« 2008年5月 | トップページ | 2008年10月 »

2008年9月

2008年9月28日

ポール・ニューマンさん死去

世界を代表する大スター、アメリカ映画の重鎮、ポール・ニューマンさんが9月26日ガンのためお亡くなりになりました。

享年83歳。

Paul_newman

1954年に「銀の盃」でデビュー。アカデミー賞にノミネートされること9回(うち1回は助演男優賞)。1986年の「ハスラー2」で念願のアカデミー主演男優賞を獲得した。

1985年には長年の功績を讃えられてアカデミー名誉賞、1993年には食品会社「ニューマンズ・オウン」の功績を讃えられ、ジーン・ハーショルト友愛賞を受けている。

「ニューマンズ・オウン」は純利益を全額貧困にあえぐ子供たちに寄付している。

カー・レーサーとしても一流で、1979年のル・マン24時間耐久レースでは2位に入り、1995年にはデイトナ24時間耐久レースのGTSクラスで優勝、70歳の史上最年長記録を達成している。

2007年、「もう満足できるレベルの役者でいられなくなった」と俳優引退を表明した。

彼の澄んだ青い瞳は永遠に不滅です。

ご冥福をお祈りいたします。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年9月25日

遊星よりの物体X

X6 1951年<アメリカ>

監督 

クリスチャン・ナイビー

出演

ケネス・トビー

マーガレット・シェリダン

ロバート・コーンウェイト

ダクラス・スペンサー

ジェームズ・アーネス

ストーリー

アラスカの米軍基地は、北極の科学研究所から謎の飛行物体が落下し、磁力計が狂っているという連絡を受ける。司令部から北極に到着したヘンドリー大尉は、キャリントン博士から報告を受け、スコット記者らと共に落下地点へ向かい、一部分を除き氷に埋もれた円盤を発見する。氷から掘り出すために爆弾を使用するが、爆破と共に円盤に引火、円盤は爆発し飛散する。ガイガー・カウンターが反応する辺りを調べると、氷の中に人のような「物体」が確認できたので、ヘンドリー大尉たちは氷ごと「物体」を掘り出し、科学研究所に持ち帰るが…。

X2

                          これが謎の円盤だ!!

キャリントン博士は宇宙の神秘だと心躍らせているが、「物体X」の見張りに立った軍側は戦々恐々だ。氷の奥から覗く頭と目がこちらを見ている…。4時間交代は2時間交代に短縮された。

X1

キャリントン博士(ロバート・コーンウェイト)、助手のニッキー(マーガレット・シェリダン)、ヘンドリー大尉(ケネス・トビー)

交代に立った兵士が、「物体X」に支給された電気毛布をかけてしまった。そして、兵士は怪しい影に襲われる。拳銃で激しく応戦する…。ヘンドリー大尉一行が駆けつけると、溶けた氷には人形の跡が残っていた。そして研究所の外では、「物体X」が犬と交戦中だった。急いでその場に駆けつけるが、「物体X」は犬3頭を殺し、噛みちぎられた「腕」を残して姿を消していた…。

X3

その後のキャリントン博士たちの研究で、「物体X」の“腕”は植物性のものと判明する。「物体X」の星では植物が進化したのだ。

ヘンドリー大尉たちはその後も「物体X」の捜査を続けたが、どこにもいなかった。しかしキャリントン博士は温室で目ざとく植物の一部が枯れてるのを発見する。ごみ箱から血の抜かれた犬の死骸が出てきたことから、「物体X」は生きていると確信する。キャリントン博士は「物体X」と意思疎通してみせると頑なだった。また温室に戻って来る。それまで科学者連中で見張りを立てることにした。軍には内緒で…。

X14ついに「物体X」が温室に姿を現した。見張りの2人を惨殺し、駆け付けたヘンドリー大尉たちをも一撃で倒そうとする。犬に噛みちぎられた腕はもう生えていた。とっさに銃を発射し、ドアを塞いで温室に閉じ込めたが安心は出来ない。キャリントン博士もついに悟った。未知なる「物体」との戦いに巻き込まれたと。体力も知力も人間を凌ぐ。我々は「物体」の“養分”にすぎないと…。

しかし、キャリントン博士の「物体X」への執着は相当なもので、ヘンドリー大尉とキャリントン博士は対立する。しかし、恐れをなした科学者たちがヘンドリー大尉側に付いた。大尉は「物体X」を焼き殺そうとするが、すんでのところで将軍からの電信で「物体X」は生かされることになった。「もっともなことだと思うね」と捨て台詞を吐くキャリントン博士。

…猛吹雪でもう外からの見張りは出来なくなっていた。すると、不意にガイガー・カウンターが上がり始めた。もう一刻も争っていられない。ヘンドリー大尉は「物体X」を焼き殺すことにする。ありったけのガソリンを集めて、「物体X」を待った。すると電気が消え、突然「物体X」が現れた。皆は「物体X」に向かってガソリンをかけ、火を点けた。火だるまになった「物体X」は窓を破り、逃げ去ったが…。

X13

― ハワード・ホークス監督が独立プロ「ウィンチェスター・プロ」で作った2作品のうちの1作。

「プロデューサー」に徹したはずなのに、映画にかかわった者が皆監督はホークスだったと言っているので、主導権を完全に握り自ら操縦もしたんでしょうねぇ。

出演者も題材も限りなく“B級”なのに、映画自体は“A級”ですよ。良く出来ています。SF映画の古典「地球の制止する日」と同じく“異星人襲来映画”の先駆けだと思われれますし(作られたのは同じ年)、随所にハワード・ホークスらしい演出が効いています。

まず、「男」の映画であるということ。男の中の男「軍人」の一団がありとあらゆる脅威から見事生還する。

もちろん、ヘンドリー大尉とキャリントン博士の助手ニッキーとの恋愛シーンも随所に見られますが、2人のシーンは「脱出」や「三つ数えろ」のボギーとバコールをチラリと思わせます。(マーガレット・シェリダンもなかなかのクール・ビューティなんですね)

そして、「軍人」VS「科学者」の構図が飛びぬけて良い。

「軍人」は「物体X」をあくまでも“外からの脅威”と見抜き、「物体」を排除しようとする。対する「科学者」キャリントン博士は「物体X」を科学の勝利とみなし、知恵を授かろうとまでする。「物体X」が知力も体力も人間より凌ぎ、想像もつかない“脅威”だと知っているとしても。

勝手に血漿を持ち出し、「物体X」の手の種子を土に撒き血漿を注入するのだ。そして物凄いスピードで成長したものは…恐ろしいものだった。何千体の「物体X」が作り出されるのか。そしてその物をめぐってヘンドリー大尉と対立する。大尉は皆に公表すべきだと。博士は素人には何も分からないのだと。

いよいよガソリン攻撃でも駄目で、強力な電磁波攻撃へ転じるとき、キャリントン博士は「物体X」が現れると、電源を切ってしまうのである。そして「物体X」に近づき、「私は味方だ」だと宣言するのだ。

このすっとこどっこいな博士は、後のSFホラー映画でよく見られる、頑固で機転の利かない科学者のハシリであろう。

ずっとヘンドリー大尉にへばりついて、「記事を書かせてくださいよ。」「物体Xが来たら写真を撮らせてくださいよ。」などと言っている割に記事を差し止められ、記者の仕事を与えられず、「物体X」の排除に躍起になるスコット記者もいいキャラクターだ。

1982年には、ジョン・カーペンター監督により「遊星からの物体X」としてリメークされる名作である。

しかし、皆放射能が強い所にいながら普通の服って…。「物体X」にやられなくても放射能に汚染されて寿命は短いに違いない。

X9

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2008年9月17日

僕は戦争花嫁

3 1949年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ケイリー・グラント

アン・シェリダン

マリオン・マーシャル

ランディ・スチュアート

ウィリアム・ネフ

ストーリー

第二次大戦後の米軍占領下の西ドイツ。フランス軍のアンリ・ロシャール大尉がハイデベルグの米軍司令部にやって来る。彼は除隊前の最後の任務のため、以前にも組んだ米陸軍婦人部隊のキャサリン・ゲイツ中尉と再び組むことになる。彼らは道中様々なトラブルに見舞われるが、かろうじて任務を遂行する。喧嘩ばかりしていた彼らだが、司令部への帰途、突然お互いへの恋愛感情を自覚し、即座に結婚を決意するが…。

12

任務遂行途中のアンリ・ロシャール大尉(ケイリー・グラント)と、キャサリン・ゲイツ中尉(アン・シェリダン)

しかし、米国軍人が外国人と結婚するとなると、軍司令官の許可が必要なのだった。アンリとキャサリンは膨大で複雑な結婚申請書をただちに提出するが、書類は一週間経っても何の音沙汰もない。アンリは苛立つばかりだ。なんとキャサリンに気があったラムジー大尉が彼女のためを思って申請書を隠したと彼女に告白した。ラムジー大尉はキャサリンに金属製のトレイで思い切り殴られて、その件は落着した。

19

結婚申請書がやっと許可を下り、2人は無事結婚に漕ぎつけることになる。しかし、一日3回の強行軍だ。まずハイデベルグ市長の立ち会う民事婚、次にキャサリンが希望した米軍付属の教会で、最後はアンリが希望したフランスの教会で。

15

ところがその夜、アンリと共にフランスのホテルの一室にいたキャサリンに米国への帰国命令が下る。

翌日、2人はアメリカ領事に相談へ行く。どうすればアンリはキャサリンと共に米国に入国できるのか?アンリは米国に預金がないし、観光ビザでは働けない。フランス人移民の人数枠は向こう2年埋まっている。永住ビザを取得するためには、配偶者が生計を支える証明が必要だ。アメリカ領事は、公法第271号が適用可能だという。「戦争花嫁」に関する法律だ。アメリカの海外派遣軍に属する人物の配偶者はアメリカ入国を許可される。その配偶者の性別の規定はないのだ。

早速アンリは「男性戦争花嫁」として、入国管理局に申請書を提出し、米国への入国が認められるが…。

21_2

― この作品は、性別への屈辱と、「軍」の官僚主義への批判と挫折の物語に持っていき、なんとか体面を保っていますね。それじゃなきゃ「赤ちゃん教育」と同じ、ただの「男性受難物語」ですよ。

書類は女性用しかなく、入国の個人面談のとき「妊娠しているか?」「婦人科の病気は?」と軍曹に戸惑いながら質問され、アンリは大真面目に答えるのだ。船に乗るため、バスで移動するときにも「ロシャール夫人」となり、係官に「何かの間違いだ」と言われ、アンリは答える。「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。公法第271号が認めている。」と。係官も書類を見せられ、「何か変だが法的には問題がない」と認めてしまうしかない可笑しさ。

しかし、そこからがアンリの「男性戦争花嫁」としての悲劇が待っていた。中継地に着くと、キャサリンと一緒に泊まれると思ったのもつかの間、“規則”のため別々に泊らなくてはならなかった。仕方なく扶養家族宿舎に泊まろうとするが、女性ばかりだ。アンリは生憎「男性」で、相部屋を断られ宿泊まで拒否される始末。

「男性」であることへの屈辱と、「軍」の“規則”の鉄壁が待っていたのだ。

アンリは次に士官宿舎を訪ねるが、これも“規則”で宿泊を拒否。兵卒宿舎を訪ね、親切な兵卒の手引きでやっと寝られるかと思いきや、別の兵卒に起こされ、これも“規則”で泊められないと追い出される。しかも、米国軍人の配偶者はドイツのホテルに泊まることができないのだ。結局、女性専用宿舎で受付の女性士官の編み物を手伝って夜を過ごすことになる。(アンリは行く先々で、「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。…」を機械のように繰り返し話すが、相手にしてはもらえないのだ)

翌朝、乗船が始り、アンリもなんとか審査をパスすることができた。しかし、海軍兵士との間でいざこざが起き、アンリは乗船拒否される羽目に。苦肉の策にキャサリンが考え出したのは、アンリの「女装」。馬の尻尾の毛を切りカツラを作り従軍看護士官の制服を手に入れアンリに着せた。「女」の姿だが、どこまでも“素”で通すアンリの可笑しさ。

…しかしこの作品、製作中トラブルが絶えなかったようで(監督・出演者の病気や、イギリスのスタジオでの撮影の苦労など…)、映画全体から受ける印象はいつものパリッとした「ホークス節」が影を潜めているのが残念だ。一種の「重さ」が付きまとうのである。「スター」のアップがほとんど無く、引きの画面だけがただただ続くし、コメディーなのにアンリが可哀そうになってくるのである。「可笑しさ」と書いたエピソード以外は笑えないのだ。

それに、アン・シェリダンが「汚れた顔の天使」から見たら、“大人の女”になったというより、“老けた”という印象なのが気になった(病気にかかったせいもあろうか)。彼女が今一精彩が無かったのも残念なうちの一つだ。

結局残ったものは、ケイリー・グラントの「女装」だけという映画だったな。

7

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年9月14日

ヒズ・ガール・フライデー

3 1940年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ケイリー・グラント

ロザリンド・ラッセル

ラルフ・ベラミー

ジーン・ロックハート

ヘレン・マック 

ジョン・クオレン

ストーリー

シカゴ・モーニング・ポスト紙の女性敏腕記者ヒルディ・ジョンソンは久しぶりに彼女と離婚した同紙編集長のウォルター・バーンズの許を訪れた。彼女は他人の秘密を暴く記者稼業に嫌気がさし、堅実なサラリーマン、ブルース・ボールドウィンと明日この街を離れ結婚し、普通の主婦に落ち着く旨をウォルターに告げる。しかしウォルターはまだヒルディに未練があり、彼女に一つだけ記事を書く約束をさせる。明朝、警官殺しで処刑されるアール・ウィリアムズの取材だ。早速取材に訪れ、アールと単独会見したヒルディだったが…。

※ ネタバレです

11

婚約者ブルース(ラルフ・ベラミー)、元夫ウォルター(ケイリー・グラント)、ヒルディ(ロザリンド・ラッセル)

ウォルターは新卒で入って来たヒルディを腕によりをかけて花形敏腕記者にし、やがて彼女と結婚。しかし、「私生活」がないと言ってヒルディが離婚を申し出たので、物分かりの良い夫らしく離婚に応じた男だが、しかしヒルディが“再婚して家庭に入る”となると、まだまだ「女」としても「敏腕記者」としても未練があったウォルターはたちまちヒルディを引き留めにかかる。最後に一つ記事を書いてほしいと彼女に頼むのだった。今一番ホットな話題の、明朝に処刑される「警官殺し」のアール・ウィリアムズの記事だ。

ウォルターはビジネス上の取引― ブルースの保険にウォルターが加入する代わりにヒルディが記事を書く ―を持ち出し、2人の気を引きつけ、ヒルディはウォルターの思惑通り記事を書くことに…。

13早速裁判所の記者室を訪れたヒルディは記者仲間から歓迎される。

アールの情報を聞き出し、保安官助手を買収して、アールに単独インタビューを試みる。するとアールは凶悪な人物ではなく、警官殺しは故意ではなく単なる事故だったことが分かる。そんな中ブルースが窃盗の罪で警察に捕まる…。

ウォルターの仕業だと気づいたヒルディは記事を書くことをやめ、釈放されたブルースと待ち合わせした駅へ行こうとする。すると、けたたましい銃声が!!なんとアールが脱走したのだった。記者魂が爆発したヒルディは一目散に現場へ直行。スクープをものにするのだった…。

一方、選挙を控えた市長はなんとしても凶悪犯の処刑で人気を得たい。アールを逃した保安官を罵っていると、一人の男が登場する。その男は知事の処刑延期の書を持っていた。しかし、市長はそれを握りつぶしにかかり、アールを射殺すると宣言した…。

そしてブルースはまたも警察に捕まっていた。今度はウォルターが送ったセクシーな女性と“いちゃつきの罪”でだ。今度こそブルースの許へ急ごうとするヒルディの許へ、なんとアールが窓から侵入してきたのだ。拳銃を向けられて絶体絶命のヒルディ…。

6_2 

― ベン・ヘクト×チャールズ・マッカーサーの有名な戯曲「フロント・ページ」の2度目の映画化。この戯曲は今作を合わせ4回映画化されている人気作品でもある。(31年「犯罪都市」、74年「フロント・ページ」、88年「スイッチング・チャンネル」)ただし、主人公の1人ヒルディ・ジョンソンが女に変わっている。有名なラスト・シーンも大幅に変えられているのが特徴。それが結果的に成功している。

そして、マシンガントークに次ぐマシンガントークの連発である。なにせ皆の話す速さが半端じゃない。言葉の洪水である。音楽なんぞ入る暇がないほどだ。特にウォルターとヒルディの2人の会話は音楽的なくらい心地よい早さだ。ただ1人ブルースのみがゆったりしていて「仲間外れ」なんである。

結局アールをかくまい、「スクープだぞ!!」とウォルターに乗せられたヒルディは仕事の鬼と化し、迎えにきたブルースのことなど忘れ、ただひたすらタイプライターを叩くのである。ヒルディのいるべき場所。それはやはり“仕事”の現場なのだ。プルースとは当然破局。

ヒルディの記者としての優秀さは、アールとの単独インタビューの場面で十分証明される。(ここだけはゆったりと時が流れる、秀逸な場面だ)ウォルターが放したがらないはずだ。

脇を固める記者連中の節操も何もあったものじゃない態度と人間らしい感情の比較の巧さ。アールと一度会っただけで恋人にされてしまった優しき女性モリーの、ヒルディには分かる女性ならではの訴えの健気さ。市長と保安官の策略の愚かさ、みな素晴らしくピタリとストーリーにはめ込まれている。

特にヒルディとウォルター、ブルースの三角関係のバカバカしさには爆笑だ。(ブルースの母親も入れると四角関係か)。あまりにあっさりウォルターの策略にハマるブルースのおかしさ、それがウォルターの仕業だと分かり仕事を放り投げてブルースを迎えに行こうとするヒルディだが、そのたびに邪魔が入る絶妙のタイミングのおかしさ。

結局、ウォルターと元の鞘に納まって、事件解決後すぐ新婚旅行へ行こうとする2人に(最初の結婚では新婚旅行は仕事に化けた)皮肉な結果が待っているのも良い。

流石、ハワード・ホークス!!と叫びたくなるような、1時間半、一気に駆け抜ける爽快感に浸れる映画だ。

10

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年9月 9日

コンドル

17 1939年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 ケイリー・グラント

    ジーン・アーサー

    トーマス・ミッチェル

    リタ・ヘイワース

リチャード・バーセルメス

ストーリー

N・Yのショウ・ガール、ポニー・リーは南米の巡業を終えパナマを経ての帰途、エクアドルのバランカという小さな港に到着した。滅多にお目にかかれない美しい女性の出現に、彼女は米人飛行家や荒海稼ぎの船員たちの注目の的となった。この港町には定期郵便の空港があって、ジェフ・カーターという堅物が支配人だ。飛行機はアンデス連山を超え、しばしば起こる濃霧や密雲を冒して飛ばねばならぬので極めて危険な航空路である。飛行士の2人組はポニー・リーの関心を引こうと争っていたが、ジェフはその1人に郵便運搬を命じた。しかし天候が急に悪化し、ジェフは天候が回復するまで上空を旋回するよう命じたが、ボニー・リーとの食事の約束のため彼は無理に着陸を試みて機体は大破、帰らぬ人となった。しかしジェフたちは悲しみに暮れるでもなく、普段通りに酒を飲み仕事をこなす。はじめはそんなジェフを非難するボニー・リーだったが、飛行士達の性格を知ると共に段々ジェフに心惹かれ、出発を延期することになる…。

12

ジェフ(ケイリー・グラント)と、ボニー・リー(ジーン・アーサー)

まだ「飛行機」がロマンに溢れ、危険な乗り物だった時代の物語。

飛行機乗りの男たちは明日をも知れぬ命をただ愛機にゆだね、女たちは黙って耐えるしかない。男たちには奇妙な連帯感が溢れ、女をシャット・アウトする。

特にジェフは女に対し“頼むこと”を絶対にしない男だ。ジェフは空港の支配人であり、一番危険な任務を担っている(一番危険な飛行は彼自身が出向くのである)。そんな男に惚れたボニー・リーはまんじりともしない夜を過ごすのである。

6

        危険な飛行を見守る男と女

    (右から2人目、キッド役トーマス・ミッチェル)

死んだ飛行士がいれば、代わりの飛行士がやって来る。それは昔試験飛行中故障が起こったとき自分だけパラシュートで飛び降り、同乗の機関士を見殺しにした男だった。身元がバレないようマクファースンという偽名でやって来たが、その同乗の機関士とはジェフの右腕的存在のベテラン飛行士キッドの弟だった。当然身元がバレ、飛行士たちの目つきは冷たいものに変わる。そして、彼の妻が昔ジェフと訳ありだった女ジュディだった…。

9

           ジュディ(リタ・ヘイワース)

― う~ん…。ジーン・アーサー扮するボニー・リーがストーリーの邪魔。彼女さえいなければ、この作品は素晴らしく立派な「男」の映画になったのに。ボニー・リーのせいでえらく甘ったるい恋愛映画くずれの作品に落ちてしまった…。残念でならない。

1930年代、「飛行機」はまだ危険で浪漫に満ちた乗り物だったのは想像に難くない。その中での男たちの連帯感の素晴らしさ。中でもジェフとキッドの友情は女心にもグッとくる。キッドだけが知っているジェフの心の内。長い飛行生活なかで視力が落ち、「引退」を言い渡す時のジェフの辛さ。キッドの無念さ。それでも2人は何もなかったかのように「飛行機」に吸い寄せられていく。トーマス・ミッチェルは相変わらず“上手い”としか言いようがない。

そして過去を背負った飛行士マクファースン扮するリチャード・バーセルメスも素晴らしい演技だ。(あの、リリアン・ギッシュの永遠の相手役である)ただただ寡黙に過酷なスケジュールをこなす飛行士。妻ジュディが彼のことを分からないとジェフに訴えるのも無理はない。過去の汚名に耐え、彼もまた「飛行機」のとりこなのだ。段々とキッドとの関係が変化していくのも、いい。

主役の一端を担うケイリー・グラントも、軽妙洒脱な演技を加えつつ「飛行機」に魅せられた男を好演していると言ってもいいだろう。

航空シーンの素晴らしさもこの映画の売りの一つだろう。山の隙間を縫い、尾根を越え、プロペラの音を響かせながら飛行機は飛ぶ。酸素の薄くなったはるか上空では、酸素チューブ(!)を口にくわえ操縦桿を握るのである。(当時の航空事情が良く理解できるエピソードだ)

さて、男女関係だが、ジュディ扮するリタ・ヘイワースが妖艶な人妻の雰囲気を早くも醸し出しているのが興味深い。(このとき彼女はまだ二十歳だった)ジュディに妖艶に迫られたらジェフも…となりそうだが、そうはならない。妖艶でジェフと過去はあったものの、まだ“誘う女”ではなかったリタ・ヘイワースは夫のリチャード・バーセルメスに従順な妻なんである。

結局、ジーン・アーサー扮するボニー・リーだけが、男たちの気を乱し、相思相愛の仲ながらジェフの気持ちを分からずに、ただ邪魔をし、ジェフの拳銃を横取りし「飛行機」に乗せないと脅すのである。でもやっぱり、ああ悪い女ね…って拳銃を捨てると暴発し、ジェフの肩に命中。見事ジェフを「飛行機」から引きずりおろすのである。(そして直接ではないものの、キッドの死の原因を作るのだ)

こんなどうしようもない女に惚れるジェフもどうかしてるよ。ボニー・リーさえいなければなぁ…。

しかし、「ジーン・アーサー」という女優を使わざるを得なかったとしたら…この役は彼女の為に書かれたと言っても過言でははないほどピッタリである。

7

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年9月 1日

特急二十世紀

201 1934年<アメリカ>

監督 ハワード・ホークス

出演 

ジョン・バリモア

キャロル・ロンバード

ウォルター・コノリー

ロスコー・カーンズ

ストーリー

オスカー・ジャフィは一種変わった世間を超脱した人間で狂った天才とでもいうべき舞台の演出家だ。彼は下着モデルをしていた無名の新人リリー・ガーランドという女優をみそめ周囲の反対を押し切って大スターに仕立て上げるが…。

207_2

狂気の天才舞台演出家オスカー・ジャフィ(ジョン・バリモア)

しかしリリーはずぶの素人。立ち位置もままならず、婚約者が死んだと聞かされても満足な悲鳴1つ上げられない。かくして、オスカーのマンツーマンの“指導”が始まる。

舞台上には立ち位置を示したチョークの線が幾重にも重なり乱れ飛び、悲鳴はリリーのコートについていたコサージュの留ピンを彼女のお尻にグサリ!!見事にリリーは「ギャーッ!!」と叫び、舞台は大成功。

リリーは見事スター女優となり、ついでに2人の愛も燃え上がった。

209

  舞台成功後のリリー(キャロル・ロンバード)とオスカー

以後2人の組んだ作品は次々に当りを取り、リリーは押しも押されぬ大スター、オスカーは天才演出家と持てはやされることとなる。

― それから3年…。

実はオスカーは嫉妬深い男だった。りりーは夜の街にも出れず母親にさえ会わせてもらえない。ついにはリリーに探偵を付け盗聴を仕掛けたと知ったとき、ついにリリーはオスカーの許を飛び出し、ハリウッドへ。

リリーに去られたオスカーは、彼女を「舞台」から追放すると宣言し、彼女の代役を発掘し、大スターに仕立て上げ、上演する舞台はまたまたどれも大成功…とはいかなかった。上演する舞台はどれも大失敗。借金だけが膨らんでいったのだ。

リリーの存在が大きかったのは明らかだった。傷心のオスカーは打ち切りになった舞台の先シカゴからN・Yへと帰路に就くため、腹心の部下2人と特急二十世紀へと飛び乗る。

一方ハリウッドでちゃっかり「スター」となっていたリリーも別の駅で特急二十世紀に乗ってきた。なんと都合よく部屋はオスカーの隣。かくして3人は借金清算のためリリーを「舞台」の契約書にサインさせるべく、あの手この手を使って奮闘することとなる…。

204

― 「スクリューボール・コメディ」の幕開けに相応しいなんとも“けたたましい”作品。

特に“名優”ジョン・バリモアの最後の名演といってもいい。目を大きく見開き大げさな身振り手振りで最初から最後まで抱腹絶倒の演技で押し通す。それに応えるようにキャロル・ロンバードも妙に芝居がかったちょっと“臭め”の演技で、いい。オスカーの腹心の部下2人のなんともとぼけた個性も生きている。

(借金を踏み倒したため)指名手配されたオスカーがシカゴ脱出を図る手段は、自らが「役者に落ちぶれてしまった」と嘆くほど完璧な変装だったり、彼がリリーとの関係修復をせまりにいざ隣へ…とドアを開けると、リリーと彼女のハリウッドの恋人が愛を囁いていたり、リリーが特急二十世紀号へ乗ったのは、かつてオスカーの部下だった男が興行する「舞台」に出るためだったり、「大富豪」と名乗りやたらと偽の小切手を切る狂った男にオスカーたちがすっかり騙されてしまったりと、一時間半のなかに見せ場はギユッと詰まっている。

3年間散々束縛されて逃げ出したのに、ハリウッドの恋人にはやけに冷たかったり、オスカーの大言に自ら乗ってしまい益々大きくしてしまったりと、リリーも複雑な女心を見せる。

しかしやっぱり、“ジョン・バリモア”なんだよなぁ。彼の熱演なくしてこの映画の“けたたましい”雰囲気はなかったと言っていいし、映画の成功要因の大部分をなしていると思う。

この映画は、名優“ジョン・バリモア”を見よ!!

ちなみに、キャロル・ロンバードはハワード・ホークス監督の「またいとこ」なんだそうな。

208

| | コメント (6) | トラックバック (0)

« 2008年5月 | トップページ | 2008年10月 »