僕は戦争花嫁
監督 ハワード・ホークス
出演
ケイリー・グラント
アン・シェリダン
マリオン・マーシャル
ランディ・スチュアート
ウィリアム・ネフ
ストーリー
第二次大戦後の米軍占領下の西ドイツ。フランス軍のアンリ・ロシャール大尉がハイデベルグの米軍司令部にやって来る。彼は除隊前の最後の任務のため、以前にも組んだ米陸軍婦人部隊のキャサリン・ゲイツ中尉と再び組むことになる。彼らは道中様々なトラブルに見舞われるが、かろうじて任務を遂行する。喧嘩ばかりしていた彼らだが、司令部への帰途、突然お互いへの恋愛感情を自覚し、即座に結婚を決意するが…。
任務遂行途中のアンリ・ロシャール大尉(ケイリー・グラント)と、キャサリン・ゲイツ中尉(アン・シェリダン)
しかし、米国軍人が外国人と結婚するとなると、軍司令官の許可が必要なのだった。アンリとキャサリンは膨大で複雑な結婚申請書をただちに提出するが、書類は一週間経っても何の音沙汰もない。アンリは苛立つばかりだ。なんとキャサリンに気があったラムジー大尉が彼女のためを思って申請書を隠したと彼女に告白した。ラムジー大尉はキャサリンに金属製のトレイで思い切り殴られて、その件は落着した。
結婚申請書がやっと許可を下り、2人は無事結婚に漕ぎつけることになる。しかし、一日3回の強行軍だ。まずハイデベルグ市長の立ち会う民事婚、次にキャサリンが希望した米軍付属の教会で、最後はアンリが希望したフランスの教会で。
ところがその夜、アンリと共にフランスのホテルの一室にいたキャサリンに米国への帰国命令が下る。
翌日、2人はアメリカ領事に相談へ行く。どうすればアンリはキャサリンと共に米国に入国できるのか?アンリは米国に預金がないし、観光ビザでは働けない。フランス人移民の人数枠は向こう2年埋まっている。永住ビザを取得するためには、配偶者が生計を支える証明が必要だ。アメリカ領事は、公法第271号が適用可能だという。「戦争花嫁」に関する法律だ。アメリカの海外派遣軍に属する人物の配偶者はアメリカ入国を許可される。その配偶者の性別の規定はないのだ。
早速アンリは「男性戦争花嫁」として、入国管理局に申請書を提出し、米国への入国が認められるが…。
― この作品は、性別への屈辱と、「軍」の官僚主義への批判と挫折の物語に持っていき、なんとか体面を保っていますね。それじゃなきゃ「赤ちゃん教育」と同じ、ただの「男性受難物語」ですよ。
書類は女性用しかなく、入国の個人面談のとき「妊娠しているか?」「婦人科の病気は?」と軍曹に戸惑いながら質問され、アンリは大真面目に答えるのだ。船に乗るため、バスで移動するときにも「ロシャール夫人」となり、係官に「何かの間違いだ」と言われ、アンリは答える。「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。公法第271号が認めている。」と。係官も書類を見せられ、「何か変だが法的には問題がない」と認めてしまうしかない可笑しさ。
しかし、そこからがアンリの「男性戦争花嫁」としての悲劇が待っていた。中継地に着くと、キャサリンと一緒に泊まれると思ったのもつかの間、“規則”のため別々に泊らなくてはならなかった。仕方なく扶養家族宿舎に泊まろうとするが、女性ばかりだ。アンリは生憎「男性」で、相部屋を断られ宿泊まで拒否される始末。
「男性」であることへの屈辱と、「軍」の“規則”の鉄壁が待っていたのだ。
アンリは次に士官宿舎を訪ねるが、これも“規則”で宿泊を拒否。兵卒宿舎を訪ね、親切な兵卒の手引きでやっと寝られるかと思いきや、別の兵卒に起こされ、これも“規則”で泊められないと追い出される。しかも、米国軍人の配偶者はドイツのホテルに泊まることができないのだ。結局、女性専用宿舎で受付の女性士官の編み物を手伝って夜を過ごすことになる。(アンリは行く先々で、「僕は米軍女性兵士の外国人配偶者だ。…」を機械のように繰り返し話すが、相手にしてはもらえないのだ)
翌朝、乗船が始り、アンリもなんとか審査をパスすることができた。しかし、海軍兵士との間でいざこざが起き、アンリは乗船拒否される羽目に。苦肉の策にキャサリンが考え出したのは、アンリの「女装」。馬の尻尾の毛を切りカツラを作り従軍看護士官の制服を手に入れアンリに着せた。「女」の姿だが、どこまでも“素”で通すアンリの可笑しさ。
…しかしこの作品、製作中トラブルが絶えなかったようで(監督・出演者の病気や、イギリスのスタジオでの撮影の苦労など…)、映画全体から受ける印象はいつものパリッとした「ホークス節」が影を潜めているのが残念だ。一種の「重さ」が付きまとうのである。「スター」のアップがほとんど無く、引きの画面だけがただただ続くし、コメディーなのにアンリが可哀そうになってくるのである。「可笑しさ」と書いたエピソード以外は笑えないのだ。
それに、アン・シェリダンが「汚れた顔の天使」から見たら、“大人の女”になったというより、“老けた”という印象なのが気になった(病気にかかったせいもあろうか)。彼女が今一精彩が無かったのも残念なうちの一つだ。
結局残ったものは、ケイリー・グラントの「女装」だけという映画だったな。
| 固定リンク
「映画 1940年代 アメリカ」カテゴリの記事
- カサブランカ(2006.10.01)
- 幽霊と未亡人(2007.02.28)
- スカーレット・ストリート(2007.01.13)
- ローラ殺人事件(2007.03.06)
- 扉の影の秘密(2007.01.18)








コメント
>グリーンベイさん
お返事が遅れてすみません。
ケイリー・グラントの女装!!これはなかなかショッキング。
スカートまではかされて、意外に奇麗なおみ足を見せてくださいます。
こんなこともできるのも、ハワード・ホークス監督作品ならではじゃないでしょうか。
投稿: オショーネシー | 2008年9月22日 20:52
オショーネシーさん・・・今晩は。
うーーーん。ケリー・グラントの女装!!・・・この写真を見てコメントを書く気が萎えました・・・。監督もこんな作品も撮っているんですね。勿論、未見です・・・。
投稿: グリーンベイ | 2008年9月18日 22:49