我等の生涯の最良の年
監督 ウィリアム・ワイラー
出演 フレドリック・マーチ
ダナ・アンドリュース
ハロルド・ラッセル
マーナ・ロイ
テレサ・ライト
ヴァージニア・メイヨ
ストーリー
軍用輸送機B17に乗り合わせた復員兵3人は同じ故郷の町の出身だった。歩兵軍曹アルは中年の銀行員、青年の飛行大尉フレッドは百貨店の番頭、一番若い水兵のホーマーは両腕を無くし義手の傷痍軍人。最初にタクシーはホーマーの家に着き、彼は両親と妹、そして恋人のウィルマに迎えられたが、彼の義手を見て一同は息をのんだ。次にアルの豪華なアパートメントに着き、4年前には少女だった娘ペギーが美しい一人前の女性となり、息子ボップも生意気盛りな青年になっていたことに何かしら違和感を感じるが、相変わらず妻のミリーは美しく2人は再会を確かめ合った。最後にフレッドを迎えたのは、アル中の父と自堕落な母で、結婚して3週間で離ればなれになった妻マリーは家を出て、ナイトクラブで働いていた。アルは4年の空白を埋めるべき、妻と娘を連れてナイトクラブへと出かけた。彼はホーマーの伯父が経営している“ブッチの店”へ行くと、フレッドとホーマーが来合わせており、酔っているアルは2人の戦友と大酒盛りを始めるが…。
“ブッチの店”に集まった3人とアルの家族とブッチ
う~ん…私がリアムタイムで観たアメリカ人だったなら、この映画は「素晴らしい、素敵。」と思うんでしょうが、なんせ観たのがアメリカの“赤狩り”を経て、冷戦、そしてベトナム戦争、そしてもろもろ、9.11、イラク介入…。『アメリカ』という国は決して自由できれいごとに溢れた国ではない、ということが嫌と言うほど分かった時に観たのが悪かったのか…。それとも私が単にひねくれた観方しか出来ない女なのか?(ひねくれているのは自分でも承知なのだが…) う~ん…。
ブッチとピアノ演奏をするホーマー
確かにアカデミー賞6部門受賞(作品、製作、脚本、監督、主演男優(フレドリック・マーチ)、助演男優(ハロルド・ラッセル))も納得できる作品であることは確かなんですね。簡単に言えば、復員兵とその家族がいかにして、戦争の傷を修復するか…といった内容のストーリーですね。
アルは以前勤めていた銀行から、副社長として迎えられる。何一つ不満もないはずなのに、何故か酒に溺れるようになっていく…。傷痍兵のホーマーは、両腕が無いばかりに自信を無くし、恋人を遠ざけてしまう…。そしてフレッドは、飛行中に狙撃され死んだ親友の夢にうなされる日々が続き、以前勤めていた百貨店は大きな会社に吸収され、彼の居場所は無かった。仕事の無いフレッドは、渋々ながらも生活のため、元部下が今は上司となっているその百貨店に勤めるしかなかった…。そして彼の妻マリーが、彼と結婚したのは1人の人間としてではなく、単に「軍服姿」がかっこよかったからだと悟る。そして、3人で“ブッチの店”で飲みつぶれたときに介抱してくれたアルの娘ペギーに惹かれるようになって行く…。
お互いに惹かれあうようになっていくフレッド(ダナ・アンドリュース) とペギー(テレサ・ライト)
はっきり言うと、この映画は第二次大戦後の復員兵の理想の姿・願望を描いたものですね。家族や恋人の尽力で戦争の傷は癒えるのだ…。そしてなにもかも元通りになるのだ― という、なんだかアメリカ政府のプロパガンダ映画みたいなものなんだと、私には思えました。
物語ではやっぱりアルは酒を控えるようになり、ホーマーも恋人の変わらない愛に心を打たれ、そしてフレッド(彼の店に遊びに来たホーマーに無礼な客を殴ってクビになる…)もマリーと離婚し新しい生活を始めるべくどこか遠くへ行こうと荷物をまとめる。
しかし、ベトナム戦争で“戦争後遺症”という心の傷を負ってしまった兵士を多く抱えたアメリカ。勝った戦争だから、“戦争後遺症”という兵士は出なかった。もしいたとしても、家族や恋人が傷を癒してくれる…なんて虫のいい話に過ぎない。実際前線に出兵した兵士は“後遺症”になり、傷つき通したはず。(彼の映画は観たことがありませんが) 第二次大戦のヨーロッパ戦線の目覚しい活躍をしたオーディ・マーフィーを思い出さずにはいられませんでした。
ちなみに、ホーマーを演じたハロルド・ラッセルは第二次大戦で戦った本物の傷痍兵です。
そしてフレッドの妻マリー役のヴァージニア・メイヨは、ダニー・ケイの一連の映画でかしこまった役を演じているときより、『白熱』のジェームズ・キャグニーの妻やこの映画での“軽薄な役”の方が輝いていますね。
ヴァージニア・メイヨ
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コメント
>グーンベイさん
私がオーディ・マーフィーの生涯というか戦争後遺症に悩まされ続けたことを知った本は『エクスァイア アメリカの歴史を変えた50人』という上下巻の本なんです。もう20年近く前の本なので、とっくに絶版となっていますが、下巻でオーディ・マーフィのことが出てきます。ちなみに映画人では、ジョン・フォード、キャサリン・ヘプバーンが載っています。興味があれば探してみてください。
投稿: オショーネシー | 2006年11月11日 (土) 21時15分
オショーネシーさん・・・今晩は。
うーーーん。北海道は竜巻でとんでもないことになっていましたね・・・お見舞い申し上げます。
オーデイ・マーフイ・・・そうだったんですか。ベビーフエイスに似合わず心は病んでいたんですね・・・知りませんでした。
西部劇マニアだった映画少年は子供の頃、オーデイ・マーフイ西部劇を良く観ていました。小柄ながら俊敏に動くガンマンを演じ人気があったんです。公開された作品も多くランドルフ・スコットやジョエル・マックリー等と並んで親しみのもてた西部劇スターでしたね・・・。
投稿: グリーンベイ | 2006年11月 9日 (木) 20時54分
>グリーンベイさん
お察しのとおり、戦争映画特集です。しかし、ベトナム戦争を題材にした映画は1本して観てないのです。『プラトーン』だけ。ですから“朝鮮戦争”で終わりですので、ご安心を…(笑)
う~ん…この映画を観た後すごく悩んだんですよね。なんか違和感ありありの映画だったんですね。確かにグリーンベイさんのご指摘どおり、時期を得た内容・ストーリー運びの上手さ・俳優たちの演技の水準は高いものだと思いましたが…何故か納得がいかない気持ちのほうが大きかった。…やはり46年はアメリカ映画不作の年だったのですかね?
そして、あえてオーディ・マーフイーを出したのは、彼も第二次大戦で<英雄>となり、映画スターとなりましたが、実は戦争後遺症に苦しみ続けた人だった…ということを本で読んだのです。『我等の~』では、戦争後遺症というものを表面でしか捕らえていないジレンマ、とでも言うのでしょうか…。この映画の公開時にはまだ“戦争後遺症”なるものが復員兵たちのなかでおこっていたという概念が無かったんでしょうが…。
沢木耕太郎さんの『父親たちの星条旗』のヤラセ写真疑惑…。
まぁ、映画のネタバレになってしまいますが、実はあのローゼンタールの写真は2度目に旗を掲げたときに撮られたものだったんですね。擂鉢山に最初に掲げた国旗は、軍のお偉いさんが欲しいと言って持って帰ったんです。司令官たちも兵士も唖然・呆然・怒りさえ覚えたようですが、もう一度山の頂上に国旗を掲げたいということで、2度目に国旗を掲げたときに、なんとか新聞に載せられるような写真が撮れた、という訳なんです。それが「ヤラセ」として伝説化してしまったのではないでしょうか。
しかしマーナ・ロイはいつまでも美しいですね。『影なき男』シリーズの頃から美しかったですけど、年を経てなお美しいというのはなんとも羨ましい限りです。
投稿: オショーネシー | 2006年11月 9日 (木) 00時51分
オショネシーさん・・・今晩は。
うーーーん。「親父たちの星条旗」「僕の村は戦場だった」・・・「我らの生涯の最良の年」(46)と何れも戦争が絡んだ作品が並びましたね。
何処の国でも過酷な戦争体験が復員者のその後の人生に深い傷跡を残している・・・。この作品は3時間という大作ですが最後まで緩むることもない演出でした・・・流石、ウイリアム・ワイラーですね。しかし、三人の復員者が夫々オムニバスの如く話が進行するが、やはり、フリデリック・マーチとマーナ・ロイ嬢との二人の話が中心になっている・・・当然ですが。この二人良いね。
オショーネシーさん・・・如何でしょう?。この作品はアカデミー賞を総なめと云った感じですが・・・それ程評価される映画でしょうか?。たしかに時機を得た内容ですし、それなりに仕上がりが水準は超えていますが・・・。
S・3年度のキネ旬ランクでは1位・「ヘンリー五世」(44)2位・「我らの生涯・・」(46)3位・「逢びき」(45)で・・8位・「失われた週末」(45)まで他は全て欧州の作品です。ですから逆にアメリカでは優れた作品が無かったのでは・・・とも取れますね。
それから、オショーネシーさん・・・唐突にも・・・勲章を沢山貰ったオデイ・マーフイが出てきましたね、映画少年にとっては嬉しいことではありますが・・・如何したことでしょう。(笑)
ワイラー監督の撮った西部劇にクーパーの「西部の男」(40)があるが・・・極めつけはやはり「大いなる西部」(58)ですね。パール・アイブスがアカデミー賞・助演男優賞を受賞しましたね・・・。
又、7日の朝日新聞に・・・「戦場の無残さと戦争の虚しさを描く」沢木耕太郎氏のコラムで「親父たちの星条旗」のヤラセ写真の疑惑が・・・と書いているのですが・・・?。
投稿: グリーンベイ | 2006年11月 8日 (水) 21時51分