1995年<アメリカ>
監督 ブライアン・シンガー
出演 ガブリエル・バーン/ケヴィン・スペイシー/スティーヴン・ボールドウィン/チャズ・パルミンテリ/ケヴィン・ポラック/ベニチオ・デル・トロ/スージー・エイミス/ピート・ポスルスウェイト
ストーリー
ある夜、カルフォルニアのサン・ペドロ埠頭で船が大爆発。コカイン取引現場からブツを奪おうとした一味と組織の争いが原因らしい。27人が死亡。9100万ドルが消えた。生き残ったのは2人。しかも1人は重傷で、関税特別捜査官のクイヤンはただ1人無傷で生き残った男、ヴァーヴァル・キントを尋問するが…。
惨事のすべての始まり
ホックニー(ケヴィン・ポラック)マクマナス(スティーヴン・ボールドウィン)、フェンスター(ベニチオ・デル・トロ)、ディーン・キートン(カブリエル・バーン)、ヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)
…昨日。カリフォルニア州、サン・ペドロ埠頭、ある船上。1人の男がマッチからタバコに火をつける。いっそこのまま船を爆破しようとマッチを床に落とすが、ある男の小便で消されてしまう。
男が、「やぁ、キートン」と、男の名を呼ぶ。「脚の感覚がないよ…カイザー」と、男が答える。「覚悟は?」と「カイザー」という名の男が「キートン」に聞いた。「何時だ?」「12時30分」…「キートン」は頷き覚悟を決めた。その後に銃声が2発響いた。
そして「カイザー」は、吸っていたタバコを落とし、船に火をつけ船を下りた。その後船は大爆発する…。
―発端は6週間前のN・Y。銃を積んだトラックのハイジャックだ。運転手は犯人たちの顔は見ず、声を聞いた。そして、5人が警察で面通しされる。犯罪歴がある連中ばかりだ。
キートンとキント
マクマナスは忍び込みのプロ、彼と組んでいるフェンスター、ホックニーは爆破のプロ、キートンは警察が一番目を付けていた元汚職警官、キントは身障者でケチな詐欺師だ。
確固たる証拠はなく拘留所へぶち込まれた5人。警察への憎悪が、ある計画へと向かわせる…。
…現在。ただ1人無傷の生き残りの男、ヴァーバル・キントがロサンゼルスの警察でクイヤンに尋問を受けていた。面通しの後の話だ。
釈放後、キートンは嫌がったが、計画は南米の運び屋がエメラルドを持って入国するが、それを強奪するというものだ。強奪の計画はキントが立てた。殺しは無しの作戦だ。ついにキートンも折れて計画に参加することになる。
計画は成功。5人はロサンジェルスへ向かった…。
…病院。瀕死の重傷のもう1人が話し始めた。
保護してくれ、と。“悪魔”と目が合った。“悪魔”に殺されると。その“悪魔”の名は、「カイザー・ソゼ」だ。彼の顔を見たと言う。そこから「カイザー・ソゼ」の似顔絵が作られることになった…。
ロスで5人は「レッドフット」に会い、エメラルドを売る。そこでレッドフットは5人においしいヤマがあると誘う。
テキサスの宝石商がロスのホテルに泊まっている。彼は宝石の鑑定をしているので現金を大量に持ち歩いている。その男を5人が襲い、宝石はレッドフットに、現金は5人で山分けに、という訳だ。
5人は宝石商を襲う。しかし今回は抵抗が激しく、殺してしまう。そして宝石が入っているはずのアタッシュケースには、コカインが入っているだけだった…。
レッドフットに会い、キートンが何故こんなヤマを持ってきたのか詰め寄った。レッドフットもある弁護士から紹介されたヤマだという。その弁護士に会いたいとキートンが言うと、弁護士も5人に会いたいという…。
…病院から戻ってきたFBIのジャックはクイヤンに今しがたあった出来事を話した。瀕死の重傷の男はアルゼンチンとつながりのあるハンガリーの組織の男で、船にヤクは積んでいなかった。ロスが目的地ではなく、トルコに寄る前に寄港しただけだった。そして、「カイザー・ソゼ」だ。
クイヤンはキントに、「カイザー・ソゼ」の名を聞いた。キントは動揺したが、話し出した…。
弁護士が5人に会いに来た。名前は「コバヤシ」という。英国紳士風な男だ。その「コバヤシ」が、雇い主「カイザー・ソゼ」が5人に仕事を依頼してきたという。
「カイザー・ソゼ」の名前にキント以外の4人は素早く反応した。硬くなる4人…。
今回は依頼というより命令だという。5人はそれぞれが「カイザー・ソゼ」の持ち物だと知らずに金や物を強奪していたのだ。あの警察での面通しは、「カイザー・ソゼ」と「コバヤシ」がお膳立てしたのだった。
「コバヤシ」は話の要点を話し始めた。
「カイザー・ソゼ」の重要な取引はヤクだ。数年前からの競争相手はアルゼンチンの組織である。だが彼らは押され気味で、勢力挽回を図って3日後に9100万ドルのブツを売りに来る。この取引を阻止してもらいたいというのだ。成功すれば9100万ドルは5人のものになる。
5人は、「カイザー・ソゼ」から逃げられなかった。宝石商殺し、そして脅しの資料が「コバヤシ」から渡された…。
話を聞くクイヤン(チャズ・パズミンテリ)
そしてキントが「カイザー・ソゼ」の伝説を語りだした。
トルコ時代、ハンガリーの組織が暗黒街を牛耳ろうとした。彼らにしてみれば、ヤクの売人だったソゼが邪魔だった。彼らはソゼの家を襲った。彼は留守で妻と子供がいた。ソゼが帰宅すると、レイプされた妻と泣き叫ぶ子供たち。子供を殺しながら「縄張りを渡せ」とソゼを脅した。するとソゼは家族を銃で撃ち殺したのだ。彼は言った。「いっそ殺す方が妻と子供の救いになる」と。
そして彼は1人だけを逃がして、葬式の後復讐に出かけた…。
襲った奴の妻子と両親、その友達を殺し、彼らの家と彼らが働いていた店を焼き、彼らに金を借りてた奴まで殺して、そして地下に潜って姿を消し、伝説となった。…と。
キートンは言っていた。「神は信じないが、神が怖い」と。俺は神を信じる。だが、怖いのは「カイザー・ソゼ」だ、とキントは言った。
…クイヤンは、検察側の証人になれと言う。キントは断る。今度はキントに保護を申し出た。するとキントは、「カイザー・ソゼの尻尾を掴む?あいつがお前らの罠にはまると思うのか?俺を殺ったら、アッという間に姿を消してそれっきりさ」と、捨て鉢に言った…。
クイヤンに話の続きを促され、キントはまた話し始めた。
フェンスターが“幸運を”というメモを残し、金を持ち逃げした。するとその夜「コバヤシ」からフェンスターの居場所を知らされた。
フェンスターは殺され、浜辺の洞窟に捨てられていた。キートンは「コバヤシ」の言いなりにはならないと言った。彼は「コバヤシ」を殺すと決めたのだ。
銃を突きつけられる「コバヤシ」
(ピート・ポスルウェイト)
しかし、「コバヤシ」のほうが一枚上手だった。彼はキートンの恋人の刑事弁護士イーディを抱きこんでいた…。
「カイザー・ソゼ」の仕事を請けるしかなかった…。
船は鉄壁だった。ここからどうやってコカインを焼き、9100万ドルの金を持って帰れるというのか?船に乗り込んだら生きては戻れない。
夜が来た。ハンガリー人の男たちが次々に船へと向かっていく。金も届いた。
物陰に隠れていたキートンとキント。キートンはキントに、「ここに残れ」と言った。生き残ったら金を持って逃げろと。イーディに全て話せば彼女が「コバヤシ」を葬ってくれる、と。
そしてキートンは船へ向かって歩き出した…。
キントを除いた3人は作戦実行に出た。キントはその場にうずくまったままだった…。
クイヤンは、「逃げられただろう?」と尋ねた。「動けなかった。フェンスターの死に顔が…。それに計画は成功しつつあった」と、キントは答えた。
…港で頭を撃たれた男の溺死体が上がった。アルトゥーロ・マルケス。アルゼンチンの麻薬業者だ。N・Yで挙げられ脱走してカルフォルニアへ。逮捕され本国送還の手続き中また逃走。その手続きをしていたのが、キートンの恋人イーディだった。
彼は密告屋で、リストの中には「カイザー・ソゼ」の名があった…。
ハンガリー人の言ったとおり、船にヤクは無かった。ヤクの代わりにアルトゥーロ・マルケスがハンガリーの組織に売られたのだった。
「カイザー・ソゼ」は、アルトゥーロ・マルケスを葬り去るために、5人を雇いこの船を選んだのだ…。
全てが終わった後、船に火を落とし、「カイザー・ソゼ」は去った。そして船は大爆発を起こし、証拠は消えた。…キントを残して。
マルケスの手続きをしていた、キートンの恋人イーディも昨日ホテルで殺されていた。その残忍さは「カイザー・ソゼ」そのものだ。
そんなことを出来るのは、かつて一度死んだ前科があり、血も涙も情けもなかった汚職警官キートンしかいない。
…アルトゥーロ・マルケスとイーディの件で、クイヤンは事件の黒幕は、「カイザー・ソゼ」と言う名の「ディーン・キートン」だと推理した…。
― いやぁ…これは、なんと緻密に練られた脚本に拍手ですよ。この“だまし”のテクニックがいかに凄いか!!
我々は、「ディーン・キートン」が「カイザー・ソゼ」ではない事を知っている訳ですね。消去法でいくと、彼しか「カイザー・ソゼ」に行きあらないのは薄々気づいている。
しかし、気づかせながらも脚本のパワーは落ちるどころか、ぐんぐん加速していく。心地よいほどに。
ヴァーバル・キントの細に入った話しぶり。彼の気弱ぶりが、この映画を更に面白くしています。クイヤンに、「カイザー・ソゼ」は「キートン」だと暴かれたときは泣いちゃうしね。とにかくヴァーバル・キントは気弱で半身が不自由な、都会の底辺で生きているケチな詐欺師なんですよ。
そんな彼だからこそ、「キートン」=「カイザー・ソゼ」は情けをかけたとクイヤンは推理した。
本当の「カイザー・ソゼ」には“慈悲”の心はない。自分のものを奪えばどんな男でも。雇われた5(?)人も殺される運命にあったのは明確だ。
キントが出所した後、今まで彼を尋問していた部屋で、「キートンの正体が判った」と悦に入っていたクイヤンは、壁に掛かっているボードを見て愕然とする。色々なチラシや紙が張ってある…。
そして、ファックスで「カイザー・ソゼ」の似顔絵が送られてきたときにはもう遅いのだ。
彼は、「アッという間に姿を消して、それっきりさ…」
これはもう、ただただヴァーバル・キントの荒唐無稽とも思われる話術に翻弄され、酔うしかないのである。
第68回アカデミー、オリジナル脚本賞、助演男優賞(ケヴイン・スペイシー)は当然の結果である。
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