哀愁の湖
監督
ジョン・M・スタール
出演
ジーン・ティアニー
コーネル・ワイルド
ジーン・クレイン
ヴィンセント・プライス
ダリル・ヒックマン
ストーリー
若い流行作家リチャード・ハーランは友人の弁護士のグレンからニューメキシコの別荘に招待される。そこへ向かう列車の中で自分の著書を読んでいた美しい女性を見染めるが、彼女は偶然同じくグレンから招待されていた。列車を降りて、その女性エレンと妹のルース、2人の母親ベレント夫人に紹介される。エレンは地方検事のクィントンと婚約していたが、リチャードと恋に落ち、結婚した。リチャードは足の悪い弟ダニーを溺愛していたが、結婚後エレンとダニーを連れて自分の別荘「月の裏」へ生活の場を移す。しばらくは愛情溢れた日々が続いていたが、そこへルースとベレント夫人がやって来た。その頃からエレンは異常な心理状態となり、夫の愛を独占しようと、2人に冷たく当たり始める。ある日、ダニーとポートに乗って湖に出たエレンは、ダニーが湖に飛び込んで泳いでいるうち溺れたのを見殺しにするのだった…。
列車での出会い。リチャード(コーネル・ワイルド)と、エレン(ジーン・ティアニー)
恐ろしきものは、女の「嫉妬深さ」である。ここまで完膚なきまでに嫉妬深いと、かえって潔いと思ってしまうのは、私も“女”だからであろうか。
とにかく嫉妬深い。リチャードの弟ダニーが療養所から別荘「月の裏」へ移れると医者から太鼓判を押されると、自分は新婚旅行も無しなのに、夫はダニーを溺愛し自分ばかりに重荷を負わせると医者に不満をぶつけ、医者の口から「月の裏」行きをやめるよう言ってくれないかと懇願する。そのくせ話の途中でリチャードが入って来ると、ダニーの「月の裏」行きを喜んでみせるその狡猾さ。
結局、「月の裏」では幸せは得られなかった。
溺れるダニー(ダリル・ヒックマン)
見殺しにするエレン(ジーン・ティアニー)
リチャードが良かれと思って呼んだエレンの母親と妹ルースには際限なく冷たく当たるし、2人が滞在を数日で切り上げて帰った後には、湖で溺れるダニーを見殺しにする。ダニーが完全に湖に沈むまで見守る姿は、夫の愛情を独り占めにしようという魂胆のすざまじさを垣間見ることができる。結局リチャードの気配に気づいて湖に飛び込むものの、ダニーは帰ってくるはずもなく…。
その後、辛い思い出の別荘をたたんで、エレンの実家に身を寄せる2人。ふさぎ込み、エレンともろくに話さなくなったリチャードを疑惑の目で見るエレン。彼の愛が冷めた?そこにルースの一言が。「子供でも出来たら…」見事エレンは妊娠する。リチャードの笑顔も戻った。しかし、母体が弱く動けない日々、段々お腹が膨らんで醜くなっていく体…。その間にリチャードとルースは親しくなっていく。疑惑、嫉妬の日々。そしてついにエレンは故意に階段から落ち、子供を死産させる…。
エレンの嫉妬は際限を知らない。ついには自殺するのだが、周到にもかつて婚約していたクィントンに手紙をしたため、ルースがエレンを殺害したようにもっていく周到さはお見事と言うしかない。
しかし、映画を追っていくと、エレンは決して「悪女」ではないのだ。ただ、“愛”が過ぎるだけのこと。それが周囲を破滅に追いやっていくのだが、彼女が「悪」を全て被るにはちょっと可哀そうなのだ。
母親とルースは、エレンの“愛情が過ぎて相手の周囲を破滅させかねない”性を知っていながら、それを放置しているし、おまけにルースはリチャードに気があるというのを隠そうとしていない。
それに、いくら執筆を手伝ったからって、結婚して初の本の献辞が妻でなく違う女(ルース)に捧げられていたら、エレンじゃなくても怒り心頭だと思うのだ。本の舞台がメキシコで、「家中が憎しみに満ちていて嫌になった」と、ルースが来週から旅行する場所もメキシコってのはどうだろうか。そりゃあ、ルースがリチャードを誘惑したとエレンが思っても不思議ではあるまい。その嫉妬心がむき出しになり、リチャードに知れた時、エレンは彼にとって疑惑の女となるのではあるが。
エレンが“愛するが故に”リチャードに誘導されるがまま全てを告白するのと、ラストの生ぬるさが、この映画がいま一つ「傑作」たりえない要因だろう。“愛するが故に”全てをはぐらかし、隠し、騙して自殺する。これだとグッとサスペンスになり、エレンも徹底した「悪女」に昇華するのだが…。
徹底してエレンを「悪女」にしてやれなかったのが、つくづく残念である。
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コメント
>グリーンベイさん
作品を選ぶ基準ですか…。
クラシック映画の場合、まず俳優陣から入りますね。その次に作品の内容です。
この映画は、ジーン・ティアニー主演と“テクニカラー・フィルム・ノワール”と呼ばれたその特異なストーリーに惹かれまして、選んだ次第です。
(もっとも、“フィルム・ノワール”と名のつく作品はいそいそと集める私ですが…)
ジーン・ティアニーは好きな女優さんです。彼女の活躍期間が1940年代に限られるのはなんとも残念ですね。波瀾万丈の道をいった、文字通りの「スター」ですね。
ジーン・クレインは地味で田舎臭い女優さん…という印象です。「ステート・フェア」「3人の妻への手紙」の印象が強くて。西部劇でも活躍していたんですね。
コーネル・ワイルドは以前1955年の作品「ビッグ・コンボ」で、トニー・カーチスを殴りまくったらこのような顔になるのでは…と書いた俳優さんですね。
彼は時代もの大作映画(それもB級)が似合う顔をしてらっしゃる。
ハリウッド全盛時代の女優は、髪の毛は綺麗にセットされ決して乱れず、アーチ型の眉に赤い唇を震わせる…。そして衣装は豪華そのもの。
グリーンベイさんは違和感を感じるとおっしゃってますが、私は30年代~50年代のこの“人工的”な雰囲気が大好きなんですね。スターは着飾ってナンボの世界。
良い時代でした。
投稿: オショーネシー | 2009年6月 7日 22:08
オショーネシーさん・・・お早うございます。
うーーーん。人間の煩悩の主たるものに「嫉妬心」があると言われているが・・・嫉妬心で一本の映画が撮れるんですね。
本作が良い例ですね。作品を選ぶに何か基準の様なものがあるんですか?。監督ですか?俳優ですか?。本作は未見ですが
俳優陣には興味がありました。(笑)
ジーン・テイアニー嬢・・・40年代には美人女優として活躍している。グリーンベイは、やはりデビュー作「地獄への逆襲」(40)
・・・これは前作「地獄への道」(39)の続編で新聞社の若い社長令嬢で出演していたが、あまり魅力を感じなかった・・・。
ジーン・クレイン嬢・・・ミス・コンンテスト出身の美人女優、西部劇「星のない男」(55)「必殺の一弾」(56)を思い出す・・・いずれも
添え物でしたが華があった。「三人の妻への手紙」(49)の方が皆さんには記憶があるんではないんですか。
コーネル・ワイルドはトニー・カーテスとダブルが大根のイメージしかない・・・。それにしても動画やスチールを見て・・・髪形、化粧、
衣装には,何とも違和感を感じる・・・(笑)。昔は「顔」で勝負できる美人大スターが・・・洋画でも邦画でもおりましたねえ・・・最近は
変わりました!!!・・・。
投稿: グリーンベイ | 2009年6月 7日 08:23