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2009年9月24日

裸のキッス

1 1964年<アメリカ>

監督 サミュエル・フラー

出演 コンスタンス・タワーズ

    アンソニー・アイスリー

    マイケル・ダンテ

         ヴァージニア・グレイ

    ベティ・ブロンソン

ストーリー

娼婦ケリーは逃げられないよう彼女を丸坊主にした売春宿の主人を殴り倒し、自らの稼いだ金を取り戻してそこを立ち去った。それから2年後、彼女はグランドビルという小さな町へシャンパンのセールス嬢の姿で現れた。しかしそんな彼女の正体を見抜いた警部のグリフは彼女と一夜を過ごした後、町を去るように告げる。だが更生を決意したケリーは町に住まいを見つけ、身障児施設の看護婦として働き始める。子供たちとも馴染み始めた彼女の前に、町の若き富豪グラントから思わぬ誘いが。過去さえも気にしない彼の結婚の申し込みにケリーはOKするが…。

11

     金を奪い返すケリー(コンスタンス・タワーズ)

実にショッキングな幕開け。

女が男をバッグで殴打を繰り返す。そのうち頭からカツラが取れる。彼女はスキンヘッドだった。男が倒れる。女は自分の稼ぎを奪い、カツラを被り整える。そして満足そうな笑みを浮かべる…。女は娼婦だ。

2年後、実に魅力的な女性がバスから降りてくる。町の名前はグラントビル。スモール・タウンだ。彼女はシャンパンのセールスで生計を立ててるが、警部のグリフは彼女の正体を見抜く。そして一夜を共にする。彼はこの町から早く立ち去るように警告するが、ケリーは部屋を見つけ、看護婦の仕事も見つけ、グラントビルに住みつくようになる。

ケリーは決意したのだ。グリフの家の鏡で自分の顔を見たときに。穴があくほど見つめた。お金や男、酒に疲れ、希望も救いもない荒みきった表情の自分がいた。グリフが最後の客だと決めた。この町で生まれ変わるのだと。

7

  子供たちに慕われるケリー(中央、コンスタンス・パワーズ)

彼女の評判は上々だ。身障児の子供たちに好かれる看護婦。面倒見の良い同僚…。

彼女の過去を知っているグリフはケリーに辛く当たるが、あるパーティでケリーは町の有力者グラントと運命的な出会いをする。すぐに2人は恋に落ちる。

6

パーティで、グリフ(左、アンソニー・アイスレー)とグラント(中央、マイケル・ダンテ)に出会うケリー

ケリーはグラントに過去を告白する。しかし、グラントは結婚してほしいと言ってきたのだ。君を愛してている。自分も清廉潔白の身とはいえない、ケリーの過去と未来は丸ごと僕が引き受ける。君以外考えられない、と。

迷うケリーだったが、心は決まった。彼のプロポーズを受けた。家の鍵も貰い、幸せに浸るケリー…。

ある日、夕食を作りにグラント邸に行ったケリー。彼女は思わず目にしてしまう。グラントが少女にいたずらをしていたのを…。実はグラントは小児性愛者だったのだ。グラントはケリーに言う。「娼婦と倒錯者は同じ世界の住人だ。我々ならうまくやれる、後ろ暗い者同士の結婚だ。」

ケリーはグラントを受話器で殴り殺した…。

2

― 娼婦という過去からの脱却として、選び愛した男が小児性愛者で、彼女の過去など関係なく愛してくれていると思っていた女には、男の告白は怒りしか湧いてこなかった。思わず受話器に手が伸びた。彼と結婚すれば完璧な女に変身するはずだったのに、“娼婦”だったから彼女は愛されたのだった。

ケリーがグラント邸に入り、少女とグラントを見つけ、グラントが告白し、殺人に至るまで、先日グラントが病院で録音したケリーと子供たちの歌が流れている。それは戦慄ものだ。

身体障害を持った子供たちの純粋無垢な世界と、一見平和そうに見えるが、実は偽善の渦巻くスモール・タウンの世界。そして娼婦から足を洗った女と、町の人々の尊敬の的であった男の性倒錯者という秘密。そうした対比を通じて、アメリカの病巣を書きだしたかったと思うのだが、いまいち成功しているとは思えないのである。

第一、ケリーの犯罪で町が騒然とする姿がさらりとしか描かれていないし、町の人たちは皆善良であった。証言に来て嘘をつくという女性がいたが、家に帰ると「嘘をついた…」と泣き崩れる。金を貸してもらった同僚は、ケリーの力になりたいとまで言う。クリーンな町にやって来た邪悪な娼婦に善良なスモール・タウンが裏の顔を見せるという主題が、薄められている感は否めない。

警部グリフだけが「過去は消せない」ということを知っている。ケリーが全てグラントに告白したと言うまで、結婚は反対、30分以内に町を出ていけ、町が汚れると彼女に言い放つ、スモール・タウンの偽善も知り尽くした男だ。このグリフという男は傑出した人物である。

サミュエル・フラーお得意の暴力に彩られ、「ショック集団」から引き続いてスタンリー・コルテスの見事な撮影と、ポール・ダンラップの甘美で残酷な音楽が異彩を放つ問題作であることには間違いはないと思うが、つくづく残念な出来であった。

3

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コメント

>グリーンベイさん
サミュエル・フラー監督作品はこの作品で終わりです。ご心配なく(笑)
コンスタンス・パワーズ嬢は本当に美しいですね。
フラーは「映画は戦場だ!」で彼女について語っています。
「ショック集団」ではストリッパーを演じた彼女ですが、
フラーは、大柄だがセクシーではない女のが欲しかった。
セクシーという以上に、美しい女の子がね!彫像のように美しい、
つまり単なるストリッパーなんかには絶対に見えないような、そんな女の子さ!
と、語っています。
フラーの好みの女性像であったことは間違いないでしょうね。

投稿: オショーネシー | 2009年9月25日 17:32

 オショーネシーさん・・・こんにちは。
うーーーん。フラー監督に大分入れ込んでおりますね1.(笑)
本件は未見です。双葉先生の一口評「女性の暴力趣味と男性の
変態趣味。ゲテモノという感じがつきまとう」でした。
いずれにしてもコンスタンス・タワーズ嬢がポイントとなっている
作品ですね。思うにジョン・フオードも「騎兵隊」(59)バッフロー大隊」(60)
と連続で。フラー監督も「ショック集団」と「裸のキッス」と続けて起用している
・・・二人の監督とも好みだったんでしょうか?。これまでの美人スターにはない
、クールな知的で品のあるキャラでしたね・・・グリーンベイも、いたく注目した女優さん
の一人です・・・ハイ。

投稿: グリーンベイ | 2009年9月25日 13:44

>たけだ様
そうですね、この作品、コンスタンス・パワーズ一人じゃ荷が重かったですね。
警部のグリフも活躍しますが、映画はあくまでもコンスタンス・パワーズのものです。
たけだ様のおっしゃる通り、重い荷を解いてくれる1人が必要だったかもしれません。

投稿: オショーネシー | 2009年9月24日 23:39

オショーネシー様

『ショック集団』で上手いなあと思ったのは潜入する記者をいわば狂言回しとして、オムニバス形式で、三つの主題を患者が演じさせたところです。
それぞれの主題の切れ目に病院外の描写等を挿入した上手い構成になっています。

こちらの方はそういう構成になっていないのでコンスタンス・タワーズが出ずっぱりにならないと話が進んでいかないのですが、彼女には残念ながらLEADING ROLEとしての魅力及び演技力が足りません。
下宿のおばさんか看護婦仲間にもう一人物語上重要な役割を果たすキャラクターが欲しかったですね。

投稿: たけだ | 2009年9月24日 18:19

>たけだ様
「ショック集団」があまりにショッキングで良い出来だったので、
この作品も…と期待して観たんですが、「ショック集団」には
遠く及びませんでしたね。残念です。
全体を貫く主題は興味深く、登場人物も良いのに、上手くいかなかった。
やっぱり脚本が詰められていなかったせいかしら?

投稿: オショーネシー | 2009年9月24日 17:49

オショーネーシ様

前作『ショック集団』レベルの出来を期待するのは酷だとしても、ちょっとレベルが落ち過ぎ?と思わせますね。
まず脚本が十分練られていないという印象を持ちます。

売春、性倒錯の問題の脚本上の処理が前作ほど成功していない。
クリフとグラントの間になにやらホモセクシャルっぽい匂いもするのですが、そこには踏込んでいない。

グラントがベニスで撮影した映画を映写しながらケリーと語り合う場面は、面白いのですが作品全体ではちょっと浮いています。

アイデアは色々詰まっているのですが多くのアイデアは不発のままという感じです。

ケリーが振るう暴力(冒頭、中頃の怪しげなバーの女将への殴打)はいかにもフラーらしいですが、グラントを受話器で殴り殺すところは音だけで処理してしまっていて残念。

Hatrackを演じたエディー・ウィリアムスは、ラス・メイヤーと結婚したりミッキー・コーエンと付き合ったりした強者です。


投稿: たけだ | 2009年9月24日 11:25

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