童施設」へと返してしまった。友達が迎えに出て喜んで走っていく子供…。その頃パーティでテスは表彰を受けていた…。

テスが家に帰ってもサムはいない。2人の仲むつまじい姿を撮りたいカメラマンたちがずっと待っている…。いくら待ってもサムが現れないので、仕事着に着替えることにしたテス。クローゼットの中のサムの衣類が無い…。サムは出て行ったのだ。仕事場に入ると、子供もいない…。何かかがおかしい…。

No_2

子供を取り戻しに、「ギリシャ難民 児童施設」に行くテス。しかし、子供はテスと一緒には行かないと言って去っていった…。去ったサムと子供…テスがしたことのない挫折だ。

テスの母親代わりのエレンがテスに来てほしいと電報を打ってきた。一緒に行ってほしいというテスに、仕事で抜けられないと言うサム。一緒に行かないとエレンが変に思うと言うが、サムは「初めはね。そのうち察する。」と冷たい。テスは結婚をどうしても完璧なものにしたい。ほころびを直したいのだ。しかし、サムは結婚はパッチワークとは違うと言うだけだ。僕らの結婚は完璧どころか結婚ですらないと吐き捨てる。

そして、ついに2人は“別れのキス”を交わし、別れた。

エレンの家へ着いたテス。エレンはテスに「どうやら結婚式がありそうよ」と言う。テスは、自分の知っている人かと尋ねる。エレンとテスの父親の結婚式だったのだ。エレンの「分かち合う人がいなきゃ成功してもつまらないわ。賞をもらってもむなしいだけ。」と言う言葉が胸に痛い。

神父の言葉、エレンの姿、サムの態度…自分の結婚の失敗は全てこの自分にあるのだと気づくテス。そしてテスはサムの許へ急ぐのだった…。

― 父親が外交官だったため、幼い頃から世界を回り、才女の誉れ高いニューヨークの新聞記者と、ごく普通の学歴の男だが、スポーツ・コラムを書かせたら右に出るものはいない同じ新聞社に勤める男。ふとしたことで紙上で喧嘩になり、主幹に呼ばれ喧嘩はやめて和解せよと顔を合わせたとたん恋に落ち、電撃的に結婚した2人。

初めは戸惑いながらも、これが彼女の「仕事」だからと我慢していたが、段々と意見の一致をことごとく見なくなり、別れる。サムの“常識”は、テスには当てはまらないのだ。テスの“常識”は、サムの“非常識”でもある。そんな形だけの妻が、今年の「女性大賞」を貰うだと?外でいい顔をして仕事漬けの、家庭を顧みたことがない女が、「女性大賞」とは!なんたる傑作な話だ。

甘い「新婚時代」は、たしか…と考えてしまうほど遠く思える。それもサムが我慢をしていた期間だけの話だ。テスはあくまでもテスなのだ。「クレイグ夫人」にはなれなかった。

これは、結構怖い話ですね。環境の違う男女は、あくまでも合うことは無いということでしょう?それに、「結婚」に縛られたくない女が結婚しても、失敗は目に見えているということでもある。あくまでも女が「自分自身」を通すなら、結婚すべきではないと。

サムは良い夫になろうと頑張った。しかし、その声がテスには届かなかったのね。しかし、エレンと父親の結婚で、自分の過ちに気づく。そして「良い妻」になろうと、サムの引越し先まで押しかけて、もう一度「愛しているわ、結婚して。」と、今度はテスの方から求婚するのだ。しかしサムの態度は厳しい。するとテスは、「今度は妻に徹する」と言う。「家事なんて簡単。バカでも出来るわ。」と、のたまうのである。

しかしテスは、「バカ以下」だった。今まで家事なぞしたこともないお嬢様。トースターに入れたパンは宙を飛び、コーヒーは泡まみれ…。

結局(というか)やっぱり、サムが大きな包容力を見せて、「テス・ハーディング・クレイグ」になればいいと言って、一件落着と収まるのだが、この話は今の“キャリア・ウーマン”にも大いに通じることだわねぇ…。「働く女」は“結婚”が果たして幸せなのかを問いかける映画でありました。

No_3

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2007年11月25日

フィラデルフィア物語

Photo 1940年 <アメリカ>

監督 ジョージ・キューカー

出演

キャサリン・ヘプバーン

ケーリー・グラント

ジェームズ・スチュアート

ルース・ハッシー

ストーリー

フィラデルフィアの大富豪ロード家のトレイシーは、同じく上流のC・K・デクスター・ヘイヴンと恋に落ち結婚したが、たちまち破綻した。それから2年…トレイシーが貧困から身を起こして出世したジョージ・キトリッジと結婚することとなる。「スパイ」というイエロー・ジャーナリズムの記者となり南米へ行っていたデクスターは、彼女が誤った結婚をするのを止めようと帰ってくる。彼はトレイシーの父親の醜聞をダシに「スパイ」の記者マコーリー・コナーと、その恋人で写真班のエリザベス・インブリーを連れて、トレイシーの結婚の記事を書くため、ロード家へ乗り込む…。

※ ネタバレです

Photo_2

デクスター(ケーリー・グラント)と再会するトレイシー(キャサリン・ヘプバーン)

2人の結婚が破綻したのは、トレイシーが人の欠点を許容することが出来ず、強く完璧な人格をデクスターに求め、それが出来ない彼が酒に溺れたためだった。しかしデクスターは酒断ちに成功し、いまだ愛しているトレイシーの結婚を止めようと南米から帰国したのだ。

ところがトレイシーは大のマスコミ嫌い。デクスターが連れてきた2人が兄の友人ではなく、「スパイ」誌の人間だと分かると、彼女の頭はフル回転。ヘンテコな上流階級を演出し、2人を完全に煙に巻くのだった。

マコーリー・コナー(ジェームズ・スチュアート)を煙に巻くトレイシー

Photo

そしてマコーリーが作家志望で過去に一冊本を出版していると聞いて、デクスターの祖父が建てた図書館に勉強に出かける好奇心旺盛な才女でもある。たまたま、トレイシーの父親のことを調べようとやって来たマコーリーと出会う。彼の本を読んで、どうやらマコーリーに興味を持ったトレイシー。

Photo_4そしてロード家のプールで2人で泳ごうかという時、ちょうどデクスターが結婚祝いを持ってやってくる。トレイシーとデクスターは最初の結婚のことで段々けんか腰になっていく。その場を逃げ出すマコーリー…。デクスターは、自分はトレイシーの伴侶ではなく、女神に仕える僕だと分かり酒に溺れたのだと言う。結婚がダメになったのは彼女のせいだというのだ。

トレイシーも負けてはいない。再婚相手のジョージは貧しいが野心があるし、なによりも“愛している”。こんな事は初めてだとトレイシーは言うが、デクスターはひるまない。そして彼の最後の一撃だ。君には致命的な欠陥がある。弱さへの偏見、忍耐力のないところだと。最高の女になりたければ人間の弱さを学べ。失敗は君の内なる神性が許さない、女神でいたいからだ…と言って去っていった。

残されたトレイシーは、ちょうどやって来たジョージに、「結婚したら世の中の役に立つ人になりたい」と言うが、彼はそんなことはしなくていいと言う。君は女神だ。僕は君を崇拝していると…。

トレイシーは、女神ではない。崇拝はいらない。ただ愛されたいだけなのだ。ジョージは何も分かっていない。

結婚式の前夜祭に行く前、トレイシーの両親が2人仲良く談笑している。それに納得がいかないトレイシー。浮気を繰り返す父親を許せないのだ。なんと、父親にまでデクスターと同じことを言われてしまったトレイシー。何とか涙を我慢するが、みんな、どうしたの?とつぶやくしかない…。

前夜祭…トレイシーは酒を浴びるほど飲み、偽りの喜びを見せ、マコーリー・コナーはデクスターの家へ行く。プールでの一件が気になっていたのだ。そして彼もトレイシーに惹かれている1人だったのだ。デクスターと何の気なしに話すベロベロに酔ったマコーリー。しかし、そのおかげでマコーリー達はトレイシーの父親の醜聞記事を抑える為、結婚式の取材に来ているのだと気づかされた。激怒したのはマコーリー。そして、結婚式の取材を止められるかも知れないと教えたのはデクスター。2人はトレイシーのため協力する。

Photoリズとデクスターが忙しく脅迫のタイプを打っている間、トレイシーとマコーリーはロード家へ行き、2人きりでパーティを開く。今度はトレイシーがマコーリーに噛み付く。マコーリーは「俗物」だと。そして“教授”と呼び続ける。

しかし、トレイシーに参ってしまったマコーリーは、「君は素敵だ」と言う。「その瞳、その声、立ち姿や歩き方にも気高さがある。本当は君の中では炎が燃えているんだ。激しい情熱の炎が。」「生と温かさと喜びに満ちた生身の女なんだ。」そして口づけを交わす2人…。そのとき2人は一瞬恋に落ちた…。

デクスターがロード家に着いたとき、ちょうどジョージも着いた。電話をしても出ないからだという。すると、プールから上がったばかりと思われるガウン姿のトレイシーとマコーリーが現れた。デクスターは平気な顔だが、ジョージは怒り心頭だ。トレイシーを部屋へ送り届けたマコーリーはジョージに殴られそうになり、代わりにデクスターに殴られた…。

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― そして結婚式当日…トレイシーは2日酔いで式に挑むことになる。そして、昨夜のことを全て見ていた妹から“夢の話”として、耳を疑いたくなるような話を聞かされる…。そして「脅迫書」を送った「スパイ」誌の社長からは、“負け”を宣言されるが…。

― 「赤ちゃん教育」が乱暴な“秀作”だとしたら、この作品は“丁寧な名作”だろう。ストーリー運び、登場人物の書き分け…完璧に近いものがある。

2年前に離婚した夫が、イエロー・ジャーナリズムの世界に足を踏み入れ、元嫁の結婚式を彼女の父親の醜聞をダシにゆすられ、取材せざるを得なくなる…。彼はこの結婚を止めたかったので、これ幸いと記者と写真家を連れて行く。そして再会…。彼の作戦は成功するのか?

トレイシーは、気丈な才気溢れる女神と崇められる女性。しかし、他人の失敗を許せないという欠点を持っている。しかし、デクスターとマコーリーの出現で、自分自身が失敗を繰り返す。

デクスターは最初の結婚に疲れ酒を飲みすぎたが、リハビリして更生し、元妻を取り戻そうとしている。

マコーリー・コナーは、作家志望の「スパイ」誌の記者だ。しかし、あくまでも“作家”にこだわる彼は、トレイシーの結婚式の記事を嫌々書きに来たのだ。そして、トレイシーに身近に接するたび彼女に惹かれていくのだった。

しかし、トレイシー役のキャサリン・ヘプバーンとデクスター役のケーリー・グラントの火花散るプールでの“喧嘩”は壮絶だ。早口でまくし立てる2人には脱帽する。ほぼケーリー・グラントが勢いで喋るが、それが上手いのなんのって。トレイシーに見せる少しの“軽蔑”が心に痛い。言い返せないトレイシーにも同情してしまう。

ロマンティックな場面もバッチリ用意している。“階級の差”を破るつかの間の恋愛。マコーリー・コナーとトレイシーの一瞬輝く愛情だ。マコーリーはトレイシーのことを「女神」ではなく「女王」のような女性と形容する(意味はまったく変わらないのだ)。

ストーリー運びも快調の一言だ。最後まであきさせない。意外とケーリー・グラントの出番が少ないのが心残りか。

Photo_2結局、トレイシーが自ら破ろうとした“階級の差”は大きかったようだ。大人の解決を望んだジョージに対して、「さようなら」をしている。彼との結婚が破談になると、何を血迷ったかマコーリーがプロポーズするが、これも断って、結局は“上流社会の男”“トレイシーを今度こそ操縦する男”のデクスターの元に収まるのだ。

この作品では、アカデミー主演男優賞を獲得した、ジェームズ・スチュアートが何か胡散臭い抱腹絶倒な演技に釘付けだ。

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2007年10月 6日

赤い河

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監督 ハワード・ホークス

出演 ジョン・ウェイン

モンゴメリー・クリフト

ジョーン・ドルー

ウォルター・ブレナン

ジョン・アイアランド

ストーリー

南北戦争の14年前。開拓者のダンソンとグルートは2人でテキサスの緑野に大農場を作る希望に燃え、レッド・リヴァーに向かう途中、インディアンの攻撃の手から逃れた少年マシューに出会い、ダンソンは彼を一緒にテキサスに連れて行った。南北戦争も終わり、ダンソンは広大な土地と莫大な家畜を持っていたが、南部には牛肉を買う市場が無かった。今や成人したマシューが戦争から帰ると、ダンソンはミズーリへ家畜一万頭を移動させるという大胆な計画をぶち上げ、牧童たちを雇い、大移動が始まった…。

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ダンソン(ジョン・ウェイン)とマシュー(モンゴメリー・クリフト)

しかし、旅は過酷だ。牧童たちの不満もありながらも、ダンソンの“絶対的”な力でミズーリを目指すが、あるとき牧童チェリーの一言でマシューが揺れる。何もミズーリでなくても、カンザスにも鉄道が来ている。ずっと西のアビリーンにも、と。だがあくまでもダンソンはミズーリにこだわった。牧童の死亡するたびにダンソンは牧童を埋葬し聖書を読んだ。牛の暴走もあった。雨が降り続き食料も少なくなってきた。それでもミズーリを目指し旅は続いた。

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ある日、インディアンの襲撃から辛くも逃れた男がダンソンたちの前に現れた。彼の話によると、「赤い河」から北へ行けば良かったと言う。旅の途中にそれほど危険がなくカンザスまで行ける道があるという。アビリーンまで鉄道が来ていると彼も言った。仲間割れが始まる。ダンソン以外は皆アビリーンへ心が飛んだ。そしてついに弾と食糧を奪い逃亡する牧童たちが出た。ダンソンはチェリーに彼らを連れ戻すよう命令し、またミズーリへと旅を続けた。こうなればもう“執念”の旅だ。

「赤い河」を渡った翌日、チェリーが逃亡者たちを連れて戻ってきた。ダンソンが彼らを「縛り首」にすると言うと、マシュウがそれに強く抵抗した。そしてついにマシューはアビリーン行きを決めた。自分がダンソンに代わって指揮を執るのだ。グルートさえダンソンを見捨てた。ダンソンはマシューに、いつか必ず現れてお前を殺すと言い残し、一人取り残され、皆はアビリーンへと向かった。

そして、ダンソンが現れるのを恐れながら旅を続けた。

ある日、インディアンの攻撃にさらされている一団を発見する。それを救ったマシューたち。そしてマシューは一団の気の強い女テスと恋に落ちる。テスは彼に関することは何でも知りたがった。特にダンソンとのことを。マシューも素直に彼女に何でも話した。

              マシューとテス(ジョーン・ドルー)

3しかし、再びアビリーンへ向け旅立った時にはテスは置いていかれた。

そして一週間後、人手を集めてマシューを追ってきたダンソンがテスの一団に行き当たる。テスはダンソンと徹底的に話し合った。2人は何もかも洗いざらい思いをぶちまけた。テスはダンソンと一緒にマシューを追うことを許された。

マシューたちはその後二週間も何もないところを行った。アビリーンなんてあるのかと疑問に思えた瞬間、鉄道が、汽車が走っていた。そしてついにアビリーンへ着いた…。

- 一人の男の怨りつかれたような“執念”の物語。

14年前拾ってやった少年を息子同然に育てながらも裏切られ、殺そうとする男をジョン・ウェインが迫力たっぷり、かつ繊細に演じている。彼の実年齢よりも上の(たぶん)初老の無骨な男をよく演じきった感がひしひしと伝わってきた。この作品の彼の演技は素晴らしいの一言だ。特にクライマックスのマシュー(モンゴメリー・クリフト)との対決のシーンは抜群に良い。牛をかき分けて進んでくる彼の姿は迫力に満ちているとともに、優雅でさえあるのだ。ジョン・ウェインがこんなに優雅な男だったとは!

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そして特に印象に残ったのは、テスと語り合ったとき残していった女を亡くして悔やむシーンだ。テキサスを開拓しようと決意したとき、女が「一緒に行く。仕事を手伝う。どんな苦労でも耐えられるから連れて行って」とすがってもダンソンは「呼び寄せる」の一言で彼女を置いていく。そして数時間後にインディアンによって彼女を失うのだ。テスもマシューに置いて行かれた女、「別れるのがつらかった」と言ったとき、ダンソンは「ナイフに刺されたように…」とつぶやく。ジョン・ウェインの心が引き裂かれたような表情、これが女心に染み入るのだ。彼の繊細な演技の勝利だ。

牛の大移動の壮大さ、それを彩る自然の雄大さ。開拓時代の強い女。復讐に燃える一人の男。本物の男たちの物語。西部劇の醍醐味がこの映画には全てといっていいほど詰まっているのではないだろうか。物語の展開に不安を覚え、すっかり虜になっていた。楽しいひと時を過ごした。満足した。

そしてモンゴメリー・クリフトは、トム・クルーズに瓜二つなのであった。ちょっとした発見…。

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2007年9月30日

絶海の嵐

Photo 1942年 <アメリカ>

監督

セシル・B・デミル

出演

ジョン・ウェイン

レイ・ミランド

ポーレット・ゴダード

レイモンド・マッセイ

ストーリー

1840年、弁護士のキング・カトラーは、弟のダンとフロリダのキー・ウエストを中心に、貨物船を難破させ積荷の引き揚げを請け負って、暴利をむさぼるという悪事を働いていた。ある日、ジャック・スチュアート船長の貨物船「ジュビリー号」がカトラー兄弟のため難破し、ジャックは負傷し、カトラー家とは違い純粋に難破船の積荷の引き揚げを父の死後引き継いでいる男勝りのクレボーン家の娘ロキシーに助けられ、それが縁で二人は恋に落ちるが…。

※ ネタバレです

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男勝りのロキシー(ポーレット・ゴダード)とスチュアート船長(ジョン・ウェイン)

積荷を失ったスチュアートは、一ヶ月の航海の後、チャールストンへ行くことになった。偶然にもロキシーもチャールストンの叔母の許に預けられることになっていたのだ。スチュアートはロキシーに夢を打ち明ける。将来の夢の船、蒸気船「南十時星号」の指揮、デヴロー海運の後継者、そしてロキシーとの未来。2人はチャールストンで落ち合うことを確かめ合い、別れた。

― チャールストン。ロキシーと妹ドルシラは社交界へと入る。ロキシーはデヴロー提督に会い、スチュアートを売り込むことばかり考えていた。そこで、トリヴァー弁護士を紹介される。スチュアートが別れる前に、“ライヴァル”と言っていた男だ。ロキシーは彼を無視し、提督の娘に紹介してくれるよう頼むが、デヴロー提督は病気で療養中の身で、デヴロー海運の代理をトリヴァーがやっていた。そこで、ロキシーが思いつく。トリヴァーに近づけばいいのだと。

そして連日のデートが始まる。ロキシーは「南十字星号」のことしか頭になかったが、トリヴァーはロキシーの魅力の虜になってしまい、しまいには自分たちのハネムーンのことを言い出す始末だ。しかし、そこにスチュアートがチャールストンに着いたとの知らせが入り、トリヴァーはデヴロー海運へと急ぐ。

       スチュアートとトリヴァー(レイ・ミランド)

4

トリヴァーがデヴロー海運に着いたときには、スチュアートが「ジュビリー号」の難破の件で釈明を迫られていた。サボターシュ行為だというスチュアートだが、提督は納得しない。別の部屋で処分を待つよう言い渡し、トリヴァーたちと会議に入る。海運事故が多いのはやはり、カトラー一味のせいだということで、その証拠を掴むためトリヴァーとスチュアートがキー・ウエストで「南十字星号」に乗り込み、その尻尾を掴むというトリヴァーの案を採用する。それまではスチュアートは一航海士として他の船に乗り込むことになった。

社交界のパーティでついにロキシーとスチュアートは再会する。しかしスチュアートが次にのる船がボロ船で一航海士なのを知ってロキシーは激怒する。トリヴァーが2人の仲を裂こうとしていると思ったのだ。しかし、社交界の中ではトリヴァーとロキシーが婚約したことになっていた…。必死でその噂を打ち消すロキシー。「私は男の中の男と結婚するのだと。」と言いスチュアートにすがりつき、彼が航海する船長に式を挙げてもらおうとしたとき、プライドをズタズタにされたトリヴァーに邪魔され、式は流れ、ロキシーは海に放り出され、船はスチュアートだけを乗せて出航した…。

トリヴァーは「南十字星号」に乗る為、ロキシーはスチュアートに会うため、キー・ウエストに帰ってきた。早速トリヴァーはカトラー一味の洗礼を浴びる。ロキシーの機転がなければ、間一髪のところで命を無くすところだった。そしてカトラーは不穏な動きを見せ始める…。

                  これが巨大イカとの格闘だ!

3 ― う~ん…これは、「ジョン・ウェイン」の映画とは言いがたいなぁ…。レイ・ミランド・ポーレット・ゴダードと肩を並べてキャスティングされてますが、2人よりも扱いが下ですね。何よりも、ジョン・ウェインが“愛”に嫉妬して、正義の人じゃなくなるんですよ。そりゃまずい展開ですねぇ…。規模の小さい男の役…どう考えても似合いません。最後は巨大イカに襲われて死んじゃうし…。おいおい…ってな感じです。(その巨大イカもチャッチイのよ)「駅馬車」から3年、“男”を次々へと演じ、着々と大スターへの道を歩んでいるのに、この映画は“異色”ですね。

そして、話はエピソードのてんこ盛りで壮大なんだが、なんだか監督のC・B・デミルだけが張り切って、「海洋の“風と共に去りぬ”」を作りたいと切望したような感じなんですね。だから、「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ役の最終選考まで残ったポーレット・ゴダードが、スカーレットさながらテクニカラーにその姿が映える。そして他の出演者が霞む…という悪循環を作り出しています。

C・B・デミルの壮大な映画が好き…という人にはお勧めですが、ジョン・ウェイン・ファンにはどうでしょう?DVDに付いていたパンフレットによれば、公開当時はジョン・ウェインをメインにはしていなかったようですね。1950年にリバイバル公開されたとき、ジョン・ウェインをメインに持ってきて、再び興行的に大成功を収めた。と、あります。1950年には堂々たる“主演”。リバイバルでは、巨大イカとの格闘は売りにされなかったのね…。

ちなみにこの作品は、1942年度のアカデミー賞特殊効果賞を獲得しています。

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2007年8月12日

白熱

1 1949年 <アメリカ>

監督

 ラオール・ウォルシュ

出演

 ジェームズ・キャグニー

 ヴァージニア・メイヨ

 エドモンド・オブライエン

 マーガレット・

                ウィチャリー

ストーリー

凶悪殺人ギャング団の首領コーディ・ジャレットは、一味と共に財務省の郵便列者を襲い、現金30万ドルを強奪した後、母親と妻ヴェルナの待つ山の隠れ家に逃げ、警察が突き止めたと見るや、瀕死の部下を残して逃亡した。Tメンはこの事件をジャレット一味の仕業と推定し、ロスのホテルに潜む一味を発見したが、逃げられてしまう…。そしてコーディは捜査を免れるため、イリノイのホテルの強盗として自首し、2年の刑に服すが…。

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山荘での妻ヴェルナ(ヴァージニア・メイヨ)と

                 コーディ(ジェームズ・キャグニー)

コーディは至極頭の切れる男だが、行き過ぎたマザコンと、父親の血筋の訳の分からない“頭痛”に悩まされてもいた。母親には、部下に弱みを見せるな、“最高”になれと言われている。そのように努力もしてきた男だ。コーディの妻は「金」と見ると使うものと思っている。もちろん自分にたっぷりと。そして組織のNo.2の男ビッグ・エドと出来ていた。

12山荘に“足”のつかない部下を置いてきたのは間違いだった。出発するとき「殺し」を命令したはすが、嘘の銃弾に騙された。そして差し入れされたタバコから、一味に足がつく。

そこで考えたのが、コーディがイリノイ州の給料泥棒と一緒に“仕事”をしていたと自首するのだった。かくしてコーディは2年服役することになる…。しかしTメンの執念も相当なものだ。コーディに、潜入捜査員をつけることにした。2人は裁判所で肩をぶつけ合う。それが初めての出会いだった。

刑務所の休憩時間。ジャレット一味の話に華が咲く。コーディが口読みの出来る仲間に探りを入れる。ビッグ・エドが万事取り仕切っているということだ。思わずカッとなるコーディは、喧嘩を売りに行こうとするが、潜入捜査員パードに止められる。

14 しかし、パードにとって“やばい”瞬間が待っていた。新入者は注射を受けることになっているのだが、彼が挙げた男が腕にアルコールを塗る係りではないか。相手には迷惑極まりないが、とっさに他の受刑者と格闘を繰り広げてみせ、独房送りになる。それに独房から戻ってきて、刑務所から送られてきた記録係の写真を全く無視している。コーディたちに促されて、写真の女性がそうだと分かる始末。勝手にブロンドからブルネットに染めて…とぼやき、事なきを得たが、危ない橋を渡った。

今度は“ジャレット一味”ならぬ“ビッグ・エド一味”が仕事をしたらしいと連絡が入る。

動かぬ証拠…。この仕事の分け前はコーディにも分けると、一味が賛成はしたが、ビッグ・エドは、コーディを殺そうとしていた。そして、ヴェルナと熱い抱擁を交わす…。それを全てコーディの母親が見ていたのだ。

刑務所の作業所…ビッグ・エドの息のかかった囚人が、作業をしているコーディの上に重い滑車を滑らせていく…。そして、コーディめがけて落とした。しかし、それをパードが救った。そして、コーディの許へ母親が面会へ来た。

17母親は話し始めた。度胸はないと思っていたのに、ビッグ・エドとヴェルナが一緒に逃げたこと。ビッグ・エドには用心したほうがよいこと。彼は、コーディが出所したら命が危ないのは分かっている。ボスの座を乗っ取らないと安心できないことも。

ここから出たら“最高”になるんだよと、いつもの言葉。しかし、母親が自らビッグ・ボスを殺すと言った衝撃…。コーディが叫んでも母親は振り返らずに面会室を出て行った…。

そして仕事に戻ると、母親の声が木霊し、頭痛が彼を襲う。パーデイのやさしい励ましに、潜入捜査員とは知らず彼の事を信頼していくコーディ。

夜になるとコーディーはパードに脱獄の話を持ちかけてきた。

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パードはその話に上手く乗り、自分は電気工学に強い。だから発電機に細工して脱獄すればいいとそそのかす。そして2人は手を組む。後日面会に来た、パードの“妻”に、発信機付きの逃走車を手配させた。

  母親の死に動揺するコーディ

20しかし、思わぬことでこの脱走劇は中止となる。コーディの母親が死んだのだ。コーディは食卓をはいずり、転げ落ち、看守を次から次へと殴り倒し、「俺はここから出て行くんだ!」と叫びながら、ようやく捕まり独房へと運ばれていった。

拘束服で、ベッドに寝かされたコーディ。仲間が食事を運んでくる。食欲がないと言って、スープも飲まないが、次に来るときには“銃”を持ってこいと言う。

警察の医師の判断は、コーディは極めて凶暴とのこと。今夜、精神科医が来て病院へ送られることになっていた。…精神科医との面会中に仲間が食事を運んできた。寝たままじゃ嫌だというコーディに、精神科医は拘束服を解いてもいいと言う。解いている途中で腕に銃を忍び込ませ、コーディは自由になった。そして医師に電話をさせ、仲間を呼び出し、精神科医を人質に、あっという間に刑務所から脱出した。“仲間”のパードにとってこれは予想外の出来事だった。車には“発信機”がついていない…。しかし、警察にとってはツイていた。パーディの役目は「密着潜入」だったのだ。

老夫婦の家を襲い、新しい服を着て、彼らはコーディの家へと向かう。

一方、共謀してコーディの母親を殺したビッグ・エドとヴェルナは、コーディの脱獄に戦々恐々だ。ビッグ・エドは強がっているが、ヴェルナはすぐ逃げ出したいという思いに駆られていた。ビッグ・エドが眠るために部屋へ行くとヴェルナは家から逃げ出し、車庫へ向かった。そして…コーディが彼女の口を塞ぎ、「戻った」と言った。そしてヴェルナの手引きで家へ入り、あっさりとビッグ・エドを殺した。

そして、昔からの手下と脱獄した仲間で次の“仕事”へ取り掛かる。科学工場の給料日の金庫を狙うことにコーディは決めた。外出禁止で警察にも連絡が取れず焦りだしたパード…。しかしコーディは彼のことを信用しきっていた。パードが目をつけたのが、ヴェルナの壊れたラジオだった。試しに直させてくれと頼み、了解を得る。それを発信機に作り直し、“仕事”の車に取り付けた。途中でスタンドに寄り、鏡に何かを書くパード。そしてまた出発…。

                “仕事”に使うガス・トラック

22スタンドの店主が鏡の書き込みに気づき、警察はコーディたちの車を追いかける。ガス・トラックと警察の逆探知の追いかけっこが始まる。しかし、コーディの方が早かった。化学工場に着くや、金庫をバーナーで焼きあけようとしている。気が気でならないパード。だが、やがて警察も到着。そしてパードの身元も警察の人間だと割れてしまう。弟のように可愛がった男が“警察の人間”だと…?段々自制心を無くして行くコーディ…。

― キャグニー、一世一代の名演!!素晴らしいの一言です。マザコンで精神異常の気がある犯罪者。この人物設定が成功の鍵を握っていましたね。いつも母親に「最高におなり」と言われて育ち、それに報いようとする。“妻”はあくまでも性的欲望を満たす道具。そして“男の世界”にどっぷりつかったボスでもある。

そして、潜入捜査員のパードのコーディに対する驚きと、自分のあずかり知れぬ所で“仲間”になってしまった焦りと、思うように警察に連絡を取れない焦り。

ヴェルナの、何が何でも生き延びようとする“女”のたくましさ…。ビッグ・エドの反目…。

これらの要素が幾つも集まって、ストーリーを段々と盛り上げていく。ラオール・ウォルシュ監督は、ギャング映画の巨匠ですね。この映画は1949年の作品なので、遅れてきたギャング映画ですが、素晴らしい出来ですよ。

映画の最後「やったぜ、ママ、最高だ!!」は、映画史に残る台詞とラストシーンですね。

う~ん…素晴らしい映画だった。

…色々と忙しく時を過ごしていたら、巨匠監督が2人お亡くなりになってたんですね。イングマル・ベルイマン監督と、ミケランジェロ・アントニオーニ監督共にご冥福をお祈りいたします。

― 傑作ギャング映画特集、これにて終了。次にご期待を…。

2

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2007年7月28日

ハイ・シェラ

16_10 1941年 <アメリカ>

監督 

 ラオール・ウォルシュ

出演

 ハンフリー・ボガート

 アイダ・ルピノ

 アーサー・ケネディ

 ジョーン・レスリー

ストーリー

インディアナの農家の息子から、凶悪な銀行強盗犯となったロイ・アールは、8年ぶりに特赦で出所し、仲間のビッグ・マックがお膳立てしているロスの高級リゾート・ホテルの強盗の片棒を担ごうとしていた。若い手下のベイブとレッドの待つキャンプ場へ行く道中のガソリンスタンドで出会ったグッドヒュー老夫婦の足の悪い孫娘ヴェルマに愛情を抱くが、先を急いだ。キャンプ場へ着くと、ベイブが連れて来た女マリーが邪魔だった。そして、強盗の手引きをするホテルのフロント係、メンドーサの気の小ささも気になるロイドだが…。

18_7

      ロスへ向かうロイ・アール (ボギー)

晴れてシャバに出た彼がすぐに向かったのは、昔の仲間ビッグ・マックのところだった。しかし、マックはロスにいた。元警官のジャックが全てを手引きして、ロイは指定された場所、ロサンゼルスの金持ちが集まる行楽地へと出発した。途中で自分の故郷の土地に寄るが、面が割れるくらいの“有名人”ぶりだ。

ネバダ州境付近で、ロイの車は一台のオンボロ車を追い越す。ガソリンの補給にスタンドへ着いたロイの車。思わず彼は背後に広がる山脈に見とれた。シェラ・ネバダ山脈だ。その後に彼が追越した車がやって来た。グッドヒュー老夫婦と孫娘のヴェルマの3人だ。そのときは挨拶程度で終わり、ロイは急ぎロスへ出発した。

目的地へ着き、早速ビッグ・マックの手下2人- レッドとベイブに合うロイ。しかし、そこには女がいた。ベイブが連れて来た女だ。彼はこれが気に入らない。

12_12

金をやって送り返せと言うが、彼女は何かと役に立つという。そして、強盗団の一味、ホテルのフロント係りメンドーサによれば、客は満杯、金庫には宝石や金が唸っているということだ。

レッドはロイと“仕事”が出来るので喜んでいる。ロイは彼の少年時代からのヒーローだったのだ。しかし、ロイはそっけない。

 マリーをめぐって対立する二人

19_7レッドがロイの言うとおり、マリーをロスへ送り返せと言うが、ベイブはそんな事は出来ないと答える。しかし、今は「仲間割れ」しているときではない。一番帰りたくなかったのがマリーだ。彼女が直接ロイに会いに行った。

ロイの許へ行ったマリー。彼女の切り札は、自身も“仕事”のことを知っていること。それにメンドーサは口が軽いということだ。それを知ったロイは仕方なくマリーを置くことにした。

                    マリー (アイダ・ルピノ)24_7

メンドーサがロイに紹介された。ホテルの見取り図をもらい、逃げ道にシェラ・ネバダ山脈を超えるという案が出る。誰も山越えでロスへ行くとは思わないと言うのだ。ロイも思わなかった。

そして、ロイはホテルのフロントへさりげなく行き、メンドーサににらみを効かす。彼はそれだけで汗だくだ。小心者の“匂い”がする。ロイはメンドーサに良い印象を感じなかった。

バンガローへ帰る途中、人だかりが出来ていた。車の事故だ。その当事者は、グッドヒュー老夫婦と孫娘ヴェルマだった。どうやら足の悪い内反足の娘が運転していたらしい。しかしロイの押しの一手で100ドルを巻き上げた。愛らしいヴェルマにほのかに愛情を募らせるロイ。

その足で、ビッグ・マックの許へ行くロイ。久しぶりの再開に2人とも喜びを隠せない。しかし、マックは病気がちだ。早速“仕事”の話に入る。マックは、「手に入れたらお前が運ぶんだ。まっすぐ、ここに。無理なら電話しろ」と。失望させるなとマックが言うが、ロイは俺が失望させたか?と返す。そこに昔なじみのドクターがやってくる。マックに薬を処方して、ロイと2人になった。マックはとても悪いという。全ての機能が低下している。ロイはふと聞いた。内反足は治るのか?と。ロイは真剣だ。手術すれば、金がかかるが治るという。

ドクターが帰って、マックがロイに封筒を渡した。自分になにかあったら読め。どうするか書いてあると。

翌朝、ドクターを連れて、グッドヒュー家を訪れたロイ。早速診察に当たる。グッドヒューの爺さんが、手術代は望めぬこと、彼女には恋人がいることをロイに打ち明けるが、ロイは、そんなことはかまわないと言う。そして、ヴェルマが飛び出してきた。手術で直ると。喜びに溢れる家族。そのなかロイは1人出て行った。

       喜ぶ家族(中央、ジョーン・レスリー)

6_45

ロイがバンガローへ帰ると、人の気配がした。マリーだった。レッドとベイブのいざこざに巻き込まれ、頬に傷を負っていた。

7_35邪魔な女と、そんな若手で“仕事”が上手くできるのか不安になるロイ。彼は決心し、マリーをロスへ送り返すことにした。

マリーは今夜は、ロイの部屋のキッチンで寝泊りすることになった。

翌朝、ロイの唸り声とも言える寝言で目が覚めたマリー。ロイは近くのバス停留所まで送ると言うが、マリーは話し出した。ベイブと逃げてきたけど、私は男運がないみたい。でも今は違う。あなたに会ったから、帰らない。付いて行くと言う。勇気のある告白だったが、ロイは何も言わない。そしてマリーは支度をする…。

しかし涙があふれ出て、支度どころではない。ロイに拒絶されたと思ったマリーの悲しみはいくばくか。マリーはロイにしがみつき、お願いだからロスには送り返さないでと言うが、ロイはマリーに向かって言う。自分には計画がある、君抜きの。今さら変えることは出来ない-と言うのだった。それで良いんなら…。マリーはこの条件を喜んで飲んだ。

グッドヒュー家にロイは律儀に通っていた。ヴェルマの手術が終わったのだ。彼女に会ったロイ。近々大きい“仕事”があるが、それが終わったら…ヴェルマへのプロポーズだ。「君と結婚したい」と。しかし、ヴェルマは恋人のことを引き合いに出し、拒絶した。うなだれるロイ…。

バンガローにいると、電報が届いた。メンドーサからだ。“仕事”は今夜決行だ。

        レッドとベイブに指示を出すロイ

4_45

金庫に集中しろ、人間は俺がさばく。それが俺の仕事だ- と言って、ロイを先頭にレッドとベイブはバンガローを後にした。

その頃、メンドーサは金庫の鍵を開けて彼らを待っていた。ホテルに着いたレッドとベイブは何の苦労もなく、金庫に入り込んだ。ロイは目を光らせて人の出入りを見張っている。車の中で待っていたマリーは、客がホテルに入るとクラクションを鳴らし、ロイに伝える。人質になっていく客。そこに警備員が現れ、ロイは拳銃を出して威嚇した。すると人質の女が悲鳴を上げた。警備員はとっさに拳銃を抜くが、ロイの拳銃の腕のほうが確かだった。急いで立ち去る強盗団。メンドーサまでついて来てしまった。直ちに警察に連絡され、焦りながらも冷静に、後ろに警察の車がやってこないか確かめながら車を走らすロイ。しかし、前の3人は焦りだけしかなかった。行くべき道を違え、車の運転を誤り、車は大破し炎に包まれた…。ロイはあくまでも冷静だった。マリーが動揺する中、所詮は小物だ、と言ってのける。この仕事は奴らには荷が重すぎたと。

翌朝、マリーは男達のことで眠れなかったようだが、ロイはすっきりした面持ちだった。3人は死んだ。そして警察が嗅ぎつける前に宝石を渡し、金を手に入れ、全て解決だ。マリーにも分け前があるという。別れる前に渡すと。ロイは東部に行くという。マリーが自分も付いて行くと言うと、自分と一緒だと苦労するばかりだといってはぐらかす。何があろうとあなたについていく。決心は変えないとマリーは言うのだ。

ビッグ・マックの所へ宝石を持っていったロイ。しかし、出たのは以前ロスへ行く前に仲介をした元警官のジャックだった。新聞の記事を見せられ、メンドーサが生きていることを知ったロイ。…そしてマックはこと切れていた…。この時のためにロイに託された封筒を開け、電話をかけた。するとジャックが拳銃でロイを脅し、宝石の入った箱をよこせと言ってきた。銃の打ち合いになった。ロイは腹に傷を負ったが、宝石は彼のものだった。ジャックは死んだ。

ドクターに傷の手当をしてもらい、彼に促されヴェルマの足の調子を見に行くロイ。しかしそこには、もう“愛らしい”ヴェルマはいなかった。享楽的に踊りを楽しむ“ただ”の女がいただけだ。

マックの指示した所へ宝石を持っていったロイ。しかし、宝石は渡しても金はすぐには渡せないという。マックの後釜が決まったのだ。とりあえず手付金の200ドルを貰い、宝石の1つを頂戴し、彼は出て行った。

22_4

そして車に戻ると、待っていたマリーの指に頂戴した指輪をはめた。愛が芽生えた瞬間…。

新聞の一面ににロイたちの“仕事”が載った。警察も焦り始めている証拠だ。ロイの腹の傷も良くはならない。そして、ついに“仕事”の犯人の身元が割れた新聞は写真つきで書きたてた。「狂犬 ロイ・アール」!

 ロイの身を心配するマリー

8_272人はそんなことも知らず、“仕事”が全て終わったことに喜んでいた。これで無事東部へ行ける。彼はガソリンを入れに外へ出た。そこで、2人が連れていた犬の名前など知らぬ店の店員が名前を呼んで可愛がっている。不信に思うロイ。彼から新聞を取り上げ、ようやくその意味が分かった。

そこで彼女の身の安全を図って、ロイはマリーをラスベガスで待たせ、金を受け取ったら迎えに行くという方法をとることにした。マリーは怖いから一人にしないでと懇願したが、お尋ね者は問答無用で撃ち殺されるから、一緒にいては危ないと説き伏せた。そしてマリーをラスベガス行きのバスに乗せ、自分は車で出発した。しかしラジオのニュースで、警察が大捜査網も引いたと聞き焦り始めていた。そして彼は、シェラ・ネバダ山脈へと向かわざるを得なくなった…。

1_25― ボギー、ついに「主役」へ昇格!!いや、ビリングはアイダ・ルピノのほうが一番なんですけどね…。でも、堂々とした主役です。

特赦で出所したはいいが、ろくな職業に就けるわけもなく、やはり昔の家業が待っていた。彼の“上司”とも言うべき、ビッグ・マックから“仕事”の依頼が来て、ロスへひた走るロイ・アール。その途中、ボロ車の愛らしい娘に淡い恋心を抱いたりしながら、ロスへ着けば、待っていたのは邪魔な女と頼りになるのか分からない部下3人。そんな環境で“仕事”とは…。それに、このリゾート地にいる「不幸を呼ぶ犬」パードがロイにすっかりなついてしまった。この犬が後々ストーリーに絡んでくることになるんですね。

ボロ車のグッドヒュー老夫婦の愛らしい孫娘ヴェルマに恋心を抱き、内反足まで直してやるとは、シャバに出て少し舞い上がった姿を書きたかったのか?愛情を得たくて心が乾いていたところを書きたかったのか…。足が治ったとたん、何の魅力もない女に変わり果ててしまったヴェルマと、いつまでも変わらない愛を誓うマリーとの対比も見せ処の1つでしょう。そしてロイもついにマリーの愛に応える。“愛情”に対し、なかなか人間味のある“凶悪犯”なんですね。

マシンガンのシーンも出色ですね。若者がマックの贈り物としてマシンガンを出してきて、使い方を知っているか?とロイに聞く。ロイは、そのマシンガン・ケースをトトトン…と叩き、10年前のことを思い出したと言う。ある仕事の準備中に裏切り者が出た。そいつを許せなかった仲間が、マシンガンを取り出し、裏切り者に近づいて引き金に手を触れた。それだけで銃弾が飛び出すと、したり顔でメンドーサに向かって言う。マシンガン・ケースをトトトンと叩くだけなのに、緊張が走る。

一応“仕事”には成功したが、小物たちの哀れな末路。しかし、そのなかでも一番の小心者のメンドーサが助かる皮肉。そして物語はラストへテンポ良くなだれ込む…。上手い脚本ですね。ジョン・ヒューストンと、原作のW・R・バーネットです。ヒューストンはこのあと、ボギーの決定打「マルタの鷹」を監督することになります。

「化石の森」のデューク・マンティから、ようやく長い階段を上がって「主役」を得たボギーの渾身の演技も素晴らしい。脚本と配役が整って、ワーナーは宣伝部に「ボガートは今日からスターだ」と言ったとか。

当時は、アイダ・ルピノのほうがスターだったので、彼の名前が最初に来ない(ビリング一位ではない)最後の映画でもあります。

とにかく、ボギーは「主役」でなくちゃ!!

14_2 

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2007年4月27日

月光の女

1_8 1940年 <アメリカ>

監督 ウィリアム・ワイラー

出演 ベティ・ディヴィス

   ハーバート・マーシャル

    ジェームズ・

      スティーブンスン

  ゲイル・ソンダーガード

ストーリー

断雲よりもれる月明かりが目に痛いほどの、マレーのゴム園の静寂を破って銃声が轟いた。ゴム園のオーナーの妻レスリー・クロスビーが、ハモンドという男を射殺したのだった。急を聞いて駆けつけた夫のロバート、弁護士のハワード・ジョイス、地方治安部のジョン・ウィザースルは、驚くべき冷静さを持って語るレスリーの話を聞いた。ハモンドは夫の留守を狙って彼女を訪ね、執拗に言い寄った。レスリーは彼から身を守る為に仕方なく護身用の銃で彼を撃ったという。レスリーの公判がシンガポールで行われることになった。ジョイスは彼女の無罪を信じていたが、助手のチャイから、事件の当日ハモンドに宛てたレスリーの手紙があることを知った…。

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    拳銃をぶっ放すレスリー (ベティ・ディヴィス)

ウィリアム・ワイラー監督とベティ・デイヴィスの“ゴールデン・コンビ”の作品です。文字通り“月光”が光と影を作り出し、ノワールちっくな映画になってます。

さて、涙ながらにハモンドを殺した経緯を話し終えたレスリーは、ホッとしたように夫に抱かれます。若い地方治安部のジョンは、「彼女の話には感動しました。必死だったのがわかる。ハモンドは最低の男だ。」とさえ、言わしめてしまうレスリーの話術。ハモンドは、ハンサムで遊び人。そして気前が良かった。誰からも好かれていた男だった。しかし、レスリーに迫るような男だったか?という弁護士のハワードの質問に、「酒が入れば誰だってそうなりますよ。」と単純なジョン。

                  事件を話し終えたレスリー

16もちろん“殺人”を犯したのだから、裁判を受けなければならないレスリー。支度が出来て、マレーシアに行くとき、弁護士のハワードが聞いた。「拳銃からは6発全部発射されている。彼が倒れた後も撃ったのではないか?」と。しかしレスリーは、「残酷だと思うでしょうが、怖かった。混乱して何も分からなかった。」と答えた。何かが引っかかるハワードだったが、それを彼女には隠した。そしてマレーシアに向けて車は去っていった。

その後を見届けて、ハモンドが 横たえられている姿を見に来た女が1人いた…。実はハモンドの妻だった。

ハワードの事務所で、相変わらずレスリーを心配するロバート。彼が帰った後、ハワードの助手のチャンが「依頼者に不利になるようなものがある。」と言ってきた。レスリーがハモンドを殺した当日に彼へ送った手紙が存在するというのだ。手紙の写しを読んで驚愕するハワード。レスリーへの信頼が薄くなってくる。そしてレスリーを訪ねたハワードは、彼女にとって不利になる行動を色々と訪ねるが、レスリーは見事にはぐらかす。しかし手紙の登場。初めは自分が書いたのではないと言い張るレスリーだったが、ハモンドに夫に送るプレゼントの相談がしたくて、この手紙を書いて家へ招いたのだと言う。しかし、手紙の内容は違っていた。益々レスリーへの疑問が大きくなるハワード。レスリーの手紙を持っているはハモンドの妻だったのだ。助手のチャンが仲介して、手紙を1万ドルで売るというのだ。レスリーに不利なものは他人が持っていれば悪いことになる。彼はそれに応じた。

      姿を隠し、中国人街へ赴くレスリー

13

チャンに連れられるまま、中国人街へ到着し、ある店に入ったレスリーとハワードを待ち受けたのは、ハモンドの未亡人だ。この未亡人が怖いのよ。顔も何もかも。迫力がありすぎるって!!!そんな女を妻に迎えたハモンドってどうよ?

    ハモンドの未亡人 (ゲイル・ソンダーガード)

11_2

そして、レスリーとハワードは手紙を手に入れ、公判に挑む。公判の途中で言葉に詰まるハワード。彼は明らかに動揺していた。あの手紙が頭から離れない…。

もちろんレスリーは無罪になった。大手を振って裁判所から出て行くレスリーと夫のロバート。しかしハモンドの未亡人が公聴に来ていたのだ。不気味に2人をながめる未亡人…。

夫ロバートは忌まわしいこの地を離れて、スマトラで新しい生活を始めようとレスリーとハワードに告白する。ちょうど3万ドルで農園が売りに出されているので、貯金とその残りの金は借りるつもりだと言う。レスリーとハワードは言葉につまる。貯金の1万ドルは手紙の代金として使ってしまっていたのだ…。

…そしてレスリーは“殺人”の真実を話す。

打ちのめされたロバート(ハーバート・マーシャル)

8_15いやぁ、ベティ・ディヴィスが最後の最後のところまで偽り続けるレスリーという女を上手く演じてましたね。彼女の演技は絶品です。彼女は“悪女”に貪欲に挑んだ女優ですね。たとえ、真実を夫に話しても、許してもらえると計算している。

しかし、自分の本当の気持ちと、夫に対しての裏切りに気づいたときには、もう遅かった、という訳ですね。もう元には戻れない2人。

彼女の趣味のレース編みに没頭する姿もなんだか怖いしさ。一心不乱なんですよね。心が休まるなんて言っちゃって。

流石、“ゴールデン・コンビ”ワイラーとベティ・ディヴィス。他の作品も是非観てみたい。(特に「偽りの花園」と「情熱の航路」「愛の勝利」などなど…)しかし、ワーナー・ブラザーズはクラシック映画を出してくれないんですよ!。来年はベティ・ディヴィス生誕100周年なので、DVDを出してもらいたいところです。←その前に今年100周年のケイト・ヘプバーンのDVDを出せよ…。

4_33

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2007年4月20日

深夜復讐便

10_9 1949年 <アメリカ>

監督 ジュールズ・ダッシン

出演 リチャード・コンテ

    リー・J・コッブ

    ヴァレンティナ・

         コルテーゼ

ストーリー

洋行から戻った船乗りりのニックは、相変わらず明るい父親の歌声に導かれ家に戻った。次々と各国の土産を両親に渡すニック。恋人のポリーには、日本人形をプレゼントしたが、浮かない顔のポリー。しかし人形の腕に指輪がはめてあったことに感激する。父親には中国の靴をプレゼントするが、すると家族が黙ってしまった。実は父親は、青果業の悪徳業者フィグリアの差し金で事故を起こし、両足を切断していたのだ。もう仕事が出来なくなった父親は、トラックを同業者のエドに売ったという。ニックはエドに会いに行き、トラックを返してもらおうとするが、エドはリンゴの初荷で金を稼ぐつもりでいたので、返すことを拒否した。ニックはエドに1200ドルを出資し、もう一台のトラックに彼が乗り、リンゴを乗せ、フィグリアに復讐を誓いながら、サンフランシスコまでの36時間のドライブが始まった…。

12_4

   ニックにとって衝撃の瞬間(中央 リチャード・コンテ)

ちょっとちっちゃい規模の話ですが(トラックの荷物はリンゴですもん…)、これがなかなか面白い。36時間ぶっ続けでトラックを走らせるニックとその相棒エド。どの業界でもそうですが、この青果業界も“生き馬の目を抜く”のが肝心。しかし、ニックの父親から買ったトラックはおくぼろですぐにも壊れそうだ。だがそのトラックでサンフランシスコへリンゴを届けようとする。勝負に出たエドと、一方のニックは父親の復讐に燃えている…。そしてリンゴをトラックに満載できなかった2人組が、ニックとエドの邪魔をする…。この作品はスリリングですよ。

                ニックとエド(ミラード・ミッチェル)

7_18農園の鮮度の良いリンゴを手に入れ、(ここでもエドは金額をごまかそうとするんですね。油断は禁物です。)ひたすらサンフランシスコに向かう2台のトラック。しかし、と言うか、やはり、と言うか、旅は順調に行くはずはない。ニックのトラックのタイヤがパンクして、新しいタイヤと変えようとしたとき、ジャッキが折れてニックはトラックの下敷きになってしまう。幸いエドが助けてくれたが、厳しい旅になりそうだと思わずにはいられないニック。

再出発して、タイヤの回るシーンとニックの顔のシーンがかぶるシーンなどは、ドキドキしますね。彼がいつ眠って事故を起こしても不思議ではないですから。

しかし、無事にサンフランシスコの青果市場にたどり着いたニック。一番にすることはリンゴの値段を市場の人々に聞き、フィグリアの店を探すことだ。ニックがフィグリアの評判を聞くと、彼は市場でも“悪人”として有名な男だった。早速フィグリアの手下がニックのトラックにいちゃもんをつけてきた。そしてトラックのタイヤを引き裂いた。そこにフィグリアの登場。彼はニックが運んできたリンゴを値踏みし、悪いリンゴだとニックに言い渡す。1箱2ドルでいいなら買うと言うが、まだ相棒のエドが着いていないので、なんとも言えずにエドが着くのを待つことにした。エドはまだサンフランシスコまで遠いところにいた。オンボロのトラックに悪戦苦闘していたのだ。しかし36時間ぶっ通しの運転はニックの眠気を誘う。そこに、フィグリアの息のかかった女、リカが現れる。自分の部屋で休まないかと誘ってくる。この女に興味を感じたニックはそのまま彼女の部屋へ行き眠ってしまう…。

    リカ(ヴァレンティナ・コルテーゼ)とニック

6_27

そして、フィグリアはニックの初荷を勝手に一箱6ドル50セントで売りに出した。そして、ニックに好意を持ったリカはフィグリアを裏切る。彼のリンゴが勝手にフィグリアによって売られていると…。フィグリアの餌食になったニックはリカの部屋を飛び出す。

 フィグリア(リー・J・コッブ)とニック

4_31そしてニックはフィグリオから稼いだ3900ドルを奪い返した。一方エドのトラックは故障続きで、サンフランシスコまでまだまだ遠かったのだ。

金を手にしてすっかりご機嫌のニックは、ポリーを電話で呼び出し、今すぐ結婚しようと浮かれていた。しかし、フィグリアの手下がニックに襲い掛かり、金を取り戻そうとした。一緒にいたリカはとっさにニックの財布を拾い逃げるが、金はフィグリアの手に渡ってしまった。リカを疑うニックだったが、もう何も考えられないでいた。

サンフランシスコの青果市場までもう少しというところで、ついにエドのトラックが悲鳴を上げた。下り道にブレーキがきかない。トラックはわき道に逸れ崖下へとリンゴを撒き散らしながら転がり落ちた。彼の後をつけていた2人はエドを助けようとするが、トラックは炎上してしまう。エドの最期だった。

青果市場に着いた2人は、やはりフィグリアにリンゴを買い叩かれていた。死んだエドのリンゴは無事だったので、拾い集めて一箱50セントで買おうとフィグリオに言われたので、若い方が早速現場に向かおうとした。たかがリンゴのために人が死んだというのに不謹慎だと激昂するもう1人の男。実はお人よしなんじゃないの。悪い男しか出てこないから、この映画は“悪”に彩られいると思いがちだったけど、そんな人情に厚い人もいてホッとしました。

一方ポリーは大金に夢を膨らませ、サンフランシスコに着くが、彼女を待っていたのはリカだし、ニックは彼女の部屋に居るという。そして、ニックが全財産を取られたと聞いて、故郷に帰っていく。やっぱり女は“お金”が好きなんですな。結婚するなら金持ちがいいに違いない。ポリーはニックを捨ててしまう。現金な女です。

そしてニックはフィグリアと対決するため、フィグリアたちのいる酒場に向かった…。

いやぁ、ジュールズ・ダッシン監督の硬派の映画は、フレンチ・ノワールの傑作『男の争い』以来ですが、この映画も(たぶん)低予算ながらよく出来た映画でした。やっぱり、“悪役”の、リー・J・コッブが画面を引き締めていますね。魅力的な“悪役”のいる映画は出来が良い。主人公が喰われまくっています。『記憶の代償』では“悪役”だった、リチャード・コンテが今回は主役に回っていますが、う~ん…。ちょっと主役の器ではない…と言うか小粒ですね。彼は『オーシャンと十一人の仲間』と『ゴットファーザー』にも出演しているようですが、全然記憶に残っていない…。それは私の記憶喪失的な精神の成せる技なんでしょうか?

8_14

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2007年4月17日

記憶の代償

1_6 1946年 <アメリカ>

監督 ジョセフ・L・

    マンキーウイッツ

出演 ジョン・ホディアク

    ナンシー・ギルド

    ロイド・ノーラン

    リチャード・コンテ

ストーリ

第二次大戦、沖縄戦で負傷し記憶喪失になったジョージ・テイラーは、退役後本当の自分の姿を探すことにした。出征前に住んでいたロサンゼルスのホテルには自分の名前がなく、預けていた鞄を受け取ると、拳銃と“ラリー・クラバット”という人物から、「君名義で銀行から5000ドル引き出せ。俺を探すんだ。君の友、ラリー・クラバット。」という手紙が入っていた。テイラーは銀行に行き金を引き出そうとすると、行員が不審な動きをしたので逃げた。なんとかして“ラリー・クラバット”とコンタクトを取りたかったが、誰も彼を知らないと言う。しかし、「セラー」というクラブへ行けばクラバットのことが分かるかもしれないと言う言葉を信じて、クラブへ行くが…。

※ 思いっきりネタバレです。

2_35

  記憶喪失の男、ジョージ・テイラー(ジョン・ホディアク)

この作品はどうやら、巨匠ジョセフ・L・マンキーウイッツ監督の処女作のようですね。記憶喪失になった男が自分を探す…というストーリーです。

さて、クラバットを探しに「セラー」へ行ったテイラーですが、“ラリー・クラバット”を知らないか?とバーテンに聞くと、彼は知らないと言いつつも、そわそわしだす。そして不気味な2人組がテイラーを付け狙う。クラブの楽屋に逃げ込んだテイラーだったが、そこにはクラブの歌手クリステイがいた。怪しげに彼を見つめ、用心棒を呼びに行った彼女のテーブルから、「クラバットと結婚することにしたわ。メアリー。」という葉書が見つかる。クリスティも“ラリー・クラバット”に関わりがある人物なのか、益々不信感だけが芽生えるテイラーだったが、クラブの2人組が彼を拉致し、“ラリー・クラバット”のことは忘れろと言う。そして、ある家の前に捨てられた。なんとその家の住人は「セラー」の歌姫クリスティだった。聞けば、メアリーはクラバットに結婚式をすっぽかされて事故死したとのこと。自分がどんな男であるかは分からないが、憎まれていることは確かだと言うテイラー。

「セラー」のオーナー、メル(リチャード・コンテ)と

               歌姫クリスティ(ナンシー・ギルド)

3_32

彼女の配慮でクラブのオーナー、メルがクリスティの家にやって来た。出来る限り“ラリー・クラバット”を探す手伝いをすると言うメル。しかし、テイラーの気持ちは晴れるはずもなかった。

翌日、メルが懇意にしている警部補ケンドールに会ったテイラーは、“ラリー・クラバット”について衝撃的な話を聞くことになる。なんと彼は200万ドルと一緒に姿をくらましていたのだった。そして彼の職業は私立探偵だったことも分かった。

3人が外へ出ると、クリスティの車にテイラー宛の紙が挟まっていた。“ラリー・クラバット”の住所だろうか?早速急行するテイラー。出てきたのはマッチョな男と以前に会ったあばずれ女だ。なんと2人は“ラリー・ククラバット”を知っているらしい。女から“ヒント”を貰い、ターミナル埠頭の占いの館に足を運ぶテイラー。

出てきたのはなんと、「セラー」の不気味な2人組の1人だった。彼は明らかに“ラリー・クラバット”という名前を知っており、200万ドルの件も知っていた。彼の話によると、“ラリー・クラバット”は、3年前の殺人事件で指名手配されており、それが元で姿を隠したという。そして、もう1人クラバットと一緒にいた男がいたと…。それは テイラーだとキッパリと言い渡す。

3年前の殺人事件で目撃者がいたことが分かったテイラーは、その男コンロイを訪ねたが、入院中だと言う。そこで病院へ行くとコンロイは男に刺され瀕死の状態だったが、200万ドルのありかを教えてくれた。

             警部補ケンドール(ロイド・ノーラン)とメル

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そしていつの間にか愛し合っていたクリステイと2人で、ターミナル埠頭へ向かい、200万ドルが入ったスーツケースを見つけるが、テイラーは自分の驚愕の過去を思い出した…。

はぁ…最初に観たときは話が複雑で…????だったんですが、2度目に観たら話は単純明快でした。←おい “ラリー・クラバット”とは何者なのか?話はこれに尽きます。

3年前の殺人事件から、姿を隠し“ジョージ・テイラー”と名前を変え、軍に入隊した男こそ、“ラリー・クラバット”だったというわけです。そして200万ドルの行方をめぐって、男達が醜い争奪戦を始める…。

テイラーが“ラリー・クラバット”とだということになかなか気づかなかったのは、彼が戦争で顔に損傷を受けており、整形したせいだったんですね。

初監督にしては、なかなか興味深い作品に出来上がっていますが、いかんせん出演者が小粒なんですよね。それがこの作品の欠点でしょうか。主役のテイラー演じるジョン・ホディアクも、どう見ても“主役級”の顔をしていないんですよ。髭がなんとも胡散臭いですね。それで損をしているように見えます。歌姫クリステイ演じるナンシー・ギルドも、リザベス・スコットの二番煎じと言うか…。あまり魅力は感じませんでした。う~ん…残念ですね。

しかし、初監督に豪華スターを出演させる訳はないですからねぇ…。巨匠は一日にして成らず、ですね。

 髭を剃ったほうが良いかもしれない…

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2007年4月10日

情無用の街

4_27 1949年 <アメリカ>

監督 ウィリアム・キーリー

出演 リチャード・

        ウィドマーク

  マーク・スティーヴンス

    ロイド・ノーラン

ストーリー

センター・シティの街は殺しに強盗にと荒れていた。連発する殺人事件が同一の拳銃弾によって行われていることを知ったFBIは、同市に潜在するギャング組織の一掃をしようと、ブリッグス警部指揮の下、ユージン・コーデルとサイ・ゴードンをギャング団に潜入させることになった。ジョン・マンリーと変名したコーデルは、やくざになりすましサイと連絡を取りつつ、場末の拳闘場などをうろつきまわるうち、ギャング団のボスのアレックス・スタイルズと知り合い、その手下になった…。

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 “悪役”修行中、リチャード・ウィドマーク(スタイルズ)

このブログによくコメントをくれる、グリーンベイさんの話では、この映画がリチャード・ウィドマーク日本上陸だったようですね。やはりこの風貌、“悪役”が似合います。『死の接吻』では手下でしたが、今作ではギャング団のボスに昇格です。

FBIもギャング団のほうも、<相手を欺く>人間が1人組織に潜り込んでいる。その騙しあいが映画に緊張感をもたらします。…今年オスカーを取った『ディパーデット』もそうでしたね。そのオリジナル、香港ノワールの最高峰『インファナル・アフェア』は、その手のジャンルの最高傑作だと思ってます、私はね。

     ギャング団に潜入した、コーデル(マーク・スティーヴンス)

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さて、FBIからギャング団に潜入したのは、まだ新人のコーデル。しかし新人ながら、FBIの訓練で高得点をたたき出し、この役に抜擢された男。彼がギャング団に潜入し、もう1人のFBIサイ・ゴードンに情報を流す…という使命を帯びている。

そこで、彼は名前をジョン・マンリーと変え、やさぐれた格好をして、センター・シティをぶらぶらとうろつく。そしてボクシング・ジムに入り、ひとしきり試合にちゃちを入れ、今度は自分が試合に出ることになる。もちろん計算どおりだ。そして、“八百長試合”をして金を貰った。その姿に目を留めたのが、ジムの経営者でセンター・シティのボス、アレックス・スタイルズだった。スタイルズはことのほかマンリー(コーデル)を気に入り、自分の手下にする。作戦成功だ。

スタイルズ邸で会合があり、マンリー(コーデル)はスタイルズに別室へ呼ばれる。彼の嘘の前科をスタイルズは次々と読み上げ、「すごいじゃないか。」と感心する。そして、これはFBIを経て警察から直接来た書類だと言うのだった。コーデルはクールに振舞ったが、なんと警察のなかにもギャング団のスパイがいることが分かる。

 マンリーを気に入ったスタイルズ

2_39そしてついに強盗の日を迎える。コーデルはサイと連絡をとり、ギャング団逮捕に持ち込もうとする。ボクシング・ジムの地下は、なんと兵器庫になっていた。FBIも素早く動き逮捕に備えたが、武器を持っていよいよ強盗に出発…というときに、電話がスタイルズに入り、スタイルズは計画を中止する。明らかに警察のスパイからの情報だ。一体FBIの動きを知ることが出来るスパイは誰なのか?

その前に、連発した殺人事件に使われた拳銃と同じ拳銃弾をコーデルはスタイルズの拳銃から取り出した。しかし、スタイルズもコーデルの後からジムに到着する。果たしてコーデルはスタイルズに見つかってしまうのか?ここが最も息詰まる展開。コーデルは無事逃げおうせるが、スタイルズはコーデルが撃った拳銃痕を見つけ、ギャング団にFBIのスパイがいることを確信し、ギャング団のスパイの家を訪ねる…。

そして拳銃の指紋から潜入しているFBIの人間はコーデルだとわかる。一方でFBIに潜入しているギャング団の男の正体も分かった。ほぼ同時だ。コーデルがFBIに送った銃弾が二件の殺人の拳銃弾と一致し、FBIのフーヴァー長官直々にスタイルズと警察のスパイの逮捕を命じる。しかし何も知らないコーデルは危険な立場に立っていた…。果たしてどっちが早く捕まるのか?

この作品は当時としては珍しく、現地ロケが行われ、FBIの内部や訓練所などは本物なんだそうです。FBIの捜査や鑑識などはリアルで、見ていてちょっとドキドキしましたね。

そして、当時のボクシング・グローブのでかさといったら!あんなにでかくてパンチが効くのか?と思っちゃいました。

しかし映画の最初に出てくるFBI長官J・エドガー・フーヴァーの言葉は、もはや彼の公私混同・私有化していた組織だと分かっている人には、虚しく響くだけでしょうねぇ…。1924年から亡くなる1972年まで長官であり続け、マフィアという組織など無いと言い張り、そのマフィアの連中から甘い汁を吸い続けた男。もっぱら大統領のスキャンダルを追い続けては1人で楽しんでいた男(特にケネディ大統領)。彼は“善”の立場にいながら“悪”を楽しんだ男。まさしく<モンスター>と呼ぶにふさわしい男ですね。

          J・エドガー・フーヴァーFBI長官

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2007年4月 6日

死の接吻

8_11 1947年 <アメリカ>

監督 ヘンリー・ハサウェイ

出演 ヴィクター・マチュア

  リチャード・ウィドマーク

  ブライアン・ドンレヴィ

    コーリン・グレイ

ストーリー

クリスマス・イヴのニューヨーク。前科者ニック・ビアンコは失業中の身で、3人の仲間と一緒に宝石店を襲ったが、逃亡する際警察の銃弾を受け負傷し、彼だけが逮捕され20年の刑を受けた。地方検事補のディアンジェロはニックに共犯者の名前を白状すれば減刑し、仮出所させると持ちかけたが、彼は拒んだ。しかし仲間はニックの報酬を彼の妻にはやらず、生活に困窮した妻は自殺し、2人の子供は孤児院に入っていることを、以前隣の家に住んでいた娘、ネティが知らせた。ニックは彼らに復讐する為、ディアンジェロに全てを白状した。ニックについている悪徳弁護士ハウザーは、密告したのはニックではなく仲間のリゾだと思い、ギャングのトミー・ユードーにリゾーを始末するよう命令した…。

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  ニック(ヴィクター・マチュア)とネティ(コーリン・グレイ)

“裏切り”には“裏切り”を。そして2人の男の対決が緊張感に達満ち、爆発する瞬間に目が離せない映画でした。

妻と2人の娘がいながら、前科者というだけで仕事にあぶれている男ニック・ビアンコ。手っ取り早く“金”が調達できる方法は、やはり犯罪の道。しかし、ニックだけ警官の銃弾に倒れ、刑務所行きに。ニックは義理堅い男で決して仲間を売ったりはしない。1人で罪をかぶる男だ。

公判前の牢で一緒だった男が、ギャングのトミー・ユードーだった。彼は「ヌンフフフフフファァァァァ…」と不気味に笑う男。金髪のせいか、眉毛が無く見える。これも彼の不気味さを一層際立たせています。そして妙になれなれしい。警察に行く電車のなかでも彼はニックに「大物と一緒にいれて嬉しいぜ。」なんて話しかける。

これがデビュー作。トミー・ユードー(リチャード・ウィドマーク)

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刑務所から出した手紙が宛先人不明で何度も返ってくることに不審に思ったニックは妻の自殺を知る。宝石泥棒の仲間がニックの報酬を妻に与えず、生活に困窮しガス自殺を図ったのだった。そしてニックはディアンジェロの許へ。減刑や仮出所にはならないと告げられたが、事件のことを何もかも白状して復讐しようと決心したのだった。ディアンジェロは事件の密告者をニックの仲間のリゾーとし、彼を泳がしておいた。そしてニックも弁護士ハウザーに会い、事件を密告したのはリゾーだと言った。

暗黒街の人間ご用達の悪徳弁護士ハウザーは、実は暗黒街の黒幕だったのだ。甘い言葉でニックを吊り上げながら、ユードーにはリゾー殺害を命じていた。ユードーはハウザーの許で動く“始末屋”だった。ディアンジェロたちは、この男、ユードーを確実にあげるために作戦を練ったのだった。

                     リゾーの母親の最期

10_8ユードーがリゾーの家に行ったときには、もうリゾーは逃げた後だった。そして彼に対して嘘を言った母親を階段から突き落とし、殺害する。このあたりから段々ユードーの異常者ぶりが発揮されてきます。

ディアンジェロの計らいで、仮出所したニックはユードーに接触する。ユードーは大喜びだ。自分の“ダチ”だと言いふらし、歓迎してくれた。おまけに自分が関わった事件を自信たっぷりに事細かにニックに話しさえした。

 ニックと祝杯をあげるユードー

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このニックの証言でユードーを起訴に持ち込めると確信したディアンジェロ。法廷でニックに証言をさせ、有罪になるのは確実だと読んでいた。しかし、ニックは今は名前も変え、ネテイと再婚し、2人の良き父親として普通に暮らしていた。もし、証言したのがニックだと分かったらユードーはどうするか目に見えている。不安が支配するが、ディアンジェロは新聞にはニックの名前も写真も載せないと約束し、ニックは法廷に立った。

しかし、証言した翌日には新聞に彼の名前が載り、そしてユードーは無罪放免となってしまった。袋小路に立たされたニック。被害は家族にまで及ぶと思ったニックは今や風の音にさえびくつくようになっていた。そして安全のため、家族を遠くへ避難させ、一人残ったニック。もうディアンジェロの“保護”など信じられなくなった彼は1人でユードーと対決することを決心する…。

いやいや、トミー・ユードーという異常者を作り上げたリチャード・ウィドマークの勝利ですね。彼ありきの作品。それが、この作品を成功へと導いている。ニックがユードーと対決しようと彼のなじみの店へ行き、ユードーが出てくるのを待っているあいだ、奥のカーテン越の彼の目といったら!光っているんですよ、猫みたいに。不気味すぎるって。そしてあの笑い、「ヌンフフフフファァァァ…」も効いてます。う~ん、デビュー作でこれほどとは…素晴らしすぎるわ、リチャード・ウィドマーク。

一方のヴィクター・マチュアは、可も無く不可もなく…と言ったところか。犯罪者だが、子煩悩で妻を愛する家庭人でもある。彼はジョン・フォード監督の傑作『荒野の決闘』で、ドク・ホリディも演じれば、歴史大作といえばこの人…という俳優でもあるんですね。演じる範囲が広い人です。

リタ・ヘイワースと婚約しながら、第二次大戦で戦っている最中に、オーソン・ウェルズにリタをさらわれた可哀想な人でもあるんだなぁ…。

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2007年4月 1日

ストレンジャーズ6

6_24 1949年 <アメリカ>

監督 ジョン・ヒューストン

出演 

ジェニファー・ジョーンズ

ジョン・ガーフィールド

ペドロ・アルメンダリス

ストーリー

1933年のキューバ、ハバナ。マチャド大統領の独裁政治が続き、市民は苦しんでいた。銀行で働くチーナの弟は地下組織で活動しており、政府批判のビラを街でばら撒いていた。それが秘密警察の目にとまり、弟は殺されてしまう。チーナは復讐のため地下組織に加わった。彼女はその5人のうち、リーダー格のアメリカ人トニーと恋に落ちる。ある日、チーナの家が墓場に近いことに目をつけたトニーは、政治家を暗殺し、政府の主要メンバーが葬式で墓場に集まったところを狙い、政府を転覆させることを思いつき、チーナの家の地下室から墓まで続くトンネルを掘り始める…。

              復讐に燃えるチーナ(ジェニファー・ジョーンズ)

64日本未公開ながら、ジョン・ヒューストンの隠れた名作とでも呼びましょうか。なかなか良く出来た映画でした。「権力」と立ち向かう6人の勇士の物語。

キューバの議会からストーリーは始まる。4人以上の集会に参加した者は、国家への反逆罪に問われ、処罰される ― という議題が全員一致で採決された。議題に賛成な者は起立することになっている。提案者が皆を高圧的な態度で見ると、次々と議員が起立していく…。

そんななか、キューバ政府の弾圧に反対するビラを撒いている連中がいた。しかし、3人のうち1人が秘密警察の銃弾に倒れ、2人は彼を置いて逃走する。彼が死んでいれば事は重大にはならない。もし生きて捕まったとしたら、2人には“死”が待っている。チーナの弟マノーロはその1人だ。弁護士志望で、家族は彼のために働いているといっても過言ではなかった。しかしマノーロは大学の階段で秘密警察に殺されてしまう。チーナの目の前で…。

そしてチーナはマノーロの意思を継ぎ、政府に復讐するため地下組織に加わる。紹介されたのは、トニー・フェナーというアメリカ人。彼はキューバのアーティストをアメリカの劇場に紹介している商売人だ。早速頼まれた仕事に取り掛かるチーナ。

ある日、彼女が務めている銀行に、弟を殺した男がやって来た。アリエテという秘密警察の長だ。彼はチーノを舐めるように見、「どこかで逢わなかったか?」と彼女に質問した。もちろんチーナは「知らない」と答えるしかなかった。そしてトニーに彼を殺して欲しいと懇願するが、トニーは冷静だ。そしてチーナを送っていくとき、彼女の家が墓場からすぐの所にあること、そして地下室もあることに、ある計画が彼のなかで出来上がった。

彼は同士4人をチーナの家へ呼び、計画を発表した。まず著名な政治家を殺し、チーナの家の前の墓場で葬式をあげる。そのとき、地下からダイナマイトで墓を爆破し、葬儀に出席した大統領・政治家を皆殺しにする。というものだった。そしてダイナマイトを大量に用意し、家の地下室から墓場までトンネルを掘るのだった。

トニー(ジョン・ガーフイールド)とチーナ(ジェニファー・ジョーンズ)

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ある日、トニーとチーナが一緒に朝食をとっていると、アリエテがまた現れた。まるで彼女を監視するように。そそくさと店を出た2人に、何かを感じ取ったアリエテ…。

そしてトンネル掘りが始まる。地下室は蒸し暑く重労働だが、目をつけた墓まで90メートル掘らねばならない。男達は信念で穴を掘り続けていくが、議員を親戚に持つ男は罪の意識と疲弊で精神的におかしくなってくる…。

アリエテは明らかにチーナを疑っていた。そしていやしい愛情も持っていた。彼女を部下につけさせ、ついにチーナの家にやって来た。

 チーナの家に入り込んだアリエテ

   (左 ペドロ・アルメンダリス)

65ともかく、いやらしい男なのよ、アリエテは。自分の立場を利用して、チーナを口説く。ちゃっかり家に上がりこんで、カニと酒をしこたま食べて飲む。彼女にも酒を勧めるが、断られると「女が酒を飲むのはいただけない。」などといやらしく口説く口説く。トニーとチーナの関係も、もう嫉妬以外のなにものでもない。彼女への“愛”を示す為、ロシアン・ルーレットまでやってのける。アリエテがチーナの手に口づけしようとして、彼女が拒絶すると、哀れみを誘うような態度で、「私の女になってくれ。」と懇願する。そして酒が体にまわって、ばったりと倒れてしまい、運転手が彼を連れて帰るという醜態を演じたアリエテでありました。ああ、気持ち悪い男だな、こりゃ。

   “愛”の証にロシアン・ルーレットまでやっちゃうよ

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結局、精神的におかしくなった男は、ぶつぶつとつぶやきはじめ、皆の厄介者となり、彼をどうしようかと皆で考えているうちに、街に出てしまう。そう、ぶつぶつと彼の親戚の議員は良い人物なのに何故殺されなければいけないのかと…。しかし誰も聞いてはくれなかった。そしてトレーラーに轢かれ死んでしまう。哀しくはあるが、何故かホッとする皆。

そしてまた、アリエテの登場。銀行に現れ、トニーとの関係を執拗に迫るアリエテ。もうタダの嫉妬深いいやらしい男に成り下がっています。

やっと穴が墓場まで到達し、著名な政治家が殺され、これで計画遂行…と言うときに、驚くべき発表が彼らにもたらされた。なんと葬儀は別の場所で執り行なうことになったのだ。計画は全て水の泡になってしまった…。

やっぱり、ジョン・ヒューストンお得意の“男性映画”になってますね。トニーとチーナの恋愛は“おまけ”みたいなもんです。しかし、出てくる女性も強いってのが彼の作品の特徴でもありますね。『アフリカの女王』の、ケイト・ヘプバーン然り。この映画のジェニファー・ジョーンズも“強い女”です。『マルタの鷹』のメアリー・アスターもくせ者でしたね。ジョン・ヒューストン自身も銀行の出納係で出演しています。やっぱり俳優業も好きなのね。

しかし、この映画のジェニファー・ジョーンズは老けて見えた。まだ30歳くらいだと思いますが、顔のしわ、目の隈などがアップになるたび目立つ目立つ。どうしたんでしょう?

ちなみに、この1933年にマチャド政府は倒され、バティスタ政権が誕生します。そして、アメリカとの蜜月が続いた後、1959年に<キユーバ革命>により、フィデル・カストロが政権を掌握し、共産主義国になっていきます。

キューバの歴史を探るのに苦労した映画でもありました。

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2007年3月18日

郵便配達は二度ベルを鳴らす

4_24 1946年 <アメリカ>

監督 テイ・ガーネット

出演 ラナ・ターナー

ジョン・ガーフィールド

  セシル・ケラウェイ

 ヒューム・クローニン

ストーリー

サンフランシスコからサンディエゴまで、ヒッチハイクでやって来た流れ者のフランクは、安食堂の前で車から降りた。そこには都合よく“男性募集”という札が下がってていた。店の経営者のニックに気に入られたフランクは、店で雇ってもらうことになった。外でニックが客の相手をしていると、ふいに口紅が転がってきた。視線を上げると、そこには今まで見た事がないような美女が立っていた。言葉を失い一瞬で彼女に恋をしたフランクだったが、彼女はニックの妻コーラだった。しかし、どう見ても不釣合いな夫婦だった。初めはフランクを無視し続けていたコーラだったが、やがて彼女もフランクの若い魅力には勝てず、二人は不倫関係に陥る。ある日、ニックがこの店を売り姉のいるカナダへ行くと切り出した。コーラには寝たきりの姉の看病をしてもらうつもりだった。コーラは耐え切れず、ついにニックを殺すという陰謀が二人の間に芽生える…。

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放浪生活も終わりをつげるフランク (ジョン・ガーフィールド)

フランクの回想から始まる映画ですが、冒頭のラナ・ターナーが出てくるシーンはなんとも素晴らしいですね。

2_37フランクの足元に口紅が転がってくる。彼が口紅を拾うと、女の足のアップ。そしてカメラはコーラの全身を滑るように写し、コーラの顔のアップ。そしてフランクは言葉を失う…。この田舎町に何故こんなに美しい女がいるのかいぶかるフランクだが、彼女はコンパクトのミラーで自分しか見ていない。つまりは自分のことしか関心がない女なんですな。フランクに自分の美しさを見せびらかしている。口紅をフランクから貰おうとしても、顔はあくまでもコンパクトに向いている。そして口紅を貰い、フランクには全く興味がないそぶりで部屋へ消えていく…。

このシーンで観客の心を鷲づかみしたわけです。いや、なんともお見事なシーンでした。

   田舎町でくすぶっている美女 (ラナ・ターナー)

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ジョン・ガーフィールド演じるフランクは、放浪癖のある男。長い間1つどころにいられない。長年の放浪と旅する旅費のためにする仕事、そしてヒッチハイクで培った“愛想のいい男”“人の良い男”“使える男” を自然に身に着けた男。ニックの店でも“使える男”を存分にアピールする。店の看板が嵐で落ちたのをいいことに、もっと集客率が上がる夜になると“ネオンが瞬く”看板にしてみせる。そしてそれを自分の手立てにはしないで、ニックのおかげにする“謙虚な男”も演じられる。

こんな田舎町で娯楽といえば、近くの海岸で泳ぐぐらいだった。夜になるとフランクとコーラは海岸へ出かけ、愛を確かめ合うのだった。

駆け落ちをしようとしたこともあったが、思い直し、ニックが戻る寸前にレジスターに忍ばせた別れの手紙を破棄して、事なきを得たこともあった。

      愛が芽生えるとき

8_9ラナ・ターナー扮するコーラは、夫のニックには「愛していない」と言いつつも保身の為、彼と結婚した女。もちろん野心もある。いつか自分の店を持って人並み以上になりたいと思っている。

夫のニックは善人だが、めっぽう酒が好きで、毎日飲んでいる。飲酒運転のせいでフランクとコーラの目の前で事故になりかけたこともある。そのとき、フランクが「事故になってくれれば良かったのにな…」と、つぶやいたのをコーラは忘れなかった。

そして2人でニック殺害計画を進めていくが、一度目は失敗。ニックは一週間入院したものの無事回復。しかし、カナダ行きの話が出たときに、ついにコーラは自ら殺害することを決意したのだった。

泥酔していたといいほどの夫ニックと酔ったふりをしたフランクと一緒に、カナダへ車で行こうというのだ。男2人は酔っているので、運転はコーラ自身がすることに。車はマリブ岬を回り、フランクは前席にいるニックをワインボトルで殴り殺した。そして車を2人で断崖へ落とした。しかし、途中の岩に引っかかり、フランクは1人で車を奈落の底に落とそうとして、巻き込まれてしまう。コーラの「助けてっ!!」という叫び声に、車の後をつけていた地方検事が登場し、2人は逮捕されるはめに…。

                         殺害の瞬間

9_9狡猾な地方検事と、その上をいくコーラの弁護士の取引で、2人は無罪を勝ち取るが、その頃になるとフランクとコーラの愛は泥仕合じみた関係へとなっていく…。

夫を殺害するまでは、ちょっとためらいも感じていたコーラだったが、殺害した後の裁判から、ガラッと様子が変わります。髪の毛を振り乱し、フランクに食って掛かる強い女に大変身。いや、もともとこういう女性だったのかも…。フランクが側にいるとどうしても強い口調で皮肉を飛ばすコーラ。2人はお互いに監視しているんですね。何をするかと気が気でない。

この作品は『深夜の告白』と同じ、ジェームズ・M・ケインが原作なんですね。どちらも男をたきつけて、不要になった夫を殺す…という筋は同じですが、ヒロインが徹底的に違う。『深夜の告白』のヒロインは生まれながらの悪女。この作品のヒロインは、1人の男が現れてから何かが解き放たれていき、結局夫を殺してしまう。フランクが現れるまでは夫婦仲はうまくいっていたのに、彼が現れ夫に「一週間分の給料をあげてクビにして」とまで言った彼女は、この結末を予感していたのか…。

ラナ・ターナーの演技も良かったですが、ジョン・ガーフィールドが強烈な存在感をアピールした作品でもありますね。彼は39歳の若さで亡くなってしまいましたが、素晴らしい俳優です。もっと彼の映画が観たい…という気にさせる俳優さんですね。

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2007年3月 6日

ローラ殺人事件

Photo_56 1944年 <アメリカ>

監督 オットー・プレミンジャー

出演 ジーン・ティアニー

    ダナ・アンドリュース

    クリフトン・ウェッブ

    ヴィンセント・プライス

    ジュディス・アンダーソン

ストーリー

ニューヨークで名高い広告デザイナーのローラ・ハントが猟銃で顔を撃たれ、見るも無残な死体となって発見された。警視庁の腕利きの若い刑事、マーク・マクファーソンがこの事件を担当することになり捜査を進めたが、犯人の確証がなかなかつかなかった。そこにローラの親友で批評家として新聞やラジオで有名なウォルド・ライデッカーが捜査の協力を申し出てきた。容疑者として浮かび上がったのは、ローラの婚約者で同じデザイナーのシェルビー・カーペンター。ローラの叔母でシェルビーと親しいアン・トレドヴェルの2人。いずれも怪しい筋があるが、逮捕するまでにはいかなかった。ローラは金曜日の夜、シェルビーとの関係を考え直す為、田舎の別荘に行ったことをライデッカーから聞いたマーク。しかしこの話も役に立たず、月曜日の夜マークは再びローラの部屋を調べたが、やはり何も証拠品は出てこず、疲労のあまり眠ってしまった。すると突然部屋の電気がつき、目が覚めたマークの前に、死んだはずのローラが立っていた…。

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          これは夢の続きか?

 ローラ (ジーン・ティアニー) と マーク (ダナ・アンドリュース)

肖像画を通して、死んだはずの女性を愛してしまった男と、ローラを一から教育し洗練させ自分好みに変身させ、その虚像を愛している男。プレイボーイでいけ好かないが、ローラと結婚することで自分の価値も上がると計算している男。そして、その男を愛している女。

― 「ローラの死んだ週末を忘れない」という、ライデッカーの独白から映画は始まる。ローラが現れるまで、ライデッカーの視点でストーリーは進んでいく。

このライデッカーという人物は、いかにも“洗練”された人物だ。彼の部屋にはローラの部屋にあったものと同じ時計が置いてあり、数々の値段がつかない美術品にかこまれ暮らしている。服の着こなしも完璧。スーツに花を一輪挿すお洒落で粋な男だ。“洗練”“粋”“辛らつ”が彼を支えている。

一方の刑事、マーク・マクファーソンは当時の(1940年代)刑事・探偵にありがちな、トレンチコートと地味なスーツの仕事に燃える男。そんな相容れない2人がローラ殺しの犯人を捜す。

食事の席で、ライデッカーはローラについて語りだす。自分がローラを創ったのだと。

 ローラ・ハント再構成の瞬間 (左 クリフトン・ウェッブ)

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最初に会ったのは、ローラが作ったペンの広告に彼の推薦文が欲しいと食事の席に押しかけてきたのがきっかけだった。田舎から出たての冴えない女性だったが、彼女の容姿は美しく、彼は興味を引かれ、ローラの勤める会社まで行き推薦文を書いた。それからライデッカーはあらゆる一流の文化人に彼女を紹介し、服装を見立て、立ち振る舞い方、ありとあらゆるものを洗練させ、「ローラ・ハント」を創ったのだった。

   シェルビー (ヴィンセント・プライス) との出会い

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しかし、彼にとっていけ好かない男シェルビー・カーペンターにローラは出会い、シェルビーは彼女に猛アタックをかけてきた。そして婚約者の座を射止める。しかし、ローラは迷った。果たして彼と結婚することが正しいことなのか?そして考えをまとめる為に、金曜日の夜、ローラは田舎の別荘にいくとき何者かに顔を撃たれ死んだのだった。

                      容疑者の集まり

                 (中央 ジュディス・アンダーソン)

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しかし、捜査は行き詰ったままだった。ローラの家を捜査しても、確証になる証拠品などは出てこなかった。

そして週が明けた月曜日、証拠などなにもないと分かっていながらもマークはローラの家に行く。実はローラの肖像画をながめる為でもあった。彼はこの全く犯人を掴ませない彼女に惹かれていたのである。激務のため疲れていた彼は酒を飲み、ローラの肖像画の前の椅子で眠ってしまった。しかし、突然家の電気がつく。驚いて目を覚ました彼の前には、もっと驚くべきものがあった。なんと、死んだはずのローラが生身の人間として彼の前に現れたのだ。

ローラのほうでも驚きを隠せない。自分の家に知らない人物が、彼女の所持品を荒らしている。あわててマークは、自分は刑事であり、彼女を殺した犯人を捜しているという。しかし、ローラは自分が殺されているなど知らなかった。田舎に引きこもっていたし、ラジオは故障していたので、何も知らなかったのだ。

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しかしローラが着替えから戻ってきて、自分のものではない服を見つけたとマークに告げた。ローラのところでモデルをしていたダイアンのものだった。警察のほうでも検死した結果、遺体はローラではなく、ダイアンだと断定した。

ローラが生きていたことを知って、容疑者たちは一様に驚きを隠せない。なかでも一番驚いたのが、ライデッカーだった。発作を起こし倒れてしまう。そして捜査は一変、ローラ殺しではなく、ダイアン殺害として姿を変える。そうなると、ローラも容疑者の1人として挙げられることとなった。ダイアンはシェルビーと親しかったのだ。

そして、ローラがダイアン殺しの犯人として警察に連行される…。

― 甘美な音楽に取り巻かれ、ローラ殺しの犯人をあげる為に彼女の家へ通ううち、肖像画を通して、死んだ女を愛してしまう…という、“異常な愛情”のなかで、生身のローラをも愛してしまう刑事。ローラのほうも会ったばかりの男に惹かれていく…。そして、ダイアンをローラと勘違いして殺してしまった犯人はまたもローラ殺しに駆り立てる…。

この作品は“フィルム・ノワール”の傑作ですが、魅力的な悪女は出てこない。ローラが出現しても、彼女はあくまでも受身の女ですね。映画の最後のあたりでは、ローラとマークの恋愛物語になっています。それでも“フィルム・ノワールの傑作”として称えられるのは、プレミンジャーのストーリー運びの上手さか…。

この、“死んだはずの女を愛してしまう”というテーマは、ヒッチコックの『めまい』もそうですね。『めまい』も、“フィルム・ノワール”のジャンルに入れてある著作もありますが、そうかなぁ…。      

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2007年2月28日

幽霊と未亡人

7_12 1947年 <アメリカ>

監督 ジョセフ・L・

      マンキウィッツ

出演 ジーン・ティアニー

    レックス・ハリソン

    ジョージ・

                 サンダース

ストーリー

20世紀の始めごろ、若く美しい未亡人のルーシー・ミューアは親類達の反対を押し切って、8歳になる娘アンナと家政婦のマーサ、犬のランミーだけを連れてロンドンを去り、寂しい海岸のホワイトクリフに移り住んだ。家賃が安かったので、以前の家の持ち主ダニエル・グレック船長の幽霊が出るという問題の邸を借りた。噂に違わず、閉めたはずの窓が夜半に開いたり、台所でロウソクの火が消え、ガス燈、ストーブの火がルーシーが何度努力しても消えた。気の強いルーシーは、幽霊に呼びかけた。すると笑いながらグレッグ船長が現れた。彼は愛するこの家を人に貸す気は全くなく、追い払うためには手段を選ばないつもりだという。ルーシーも引き下がる気はなく、船長はある時期彼女の真情をためしてみると約束し、かくしてルーシーとグレッグ船長の奇妙な関係が始まった…。

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     間抜けな死に方をしたダニエル・グレッグ船長

                             (レックス・ハリソン)

これはなんと、“幽霊”と生きている人間のラブ・ストーリーなんですね。とてもロマンティックな物語です。

この“家”に住みつく幽霊のグレック船長。長い間皆から“自殺”したと思われていたが、実は眠っている間にガス・ストーブの栓を足で開けたことにより亡くなってしまったという、少々間抜けな幽霊である。

自分が建て、家具類なども全部自分でそろえた愛着のある邸宅を、アカの他人が住むなんて我慢がなららない。というわけで、やって来た未亡人ルーシーを脅かし出て行ってもらおうという算段だったのだが、ルーシーは気丈な婦人で、「私もこの家が気に入って、家賃も払っているのだから住む権利はあるのよ。」と、グレック船長と対立する。

     幽霊と、強気な未亡人 (ジーン・ティアニー)

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かくして、幽霊と同居するという奇妙な関係が始まる。

ある日、亡くなった夫の母親と姉が家に訪ねてきた。なんと、ルーシーがあてにしていた夫の株権がタダの紙くず同然になってしまったと言う。また、皆でロンドンで暮らそうという2人をルーシーは突っぱねる。カンカンになってロンドンへ帰る2人。しかしルーシーは収入の道を絶たれ、弱気になる。そこにグレッグ船長が助け舟を出す。自分の伝記を書いたらいいと言うのだ。切羽詰ったルーシーは仕方なく船長の言うまま彼の波乱に満ちた人生をタイプライターで綴っていく。そして2人はいつしか心を通わせるようになっていく。自伝が完成しようというときには、グレッグ船長はすっかりルーシーを愛してしまっていた…。

しかし、愛しても彼は実体のない幽霊。ルーシーに、「家にばかりいないで、もっと外に出るといい。」「恋をしてみるのもいい。」などと、ルーシーを遠ざける発言をするが、彼女は「死んでるからって、偉いことを言わないで頂戴。」「それに恋をするなんて、そんな気になれない。」と言い返す。

                偶然の出会いで惹かれあう2人

10_6ある日、ルーシーはロンドンへ出て行く。出版社は突然の訪問だったので、編集長には相手にしてもらえない。しかし、そこに救いの神が。自分の番をルーシーに譲ってくれた男性がいたのだ。そして、編集長はルーシーが持ってきたグレッグ船長の伝記を興味深々で読んで、是非出版したいと言ってくれたのだ。大喜びで出版社のドアを開けると、さっきの彼が戻ってきた。彼はマイルス・フェイヤリーという作家だという。また逢う日が来るかもしれないと彼は言うが、ルーシーの家はロンドンから遠く離れたホワイト・クリフだ。

しかし、2度目の出会いがあった。夏のホワイト・クリフの浜辺は避暑地に変わる。そこにフェイヤリーがやって来たのだ。彼はここに住みたいと考えていると言う。そして彼女を愛しているとも。恋に落ちる2人…。そしてグレッグ船長は身を引く決心をし、彼女の記憶の中から消えていくのだった。

だが、ある日ルーシーはロンドンの出版社で本の売り上げの小切手を切ってもらってから、ふとフェイヤリーの家を訪ねようと思い立った。しかし、出てきたのは彼の妻。実はフェイヤリーはプレイボーイでならした人物で、彼に騙された女性がよく家に尋ねてきているという。屈辱で身が震えるルーシー。そしてまたルーシーは世捨て人のようにホワイト・クリフから出ないまま時が過ぎていく…。

      また1人きりに…

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なんと特異な作品なんでしょう。良く練られた脚本、そしてそれを監督したジョセフ・L・マンキウィッツの力量。そして、グレッグ船長役のレックス・ハリソンのセクシーさ。ジーン・ティアニーの若い未亡人から年老いた役までカバーした素晴らしい演技。

20世紀の始めごろは、ホワイト・クリフに行くのには、馬車と市民の間に浸透しだした車。そして家政婦のマーサが買い物に行くには自転車。そして、成長した娘が婚約者とやってくるのは、最新型のスポーツ・カー。これだけでも時間の経過が分かるようになっている。上手い演出ですなぁ。

ともかく面白い映画であることは間違いない。私の大好きな映画の一本です。

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2007年2月20日

青い戦慄

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監督 ジョージ・マーシャル

出演 アラン・ラッド

    ヴェロニカ・レイク

ウィリアム・ベンディックス

  ハワード・ダ・シルヴァ

ストーリー

召集解除になった海軍飛行士ジョニーは、親友のバズとジョージと共にロサンゼルスへ戻った。ジョニーは2人と別れ、妻ヘレンの許へ戻るが、我が家はパーティの最中。妻ヘレンはハーウッドの腕に抱かれていた。彼はナイトクラブ「ブルー・ダリア」のオーナーで、なにかと評判のよくない男だ。ジョニーはパーティの客を全て帰し、妻と2人きりになる。愛児の死は実は自分の不注意で起きてしまったことだったと打ち明けるヘレン。その罪を忘れる為、彼女は毎晩酒を飲み浮かれ騒いでいたのだった。しかしその話を聞いたジョニーはヘレンを許せず、彼女をおいて雨の夜の街へ出て行く。翌日女中が部屋へ入るとジョニーの銃によって射殺されているヘレンを発見する。アパート付きの探偵ニューウエルは警察に通報する。妻殺しの容疑者になっているとは知らずに雨の街をさまよっていたジョニーは、同じく行くあてもなく車を走らせていた女性ジョイスと知り合いになる…。

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   優秀な海軍飛行士だったジョニー (アラン・ラッド)

この作品は、「フィリップ・マーロー・シリーズ」の作家、レイモンド・チャンドラーのオリジナル脚本です。そして人間関係が複雑なんですね。“作家の意地”というものがあったんでしょうか?

ジョニーの妻ヘレンは、「ブルー・ダリア」のオーナーで胡散臭い男ハーウッドの愛人。そして夜の雨のなかジョニーを拾ったジョイスはハーウッドの妻…という設定。そしてジョニーの親友バズと、アパート付きの探偵ニューウエルが話に大いに絡む― というわけです。

            拾った女(ヴェロニカ・レイク)と拾われた男

Photo_55ただ、人間関係が複雑なだけであって、ストーリーはいたってシンプル。『誰がヘレンを殺したのか?』という謎を解く…といったものです。

ジョニーは、妻ヘレンとハーウッドが人目もはばからず抱擁している場面に出くわし、そして愛児が死んだのは自分のせいだと告白したのが許せないでいる。一瞬彼女に対する殺意が芽生えるが、ピストルを椅子に投げ出し、雨の夜の街へ消えていく。

一方1人残されたヘレンはジョニーの親友バズとジョージが共同で住んでいるアパートメントへ電話をかけて、夫を探して欲しいと藁をも掴む思いで頼んできた。そしてバズがヘレンのところまで行ったはいいが、このバズという人物、実は傷痍軍人で頭に鉄板が入っていて、騒々しい音楽には耐えられない。騒がしい物音もダメ。とたんに凶暴になる人物だった。ヘレンのアパートメントまで来たところで、自分は何をするつもりだったのか忘れてしまい、アパートメントに接しているバーへ行く。そこにはヘレンもいて彼に酒をおごる…。そして、その後は…?

ジョイスは、夫ハーウッドとその取り巻きに耐えかね、家出中。サンタモニカへ行って気持ちの整理をつけようとしていたところに、雨でずぶぬれのジョニーに出会い、彼を車に誘う。お互い良い感情を持つが、両人共に結婚していたのが残念だった。途中でジョニーを降ろすが、翌日ホテルで偶然に出会う。実は同じホテルに泊まっていたのだった。

しかし、新聞でジョニーが妻殺しの第一容疑者であることを知り、驚くジョニー。ラジオでも彼の特徴をあげていて、警察は必死になって彼を捜していた。

何で胡散臭い男と結婚したのか、それが謎…。

10_2

ジョイスは夫から逃げていても何にもならないことを悟って、ロサンゼルスへと帰る。しかしハーウッドと一緒に居れば居るだけ、彼に対する愛情は消えていた。

そして、なんとバズがヘレン殺しの容疑者になっていた。ヘレンと接触があったこと、騒々しい音楽に頭が混乱して彼女を殺したのではないか…と警察は判断したのだ。「ブルー・ダリア」の社長室で、ジョイスが青いダリアの花びらをむしっては捨てる…。その行動がバズを狂わせる。ヘレンも同じことをやっていたのだ…。本当にバズがヘレンを殺したのか?そこにジョニーが登場する…。

しかし、アラン・ラッドはハンサムで声が良いですなぁ…。聞きほれちゃいますね、あの声には。確か歌手としても映画で歌ってました。ずっと“歌手路線”でいけば、苦しまずに済んだと思うんですよ。でもパラマウントには、ビング・クロスビーがいた…。背が低くても市民権を得られたのは歌手かダンサーだったんですが、彼は俳優の道を選ばされた。

「アラン・ラッドに乗る」という言葉は、映画好きな人なら分かると思いますが、男性にとっては屈辱的ですね。当時の映画は女性が男性を見上げるショットが必ずあったんですね。しかしアラン・ラッドは背が低かった。そういうわけで、アラン・ラッドは箱に乗ったり、あるいは女優さんが穴の中に入って演技をしていたそうなんです。

“背が低い”ということにアラン・ラッドはずいぶん苦しんだようです。しかし、ヴェロニカ・レイクとのコンビでは自然体でいられたんじゃないでしょうか。彼女もちっちゃかったですし。

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2007年2月18日

奥様は魔女

Photo_54 1942年 <アメリカ>

監督 ルネ・クレール

出演 ヴェロニカ・レイク

    フレドリック・マーチ

    セシル・ケラウェイ

   スーザン・ヘイワード

ストーリー

魔女狩りを扇動したことで、先祖代々ウォリー家では魔女に祟られ不幸結婚を強いられてきた。現在の当主ウォレス・ウォリーは、州知事選に打って出ようとする新進政治家で、新聞社の令嬢エステルと結婚間近である。エステルとの婚約パーティの夜、稲妻が走り家の近くの木に雷が落ちた。そして270年ぶりに魔女ジェニファーと父ダニエルはこの世に再び舞い戻ることが出来た。ジェニファーはウォレスとエステルの結婚式当日、彼に復讐するために“ほれ薬”を作り飲ませようとしたが、ふとしたことから自分が飲んでしまった…。

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あきらかに政略結婚のウォリス(フレドリック・マーチ)とエステル(スーザン・ヘイワード)

フランス映画の巨匠、ルネ・クレール先生がハリウッドへ渡って撮った映画の一本です。これがなんとも、ばかばかしくも面白くて楽しい作品に仕上がっています。

                解き放たれた親子はどこへ行く?

6ウォレスの先祖が魔女封じの為植えた木に雷が落ちて、270年ぶりに地上に舞い戻った魔術をあやつる親子。この父親と娘が最初にやることは、当然現在のウォリー家の当主ウォレスに復讐することだった。それには“体”がいるとジェニファーが言い張り、ホテルを火事にして“体”を手に入れたジェニファー。そこに、ウォレス達の乗った車が通りかかる。ホテルの宿泊客は全員避難して無事だと言われたが、彼の耳には女性の声が聞こえる。誘われるままホテルに入っていくと、ジェニファーが素っ裸で優雅に椅子に座っていた…。とにかくジェニファーに自分のコートを着せ、救出に成功。次の日の新聞はもちろん、婚約者の新聞社がウォレスを英雄に祭り上げ、結婚式へ…という算段だったはずが、ジェニファーは神出鬼没。いつのまにかウォレスの部屋でパジャマ姿で待っている周到さ。そして、ちょっとした魔法をかけて、ウォレスを夢中にさせることに成功する。しかし、ウォレスには結婚式が待っていた。(2人で愛を語り合ったのに、ウォレスは実に几帳面な人物ですな…)結婚式に急ごうとするウォレスに、“待った”をかけるため、彼女は父親と一緒に“ほれ薬”を作り、それを飲ませればウォレスはジェニファーにイチコロになる。

  “ほれ薬”を作るジェニファー (ヴェロニカ・レイク)

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…だったはずが、自分が座っていた椅子の上の絵が落ちて、ジェニファーは気を失う。そしてウォリスは彼女に“ほれ薬”を飲ませてしまう。さあ大変、ジェニファーは本気でウォリスを愛してしまう。

そして、いよいよ結婚式へ…。この場面はとても可笑しく、ルネ・クレールの“遊び心”が伺えます。

「いつまでも愛しています~♪」という歌のなか、ウォレスは右往左往。なんせ花婿の部屋にジェニファーが居て、騒ぎを起こす。そのたびウォレスは2階の部屋へ何度も飛んでいく。そしてまた「いつまでも愛しています~♪」と歌うおばさん。もう待たされっぱなしのエステルはウォレスの不審な行動にしびれを切らし、2階へ。そこにはジェニファーが…。ぶち切れたエステルと父親は結婚を白紙に戻してしてまう。

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そして翌日には、新聞の一面に「ウォリー大スキャンダル!!」という、知事選に不利になる記事が踊っていた。

しかしそんなことは、なんのその。ついにウォリスはジェニファーを受け入れ、結婚する。魔女ジェニファーは、ウォリスの知事選で大活躍。皆が皆「ウォリーを知事に!!」と言い出す。敵の候補を応援していた者も、なんと赤ちゃんまで!泣き声が「ウォリーを知事に!!」なんですよ。

かくして“新知事”ウォリー・ウォレスの誕生となる。そして2人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ…とはいかないのは映画の常識。父ダニエルが黙っているはずがない。

またここからの場面もルネ・クレールらしく軽やかなタッチでストーリーを進めていきます。

いやぁ、楽しい映画でした。フレドリック・マーチのドタバタぶり。ちょい役でしたがスーザン・ヘイワードのぶち切れの演技。父親ダニエルの娘を思う(?)行動。(と、いっても酒瓶の中に隠れるものだからいつも酔っていて、呪文をすっかり忘れている困った父ですが)そして、ヴェロニカ・レイクの愛らしさ。彼女は少し甘ったるい鼻にかかった声が魅力的ですね。

そして1時間半で、ビシッと終わらせる監督の力量。

最近は“娯楽映画”の時間が長いですからねぇ…。こういう映画をお手本にして、余計なエピソードを省くということを学んで欲しいですね。いや、本当に。

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2007年2月10日

サリヴァンの旅

2_31 1941年 <アメリカ>

監督 プレストン・

       スタージェス

出演 ジョエル・マクリー

    ヴェロニカ・レイク

ストーリー

娯楽作品を監督してハリウッドで成功を収めていたジョン・サリヴァンは、自分の仕事に不満を感じていた。もっと重厚な作品を撮りたいと彼は映画会社の重役たちの反対を押し切り、実際の現実社会を知る為、浮浪者に成りすまして旅へ出た。重役達は次回作の宣伝のためと、トレーラーに乗って彼の行動を取材させようとする。サリヴァンはトレーラーをなんとか捲こうとするがうまくいかず、結局ラスベガスで落ち合うことに決め、再び1人旅を始める。しかしサリヴァンの旅はなかなか計画通りに進まない。そんなある日、ハリウッドのカフェでブロンドの美女に出会う。彼女はルビッチの映画に出演する夢に破れ故郷に帰ろうとしていた。サリヴァンを浮浪者だと思いコーヒーをご馳走する。サリヴァンは実は自分は映画監督だと彼女に打ち明けるが、彼女は信じない。仕方なく自分の豪邸へ彼女を連れて行って納得させるが、彼女は“旅”に興味を持ち、そしてサリヴァンは彼女と2人で旅を再開する…。

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     サリヴァン、旅へ出る (ジョエル・マクリー)

あらま、この映画はプレストン・スタージェスが本当に撮ったのか?と思えるほど、“キャプラ”ちっくな作品ですね。ヒューマニズム溢れる作品に仕上がってます。

“スタージェスらしさ”も、もちろん健在なんですがね…。トレーラーとサリヴァンのおっかけっこなんて正にスタージェス。ハリウッドから離れる為に旅に出たのに、若い男とみると俄然色気を振りまく“おば様”の家にご厄介になりながら、彼女の攻勢にぞっとして逃げ出し、ヒッチハイクしたのはいいけれど、ハリウッドへ戻ってしまうおかしさ。

                                          豪邸のプールでお遊び   

Photo_52浮浪者の格好でハリウッドのカフェに入るとブロンドの美女が1人…。しかし、ここはハリウッド。美女などゴマンといる街。彼女も夢破れ、故郷に帰ろうとしていた。そんな彼女にコーヒーをご馳走され、自分はこんな格好だけれど本当は映画監督だと打ち明ける。だが彼女は信じない。彼女が住んでいたアパートメントでこの前映画監督が拳銃自殺したばかり。それでは…と、自分の邸宅に連れて行くサリヴァン。この邸宅の効果はきいた。広いリビングにプールまである。それに、ルビッチに紹介状まで書いてあげるというやさしさ。

しかし、サリヴァンはまた“旅”に出なくてはならない。今度は彼女がサリヴァンの“旅”に興味を持ち、自分も行くときかない。かくして、彼女も浮浪者の格好で2人旅に出ることになる。その前にラスヴェガスで待っていたトレーラーでお腹いっぱいご馳走をほおばって出発。

列車に無銭乗車(こういう人たちをホーボーというんですね)し、豚の匂いがする草の上で寝る。4_19実社会の底辺ではどんな生活なのかしっかり体験していくわけです。トレーラーのご馳走とははるかに違うお粗末な食事を食べ、寝場所にも困る毎日。とうとうサリヴァンは風邪でダウン。しかし、最後にやる事があった。街で困っている人々に5ドルを恵むということを…。

しかし、その行動には危険があった。彼の後をつけた男がサリヴァンを殴り倒し、その隙に彼が持っていた金を強奪。だがその男は列車にはねられて死んでしまう。

新聞はセンセーショナルに、映画監督ジョン・サリヴァン死亡と書き立てていた…が、肝心の本人は何故か自分殺しの犯人として厳しい規律のもと、厳しい労働に従事することに…。そこには“人間”などいない世界。皆鎖につながれ、もくもくと重労働をこなすだけ。唯一の楽しみは日曜日にある映画上映会のみ…。

浮浪者に成りすまし、底辺の生活を余儀なくされる人々の姿を等身大で見て、それを映画に生かそうなどという甘い考えが産んだ囚人への道。それはとてつもない代償だったと気づくサリヴァン。そして、囚人として暮らすうちに、彼らが求めていたものをやっと分かったサリヴァン。

       8時じゃないけど、全員集合

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やっぱり、限りなく“キャプラ”ちっくなんですよね~。スタージェス監督お得意の男女の当てこすりもないし…(ただ、サリブァンと彼女の間に瞬く愛情が見えますが…)いや、やっぱりこれもスタージェス監督の持ち味の1つなのかも知れないですが、監督の他の作品と比べると、なんかこじんまり収まっちゃった映画になっちゃってますね。

この映画のヒロイン、“彼女”役(最後まで名前が出てこないんですよ)のヴェロニカ・レイク嬢は、好きな女優さんです。彼女は髪型に特徴があって、右目が隠れるくらいの髪型なんですね。「ピー・カ・ブー(いないいないバア)」「ハーフ・カーテン」などというニック・ネームを頂戴した“スター”です。皆この髪型を真似て、第二次大戦では髪をミシンに捲きつけちゃう女性が大勢いたようです。

浮浪者の彼女はとても可愛かったですね。

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2007年2月 8日

殺人者

8_1 1946年 <アメリカ>

監督 ロバート・シオドマク

出演 バート・ランカスター

    エヴァ・ガードナー

    エドモンド・

              オブライエン

    アルバート・

                    デッカー

ストーリー

小都市ブレントウッドのガソリン・スタンドに勤めるスウェードという男が、ある日2人の男に射殺された。警察はただの事件として処理したが、保険会社の調査員リアダンはこの事件に興味を持って調べだした。スウェードは元ボクシング選手で窃盗罪で3年の刑を受けていたことが分かった。その当時、彼を受け持った刑事ルビンスキーから、スウェードは以前ルビンスキーの妻のリリーと恋仲だったが、暗黒街のボスコルファクスの情婦キティに心を引かれリリーを捨て、その後リリーの罪をかばって入獄していたことが分かった。獄中でスウェードと一緒だった老人チャールズトンに会ったリアドンは、スウェードが出獄後、コルファクス一味と一緒に帽子会社の給料強奪に参加したが、一味に裏切られ、その腹いせに盗んだ金を全部取って逃げた ーということを知った…。

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2人組を待っていた(?) スウェード(バート・ランカスター)

バート・ランカスターのデビュー作です。ちょっとした初々しさをかもし出しておりますが、やっぱり“押しの強いキャラクター”はデビュー作から健在です。

“運命の女”に引かれた為に自ら道を誤ってしまった男の愚かさ。まぁ、あんな美人で誘うような瞳で見つめられたら男なら何度でも道を誤ってしまうかも。エヴァ・ガードナー、26歳の時の絶頂の美しさと妖しさ…。そりゃなかなかの美人の恋人がいようとも、彼女を捨ててしまう気持ちは分かるわねぇ。男は危険なものを好むのね。

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 クラブ歌手のリリー(エヴァ・ガードナー)とスウェード

そうしてリリーに熱烈な恋心を抱き、暗黒街のボス、コルファクスに見初められ、悪の道に走るスウェード。彼女がつけていたブローチが盗難品だったことから、スウェードが身代わりになり、3年間刑務所暮らしになってしまう。そしてリリーからの手紙も段々少なくなり、ついにはこなくなる。リリーの身に何か起こったのだろうかと心配するスウェード。刑務所で同じ部屋のもうすぐ出所になるチャールズトンに彼女の様子を知らせてくれと頼む…が、チャールズトンはキティの本性を知り尽くしていた人物だったので、これ以上スウェードが傷つくことになると思い、あえて彼女のことを知らせなかった。

スウェードは出所後、またコルファクス一味と組んで“でかい仕事”に誘われる。指定された場所に行くと、キティが何事もないようにそこにいた。かわした言葉は「ハロー」だけ。彼女は再びコルファクスの愛人に納まっており、自分を愛していてくれていたわけではなかったのか?愛していたのは自分だけだったのか…。複雑な心境ながら、“仕事”を引き受けるスウェード。

                      “でかい仕事”の相談

10_1しかし、その“仕事”帽子会社の給料を強奪するのには成功したが、スウェードには落ち合う場所を変えたことを皆黙っていたのだ。そうして裏切られたことを知ったスウェードは怒りに燃え、強奪した金を全部奪い、隠したのだ。

黙っていられないのはボス、コルファックスだった。リリーを愛しすぎ腑抜けのようになっていた男に大金を奪われた…となってはプライドが許さない。部下にスウェード殺しを命じ、かつ彼が隠した大金を取り戻す計画を立てる。

スウェードは2人組の男に殺され(何故かスウェードは殺されるのを待っていたように感じましたが…)、彼が使っていた部屋をコルファクスの部下が捜索する。しかし、リアダンがそれを待っていた…。そして大金の行方は…。

妖しい女リリーを愛したがゆえに、愚かな男に成り下がってしまった男。そして思わせぶりに愛していると錯覚させた、これまた愚かな女の末路。男と女の業は深かった。

この映画はスウェードの殺害から始まり、生前の彼の職業、妖しい女との一方通行の関係、そして大金を強奪しながら、彼だけがのけ者にされた怒り、そしてコルファクスの部下がスウェードを殺しにやってくるのを待っていた男の哀愁が、ビシッと描かれています。

そして、エヴァ・ガードナー嬢は、“フィルム・ノワール・ヒロイン”をバシッと演じています。う~ん…、「演じている」というよりは、「そこにいるだけで危険な女のオーラが出ている」ですね。いや、美しい。そして保険調査員のエドモンド・オブライエンのテキパキした無駄のない演技。コルファックス演じるアルバート・デッカーの貫禄。素晴らしいの一言に尽きます。

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2007年1月18日

扉の影の秘密

8_3 1948年 <アメリカ>

監督 フリッツ・ラング

出演 ジョーン・ベネット

    マイケル・

      レッドグレーヴ

ストーリー

ニューヨークの富豪の娘で社交界の花形シリア・バレットは両親を亡くしてから求婚者はゴマンといたが、愛せる男性はいなかった。唯一の頼みの兄が急死すると、弁護士ドワイトに求婚され、シリアは結婚する気になったが決定は先延ばしにして、友人のイディス夫妻とメキシコへ旅立った。メキシコのある町で彼女は1人の男の視線を感じ、その男に惹きつけられた。男はマーク・ラムフィアといい、建築家でニューヨークで『アート』という建築雑誌を出していると言う。シリアが彼について知ったのはそれだけだったが、2人は恋に落ち電撃的に結婚する。幸福な数日が過ぎると、マークは雑誌の用でニューヨークへ行くと言って2人は離ればなれになった。しかし、彼の故郷レヴェンダー・フォールズにすぐ来て欲しいとシリアに手紙が来た。大急ぎでレヴェンダー・フォールズ駅に到着したが、マイクの姿はなく、彼の姉カロラインがシリアを出迎えた…。

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    裕福だが孤独な、シリア (ジョーン・ベネット)

映画公開時は『扉の陰の秘密』という題でしたが、DVD化されるにあたって、『扉の影の秘密』となった本作ですが…う~ん…う~ん…“秘密”どころか“謎”だらけの映画ですね。

第一にこの映画は決して“フイルム・ノワール”ではないということ。言うなれば“心理スリラー”とでも言いましょうか…(ヒッチコック監督の『レベッカ』を意識して作られたそうです)そしてストーリー上の“謎”が解けないこと。なんとも理解に苦しむ映画でした。もの凄い消化不良の嵐です。

しかし、ジョーン・ベネット嬢は『スカーレット・ストリート』のはすっぱな悪女から、声を低くしあまり抑揚を見せない話し方で、社交界の華シリアに変身しています。これは上手くいったと思えます。当時の<スター>のマジックとでも言いましょうか。

そしてストーリーは、シリアの一人称で進んでいきます。最初はメキシコの教会で結婚式を挙げる2人を語っています。神聖な結婚式に必要なものを並べ立てながら、どうして自分が今、結婚式に挑むのか…逃げたほうが幸せなのではないか、彼女の心が揺らいでいる様子を彼女自身が語るんですね。

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  シリアの謎の夫、マーク (マイケル・レッドグレーヴ)

シリアにとっては新郎のマークは全く未知なる存在なんですね。メキシコでの甘い新婚生活で分かったマークという人物は、建築家で建築の雑誌を出版している男というだけ。しかしシリアはそれ以上マークの素性は関係がなかった。彼が側にいてくれるだけでよかった訳です。しかしマークが不自然にも雑誌のことでニューヨークへ行く、という段階で何故か不安になる。だがマークから自分の家がある、レヴェンダー・フォールズに来てくれという手紙に、安堵するシリア。ところが駅に着くと、迎えに来ているはずのマークがいない。その代わり、彼の姉のカロラインが待っていた。不信に思うシリアだったが、マークの壮麗な家に着くと、カロラインがこの家のことを語り始める。まずマークにとってはシリアとの結婚は2度目であったこと。そして彼の息子が一緒に住んでいること。なにもかも初耳で戸惑うシリア。しかし、カロラインに案内された新婚の部屋は素晴らしいもので感激するシリア。夕食の間まで時間があったので、屋敷を見学するシリアはマークの仕事場を見つける。そこには彼の秘書のロビイという女性までいた…。

そして翌日、やっと故郷に帰ってきたマークを出迎えるシリアだったが、彼は一瞬喜んだものの、すぐきびすを返してまた商用があると言って、どこかへ出かけてしまう。呆然とするシリア。自分の結婚はやはり間違いだったのだろうかと、ニューヨークに帰ろうとするが、マークが家へ帰ってきてホッとするシリア。シリアはマークを愛していたが、マークはどうなのか?そして、この家には何か“秘密”があると見抜いたのだった。

                 7号室の合鍵を作るシリア

6_16結婚披露宴が行われれていたある日、突然の大雨に降られ、マークはいよいよ“フェリシタス”(この言葉は2通りあり、“幸福”と“的確”)の部屋へ皆を案内することになる。シリアはてっきり“幸福”の意味だと思っていた部屋部屋を見学して、戦慄を覚える。彼にとって“フェリシタス”は“的確”の意味だったのだ。歴史的な殺人が行われた部屋を寸分違わず的確に再現した部屋部屋を皆に公開する。決して“複製”ではなく、小道具に至るまで本物なのである。しかし7号室は封印されたままだった。この部屋には何かあると感じたシリアは、蝋燭で合鍵の型を作り、後で完全な鍵を友人に作ってもらいシリアに届けた。

そして、皆が寝静まった夜中にシリアは7号室に入る。それは以前前妻が使い、今シリアが使っている寝室に瓜二つだったのだ。長さが違った部屋の蝋燭を見て、シリアは愕然とする…。この部屋はシリアを殺す為に作られた部屋だったのだ…。

マークは実は女性を嫌悪していた。彼の人生には必ず世話を焼く女性があられるのだった。母親、姉、前妻、秘書…。それが彼の女性に対する憎しみを生んだ。前妻の残した息子に対する仕打ちは憎しみに満ちている。そして、シリアは彼の女性に対する憎しみは、リラの花にあることを気づく…。

精神的に不安定な男、そして彼のことを何も知らずに結婚してしまった女、マークを置いて遊びに耽る母親、マークの幼少期にいたずらをした姉、愛せなかった前妻、その息子に辛く当たるマーク…。このような不安定に満ちた登場人物は、フリッツ・ラング監督には素晴らしい題材だったと思われるものの、なんともこの映画を消化しきれていない…というのはつくづく残念でなりません。

この映画で、彼が恋していたジョーン・ベネット嬢との共演が終わった、というのもフリッツ・ラング監督には痛手であったのは間違いないところでしょうね。この後、彼が望む女優が現れなかったのが、50年代の映画に影響をもたらしていますね。20年代~40年代に頂点に立った監督は、50年代にはそこそこの映画を撮っていますが、やはりジョーン・ベネットのようなむせ返るように魅力的で、誘うような女優が出なかったことが悔やまれます。(グロリア・グレアムと2作品撮っていますが…)

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2007年1月13日

スカーレット・ストリート

11 1945年 <アメリカ>

監督 フリッツ・ラング

出演 エドワード・G・

       ロビンソン

    ジョーン・ベネット

    ダン・デュリエ

ストーリー

クリストファー・クロスは有能な銀行の出納係で、勤続25周年のパーティを同僚達から開いてもらった。その帰りの夜、雨のなかで男に暴行されている女性を助けた。彼女をアパートメントまで送り、その下のバーで身の上話をした。彼女はキティという女優志願でモデルをしていると言い、クロスはつい自分の職業を画家だと偽ってしまった。クロスの唯一の趣味は画を描くことだったのだ。一方キティに暴行をした男は実は彼女の恋人で、キティの稼ぎで生活をしている無職の男、ジョニーだった。クロスはキティに会うたびに彼女に惹かれていき、キティの言うがままアパートメントをアトリエとして借り、そこにキティを住まわせた。しかし、どんどんキティの要求は大きくなり金が必要になるが、銀行から横領する度胸もなく、彼は本当の職業をキティに打ち明けた。だが浪費家のキティとジョニーには金が全てだった。そしてジョニーは妙案を思いつく。クロスの画を売ろうというのだ…。

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  パーティで金時計をプレゼントされ、ご満悦のクロス

          (エドワード・G・ロビンソン)

ふ…不憫だ…、エドワード・G・ロビンソン。有能な銀行マンでありながら、この容姿のおかげで女にもてず、結婚した相手は何事にも小うるさい女。事あるごとに前の殉職した警官の夫と彼を比較する。食器洗いは彼の仕事で、なんとフリフリのエプロン姿を披露する。そしてこの食堂がクロスのアトリエと寝室になっている…。そんなエドワード・G・ロビンソン見たことがない…。

                       クロスに助けられたキティ(ジョーン・ベネット)

7_7そしてフリッツ・ラングのミューズ、キティを演じるジョーン・ベネット嬢は、実は女優でもモデルでもなく“夜の女”なんですね。お金が必要になると街角に立ち、稼いだ金をジョニーに奪われる。しかし彼女はジョニーにぞっこんなので、何をされようと平気で彼についていく女。

そんな女が、たまたま出会った男の職業は画家と聞いて黙っているわけがない。ジョニーと二人で彼につけいろうと思い立つ。始めは“家”から。彼のアトリエを持ったほうが良いと勧めて、キティとジョニーは勝手に豪華なアパートメントを購入する。もちろん金の出所はクロスだ。彼にはそんな金などなかったが、妻が隠していた株券を売り払いアパートメントにキティを住まわせる。(もちろんジョニーも一緒だ)。そしてキテイは「女優にはお金がかかるのよ。色々衣装代とか何か。」と言い、またしてもクロスに金の要求をする。キティとジョニーの欲望を満たす金の催促はどこまでも続く。

    キティとジョニー (ダン・デュリエ)

6_18

しかしそんな金はどこにもなく、クロスは銀行から金を横領しようとするが、出来なかった。だが、キティとジョニーには金が全てだ。クロスが金の工面に困っている間、ジョニーはクロスの画を売ろうと思いつき、なじみの画商に画を持ち込むが、この画は素人が描いた画でとても売り物にはならないと言われ、クロスの“画家”説にジョニーは疑問を抱くが、今度はロンドンで日曜画家たちの集まりで、ある画家に画を預かってもらうが、その画は有名美術評論家と画商に絶賛される。この画の作者は誰かと聞かれたジョニーはとっさにキティの名を語ってしまう。

  キティにペデキュアをするクロス

3_18 クロスは困惑どころか、彼女の名前で画が売れたことに感激し、ますます画を描くようになっていく。会った時からキティに惹かれ恋し、今は結婚したいと願っているクロスは、彼女の頼みなら何でもしてしまう男になっていた。ついに銀行からお金を横領し始めるクロス…。そしてキティ(本当の画家はクロスだが)の画が個展を開くまでになっていた…。キティとジョニーにとっては渡りに船である。ガッポリ稼いで、クロスに画を描かせ続ければ後は悠々自適なもんである。キティはクロスから「結婚して欲しい」との頼みを巧みにかわしながら、ジョニーと金に満ちた生活をおくる…。

しかし、タフでギャング映画で迫力に満ちた演技とはうって変わって、女性にへりくだる小心な男を見事に演じたエドワード・G・ロビンソンは素晴らしいの一言。でも今までのイメージからかなりかけ離れているので、最初は違和感がつきまといますが、キティに結婚を迫り、結婚できると信じ、しかし彼女に利用されているだけの男とは気がつかずにいる男は実際にいそうだもんなぁ…。それをエドワード・G・ロビンソンが演じる…という裏切りは何故か快感です。

そして、ジョーン・ベネット嬢のどこまでもはすっぱな悪女の役は、流石彼女の演技の幅を知り尽くしているフリッツ・ラング監督に“お見事”と言いたいですね。

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2006年12月30日

パームビーチ・ストーリー

Photo_45 1942年 <アメリカ>

監督 プレストン・

       スタージェス

出演 クローデット・

         コルベール

    ジョエル・マクリー

    ルディ・ヴァリー

    メアリー・アスター

ストーリー

ジェリーは発明家のトム・ジェファーズと結婚して5年になる。夫婦仲は倦怠期である。トムの素晴らしい発明、「空中エア・ポート」も出資者が見つからず、5年目の結婚記念日にもかかわらず、お祝いどころか家賃も滞納、ジェファーズ家の財布には10セントも無かった。そしてジェリーは突然離婚することに決め、離婚するには一番簡単なフロリダ州パームビーチ行きの特急に乗ろうとするが、ビタ一文持っていない。そこに陽気な年寄りばかりの“うずら撃ちクラブ”一行の好意で、ジェリーはパームビーチへ向かうことになった…。

4_11

      1人じゃファスナーを上げられないジェリー

む~ん…なんか狂ってる人たちばかりの物語ですなぁ…。最高に狂えるコメディ映画です。

ジェファーズ家はなかなか豪華なアパート暮らしをしているが、家賃滞納で立ち退きを迫られている。そこにアパートを借りたいという、テキサスのソーセージ王夫妻(石油王じゃないのがよいですね)がやってくる。しかしジェリーの窮状に同情して部屋を借りるどころか、現金700ドルをポンとジェリーに進呈。これで家賃も払えて、5年目の結婚記念日の食事に出かけるドレスも買えた。

                     倦怠期でもキスは情熱的…

2_25しかし、そんな都合の良い話があるわけないと思うトム。そしてジェリーはこの際だから離婚したいと言い出す始末。全く訳が分からないストーリー展開。そしてジェリーは荷物も持って駅へ急ぐ。しかしトムも執念深く追いかけてきて、ジェリーの荷物を奪還するのに成功したが、ジェリー自身はパームビーチ行きの特急に乗り込むことに成功。だが、この“うずら撃ちクラブ”の連中はとんでもなく狂っていた。騒ぎっぷりが尋常じゃない。これにはジェリーもお手上げで、秘かに彼らと別れ、2等寝台の空いているベッドに登ろうとする。しかしなかなか登れない。ちょうど下の寝台から顔を出した男のメガネを踏み潰しつつ、彼の力を借りて上へ登りひと寝入りするが、なんと“うずら撃ちクラブ”の貸切車が切り離されていた。これでジェリーのバッグも一緒にいなくなり、ピンチのジェリー。しかし、美人は得である。下の寝台の男の好意でまたも崖っぷちから生還。彼は途中で汽車から降り、ジェリーの洋服をしこたま買い与え、自分のボートでパームビーチへ向かおうと彼女を誘う。彼の招待をいぶかしく思うジェリーだったが、なんと彼は世界一の金持ちJ・D・ハッケンサッカー3世だった。

  J・D・ハッケンサッカー3世と、

    ドレスアップしたジェリー

5_11一方、途方にくれるトム。しかしまたまたテキサスのソーセージ王が登場し、彼にも現金をポンと気前良く出し、飛行機でジェリーの後を追うようにせっつく。彼がジェリーより一足早くパームビーチに着くと、なんと妻のジェリーは見知らぬ男と親しげにボートで登場。問い詰めるトム。ジェリーはとっさに彼は兄であるとハッセンサッカー3世に紹介してしまう。そして、ハッケンサッカー3世に少し遅れて彼の奔放な姉センティミラも到着。彼女は5回の結婚・離婚を繰り返す魅力的な美女だ。その彼女がトムに目をつけ、積極的に迫ってきた。そうしてトムとジェリーは“兄妹”として、悶々とした日々を過ごすことになる…。

         センティミラに迫られるトム

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まともな人物がまったくと言っていいほど出てこない映画です。唯一の例外はトムくらいか?とにかく“狂ってる”という言い方がピタリときます。ジェリーの理由のない離婚の切り出し、テキサスのソーセージ王、“うずら撃ちクラブ”の連中、世界一の金持ちハッケンサッカー姉弟、皆ねじが一本どころではない切れっぷり。夫妻の名前は“トムとジェリー”だし…。仲良く喧嘩しなっ♪って感じでしょうか。そして“あっ!?”というラスト。スタージェス作品の中で一番の狂い咲き。このような映画は理論などありません。何も考えずに、ただ楽むことが鉄則の映画です。

今作が今年最後の映画です。来年は…?大晦日は紅白歌合戦を見ながらカニを食べ、除夜の鐘を聞きながら年越し蕎麦を食べましょう。ああ…日本人。

このサイトに立ち寄ってくれた皆様、ありがとうございました。良いお年をお過ごしください。

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2006年12月25日

素晴らしき哉、人生!

Photo_44 1946年 <アメリカ>

監督 フランク・キャプラ

出演 ジェームズ・

      スチュアート

    ドナ・リード

    ライオネル・

         バリモア

ストーリー

ジョージ・ベイリーは、子供の頃から生まれ故郷の小さな町ベタフォードを飛び出し、世界一周をしたいという希望を持っていた。彼の父親は、住宅金融会社を経営し、町の貧しい人々に低金利で住宅を提供し尊敬を集めていたが、町を牛耳る銀行家のポッターはこれを目の仇にして、事あるごとに彼に対し圧迫を加えていた。カレッジを卒業したジョージは念願の海外旅行へ出ようとしたが、突然彼の父親が過労のせいで世を去ってしまった。ジョージは株主会議で後継社長に任命され、承諾せねばならない羽目になり、弟が大学を卒業したら会社を譲ることにして、海外旅行も一時的におあずけとなった。ところが4年経って大学を卒業した弟は、大工場主の娘と結婚しており、その工場を継ぐことになっていた。ジョージの夢は破れ去ったが…。

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     世界一周旅行に夢をかけるジョージ・ベイリー

            (ジェームズ・スチュアート)

クリスマスなんで、クリスマスにちなんだ映画の登場です。

イヴに皆がジョージ・ベイリーのことを祈っている…それを空のはるか彼方から見守る天使達。彼の為に誰が地上に派遣されるかという議論の中で、是非自分が行きたいと立候補した天使は、翼を持たない2級天使だった。見事彼を救うことが出来たら翼をもらえるということで、彼は地上に舞い落ちる。

その前に彼の幼少時代からのおさらい。たぶんにもれず、腕白な少年時代を過ごしている。雪の山から凍った湖にシャベルで滑り降りるのが大好きな男の子だ。しかし彼の弟が薄い氷に滑り降り、弟を救ったのは良いが左耳が聞こえなくなってしまう。そして小さなパーラー店兼薬品店でアルバイトをしている優秀な少年でもある。したがって女の子にももてる。カレッジを卒業し、そのアルバイトで貯めたお金で世界を見て回ろうと計画を立てていたさなかに、父親が死去する。

                      町を牛耳る銀行家、ポッター

                      (ライオネル・バリモア)

5_9父親の会社をどうするかについて株式会議に出席するが、腹黒い銀行家のポッターは会社を解散すればよいと提案を出すが、皆からの嫌われ者の提案を誰も聞き耳立てず、ジョージに会社の社長になることを勧める。彼は世界旅行とその後に大学へ行こうとしていた最中であったが、皆の願いを振り切れずに、新社長として就任。すると会社は瞬く間に大成功。ポッターの怒りをかう。

そして、可愛らしい娘に成長した幼馴染のメアリーと結婚する。新婚旅行に行くはずだったが、何故か彼の会社の前に大勢の人だかりが。実は世界恐慌のあおりで、皆我先にと彼の会社に群がったのだった。もちろんポッターの銀行は閉まっている。ジョージとメアリーは新婚旅行の資金2千ドルを皆に分け与え、危機を救った英雄としてますますジョージの株は上がるばかり。ポッターは悔しがることしきり…。

   良妻賢母の鑑、メアリー

9_4新婚旅行へいけなくとも、彼らは幸せであった。メアリーは4人の子をもうけ、ジョージの事業も軌道に乗って絶好調である。

しかし、ある日伯父が銀行から引き出した経営資金の8千ドルを無くしてしまった…。もうジョージも伯父も右往左往である。必死に探したのに、8千ドルはどこにも無い。実はその8千ドルは、ポッターの手に(偶然だが)渡っていた…。

ジョージは橋から身を投げて自殺しようと思っていると、もう1人の老人が身を投げた。必死に助けるジョージ。この老人がジョージを救う為に天から派遣された2級天使、クラレンスだったのだ。

                                              2 級天使クラレンスとジョージ

4_2ジョージがポツリと、「産まれてこなければよかった…。」と言ったのをクラレンスは聞き逃さなかった。そして、ある事を思いつく。それは、“ジョージのいない世界”を作り上げ、彼に見せることだった。

― と、“キャプラ節”絶好調である。もちろん最後はハッピーエンドと決まっていますし。しかし、『オペラハット』や『スミス都に行く』のような“アメリカの良心”の押し売りではなかった事にホッとした私。彼の作品では『或る夜の出来事』や『毒薬と老嬢』みたいな作品が好きなんですよ。

しかし、ポッター役のライオネル・バリモアは凄いの一言ですね。これこそ“性格俳優”という言葉にピッタリの人はいません。キャプラ映画の常連でもありますね。『我が家の楽園』では善人の父親を、『スミス都へ行く』では議会を牛耳る議員を演じています。彼と聞いて思い出すのは、やっぱり『キー・ラーゴ』でしょうかね。

この後、50年代に入るとめっきりフランク・キャプラの作品は減っていくんですね。どうして作品が減ったのかは謎ですが。やはり時間の流れのなかで、キャプラの作るハート・ウォーミングな作風の映画は受けないと会社はよんだのか…。 それともキャプラ自身の制作意欲がなくなったのか。

来年のクリスマス映画は『スィング・ホテル』あたりでしょうか。ビング・クロスビーが“ホワイト・クリスマス”を歌い、フレッド・アステアが華麗に踊る…。今年でもよかったかな…。

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そして、グロリア・グレアムも登場しますよ、FROSTさん。悩ましいバイオレット役で出演してます。町の男達が振り向かずにはいられない(もちろんジミー・スチュアートも)セクシーな娘です。

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2006年12月22日

殺人幻想曲

2_21 1948年 <アメリカ>

監督 プレストン・

       スタージェス

出演 レックス・ハリソン

    リンダ・ダーネル

    ルディ・バリー

ストーリー

シンフォニーの名指揮者、サー・アルフレッド・デ・カーターは演奏旅行を終え久しぶりに帰京した。美しい妻のダフネ、彼の秘書トニー、妻の妹バーバラ、その夫のオーガストらに迎えられホテルに着く。するとオーガストは演奏旅行中の留守の間のダフネの行動を記した私立探偵の報告書をアルフレッドに渡した。アルフレッドは留守の間、彼女を見てくれと頼んだのであって、私立探偵を雇うとは何事か、とオーガストに怒り、報告書を見もせず破ってしまう。彼は妻の抱擁を受けて、彼女が心から愛していることを確認し安心する。彼は妻を晩餐に連れて行くようトニーに命じ、私立探偵事務所を訪れ、報告書の原簿の破棄を要求するが、探偵がうっかりダフネがネグリジェのままトニーの部屋に入るのを目撃したと証言したので、アルフレッドは妻とトニーに対して深い疑惑を持つようになった…。

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   疑惑をぬぐえないまま、指揮をとるアルフレッド

2人をどうしてくれようかと考えながら、タクトを振るアルフレッド。自然に力も入り演奏も絶好調である。ロッシーニの曲に乗り、考えた第一のプランは、妻を殺しその罪をトニーに着せ、彼は死刑に処せられるというもの。

次はワグナーのやさしい調べに同調し、妻に若いもの同士が愛し合うべきだと言い、5万ドルの小切手を切って、一人寂しく去っていくというもの。

3曲目はチャイコフスキー。ホテルの部屋で恐れおののいているダフネとトニーに、三角関係の清算をロシアン・ルーレットで決めよう…そしてアルフレッドは自ら拳銃の引き金をこめかみに当て死ぬというもの。

                       緊迫のロシアン・ルーレット

6_11妄想だらけの指揮ながら、それがかえって良かったのか、3曲とも彼の指揮する演奏の中で一番良い出来になってしまうという皮肉。そしてアルフレッドは妄想を現実にするため、観客のコールにも応えず素早くホテルに帰っていく…。

プレストン・スタージェスの数少ない作品のなかでも、精力的に作品を発表していた1941年~42年(『レディ・イヴ』『サリヴァンの旅』『パームビーチ・ストーリー』)よりも6年遅れて発表した本作は、やはり過去3作に比べると、衰えたり…という感じはぬぐえないですね。この作品に過去3作同様の出来を期待してはいけません。だって先の展開が読めてしまうんですもの。それは大変いただけない。

まぁ、小ネタは相変わらずきいてるし(私立探偵がアルフレッドの大ファンだったり、彼のサー・アルフレッドという名前は『レディ・イヴ』で詐欺師仲間が語っていた名前だし)、レックス・ハリソンは好演しているし、プレストン・スタージェスらしさは感じられたものの、彼の作品の水準からすると、はっきり言って“凡作”です。

― 主人公の妻を演じたリンダ・ダーネル嬢は、ふくよかで妖艶。彼女は“良妻”“慎ましい女性”という役柄をよく演じていましたが、もっとシャープだったら“フィルム・ノワール・ヒロイン”の1人として名を残していたかも知れませんね。ちょっと悪びれた役といったら、『三人の妻への手紙』ぐらいでしょうか…。『荒野の決闘』も、結局はドク・ホリディを思う純粋な娘だったしね。

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2006年12月19日

深夜の告白

2_20 1944年 <アメリカ>

監督 ビリー・ワイルダー

出演 バーバラ・

       スタンウィック

    フレッド・マクマレー

    エドワード・G・

         ロビンソン

ストーリー

深夜のロサンゼルス。猛スピードで走ってきた車がパシフィック保険会社の前で止まり、肩を負傷した勧誘員ウォルター・ネフがよろめきながら会社の自室に入り、録音機に向かい上役バートン・キーズに宛てた口述を始めた。 ― 数ヶ月前、ウォルターは会社に自動車保険を掛けている実業家のディートリクソンを訪ねたが彼は不在で、妻のフィリスが対応した。数日後、フィリスからの連絡を受け再び訪ねると、家には彼女1人だった。フィリスは夫に内緒で傷害保険に入れないかと彼に聞いた。しかし、彼女の魂胆を見た気がしたウォルターは、提案を断り家を後にした。その夜、フィリスがウォルターのアパートメントを訪れ、夫が彼女をぞんざいに扱っていることなどを彼に話した。なぜか初めて会った時から彼女に惹かれていたウォルターは、フィリスと一緒に恐ろしい計画を立て始めた…。

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      ウォルターとフィリス、初めての出会い

ジェームズ・M・ケイン作『倍額保険』の映画化です。女のアンクレットに惹かれたが為に、彼女と共に夫殺しをした保険会社の敏腕勧誘員の哀しい末路。

ビリー・ワイルダー監督は、彼の最高傑作『サンセット大通り』で、“死体”にストーリーを語らせましたが、この作品では“殺人犯”がストーリーを語ります。『サンセット大通り』の複線が既にあった訳ですね。それに『カサブランカ』に負けないくらい、洒落た名台詞もいっぱいです。

ウォルターは自動車保険の期間がまもなく迫っている実業家ディートリクソンの許へ保険更新の確約を取ろうと、彼の家に行く。夫は残念ながら不在で、2階で日光浴をしていた妻フィリスが対応することに。着替えて階段を下りてくるフィリスの足のアンクレットに自然に目がいってしまう。もちろんフィリス自身も魅力的だ。自分でも分からずに、彼女を口説くような台詞がポンポン出てくる。その日はフィリスに軽くあしらわれ、彼に翌日なら夫がいるというので、その日はおとなしく帰るウォルター。会社に帰ると、フィリスから日程の変更を頼むメモがあった。その日にウォルターがデイートリクソンの家にいってみると、フィリスは1人で彼を待っていた。

                   フィリスとウォルター、2度目の出会い

5_8この日も彼女のアンクレットに目がいくウォルター。アンクレットは足の綺麗な人が着けると、セクシーこの上ないですね。

しかし彼女がウォルターに相談したのは、夫は油田で働いているので危険極まりない。どうにか彼の知らないうちに傷害保険に入れないか…というものだった。しかしその相談に不信感を抱き、ウォルターは去っていく。このウォルターが去る際のセリフがなんとも良い。「俺は何か?夫殺しを売って歩くセールスマンか?。」そしてフィリスが「あんた、クズよ。」と言えば、彼は「君は愛人としてなら最高だ。」という次第。

しかし、ウォルターはフィリスを忘れられず、その夜大雨のところにフィリスがウォルターのアパートメントにやってくる。ウォルターが期待していたように…。そして2人は激しい恋に身を焦がし、ウォルターはフィリスの言うがままの男に成り下がってしまう。(男って危険な香りのする女の誘惑に勝てないのね…)

そしてある日、ディートリクソンに会った時、自動車保険の更新と、傷害保険の契約をこっそりやってのける。これでディートリクソンが事故で死ねば、掛け金の倍額がフィリスに入る算段になった。ある日、ディートリクソンが足を骨折しながらも、大学のクラス会に出席するために出かけることになった。その日がフイリスとウォルターにとって“運命の日”だったのだ。フィリスの説得でなんとか列車で行くことを渋々了解したディートリクソン。フィリスは車で駅まで送るようになっていた。後部座席にウォルターが隠れていることも知らずに、車に乗り込むディートリクソン。しかし車は列車の駅までの道とはずれ、ウォルターはディートリクソンを絞殺する。このときのフィリスの顔と言ったら!!夫がウォルターの手にかかって殺されている間に彼女の無表情な顔から、かすかに口角が上がり、次第に満足げになっていくシーンは見ごたえタップリですよ。

        作戦成功?

7_5そしてウォルターは彼に成りすまし列車に乗り、後部から飛び降りる。そしてディートリクソンの遺体をその場に置いて、任務遂行。アリバイも細部にわたって作り出し、この計画は成功したかに見えた。

しかし、その死因に疑惑を持っている男がいた。ウォルターの上役、保険調査員のキーズである。彼はこの事件にはなにかキナ臭いものを感じたのだ。彼の心の中にある“小鬼”が危機を察知し、これは殺人事件だと断定し、証拠を探し始める。

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キーズ(エドワード・G・ロビンソン)の“小鬼”の存在にビクつくウォルター

とにかく、怖くなったウォルターは事件から降りようとする。しかし、フィリスは許すはずがない。「あなたが計画を立てたんだから、最後まで付き合ってもらうわ。」と。もうその頃になると、ウォルターは疑心暗鬼にかられ何事にも手がつかない。そしてにキーズは殺人事件の犯人を推理していた…。

しかし、フィリスという女は計算高く根っからの“悪女”であります。このような役を演じるのには、当時のスター女優としては勇気がいったことだろうと思います。バーバラ・スタンウィックは、ほぼ無表情で、目の演技とかすかな笑みで“悪女”を堂々と演じています。かなり強烈なキャラクターですよ、フィリスという女は。この映画は、バーバラ・スタンウィックのためにある、と言っても過言ではないと思いますね。

ちなみに、脚本はビリー・ワイルダーと、「フイリップ・マーロー・シリーズ」でお馴染みのレイモンド・チャンドラーが共同執筆しています。彼は原作のジェームズ・M・ケインが大嫌いだったそうです。しかし、チャンドラーが脚本に参加した結果、緊迫したストーリーと気のきいたセリフが生まれ、これから産まれようとしていた“フィルム・ノワール”の先駆けになった素晴らしい映画になったのだと思いました。

                最後まで付き合ってもらうわ…                      

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2006年12月16日

レディ・イヴ

3_15 1941年 <メアリカ>

監督 プレストン・

       スタージェス

出演 バーバラ・

      スタンウィック

    ヘンリー・フォンダ

  チャールズ・コバーン

ストーリー

蛇各社のチャーリー・パイクは南米での蛇狩りを終えて、豪華客船に乗り込みアメリカへ帰るところだった。チャーリーはビール会社の御曹司だが、蛇にしか興味のない世間知らずのお坊ちゃまだ。そして父親と共に、この豪華客船で金持ち達からイカサマのカード・ゲームで金を巻き上げている詐欺師一家のジーンは一計を案じ、まんまとチャーリーを引っ掛けることに成功する。しかし、ジーンは本気でチャーリーのことを愛してしまい、彼のプロポーズを真剣に受け入れてしまい、父親と彼のカード・ゲームに細工を施すほどになっていた。一方チャーリーが幼い頃から彼のお目付け役をしてきたマグジーは危険を察知し、船長から手に入れたジーンたちの手配写真をチャーリーに見せた。その頃、父親に結婚のことを打ち明け、待ち合わせのバーに現れたジーンだったが、チャーリーが無言で差し出した写真を見て、2人の恋は終わった。傷心のまま元の生活に戻るが、ジーンはチャーリーに一泡吹かせようと、イギリスの伯爵令嬢イヴ・シドウィッチとしてパイク邸に乗り込む…。

Photo_40

女性に靴を履かせるのがこんなに楽しいことだったとは…。

ジーン(バーバラ・ステンウィック)チャーリー(ヘンリー・フォンダ)

この映画はなかなかタイトル・ロールから凝ってますよ。蛇とリンゴで始まります。蛇はもちろんチャーリーの人生のお供、そしてリンゴはエデンの園から追放された“イヴ”ですね。

そして、チャリーが乗っているオンボロ蒸気船がボーッ!と汽笛を鳴らせば、彼を待ち構えている豪華客船もボーッ!と高らかに汽笛を鳴らす。いいですねぇ。

さて、豪華客船に無事乗った蛇学者のチャールズはお金持ちの御曹司でしかもハンサムとあって、女性が皆彼の気を引こうと躍起になっている。しかし、チャールズはただ居心地が悪いだけ。そして、手鏡で自分の姿をチェックするふりをして、チャールズと彼をめぐる女性達をしっかりと目に留めている女がいた。カード・ゲーム詐欺師の娘、ジーンである。こんな“金づる”はまたとないチャンス。チャールズがいたたまれず席を立った時、ジーンはとっさに足を出して彼を転ばせることに成功。靴のヒールが取れたのをいいことに、チャールズを自分の部屋に招き寄せ、靴を選ばせ彼に履かせるジーン。

チャーリーは、一年間女っけのないジャングルで蛇を探していたものだから、美しく快活でかつ自分目当てではない(本当は彼はカモなんですが)ジーンにすっかり魅了されてしまうんですね。そして親しくなる2人。彼女は父親を紹介し、チャーリーはカード・ゲームに親子を誘う。チャーリーはカード・ゲームは得意としていて、ジーン親子は負けっぱなし。しかし、それが彼らの常套句。最初は大負けしておいて次に対戦するときは大勝するのが詐欺師の手口なんですね。

                        寝物語をする2人

2_22父親が抜けて、チャーリーの部屋へと自然に足が誘う。しかし彼の友、蛇のエマが籠から抜け出していた。ジーンは大の蛇嫌い。うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!と悲鳴を上げ、自分の部屋へ逃げ込む。偶然であれ再びチャーリーと完全に2人きり。そこでチャーリーを陥落させることに成功。

翌日にはもうプロポーズ。なんとジーンはどうやら本気で彼を愛してしまったようで、父親には彼と結婚して危ない道から手を引こうと言う始末。しかしそう簡単にはいかないのが世の常。チャーリーのお目付け役マグジーが、カード・ゲーム詐欺師の常連の写真を手に入れ、2人の仲は終わる。

しかし、ジーンの気は治まらない。ある日競馬場で、今は“サー・アルフレッド”という名前であちこちの社交界に出入りしている昔の詐欺仲間に出会う。そこでジーンは一計を案ずる。彼の姪の伯爵令嬢“イヴ・シドウィッチ”として、社交界デビューしようというのだ。そしていざパーティーへ…。チャーリーはジーンそっくりのイヴの出現にびっくり!!信じられない、と言う表情を浮かべる。しかし“イヴ”に化けたジーンは彼に尻尾を掴ませない。そのうち、チャーリーは“イヴ”に熱烈な恋心を抱くようになる。

         リンゴと“イヴ”とチャーリー

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そしてついに2人は結婚へ ― 。2人は末永く幸せに暮らしましとさ…なんては行かない。行くはずがない。これぞプレストン・スタージェス映画の真骨頂。ラストまでホントかいな?と思う展開で映画は続くよどこまでも。

とにかく、この映画ではヘンリー・フォンダがよくこける。こけまくりなのね。立ち上がろうとしたらお盆を持った支給人が彼の上にいて、スーツが台無しになったり(それが3回続いたり)。<正義の人>というイメージのフォンダがさんざん“イヴ”(ジーン)にもてあそばれる。コメディもこなせるフォンダをアピールか?しかし、全てにおいてバーバラ・スタンウィックのほうが貫録勝ち。彼女に見事もてあそばれましたね。

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2006年11月 8日

我等の生涯の最良の年

Photo_32 1946年 <アメリカ>

監督 ウィリアム・ワイラー

出演 フレドリック・マーチ

    ダナ・アンドリュース

    ハロルド・ラッセル

    マーナ・ロイ

    テレサ・ライト

    ヴァージニア・メイヨ

ストーリー

軍用輸送機B17に乗り合わせた復員兵3人は同じ故郷の町の出身だった。歩兵軍曹アルは中年の銀行員、青年の飛行大尉フレッドは百貨店の番頭、一番若い水兵のホーマーは両腕を無くし義手の傷痍軍人。最初にタクシーはホーマーの家に着き、彼は両親と妹、そして恋人のウィルマに迎えられたが、彼の義手を見て一同は息をのんだ。次にアルの豪華なアパートメントに着き、4年前には少女だった娘ペギーが美しい一人前の女性となり、息子ボップも生意気盛りな青年になっていたことに何かしら違和感を感じるが、相変わらず妻のミリーは美しく2人は再会を確かめ合った。最後にフレッドを迎えたのは、アル中の父と自堕落な母で、結婚して3週間で離ればなれになった妻マリーは家を出て、ナイトクラブで働いていた。アルは4年の空白を埋めるべき、妻と娘を連れてナイトクラブへと出かけた。彼はホーマーの伯父が経営している“ブッチの店”へ行くと、フレッドとホーマーが来合わせており、酔っているアルは2人の戦友と大酒盛りを始めるが…。

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  “ブッチの店”に集まった3人とアルの家族とブッチ

う~ん…私がリアムタイムで観たアメリカ人だったなら、この映画は「素晴らしい、素敵。」と思うんでしょうが、なんせ観たのがアメリカの“赤狩り”を経て、冷戦、そしてベトナム戦争、そしてもろもろ、9.11、イラク介入…。『アメリカ』という国は決して自由できれいごとに溢れた国ではない、ということが嫌と言うほど分かった時に観たのが悪かったのか…。それとも私が単にひねくれた観方しか出来ない女なのか?(ひねくれているのは自分でも承知なのだが…) う~ん…。

                 ブッチとピアノ演奏をするホーマー

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確かにアカデミー賞6部門受賞(作品、製作、脚本、監督、主演男優(フレドリック・マーチ)、助演男優(ハロルド・ラッセル))も納得できる作品であることは確かなんですね。簡単に言えば、復員兵とその家族がいかにして、戦争の傷を修復するか…といった内容のストーリーですね。

アルは以前勤めていた銀行から、副社長として迎えられる。何一つ不満もないはずなのに、何故か酒に溺れるようになっていく…。傷痍兵のホーマーは、両腕が無いばかりに自信を無くし、恋人を遠ざけてしまう…。そしてフレッドは、飛行中に狙撃され死んだ親友の夢にうなされる日々が続き、以前勤めていた百貨店は大きな会社に吸収され、彼の居場所は無かった。仕事の無いフレッドは、渋々ながらも生活のため、元部下が今は上司となっているその百貨店に勤めるしかなかった…。そして彼の妻マリーが、彼と結婚したのは1人の人間としてではなく、単に「軍服姿」がかっこよかったからだと悟る。そして、3人で“ブッチの店”で飲みつぶれたときに介抱してくれたアルの娘ペギーに惹かれるようになって行く…。

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お互いに惹かれあうようになっていくフレッド(ダナ・アンドリュース) ペギー(テレサ・ライト)

はっきり言うと、この映画は第二次大戦後の復員兵の理想の姿・願望を描いたものですね。家族や恋人の尽力で戦争の傷は癒えるのだ…。そしてなにもかも元通りになるのだ― という、なんだかアメリカ政府のプロパガンダ映画みたいなものなんだと、私には思えました。

物語ではやっぱりアルは酒を控えるようになり、ホーマーも恋人の変わらない愛に心を打たれ、そしてフレッド(彼の店に遊びに来たホーマーに無礼な客を殴ってクビになる…)もマリーと離婚し新しい生活を始めるべくどこか遠くへ行こうと荷物をまとめる。

しかし、ベトナム戦争で“戦争後遺症”という心の傷を負ってしまった兵士を多く抱えたアメリカ。勝った戦争だから、“戦争後遺症”という兵士は出なかった。もしいたとしても、家族や恋人が傷を癒してくれる…なんて虫のいい話に過ぎない。実際前線に出兵した兵士は“後遺症”になり、傷つき通したはず。(彼の映画は観たことがありませんが) 第二次大戦のヨーロッパ戦線の目覚しい活躍をしたオーディ・マーフィーを思い出さずにはいられませんでした。

ちなみに、ホーマーを演じたハロルド・ラッセルは第二次大戦で戦った本物の傷痍兵です。

そしてフレッドの妻マリー役のヴァージニア・メイヨは、ダニー・ケイの一連の映画でかしこまった役を演じているときより、『白熱』のジェームズ・キャグニーの妻やこの映画での“軽薄な役”の方が輝いていますね。

    ヴァージニア・メイヨ

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2006年10月 1日

カサブランカ

7_1 1942年 <アメリカ>

監督 マイケル・カーティズ

出演 ハンフリー・ボガート

  イングリッド・バーグマン

    ポール・ヘンリード

    クロード・レインズ

ストーリー

第二次大戦中、まだ独軍に占領されていない仏領モロッコのカサブランカは、アメリカへ逃れるために通過しなければならない寄港地であった。この街でアメリカ人リックが経営しているナイトクラブはそれら亡命者たちの溜り場だった。アメリカ行きの旅券を盗んだ男、ウガルテは後に旅券を受け取りに男が来るからとリックに旅券を託した直後、リックと奇妙な関係にあるフランス側の警察署長ルノーに逮捕され、独軍によって殺されてしまう。騒動が収まったとき、反ナチ運動のリーダー、ヴィクター・ラズロと妻のイルザがウガルテの旅券を受け取りにやって来た。イルザが周りを見渡すと、ピアノ弾きのサムが目に入った。この店のオーナーがリックであると知って驚くイルザだったが、サムに「時の過ぎ行くまま」を歌ってくれるよう頼む。サムはリックにこの曲を禁止されていたが、躊躇しながらも歌いだす。これに気づいたリックはサムの許へ歩み寄ったとき、イルザと再会する。二人は独軍侵入前の前のパリで熱烈な恋に身を焦がした仲だったのだ…。

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   幸せな頃のリック(ボギー)とイルザ(バーグマン)

サスペンス&ロマンス映画の王道ですね。今回発売されたDVDでボギーのドキュメンタリーが入っているので買ったものですが、本作品を観るのはおそらく十何年経っているかと思います。若い頃はこの映画の素晴らしさが分かっていなかった…というか、私自身がバーグマンという女優に興味が無かったためですね。

しかし、ワーナーは俳優の使いまわしが凄いというか…。まるで『マルタの鷹Ⅱ』といった感じですよ。主演女優がメアリー・アスターだったなら完璧ですね。シドニー・グリーンストリート、ピーター・ローレまで出ている。思わずアメリカ行きの旅券の話ではなく、<鷹>の像をめぐる話かと錯覚してしまいます。

しかし、この映画は名台詞の宝庫ですね。「君の瞳に乾杯」は超有名だし、他の台詞もウィットにとんだ会話のオンパレードです。ボギー扮するリックはバーグマン扮するイルザを何者かも知らずに(彼女も名のらない)二人はパリでつかの間の激しい恋をするわけですが、独軍がフランス侵入の日に彼女は別れの手紙だけ置いて消えてしまう。そして時間が過ぎ、思い出として葬り去ろうというとき、突然彼女が現れる。反ナチ運動のリーダーの妻として。

                  ラズロ(ポール・ヘンリード)、イルザリック   

6 『マルタの鷹』がボギーの“タフでクールな男”というイメージを植えつけた映画なら、この『カサブランカ』は“タフでクールでありながらもロマンスも見事にこなせる男”としてのイメージを決定付けた作品なんじゃないでしょうか。(この後、ローレン・バコールとの一連の映画でみられるような…) 

この映画は世界中で熱烈に愛されている理由は…一体なんなのでしょうか?舞台はアフリカのモロッコの一都市。それだけで充分エキゾチックでロマンティックだし、時代を反映しているし、リックとイルザの恋の行方が切ないほど心に迫ってくる…。夫と過去の恋人(今でも愛している)の間で揺れ動く女心。果たして彼女はどちらの男性の許へ行くのか…。う~ん…上手い作りですねぇ。この映画のスピード感、間の取り方に感心することしきり。でもやっぱり三角関係の行方がとてもドラマティックだからなんでしょうね。

ポール・ヘンリード扮するヴィクター・ラズロはどこまでも反ナチ運動のリーダー然とし、イルザも彼の運動の虜。独軍がドイツ国家を歌えば、ラズロはフランス国家で対抗する。フランス国家が大きく響き独軍を黙らせる。そのラズロを見つめるイルザの目…。バーグマンはどこまでも美しく、ボギーはどこまでもシニカル。そしてラストシーンのなんとロマンティックなこと!!

最初にも書きましたが、私はバーグマンを高くかっておりません。彼女の映画で良いのは、この『カサブランカ』だけ。彼女はなんというか…ぼってりしているんですね。それが“女”としての魅力だと言われれば、何も言うまい。顔のパーツもみんなぼってり。体つきもぼってり。かなりでかく見える。それがダメなんです。私はあくまでも“シャープさ”を持った女優さんが好きなんです。ただそれだけのことです。

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        映画史に残るラストシーン                        

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