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地上より永遠に

Photo_2 1953年 <アメリカ>

監督 

フレッド・ジンネマン

出演

バート・ランカスター

モンゴメリー・クリフト

デボラ・カー

フランク・シナトラ

ドナ・リード

ストーリー

太平洋戦争直前の1941年、ホノルルの兵営にプルーイットという青年が転属してきた。彼は上官に反目したたため、一兵卒に落とされたのだった。この新しい部隊の大尉はボクシングに夢中で、彼が以前の隊で活躍したことを知りチーム入りを勧めるが、プルーイットはにべもなく断った。それから度重なる嫌がらせを受けるようになるが、彼は自分の意志を貫き続ける。そんな彼の心の拠りどころが、マッジオと行ったクラブの女ロリーンだった。一方プルーイットを影で支えてきたウォーデン曹長もまた、大尉の妻カレンと許されぬ仲になっていく…。

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ホノルルの兵営にやってきたプルーイット(モンゴメリー・クリフト)

今回は、先日亡くなった女優デボラ・カーさんを偲んで、「追悼、デボラ・カー」をお送りいたします。

ホノルルの兵営に転属になったプルーイットだが、それはこの部隊の大尉が望んだことだった。彼は優秀なミドル級のボクサーで、チームに入れば優勝は間違いない。しかし、彼は練習相手に怪我を負わせてからボクシングとは縁を断ち切ったのだった。だが、ボクシング部員は皆彼の上官。厳しい“いじめ”が待っていた。

             行進にもケチをつけられる

             プルーイットとマッジオ(フランク・シナトラ)

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プルーイットはしかし、“いじめ”に耐え続けた。それを見守っていたのが、曹長ウォーデンである。彼は公明正大に物事を判断する男だ。上海で戦闘に加わり、フィリピンでも戦った勇敢な軍人でもあった。

その彼が、大尉の妻カレンと顔を合わせている間に彼女に惹かれていく。

ある雨の日、大尉の承認が必要な書類を彼の家に持っていくが、あいにく彼は不在でカレンだけが酒を飲み、一人でいた。彼女はウォーデンに挑発的な態度だが、“女の弱さ”をさらしてしまう。そして2人は恋に落ちた…。

待ちに待った給料日。ウォーデンとカレンは逢引をする。2人で海を泳ぎ、ビーチで熱い抱擁を交わした。

   ウォーデン(バート・ランカスター)とカレン(デボラ・カー)

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挑発的な態度に出たのは、今度はウォーデンだった。彼女の「男関係」に嫉妬したのだ。カレンは「男は皆同じ」だと言う。怒るウォーデンだが、彼女は話し出した。「結婚2年で関係は破綻していた。しかし、妊娠していたので希望をつないだ。だが、陣痛が起きたとき医者を連れてくるよう頼んだが、彼は若い女と楽しみ泥酔し、医者も呼ばず眠りこけた。1時間後に出産したが、死産だった。それ以来子供を産めない体になってしまった。それから男と出歩いた。-夢を追って…」と。

ウォーデンはカレンをきつく抱きしめるしかなかった…。

一方マッジオは嫌がるプルーイットを街へ連れ出し、行きつけの酒場へと行く。プルーイットはそこで、ある女に釘付けになる。ロリーンだ。彼女に群がる男に嫉妬するプルーイット。それが彼女の「仕事」だと分かっていても、だから尚更だった。

 ロリーン(ドナ・リード)に打ち明け話をするプルーイット

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そして彼女にボクシングをやめた理由を話し出した。将来を嘱望されていたボクサーが彼の練習相手だった。ある時、普通のパンチで倒れた。起き上がりもせず、動きもしなかった。1週間も危篤状態が続いたが、助かった。だが失明した。見舞いに行き、ボクシングの話をしたとき、その彼が見えない目から涙を流した。それ以来見舞いには行けなくなってしまった…と。

ロリーンはプルーイットをきつく抱きしめるしかなかった…。

“いじめ”に耐え続けるプルーイットに、ウォーデン曹長は彼に休暇をやるという。実は曹長の作った書類には大尉は目も通さずに署名しているのだ。

その外出の日、一人準備に遅れたマッジオは、病人が出て警備の任務に就かされる。プルーイットもロリーンの冷たい態度に苛立ちを感じる。ともかくホテルで待っていると言い残し出て行く。ロリーンはホテルに来た。そこにベロベロに酔ったマッジオも来た。制服姿で。不審に思ったプルーイット。すると、警備の任務から逃げ出して来たという。職務放棄だ。

Photo_6早く戻らないと大変なことになる。プルーイットは彼の酔いを覚まし、すぐ帰るようタクシーを呼びに行った。しかし、その隙にマッジオはMPに捕まってしまう。

そしてマッジオは6ヶ月の営倉入りになる…。この営倉の曹長は、マッジオと何かと遺恨がある男ジャドソン軍曹だった。

プルーイットとロリーンが幸せに浸っている間、ジャドソンはマッジオの体を執拗に痛め続けた。マッジオの頭にはもう“脱走”しかなかった。

一方、幸せなはずのウォーデンとカレンも隠れて会うことに2人とも疲れてきていた。カレンは2人が幸せになる方法が一つだけあるという。

Photo_7ウォーデンが「将校」になれさえすればいいのだ。うすれば、カレンは大尉と離婚して一緒になれると希望を持った。しかしウォーデンが「将校は嫌いだ」と拒絶する。反目しあう2人はいつしか言い争いになっていた。2人は、こんな惨めな気持ちは初めてだと思うようになる。反対車線から来る車にも顔を隠さなければならない逢引。しかし狂おしく愛してもいる。この相反する気持ちをどすればいいのだろう…。

マッジオが脱獄に成功し、プルーエットと酒を飲み交わしていたウォーデン曹長の前に姿を見せた。しかし、もう彼はボロ布だった。そしてプルーエットの腕の中で死んだ…。

夜…ロリーンの勤めるクラブから出てきたジャドソンを追う1人の男がいた。プルーエットである。彼を暗い路地へ連れ込み、ナイフで刺して殺した。この殺しは新聞の一面を飾った。プルーエットもジャドソンのナイフでケガをして、兵営には帰れなかった。

指揮官室では、大尉の処遇が検討されていた。プルーエットを不当に虐待してきた罪で有罪になった。軍法会議を恐れた大尉は逃れる方法として、辞表を出すことを命令された。

それをカレンが知ると、ウォーデンに会いたいと電話してきた。2人はいつもの海岸で会う。元大尉は来週本土送還になる。彼女に一緒についてきてほしいという。ウォーデンはいつ「将校」になるのか?カレンには衝撃的な答えが返ってきた。書類は出来ているが、サインはしていない、と。

Photo 2人で計画していたのに、何故?口先だけだったの?カレンは戸惑いを隠せない。ウォーデンは、自分はあくまでも一兵卒だ。将校は“演技”が必要だが、自分はそれが出来ないと言う。

別れのときが来た。カレンから切り出した。そして彼女は去っていった…。

…12月7日、朝が来た。皆変わりなく朝食をとっている。飛行機の音が騒がしい。突然の爆発音。日本軍が空軍基地に爆撃を仕掛けた。太平洋戦争の始まりである…。

― 「ここよりとわに」と読む。

なんて素晴らしく計算された映画なんだろう。誰が「主役」というわけではなく、ウォーデン曹長、大尉の妻カレン、プルーイット、ロリーン、マッジオの人生が絡み合いながらも離れ、そしてまた絡み合う。本当に見事に計算しつくされた映画である。

この映画で大事なのは、「軍人」であること。「軍」が好きだと言いながらも、決して「軍」の色に染まれなかったアウトローのプルーイット。「軍」は生活の手段のマッジオ。そして、プルーイットと対極にある、根っからの「軍人」ウォーデン曹長。彼は前線に出られない“将校”などには、さらさら興味がなかったのである。

「軍人」の“妻”としての女ほど、忍耐力を要求され、かつつまらないものはないだろう。夫がいつ戦場に出て行って、一通のそっけない手紙が来る日を待つというものは哀れでもある。しかし、平和なときはひたすら“暇”をもてあそぶのである。両極端な日々を生きる女の気持ちはいかばかりか。

プルーエットがロリーンにプロポーズするシーンがあるが、彼女は「軍人の妻は嫌」と断るのである。「マトモになるの」と言うのである。「マトモな職業のマトモな人と結婚して、マトモな妻になり、マトモな家庭を築くの。」と言い切るのだ。

しかし、「軍人」以外にはなれないと思っているプルーエットには厳しい言葉である。そのプルーエットも「軍人」としては、かなり変わり者である。ボクシングに夢中になっている隊の大尉からクラブに誘われても頑なに断り続ける頑固な男。ボクシングをやらないためなら、どんな“いじめ”にも耐えてしまう強い意志。

しかし、男の巣「軍」というところは、なんと子供じみたところか。あの、ジョン・ウェインの「男の中の男の世界」とはすっかりかけ離れた世界なんですね。プルーエットへの“いじめ”はその最たるものだし、カレンと仮面夫婦でありながら昇進の面で離婚出来ずにいる大尉。その大尉がプルーイットをわざわざ自分の隊に転属させる理由…。

涙なしでは観れない場面を2つ。マッジオが死んだ夜、プルーイットが兵営全棟に響くようにトランペットを涙を流しながら演奏する場面。思わずウォーデン曹長もつけていた机のライトを消してしまう。そして、ウォーデンとカレンの別れの場面。カレンが日差しを遮った手が、敬礼のようだったこと。「軍人」ウォーデンに対する最後の皮肉ですね。

さて、デボラ・カーであるが、彼女の役はいわゆる“妖婦”である。はじめのキャスティングではこの役、ジョーン・クロフォードが演じる予定だったとか。しかし、上品で貞節、一種冷たいイメージの彼女は、なぜかこの役に合っていた。子供が産めないことで悩み、男でその寂しさを紛らわせてきた女。ウォーデンでの恋愛では計画的なところも見せる。実に“女の苦悩としたたかさ”を背負った役柄である。この役が演じられるとは、女優みよりに尽きるかもしれない。

作品賞・監督賞・助演男優(フランク・シナトラ)・助演女優(ドナ・リード)など、「ローマの休日」を抑えて8部門受賞。納得!

原作は800ページを超える大著。今なら映画化に4時間ぐらいかかるであろうが、この作品、118分である。今の映画に関わる者よ、見習ってほしいものである。

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コメント

>グリーンベイさん
モンゴメリー・クリフトは、かの「赤い河」で散々な目にあったようで(ホークス監督とジョン・ウェインは自分と同じ人種とは思えなかったようですね)「シェーン」も同じ感じの西部劇だと思い断ったのでしょうかねぇ…。しかし、彼が断った映画の役は凄い!!「サンセット大通り」「波止場」「エデンの東」「白鯨」などなど…。しかし「シェーン」は哀愁溢れる異色な西部劇。モンティが出ていたら…どんなシェーンだったんでしょう。
この作品、日本での評価はイマイチだったんですか?“大人の映画”はまだ発展途上にある日本にはちょっと難しかったのかな?
ラスト・シーン、良かったですね。ドナ・リードがモンティは戦って死んだと言うのは、バート・ランカスターのはからいでしょうね。
レイが岸に流れれば帰ってこれる。沖に流れれば帰ってこれない…。そしてレイは…。
いいですねぇ、こんな終わり方も。

投稿: オショーネシー | 2007年10月28日 (日) 01時48分

 オショーネシーさん・・・今晩は。
うーーーん。「地上より永遠に」(53)・・・何時も思うのですが・・・「陽のあたる場所」(51)の縁でジョージ・ステーブンスン監督はモンゴメリ・クリフトにシェーン役にオフアーするが、彼は考えた末、西部劇より文芸作品ぽい「地上より永遠に」を選んだ・・・此の話は有名ですね。しかし、モンテイのシェーンは如何だったのだろうと何時も考えてしまう・・・。
アラン・ラッドのシェーン役は一世一代のハマリ役となった・・・。
フレッド・ジンネマン監督は「地上より永遠に」の前年に西部劇の傑作として名高い「真昼の決闘」(52)を発表している。此の頃の監督は油が乗っていた時期であった・・・。その後の監督作品では名作「わが命つきるとも」(66)が印象深い・・・。
さて、この「地上より永遠に」は、ストーリーを追って、引いて見ると単なるメロ・ドラマでしかないが・・・監督の演出の上手さは、軍と云う組織の暗部をリアルに描ききって8個のオスカー受賞に相応しい、また、ハリウッドでは珍しい大人の映画として高い評価を受けましたが・・・わが国での評価は今一だっのですね。53年度キネ旬ベスト・10では16位と低位にある・・・。ちなみに一位は「禁じられた遊び」(53)・・・そして「シェーン」(53)は7位にランクされた・・・。
品格と知性的なイメージが売りだったイギリスの名花デボラ・カー嬢が不倫妻を演じると云う衝撃が当時確かにありましたね・・・映画少年は逆にそんなデボラ・カー嬢に堪らない魅力を感じたものでしたが・・・。海水に濡れたショートヘアの彼女に、これまでにはない衝撃に近い魅力を感じるのでした。
波打ち際での抱擁シーンは、映画史に残る名シーンであるが・・・流石、オショーネシーさんは目の付け所が確かですね。ラッパ手のモンテイが親友のシナトラを追悼する哀愁切々たるトランペット・・・ランカスターとカー嬢の別れ際・・・日差しを遮る手が敬礼と見る・・・呻ります・・・その通りですね・・・。
映画少年グリーンベイが最も感動したシーンは・・・ラストシーン・・・本国へ向かう客船のデッキの上で、お互いに愛しい男を失った二人の女性デボラ・カー嬢とドナ・リード嬢・・・交わすセリフ・・・粋でしたね・・・オシャレでしたね・・・バックには名曲「アロハオエ」がスローで流れていた・・・これが映画ですね。

追伸・・・「戦う幌馬車」にコメントを入れていますので除いてください。(笑)

投稿: グリーンベイ | 2007年10月28日 (日) 01時01分

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