映画 1990年代 アメリカ  

2009年5月30日

リプリー

1 1999年<アメリカ>

監督 アンソニー・ミンゲラ

出演 マット・デイモン

    ジュード・ロウ

グウィネス・パルトロウ

ケイト・ブランシェット

フィリップ・シーモア・

                   ホフマン

ジャック・デヴェンポート

ストーリー

1958年、ニューヨーク。貧乏青年トム・リプリーは日銭稼ぎのピアノ演奏のため赴いたガーデンパーティーで造船業界の大物グリーンリーフと知り合う。彼はイタリアで放蕩生活を送る息子ディッキーを連れ戻してほしいとトムに頼んだ。早速ナポリへ飛びディッキーに会うトム。作家の卵マージと豪奢な同棲生活を送っていたディッキーは、父からの命令を聞いて迷惑がるが、トムがジャズ・ファンと知るや彼をクラブに連れ出す。全てが物珍しいトムをセイリングやジャズクラブに連れ回して遊び回るディッキー。やがてトムは密かにディッキーに愛情を抱くようになる。だが、ほどなくディッキーは彼を邪魔者扱いし始める…。

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   ディッキー(ジュード・ロウ)とトム(マット・デイモン)

この作品は、かの名作「太陽がいっぱい」と原作は同じだが、映画自体は「太陽がいっぱい」のリメイクではない。全く別物の映画と言っていいだろう。

トムのディッキーに対する(ずばり)ホモセクシャルな思いは、「太陽がいっぱい」より思いきり赤裸々だし、トムがディッキーを殺した後「ディッキー・グリーンリーフ」になりきろうという努力のスリリングさは、「リプリー」には無い。(トムはホテルのフロント・マンにディッキーに間違われてディッキーになりすまそうと思い立つのである!)トムはディッキーの袖に顔をうずめ彼に恋愛表示し、犯罪の処理にぶざまなほど右往左往する青年である。

「リプリー」のトムは、ディッキーの所有物全てを手に入れたいと思っているわけではないようでもある。トムの性向が反映しているのか、ディッキーの婚約者マージにはあまり執着が無いように見える。精一杯ディッキーの穴になるべく努力はするものの、女というものは勘が鋭いもの。トムがディッキーをどうかしたのではないかと疑いを掛けると、とたんに彼女に対して殺意が芽生えるのである。

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   マージ(グウィネス・パルトロウ)、ディッキートム

どうやら執着があるのは、ディッキーとマージの友人ピーターと、トムのことをディッキーと信じて疑わない名家の令嬢メレデイスの方であろう。

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ピーター(ジャック・デヴェンポート)、マージディッキーになりすましたトム

ピーターにはズバリ、ホモセクシャルな関心を持つトム。彼は優しく魅力的だ。ディッキーから捨てられたトムを救ってくれた天使のような存在だ。ピーターもどうやらトムに“友人”以上の感情があるようだ。トムに寄りかかられてもいやな顔一つしない。トムの“良いところ”を挙げてくれる。

メレディスに対しては、自分は「ディッキー・グリーンリーフ」なんだという自負の念からか。一度は(トムだとばれるのが怖くて)別れてしまうけれど、ピーターと乗った船での再開で「愛」が再燃してしまうのである。(その出会いがまた犯罪を誘発させる…)

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         メレディス(ケイト・ブランシェット)

物語としては、ディッキーが殺されてからラストにかけて面白みが一気に色褪せてしまうのが残念なところだが(スリルとサスペンスは申し訳程度に絡むだけである)、放蕩息子のディッキー役のジュード・ロウの輝くようなお坊ちゃまらしい男前っぷり、脇で出演するディッキーの親友フレディ役のフィリップ・シーモア・ホフマンのいやらしいまでのネチッこさ(殺されて当然か)、メレディス役のケイト・ブランシェットのゴージャスぶり、ピーター役のジャック・デヴエンポートのトムに対する気の持たせぶりなど、演技陣の健闘も目立った。(グウィネス・パルトロウの良さが今一よく分からないのだが…)

さて、「トム・リプリー」を張ったマット・デイモンだが、原作を読んでいないので何も言えないのである。果たして「トム・リプリー」は、いじけた貧乏なホモセクシャル青年なのか?身分がばれそうになるとうろたえる情けない男なのか?原作がその通りならば、熱演であるが。

しかし、「トム・リプリー」は私にとってはどうしてもフラン・ドロン演じた、ハングリー精神旺盛なしたたかな男なんだよなぁ…。

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2008年10月20日

メッセージ・イン・ア・ボトル

1_5 1999年<アメリカ>

監督

ルイス・マンドーキ

出演

ケヴィン・コスナー

ロビン・ライト・ペン

ポール・ニューマン

ジョン・サヴェージ

ストーリー

離婚間もないシングルマザーのテリーサは、息子が父親と一緒に過ごす間、休暇を過ごしていた海岸でジョギング中に、手紙の入ったボトルを拾う。それは、キャサリンという名の女性に宛てた誠実な愛情に満ちた言葉が書かれていた。その内容に胸を打たれたテリーサは調査員として働くシカゴ・トリビューン紙のオフィスにその手紙を持っていくと、女性たちのすべてがこの手紙に感動する。それを見たテリーサのボスのチャーリーは手紙を新聞に全文掲載してしまう。テリーサは憤慨するが、読者の反応は大きかった。テリーサは瓶が拾われた場所や海流の関係、便箋やタイプライターの種類などから、手紙を書いたと思われる男性ギャレット・ブレイクを見つけ、早速会いに行くが…。

※ ネタバレです。

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ボトルの中の手紙の主を探すテリーサ(ロビン・ライト・ペン)

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ギャレット(ケヴィン・コスナー)と、ドッジ(ポール・ニューマン)ブレイク親子

テリーサは、ノースカロライナ州アウター・バンクスに飛び、ヨット・ハーバーでギヤレットと出会う。初対面の2人だか一目で惹かれあった。テリーサがアウター・バンクスに滞在する間に2人の中は急接近する。

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しかし、ギゃレットは2年前に亡くなった妻キャサリンを今でも愛しており、遺品もそのままにして暮らしているのだった。ギャレット自慢の手造りの船も、彼女の死後手を着けずに未完成だった。

9テリーサはついにこの地に来た本当の目的をギャレットに言えないまま、アウター・バンクスを後にする。

今度はギャレットがシカゴへやって来る。テレーサの家に滞在し、仕事場を訪ね、彼女を知ろうとするギャレット。

ついに2人は結ばれる。しかし、偶然ギャレットはテリーサの戸棚の引き出しから、自分が書いた手紙とボトル、そして新聞のコラムの切り抜きを見つけてしまう。混乱し、怒り心頭のギャレットはテリーサの許を去ろうとするが、手紙は3通あった。ギャレットが海に流したのは2通…。1通はキャサリンが書いたものだった。

「海や港にあるすべての船へ

家族 友人 見知らぬ人々へ

これは伝言であり 祈りです

旅をして真実に気づきました

誰もが探し求めて得られぬものを

私は手にしていると

それは生涯 愛する人です

彼は海に魅せられたアウターバンクスの住人

素朴で豊かな人生観を持ち

道を切り開く強い人

私の心の港です

風も どんな困難も “死”でさえも

彼を打ちのめせない

どうか世界中の人々が私たちの愛を知り

癒されますように

そして あらゆる罪の意識や後悔の念

怒りが消えますように

神に祈ります…」

…ギャレットはキャサリンの遺品を整理しはじめる。そして、製作途中の船を再び造るのだった。

船の進水式にテリーサが呼ばれた。しかし、行ってみると船の名前は「キャサリン号」。進水式もキャサリンに捧げるものだった。式場を後にするテリーサ。そして彼女はギャレットとの別れを決めたのだった。後はギャレットの気持ちに任せて…。

ギャレットは父親ドッジに「過去か未来に生きろ」と迫られ、人生の選択をする。妻キャサリンに手紙を再び書き、海に流すため「キャサリン号」で出港した…。

嵐が来た。ギャレットの船は難破しかかった船に遭遇する。ギャレットは海に落ちた父娘を助けるが、母親を助けに海に飛び込み命を落としてしまう…。

テリーサがアウター・バンクスへ現れた。ギャレットの遺品にボトルに入った手紙があった。その手紙を読んで泣き崩れるテリーサ…。

テリーサはギャレットを失った。しかし、心はテリーサの許にある。

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― 愛を失い、愛に傷つき、愛に信じられずにいた男と女が出会い、ふと惹かれあい、再び愛を信じようとして出発しようとする大人の恋愛映画の佳作。

ボトルに入った手紙の主は、その手紙の内容通り、誠実で妻を熱愛している男だった。2人は愛し合うようになるが、彼は妻を忘れられない。妻の姿を、存在を、魂を…。女はそんな男だったからこそ彼を愛したのに気づく。妻からは奪えない。そして別れを決意する…。

男の方も、女を愛してはいるが、妻の存在が重く確信が持てない。そんなとき父親が助け船を出す。「過去か未来に生きろ」と人生の選択を迫る。そして決意し、再び妻へ手紙をしたため、妻との思い出の岬へ出ようとする…。

2人の気持ちは荒波のように、激しく寄せあっては砕ける。

恋愛映画は苦手なので、感想など書けません…が、

しかし確かなことは、この映画を引きししめているのは、ギャレットの父親ドッジ役のポール・ニューマンだろう。

彼自身が物語の語り部に度々なっているし、2人の恋の行方を静かに見守る父親では到底ないことが、いい。どっちつかずの息子に絶えずハッパを掛け、彼の人生の指針となる。ギャレットは「親父には関係ない」と事あるごとに言うけれど、父親の存在は大きい。「わしのせがれだ。ほってはおけん」と、息子の支えになろうとする。「過去」よりも「未来」に生きろと息子に迫るのだ。「わしにかかって来い」と挑むのだ。子供は何歳になっても子供なんだなぁ…としみじみ思ってしまうポール・ニューマンの演技の確かさにほろりとさせられる。

ギャレットが「過去」に生きようとしたのか、「未来」に生きようとしたのかは、彼が残したボトルに入った手紙が全てを語っている。キャサリンに宛てた今のギャレットの本当の気持ちが。

演出も極めてオーソドックスで好感が持てる。主演の2人も程よくロマンチックである。「悲恋」にしたということも映画の成功の一因だろう。

でもやっぱりポール・ニューマンあっての映画だと思う。良い歳の取り方をしているなぁ、ポール・ニューマンという役者は。

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2008年5月15日

アメリカン・ビューティー

1 1999年<アメリカ>

監督 サム・メンデス

出演 ケヴィン・スペイシー/アネット・ベニング/ソーラ・バーチ/ウェス・ベントレー/ミーナ・スヴァーリ/クリス・クーパー/ピーター・ギャラガー

ストーリー

アメリカ郊外の新興住宅地に住む広告マンのレスターは不動産ブローカーの妻キャロリンと高校生の娘ジェーンの3人暮らし。見栄っ張りな妻と反抗期にある娘とはろくに話も出来ず死んだような毎日を送っていたレスターだが、ある日変化が訪れる…。

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普通の人々?妻キャロリン(アネット・ベニング)、娘ジェーン(ソーラ・バーチ)、レスター(ケヴィン・スペイシー)

これはあと1年足らずで死ぬ運命にある男の物語である。

42歳、中年の危機にある男。妻に疲れ、娘には好かれず、会社のリストラ要員。人生の惨敗者だ。そのままでも十分死んでいる。しかし、ある出来事が彼を変える。

娘のチア・リーディングを見に行った折、レスターはある娘と目が合う。そして速効恋に落ちた。彼女の名はアンジェラ。娘ジェーンの親友だった。

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         アンジェラ(ミーナ・スヴァーリ)

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恋に落ちたレスター(ケヴィン・スペイシー)(右、アネット・ベニング)

試合の帰り、レスターはアンジェラに自己紹介し気を引こうとする。その魂胆を見抜きあきれる娘ジェーン。

それからレスターの魂は解き放たれる。幸せな妄想に浸る日々が始まる。

一方ジェーンは、隣に越してきたフィッツ家の一人息子でビデオ・マニアのリッキーの撮影の対象になり、困惑していた。

フィッツ家も威圧的な海軍大佐の父親、無口で無表情な母親、リッキーは父親に精神科通いを強要されていて幸せな家庭とは程遠い。

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         普通の人々?フィッツ家の面々

不動産ブローカーのクリスマス・パーティでレスターとキャロリンは「不動産の王様、バディ・ケーン」に近ずきになる。普段はライバル視しているのに今日のキャロリンはハンサムなバディに媚びている。疲れたレスターはバーテンのバイトをしていたリッキーからマリファナを買いハイになる。実はリッキー、ヤクの売人でもあったのだ。

バイトをサボって2人でマリファナを吸っていると、リッキーの上司がやって来て「仕事をしない者にはバイト料は出さんぞ」と脅すと、「結構。要りません。辞めます。バイト料は忘れて消えてください」と冷静に対処するのだった。その瞬間リッキーはレスターのヒーローになった。

家に帰って来たレスターを待ち構えていたのは、アンジェラだった。今日彼女が泊まると聞いて平静でいられなくなるレスター。ついにはジェーンの部屋の壁に耳をつけて2人の話を盗み聞きする始末だ。

34アンジェラが「少し筋肉を付ければ最高よ!筋肉を付けたら彼と寝るわ」と言えば、レスターは早速ガレージに直行。鉄アレイを見つけ、窓に映った自分のたるんだ全裸を確認すると、黙々とトレーニングに励むのだった。リッキーが「これぞ珍品のホームビデオ」と言って撮影しているとは全く気付かずに…。

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…夜、レスターはトイレに起きた。しかし開けたドアの中には、バスタブに浸かった女神アンジェラが待っていた。「私の体を洗って。私、とても汚れているの…」と彼女はレスターを挑発する。レスターの手がアンジェラの股間に延びる…。

…そしてレスターは幸せな自慰行為に励んでいた。

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「いやらしいっ!!」と夫を罵るキャロリン。しかしレスターも反撃だ。最初に拒んだのはキャロリンの方ではなかったか?キャロリンは離婚の話まで持ち出す。しかしレスターも抜かりがない。財産は半分彼の許へ行くことになっているのだ。完全に冷え切った夫婦が1つのベッドで寝る孤独…。

レスターのワークアウトは着々と進む。隣のゲイのカップルとジョギングしていると、フィッツ大佐はレスターまでゲイだと思ってしまったようだ。

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        フィッツ大佐(クリス・クーパー)

レスターは再びリッキーからマリファナを仕入れた。そして14年間勤めた会社を何の未練もなく辞めた。

リッキーはただただジェーンに焦点を当ててビデオを撮影していた。これが彼の恋愛表現なのだ。

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    ジェーンを撮るリッキー(ウェス・ベントレー)

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   リッキーに何かを感じたジェーン(ソーラ・バーチ)

2人は2キロの帰り道を一緒に歩いて帰ることになる。

一方、欲求不満の妻キャロリンはついにバデイとベッド・インする。彼と寝てキャロリンは欲求不満解消である。バディへののめり込みも本格的なものとなった。

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レスターはハンバーガー・ショップに再就職。何の責任も重圧もない仕事だ。

リッキーとジェーンは彼の一番“美しい”ビデオを鑑賞する。風に吹かれた枯れ葉とゴミ袋…。リッキーの“美”への強い思い入れに感銘を受けたジェーン。彼の手を取り、キスをする。2人の距離は急速に縮まっていく…。

レスターは家族にも誰にも気兼ねしなくなっていく。念願だった車を手に入れ、アンジェラと寝る日に備えてワークアウトは益々力がこもり、リッキーからマリファナを仕入れる生活。彼は以前とは見違えるように自由になっていた…。

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一方娘のジェーンは父親殺害をリッキーに依頼していた…。

― アメリカに巣食う問題を総動員したって感じのブラック・コメディでした。家庭崩壊。冷めた夫婦仲。厳しいビジネスの世界。不倫。同性愛。ティーンエイジャーの悩み。親からの自立。孤独…。これらが渾然一体となって、とてもシニカルで面白い作品に仕上がっています。

この映画の登場人物は皆孤独だ。家庭の中で死んだように過ごす男。家を売ることしか頭にない妻。父親を軽蔑し、自分のルックスに自信が持てない娘。「私は皆と違う」と言ってはばからないルックスが自慢の娘の親友。主人公宅の隣に越してきた一家…。父親は息子に対して優位に立とうとする。息子は冷めた目で父親を見、ビデオ撮影に逃避する。存在するのかも分からない妻…。

そして孤独からの解放。死んだような男が自由を手に入れる。娘の親友に恋し妄想に浸り、隣の息子が差し出したマリファナを手放せなくなり、そして会社を辞める。妻の方まで不倫一直線だ。娘は隣の息子のビデオ撮影の対象になり不気味がり困惑するが、彼の部屋へ招き入れられ「最高に美しい映像」に目が離せなくなり、彼の純粋さに心を打たれる。

そして秘密。主人公の娘の親友と寝たいという願望(娘には見破られているが)。妻の不倫。娘の親友のとるに足らない秘密(娘の手前、本人にしてみれば大きな秘密だが)。隣の息子は実はヤクの売人で、その父親の知られざる秘密…。

主人公は最後死ぬことになるのだが、それまでの経緯がスリリングでラストまで目が離せない。ラストへ向かう土砂降りの雨は芸術的で感動的でさえある。

ケヴィン・スペイシーの程よく力の抜けたさりげない演技(アカデミー主演男優賞受賞)と、アネット・ベニングの力が入りまくった演技の対比も良い。

「ユージュアル・サスペクツ」でケヴィン・スペイシーを見てから、彼のファンになってしまったのだが、彼の声はとても心地よいのだ。私は彼の声に魅了されたと言ってもいいぐらいだ。彼のナレーションを聞くだけでも価値がある一品だが、脚本も練りに練られ、撮影も素晴らしい。

皆が「美しいもの」を探す旅に出る作品でもある。

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2008年3月24日

交渉人

6 1998年<アメリカ>

監督 F・ゲイリー・グレイ

出演

サミュエル・L・ジャクソン

ケヴィン・スペイシー

J・T・ウォルシュ

ロン・リフキン

ストーリー

シカゴ警察のトップ人質交渉人ローマンは相棒のネイサンから警察の年金基金が何者かに盗まれ、内務捜査局の人間が関わっているらしいと聞かされる。呼び出された約束の場所に行くと、ネイサンは殺されていた。そしてローマンが殺人と年金基金横領の犯人にされてしまう…。

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ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)とニーバウム(J・T・ウォルシュ)

ローマンは基金委員だったため、疑われた。突然警察と内務捜査局が家宅捜査にやってくる。ローマンはやって来た内務捜査局のニーバウムが一枚かんでいると睨んでいたが、家からローマンに不利な書類が見つかる…。

俺は何も知らない、やっていないと訴えるローマンだったが、まんまと何者かにはめられてしまった。彼は今や殺人者で横領者だった。

そこで彼は妻カレンとの平穏な生活取り戻し、ネイサンを殺し年金基金を横領した犯人を挙げるため大胆な行動に出る。連邦政府ビルの20階にある内務捜査局に乗り込み、ニーバウムとその場に居合わせた秘書のマギー、タレこみ屋のルディ、そして無線を聞きつけてやって来た同僚のフロストを人質に取り、局に籠城した…。

警察に激震が走る。マスコミが押し寄せる。早速作戦本部が作られ、大がかりな態勢が敷かれる。FBIまでもがやって来る。しかし、ローマンもプロ中のプロだ。警察が入り込めないようにするのは簡単なことだ。そして、外からは完全に謝絶した空間が出来上がった。

電話が鳴る…。同僚の交渉人からだ。しかし、ローマンは交渉人を指定した。「クリス・セイビアン」だと。西地区のトップ交渉人だ。彼が20分以内に来なければ人質は殺される…。

                                 交渉人、セイビアン

                                             (ケヴィン・スペイシー)

1

セイビアンがようやく到着する。何故自分が指名されたのかローマンに聞くが、理由があるのでそれは後だと言われた。

2人は何気ない話から入った。ローマンは休日は何をしているかと聞く。セイビアンは家庭的な男で、普段は家族サービスか、古い映画を観る。西部劇が好きだ。

ローマンはコメディの方が好きだが、「シェーン」は好きだと言う。セイビアンは、「シェーン」は名作だが主人公が死なない映画の方が好きだという。「リオ・ブラボー」に「赤い河」…。

ローマンは「シェーン」は死んでいないと言うが、セイビアンは譲らない。シェーンはラストに振り向かない。馬の上で死んでいるからだ、と…。

そして、交渉に入った。ローマンの要求は、1・警察バッチを返せ。2・死んだら署葬にする。3・内偵者を探せ。無実を証明して陰謀を暴く証人を…。4・ネイサン殺人の犯人を探せ。…8時間以内に探し出さないと、1時間に1人が死ぬことになる。5・今すぐ話したい。というものだ。

セイビアンは早速行動に出る。彼は単独で内務捜査局へ行き、ローマンと相まみえた。

何故自分を交渉人に選んだのか聞いた。

2ローマンは、「正気だと分からせたくて。無実を証明したい。」と言った。

そして交渉は続く…。

「では聞こう。何をさせたい?」と、セイビアン。

ローマンは、「相棒が署員の中に横領犯がいると…。オレの知っている人間だと言った。友人に背かれたら、信用出来るのは他人…。」

その時、突然窓から部隊が突入してきた。割れる窓ガラス、混乱…。交渉は途切れてしまった。狙撃隊からはローマンは格好の標的になったが、同僚の彼を撃てなかった…。そして突入してきた2人は、ローマンの人質になってしまった…。

司令部に戻ってきたセイビアンは、怒り心頭だ。「誰が司令官なんだ!!」と怒鳴る。警察が、セイビアンがローマンの気を引いている隙に作戦を実行したのだった。

「君は司令官ではない」と言われるが、セイビアンは「私の指令なら全員無事に救出来る」と言い切る。しばらくセイビアンと警察の小競り合いがあった後、指揮はセイビアンに委ねられることになった…。

セイビアンは送電を停止した。

…ついに秘書のマギーが口を割った。ニーバウムのパソコンに個人ファイルがあるという。

再びセイビアンはローマンの許へ向かった。…交渉再開。送電再開だ。人質の食事と毛布も…。そして、まずフロストが解放された。

      解放されるフロスト(ロン・リフキン)

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タレこみ屋のルディはパソコン犯罪の専門でもあった。彼がニーバウムのパソコンを開く。

ローマンは、障害基金の関連を全て検索させた。すると、警官のバッヂの番号が出てくる。ネイサンの番号をローマンは見つけた。彼の会話は盗聴されていた…。

ネイサンは殺される前夜、内偵者に会うと言っていた。…おかしい。何故その男を探さないのか?口を封じたいはずだ。…ニーバウムは内偵者を知らないのか?

ローマンはセイビアンに電話を掛け、2人きりで話したいと言い、要求は通った。殺される前ネイサンがどこで誰と会ったか、彼の妻と話してくれと。セイビアン1人で、と。

…セイビアンが内偵者を連れて来た。しかし、ローマンに嘘がばれてしまう。そして、パソコンの画面には“内務捜査局の内偵者、ネイサン”と出ていた…。ニーバウムは横領者に買収されていた。ネイサンは買収を拒んで殺されたのだった。

セイビアンの作戦は失敗した…。

…ニーバウムは横領者の名前を吐くのか?横領者は誰なのか?それを解き明かそうとするローマンの執念。

― これはなかなか緊張感のあるエンターテイメント+サスペンスの良作ですねぇ。

「ユージュアル・サスペクツ」のケヴィン・スペイシーがあまりにも良かったので、思いかけず観てしまった作品だったのですが、こちらのテキパキとしたケヴィン・スペイシーも良い。

もちろん、サミュエル・L・ジャクソンも熱演です。彼も良くなきゃ作品が台無しになる。

犯罪者にでっちあげられた男が命懸けで、無実の罪を晴らそうとする。その方法は、自分がいつも対じしていた籠城者になり、赤の他人の交渉人を呼ぶことにあった。そして、指名された交渉人は彼の言葉を信じ、要求を果たすことが出来るのか?

トップ交渉人同士の高度な駆け引き。赤の他人の指揮官を信じられず勝手な行動に出る警察。警察とFBIのしがらみ…。

これらが渾然一体となって、最後までストーリーをグイグイ推し進めていくパワーは見どころ満載ですね。

脇役も良い味出してます。特に偉人の格言をよく口にするタレこみ屋のルディ(ポール・ジアマッティ)は大活躍でした。

ローマンとセイビアンが初めに話した西部劇の話は、ラストにジャブのごとく効いてくるんですよ。これは必見。

日本では馴染みのない「交渉人」という仕事をよく理解出来る作品でもある。

ただ、2時間20分はちょっと冗長という感想。スローモーションの多用など、思わせぷりで余計だと思う演出も目立った。もう少し短く出来たはずの作品だとも思いました。

9 

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2008年3月16日

ユージュアル・サスペクツ

3 1995年<アメリカ>

監督 ブライアン・シンガー

出演 ガブリエル・バーン/ケヴィン・スペイシー/スティーヴン・ボールドウィン/チャズ・パルミンテリ/ケヴィン・ポラック/ベニチオ・デル・トロ/スージー・エイミス/ピート・ポスルスウェイト

ストーリー

ある夜、カルフォルニアのサン・ペドロ埠頭で船が大爆発。コカイン取引現場からブツを奪おうとした一味と組織の争いが原因らしい。27人が死亡。9100万ドルが消えた。生き残ったのは2人。しかも1人は重傷で、関税特別捜査官のクイヤンはただ1人無傷で生き残った男、ヴァーヴァル・キントを尋問するが…。

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          惨事のすべての始まり

ホックニー(ケヴィン・ポラック)マクマナス(スティーヴン・ボールドウィン)、フェンスター(ベニチオ・デル・トロ)、ディーン・キートン(カブリエル・バーン)、ヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)

…昨日。カリフォルニア州、サン・ペドロ埠頭、ある船上。1人の男がマッチからタバコに火をつける。いっそこのまま船を爆破しようとマッチを床に落とすが、ある男の小便で消されてしまう。

男が、「やぁ、キートン」と、男の名を呼ぶ。「脚の感覚がないよ…カイザー」と、男が答える。「覚悟は?」と「カイザー」という名の男が「キートン」に聞いた。「何時だ?」「12時30分」…「キートン」は頷き覚悟を決めた。その後に銃声が2発響いた。

そして「カイザー」は、吸っていたタバコを落とし、船に火をつけ船を下りた。その後船は大爆発する…。

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―発端は6週間前のN・Y。銃を積んだトラックのハイジャックだ。運転手は犯人たちの顔は見ず、声を聞いた。そして、5人が警察で面通しされる。犯罪歴がある連中ばかりだ。

                     キートンとキント

4マクマナスは忍び込みのプロ、彼と組んでいるフェンスター、ホックニーは爆破のプロ、キートンは警察が一番目を付けていた元汚職警官、キントは身障者でケチな詐欺師だ。

確固たる証拠はなく拘留所へぶち込まれた5人。警察への憎悪が、ある計画へと向かわせる…。

…現在。ただ1人無傷の生き残りの男、ヴァーバル・キントがロサンゼルスの警察でクイヤンに尋問を受けていた。面通しの後の話だ。

釈放後、キートンは嫌がったが、計画は南米の運び屋がエメラルドを持って入国するが、それを強奪するというものだ。強奪の計画はキントが立てた。殺しは無しの作戦だ。ついにキートンも折れて計画に参加することになる。

計画は成功。5人はロサンジェルスへ向かった…。

…病院。瀕死の重傷のもう1人が話し始めた。

23保護してくれ、と。“悪魔”と目が合った。“悪魔”に殺されると。その“悪魔”の名は、「カイザー・ソゼ」だ。彼の顔を見たと言う。そこから「カイザー・ソゼ」の似顔絵が作られることになった…。

ロスで5人は「レッドフット」に会い、エメラルドを売る。そこでレッドフットは5人においしいヤマがあると誘う。

テキサスの宝石商がロスのホテルに泊まっている。彼は宝石の鑑定をしているので現金を大量に持ち歩いている。その男を5人が襲い、宝石はレッドフットに、現金は5人で山分けに、という訳だ。

5人は宝石商を襲う。しかし今回は抵抗が激しく、殺してしまう。そして宝石が入っているはずのアタッシュケースには、コカインが入っているだけだった…。

レッドフットに会い、キートンが何故こんなヤマを持ってきたのか詰め寄った。レッドフットもある弁護士から紹介されたヤマだという。その弁護士に会いたいとキートンが言うと、弁護士も5人に会いたいという…。

…病院から戻ってきたFBIのジャックはクイヤンに今しがたあった出来事を話した。瀕死の重傷の男はアルゼンチンとつながりのあるハンガリーの組織の男で、船にヤクは積んでいなかった。ロスが目的地ではなく、トルコに寄る前に寄港しただけだった。そして、「カイザー・ソゼ」だ。

クイヤンはキントに、「カイザー・ソゼ」の名を聞いた。キントは動揺したが、話し出した…。

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弁護士が5人に会いに来た。名前は「コバヤシ」という。英国紳士風な男だ。その「コバヤシ」が、雇い主「カイザー・ソゼ」が5人に仕事を依頼してきたという。

「カイザー・ソゼ」の名前にキント以外の4人は素早く反応した。硬くなる4人…。

今回は依頼というより命令だという。5人はそれぞれが「カイザー・ソゼ」の持ち物だと知らずに金や物を強奪していたのだ。あの警察での面通しは、「カイザー・ソゼ」と「コバヤシ」がお膳立てしたのだった。

「コバヤシ」は話の要点を話し始めた。

「カイザー・ソゼ」の重要な取引はヤクだ。数年前からの競争相手はアルゼンチンの組織である。だが彼らは押され気味で、勢力挽回を図って3日後に9100万ドルのブツを売りに来る。この取引を阻止してもらいたいというのだ。成功すれば9100万ドルは5人のものになる。

5人は、「カイザー・ソゼ」から逃げられなかった。宝石商殺し、そして脅しの資料が「コバヤシ」から渡された…。

              話を聞くクイヤン(チャズ・パズミンテリ)

7_3そしてキントが「カイザー・ソゼ」の伝説を語りだした。

トルコ時代、ハンガリーの組織が暗黒街を牛耳ろうとした。彼らにしてみれば、ヤクの売人だったソゼが邪魔だった。彼らはソゼの家を襲った。彼は留守で妻と子供がいた。ソゼが帰宅すると、レイプされた妻と泣き叫ぶ子供たち。子供を殺しながら「縄張りを渡せ」とソゼを脅した。するとソゼは家族を銃で撃ち殺したのだ。彼は言った。「いっそ殺す方が妻と子供の救いになる」と。

22_2そして彼は1人だけを逃がして、葬式の後復讐に出かけた…。

襲った奴の妻子と両親、その友達を殺し、彼らの家と彼らが働いていた店を焼き、彼らに金を借りてた奴まで殺して、そして地下に潜って姿を消し、伝説となった。…と。

キートンは言っていた。「神は信じないが、神が怖い」と。俺は神を信じる。だが、怖いのは「カイザー・ソゼ」だ、とキントは言った。

8クイヤンは、検察側の証人になれと言う。キントは断る。今度はキントに保護を申し出た。するとキントは、「カイザー・ソゼの尻尾を掴む?あいつがお前らの罠にはまると思うのか?俺を殺ったら、アッという間に姿を消してそれっきりさ」と、捨て鉢に言った…。

クイヤンに話の続きを促され、キントはまた話し始めた。

フェンスターが“幸運を”というメモを残し、金を持ち逃げした。するとその夜「コバヤシ」からフェンスターの居場所を知らされた。

フェンスターは殺され、浜辺の洞窟に捨てられていた。キートンは「コバヤシ」の言いなりにはならないと言った。彼は「コバヤシ」を殺すと決めたのだ。

                  銃を突きつけられる「コバヤシ」

                     (ピート・ポスルウェイト)

17しかし、「コバヤシ」のほうが一枚上手だった。彼はキートンの恋人の刑事弁護士イーディを抱きこんでいた…。

「カイザー・ソゼ」の仕事を請けるしかなかった…。

船は鉄壁だった。ここからどうやってコカインを焼き、9100万ドルの金を持って帰れるというのか?船に乗り込んだら生きては戻れない。

夜が来た。ハンガリー人の男たちが次々に船へと向かっていく。金も届いた。

物陰に隠れていたキートンとキント。キートンはキントに、「ここに残れ」と言った。生き残ったら金を持って逃げろと。イーディに全て話せば彼女が「コバヤシ」を葬ってくれる、と。

そしてキートンは船へ向かって歩き出した…。

キントを除いた3人は作戦実行に出た。キントはその場にうずくまったままだった…。

クイヤンは、「逃げられただろう?」と尋ねた。「動けなかった。フェンスターの死に顔が…。それに計画は成功しつつあった」と、キントは答えた。

…港で頭を撃たれた男の溺死体が上がった。アルトゥーロ・マルケス。アルゼンチンの麻薬業者だ。N・Yで挙げられ脱走してカルフォルニアへ。逮捕され本国送還の手続き中また逃走。その手続きをしていたのが、キートンの恋人イーディだった。

彼は密告屋で、リストの中には「カイザー・ソゼ」の名があった…。

ハンガリー人の言ったとおり、船にヤクは無かった。ヤクの代わりにアルトゥーロ・マルケスがハンガリーの組織に売られたのだった。

「カイザー・ソゼ」は、アルトゥーロ・マルケスを葬り去るために、5人を雇いこの船を選んだのだ…。

6

全てが終わった後、船に火を落とし、「カイザー・ソゼ」は去った。そして船は大爆発を起こし、証拠は消えた。…キントを残して。

マルケスの手続きをしていた、キートンの恋人イーディも昨日ホテルで殺されていた。その残忍さは「カイザー・ソゼ」そのものだ。

そんなことを出来るのは、かつて一度死んだ前科があり、血も涙も情けもなかった汚職警官キートンしかいない。

…アルトゥーロ・マルケスとイーディの件で、クイヤンは事件の黒幕は、「カイザー・ソゼ」と言う名の「ディーン・キートン」だと推理した…。

― いやぁ…これは、なんと緻密に練られた脚本に拍手ですよ。この“だまし”のテクニックがいかに凄いか!!

我々は、「ディーン・キートン」が「カイザー・ソゼ」ではない事を知っている訳ですね。消去法でいくと、彼しか「カイザー・ソゼ」に行きあらないのは薄々気づいている。

しかし、気づかせながらも脚本のパワーは落ちるどころか、ぐんぐん加速していく。心地よいほどに。

ヴァーバル・キントの細に入った話しぶり。彼の気弱ぶりが、この映画を更に面白くしています。クイヤンに、「カイザー・ソゼ」は「キートン」だと暴かれたときは泣いちゃうしね。とにかくヴァーバル・キントは気弱で半身が不自由な、都会の底辺で生きているケチな詐欺師なんですよ。

そんな彼だからこそ、「キートン」=「カイザー・ソゼ」は情けをかけたとクイヤンは推理した。

本当の「カイザー・ソゼ」には“慈悲”の心はない。自分のものを奪えばどんな男でも。雇われた5(?)人も殺される運命にあったのは明確だ。

キントが出所した後、今まで彼を尋問していた部屋で、「キートンの正体が判った」と悦に入っていたクイヤンは、壁に掛かっているボードを見て愕然とする。色々なチラシや紙が張ってある…。

そして、ファックスで「カイザー・ソゼ」の似顔絵が送られてきたときにはもう遅いのだ。

彼は、「アッという間に姿を消して、それっきりさ…」

これはもう、ただただヴァーバル・キントの荒唐無稽とも思われる話術に翻弄され、酔うしかないのである。

第68回アカデミー、オリジナル脚本賞、助演男優賞(ケヴイン・スペイシー)は当然の結果である。

19

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2007年2月25日

L・Aコンフィデンシャル

La6 1997年 <アメリカ>

監督 カーティス・ハンソン

出演 ケヴィン・スペイシー

    ラッセル・クロウ

    ガイ・ピアース

    キム・ベイシンガー

ストーリー

1953年末、ロサンゼルス。ダウンタウンのナイト・アウル・カフェで6人の男女が惨殺された。ロス市警は早速捜査を開始。「L・Aコンフィデンシャル」というタブロイド誌の記者と結託し、羽振りをきかせ刑事ドラマ『名誉のバッジ』のアドバイザーも務める、狡猾なジャック・ヴィンセンズ刑事は、“白ユリの館”というハリウッドの有名女優に似せた娼婦達を擁する秘密売春組織の名刺を偶然手に入れ、事件にかかわりがあるとふんでいた。一方、熱血漢なバド・ホワイト刑事は、ヴェロニカ・レイクに似た高級娼婦リンに接近するが、いつしか彼女と恋に落ちる。そして、野心家で出世のためには手段を選ばないエド・エクスリー警部補は、己の方針に従って捜査を続けるが、事あるごとにバドと対立する。エドはジャックと組み捜査を進めるうち、事件の背後には街のボスだったミッキー・コーエン逮捕後の縄張りをめぐる利権争いが絡んでいることが判明するが…。

La_1

“白ユリの館”のヴェロニカ・レイク、リン (キム・ベイシンガー)

1940年代~50年代のロサンゼルスの暗部を描いたら、右に出るものはいないといっても過言ではない、ジェームズ・エルロイの同名小説の映画化。

いや、これはまさしく“傑作”ですよ。入りこんだストーリーの糸を解く、このスリルがたまらない。

誰が味方で誰が敵かも分からない腐敗した組織、ロス市警。そのなかで、上手く市警のなかを泳ぐジャック。熱血漢で不器用なバド。1人冷静で出世のために働いているエド。この三人三様なキャラクターを監督は実に上手くまとめています。

               狡猾なジャック・ビンセンズ刑事

                                      (ケヴィン・スペイシー)

La4

クリスマスの夜、酒を買いに入った店でバドは、リンに出会う。一目ぼれだ。そして、ロス市警で祝いに酔っているなか、警官仲間を半殺しにしたメキシコ人グループが逮捕され、刑事・警官たちはこのグループを乱暴しにかかる。それを新聞社の記者に写真を撮られ、第一面でデカデカと載せられてしまった。この失態に警察幹部は大弱りだが、もうすぐ定年で恩給が貰える刑事3人をクピにすれば事態は収まるというエドの提案を受け入れ、ピンチを乗り切った。しかし、そうしたことでエドは“裏切り者”扱いされ、孤立してしまう。

出世の鬼、エド・エクスリー警部補 (ガイ・ピアース)

La3_1そして、「ナイト・アウル・カフェ」で惨事が起こる。なんと6人の犠牲者のなかに、バドの相棒で、恩給を受け損なった元刑事がいたのだ。バドは早速単身で事件を調査することに。そして行き当たったのが、クリスマスの夜に逢ったヴェロニカ・レイク似の娼婦リンだった。このリンという女は、大富豪のパチェットが経営する秘密売春組織の一員だ。パチェットに接触したが、彼はつかみどころのない人物で追い返されてしまう。次に向かったのはもちろんリンの家だ。しかし、リンも何も知らなかった。だが、2人の関係は燃え上がるばかり…。

「ナイト・アウル・カフェ」の事件は急展開。黒人の男たちが逮捕され、自供したのだ。これで事件は解決へ…。「L・Aコンフィデンシャル」もデカデカと事件解決と書いた。しかし、バド・ホワイトは納得していなかった。そして何故か事件を解決に導いたエドも納得していなかった…。そして爆発したようにリンに迫るエド。それを知って嫉妬に狂うバド。

― これは“男達”の執念の物語ですね。「ナイト・アウル・カフェ」の殺人の本当の黒幕は誰だ?そのために三者三様の捜査があり、バドは単身で、エドとジャックは組んで“真実”を探す。

エドとジャックが、「なぜ刑事になったのか?」という話もいいですな。エドは、「警官の父親が殺されたから。」と。犯人の名前も顔も知らないので、彼は犯人を“ロロ・トマシ”と名づけていた。それが、「ナイト・アウル・カフェ」の事件と腐敗しきったロス市警を結びつける。

   バド・ホワイト刑事 (ラッセル・クロウ) と エド

La2

しかし、流石は40年代~50年代のロサンゼルスを描き切ったジェームズ・エルロイ。ロスといえば、ハリウッド。ギャングの支配と“映画スター達”ラナ・ターナーと当時の恋人で女をゆするしか脳がないギャング、ジョニー・スタンパナートが出てきます。エドがバーで、ラナ・タナーを偽者呼ばわりしたが、実は本物だった…というエピソードもきいてます。この、ラナ・ターナーの愛人は後に彼女の娘によって刺殺されています。

昨年の10月に公開された、『ブラック・ダリア』も彼の同名小説の映画化ですが、原作を読んでいないので偉そうなことは言えませんが、この作品のほうが一枚も二枚も上の出来栄えだと思います。

スキャンダルがはびこる街、ハリウッド=ロザンゼルス。これ以上刺激的な題材はありませんね。

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