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2009年9月12日

ショック集団

16_3 1963年<アメリカ>

監督 サミュエル・フラー

出演 ピーター・ブルック

    コンスタンス・タワーズ

    ジーン・エヴァンス

    ハリー・ローデス

    ジェームズ・ベスト

    ラリー・タッカー

ストーリー

精神病院で起こった殺人事件の犯人を突き止め、ピューリッツア賞を取るために、新聞記者ジョニーが1年間の訓練を受け、狂人として病院に潜入して真実を探ろうとする。自分の恋人キャシーを妹と偽り、面会に来させて外部との連絡に使い、他の患者と接触して情報収集に励むのだが、彼らの狂気の姿と異常な環境の影響で、次第に自分自身の精神のバランスを崩していくのだった…。

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  キャシーの夢を見てうなされるジョニー(ピーター・ブルック)

― 神は滅亡を願うとき、まず人を狂人にする。

              エウリピデス 紀元前425年 ―

自分の恋人キャシーを無理やり妹に仕立て上げ、妹への異常な関心が原因で精神病院へ入ることに成功した新聞記者ジョニー。新聞社も上司も協力的だ。それもこれも、この病院で起こった殺人事件の犯人を突き止め、記事にし、ピューリッツア賞を取ろうという目論みのためだ。

彼は早速、病院の廊下で3人の殺人の目撃者に接触することにする。

まずスチュワートという青年に接触する。

                               スチュワート(右、ジェームズ・ベスト)17_3

彼は南部農民の息子で、趣味は南北戦争ゲーム。自分を英雄スチュワート少将だと信じている。

実は、朝鮮戦争に出兵し、共産主義陣営のスパイをしていた男だった。

彼からは、白いズボンを見たとの証言を得た。病院で白いズボンをはいてる人種は限られている。殺人犯は医者だろうか?

2人目は、「差別と民主主義は別物。クロは出ていけ」とスローガンをかがげる黒人青年トレント。趣味は枕カバーの収集。

彼は南部で唯一の黒人学生で、人種差別で迫害された揚句、自分をKKKの一員と思いこむようになったのだった。

       トレント(右から2人目、ハリー・ローデンス)

21

彼から聞き出せたのは、殺したのは医者ではなく看護人だということだった。

最後に接触したのは、ボーデン博士。趣味はスケッチ。精神年齢は6歳程度。

だが実は、原爆の研究でノーベル賞を受賞した物理学者で、現代を代表する一人だ。

   ボーデン博士(ジーン・エヴァンス)20                           

彼から全て聞き出せ、達成感に浸るジョニー。すぐにでも出所し、記事を書きたいところだが、殺人者の名前が出てこない。ついには面会に来た恋人キャシーを本当の妹と思ってしまった。

目撃者の患者と親しく接するうちに、彼の精神状態は正気から遠くなりつつあったのだった…。

4

― う~ん…これはキツイ映画だ。

そもそもジョニーは初めから常人ではないんだね。精神病院に潜入して、殺人の犯人を探るため1年間も狂人になりきるための訓練を受けるなんて、とてもまともではない。

自信を持って潜入したものの、精神病患者と親しく接するうちに、自分も狂気の世界へと引きずり込まれていくのは当然の報いといってもいいだろう。

正常に戻るのを辛抱強く待って接した3人の患者は、ジョニーの目論み通りふと正常に戻り、彼の問いに答えるのだが、正常でいる時間が持続しない。それでジョニーの入院日数は増え続け、幻聴・幻覚に悩まされていく…。

ついには、ジョニーは病院の廊下で雷雨に打たれる幻想を見、正気を失っていくのだ。

制作されたのは60年代だが、ジョニーが接した3人からは50年代の代表の匂いが漂ってくる。朝鮮戦争、黒人問題、原爆の悪夢…。(朝鮮戦争へ出兵したスチュワートは日本へ立ち寄っていて、「東京暗黒街 竹の家」からの映像の転載がみられる)

この作品は、50年代の悪夢を映し出した映画といってもよいだろう。

撮影のスタンリー・コルテスの陰影のはっきりした映像が印象的だ。

精神的にはかなりキツイが、サミュエル・フラーの代表作に間違いない出来の映画である。

2

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映画 1960年代 アメリカ」カテゴリの記事

コメント

>グリーンベイさん
コンスタンス・パワーズ嬢、実に魅力的な女優さんですね。
この作品の役は、なんとストリッパーです。

今は幸運にも自分に合った病院にめぐりあいましたが、
最初に入院した病院が、この映画を想像させるんですね。
恐ろしい精神病院…。本当に自分が狂人なのではないかと
思わせてくれる病院。狂人がいる病院…。
なので、自分は観るのがちょっと辛かったですが、
傑作には間違いありません。

投稿: オショーネシー | 2009年9月14日 18:28

 オショーネシーさん・・・こんばんは。
うーーーん。「ショック集団」(63)は未見です。しかし、本作に出演している・・・コンスタンス・パワーズ嬢は
ジョン・フオードの西部劇「騎兵隊」(59)、「バッハロー大隊」(60)にも出ている。
男社会の中で・・・素敵なアクセントを付けていた。タイプです!。(笑)本作のストーリーを読んで
面白く佳作であることに異論はない。精神異常を扱った作品だが・・・監督は脚本家出身だけに
B級映画を超えた作品でしょうネ。

投稿: グリーンベイ | 2009年9月13日 22:25

>たけだ様
まさに、ショッキングで素晴らしい出来の映画でした。
“精神病患者”を扱う映画を観るのは、障害をもつ私にはなかなか辛いものでしたが(映画のように狂人ではありませんが)、私の世界とは「別物」と割り切って観ると、凄く素晴らしく狂った傑作です。
スタンリー・コルテスの照明がとても印象的ですね。
常人のキャシーと狂人のジョニーとの対比にも惹かれました。

私が観たサミュエル・フラー監督作品のなかでも、No.1の出来です。

投稿: オショーネシー | 2009年9月12日 21:45

オショネシー様

これは私の全ジャンルベスト10に入る作品です。
1976年の大晦日に映画館で見て打ちのめされました。
この日はマルクス兄弟等3本映画を見たのですがこれが最後に見た作品で良かった。
最初に見ていたら、その日はもう映画を見られなかったかもしれません。

当時は映画のことがよくわかっていない若造でしたが「凄い」ことだけは理解できました。

最近DVDで見直して、話の展開がちょっと図式的かなとも思いましたが、あの廊下に雨の降る場面はやっぱり驚嘆すべき強度がありますし、最初の、ジョニーの企みを紹介する場面に続く酒場の場面で数秒挿入される逆光で撮影されたキャシーの脚のカット等にもフラーの刻印が明らかです。
コルテスの撮影も見事で、最初の場面でも恋人キャシーの顔にはフラットな照明を当てていますがジョニーの顔には影を生む照明を当てており「影を撮った男」と呼ばれるに相応しい仕事ぶりです。


投稿: たけだ | 2009年9月12日 10:25

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