1930年 <フランス>
監督
ルネ・クレール
出演
アルベール・プレジャン
ポーラ・イレリー
ガストン・モド
ビル・ボケッツ
エドモンド・T・グレヴィル
ストーリー
アルベールは歌を歌って歌譜を売るのを商売としている実直な青年だ。ある日、彼はその場で美しいルーマニア人の娘ポーラに出会うが、彼女はこの界隈切っての悪党フレッドに言い寄られるが、まんざらでもない様子だ。失望するアルベールだが、フレッドがポーラの家の鍵を盗んで、彼女は家へ帰ることが出来なくなってしまう。哀れに思ったアルベールは彼女を自分の部屋まで連れて行くが…。
― 「傑作ギャング映画」の次の特集は、うって変わって、「“粋”とは何か、“遊びの酔”とは何か。ルネ・クレール特集 」です。
パリの空の下から人々の歌声が流れてくる。それを指揮し歌譜を売るのは、アルベールという青年だ。その歌の輪の中は、スリの温床でもある。アルベールは一番端にいる可愛らしい娘ポーラにどうやら一目ぼれしたようだ。しかしポーラもスリの被害にあってしまう。歌の会が解散すると一目散にスリに詰め寄り、「俺の客に手を出すな!!」と凄み、ポーラの金を奪還する。
一方、この界隈きっての悪党フレッドもポーラに熱を上げている。実はスリがポーラの金を奪い、彼女がそれに気づいたとき彼が助けるという計画だったのだ。しかしそれはアルベールがポーラに金を返し、計画倒れになるのだった…。
…夜、ポーラの部屋にフレッドが押し入る。踊りに行こうと誘うフレッドにポーラはつれないが、まんざらでもない様子だ。一通りの押し問答の後、結局2人は出かける。
バーをはしごするアルベールとその友人で行商人のルイ。そこにフレッドとポーラが入ってきた。フレッドがごろつきとなにやら話をしている間、1人になったポーラ。アルベールとルイに笑いかける。2人はどちらがポーラの許へ行くかダイスで賭けをする。しかし、ポーラの席にフレッドが戻り、アルベールは失望を隠せない。そして店を出る2人。
ポーラ(ポーラ・イレリー)とフレッド(ガストン・モド)
2人はその場で別れるが、後ろ髪を引かれるアルベールはバーの前で1人寂しくうろつく。
いちゃつくフレッドとポーラだったが、彼はポーラの部屋の鍵を盗む。口論になる2人。その上、もう1人のフレッドの“恋人”が現れる。いたたまれずにポーラは店を出る。泣き崩れるポーラを見たアルベールは彼女に声をかける。強がって見せるポーラだが、いつしかアルベールと一緒に夜の街を歩いている。
ポーラのアパルトマンに着いたが、ポーラは鍵をフレッドに盗られたことを思い出した。部屋に入れない。アルベールの手前、鍵を無くしたと言うと、彼は自分の部屋へポーラを連れて行く。
ポーラを泊めることにしたアルベール。一方ポーラも思わぬ展開に緊張しきっている。アルベールは自分が何かをするかと思うのは杞憂だと言い、彼女に楽にし服を脱ぐよう言う。精一杯強がるポーラはその通りにし、ベッドで眠るのだった…。その脇に腰をかけ、彼女におやすみのキスをしようとした瞬間に彼女が怒り出し、ひと悶着。ポーラは出て行こうとするが、プライドと行く当ての狭間に苦しみ泣き出す。こうなるとアルベールもお手上げだ。
アルベールも寝る時間だ。電気を消しベッドに潜り込む。しかし、ポーラの抵抗にあい、またひと悶着。
その頃、ポーラの鍵を盗んだフレッドは彼女の部屋でポーラを待ち続けていたが、いつまでも彼女は現れず、アテがはずれ帰っていった…。
結局床で寝ることにしたアルベール…。奇妙な関係の2人に朝が訪れる。そして部屋の戸を叩く音に起こされる。
アルベール(アルベール・プレジャン)とポーラ
あまりのしつこい声に、ポーラをシーツで隠し、部屋の戸を開けるアルベール。“客”は彼の友人のスリだった。しばらくずらかると言い、バッグを置いて部屋を後にした。
…ポーラとの別れ。アルベールは未練たっぷりだが、ポーラはそっけなく「さようなら」と言って2人は別れた。しかし、戸を開けるとまだポーラがそこにいるではないか。「家に帰りたくない」と言う。じれるアルベール。自分の部屋だと思ってこの部屋を使えばいいと、彼女を招き入れる。これで初めてアルベールに心を開くポーラだった。
今日もいつもの場所で仕事に精を出すアルベール。その横にはポーラが一所懸命歌譜を売っている。似合いの2人だ。そこにフレッドが現れた。歌譜を買い、部屋の鍵を返すフレッド。しかしポーラはなおも疑わしく思い、アルベールの影に隠れる。そこに歌の会をうるさく思っているアパルトマンの住人が窓から水をかけ、会は混乱に陥る。そしてアルベールとポーラは、とあるアパルトマンへ逃げ込む。2人を探すフレッドを窓から見る2人。アルベールをやっつける勇気はあるの?とポーラに言われ、彼女の前で「俺は結婚するぞ」と高らかに宣言し、困惑顔のポーラを残して勇ましく表へ出て行った。
フレッドはアルベールの友人のスリを捕まえ、「俺の女に手を出すな」という手紙を持たせ、アルベールの部屋へ向かわせた。
…ポーラの部屋。気が進まなくも、アルベールの許へ引っ越すべく荷物をトランクに入れている。
アルベールは大荷物を抱え部屋へ到着。すっかり新婚気分になっている。そこに警察が現れる。なんと彼は友人のスリが置いていったバッグがもとで、逮捕されてしまう…。フレッドが書いた手紙も、ポーラも後から到着することになる…。
― ルネ・クレール最初のトーキー映画と共に、フランス映画界の極めて初期のトーキー映画。
完全なるトーキー映画というよりは、台詞付き音楽映画といったほうが正解か?台詞より音楽で映画が埋め尽くされていますね。アルベールの歌、バーやダンスホールの音楽。そしてアルベールとポーラが口げんかするときまで音楽の華・華・華…。しかし、「パート・トーキー」でもなく、なんとなくトーキーに対する戸惑いというものも感じられないでもない。
この映画は、はっきり言って“想像”で楽しむ映画です。登場人物たちが何を語っているのか、何を考えているのか“想像”する。それでなければ理解できない映画だと思うんですよ。サイレント映画を観ているような感覚で観るのも一考かと思います。とにかく“想像”することです。
登場人物が耳打ちする場面が多々あります。アルベールがポーラに耳打ちして、ポーラが、「ダメ、ダメ、ダメ。」。ポーラがアルベールに耳打ちして、「ウイ、ウイ、ウイ」。恋人たちの耳打ちにカフェの客の女達が笑う…。その“耳打ち”の言葉を想像しなきゃダメですよ。でなければ、映画から完全に取り残される羽目になる。登場人物の“声”に耳を澄ましましょう。
この「初」のトーキー映画では、まだ“粋”なところはあまりお目にかかれませんが、“遊び”は“実験”という形をとって現れていますね。そこはどこか?ということも探して“想像”出来る。実に奇妙な面白さに満ちた作品に仕上がってますね。
ルネ・クレールのトーキー映画は、これ以降益々進化していくと感じられる映画でもあります。私も次の作品が楽しみだ。
アルベール・プレジャンが歌う主題歌「巴里の屋根の下」は名曲中の名曲。後に「ショコラ」でも使われています。
しかし、ポーラって女は気が多い困ったチャンですな。こういう女は同性に嫌われる。
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