郵便配達は二度ベルを鳴らす
監督 ルキノ・
ヴィスコンティ
出演 マッシモ・ジロッティ
クララ・カマライ
ジュアン・デ・ランダ
ストーリー
イタリア、ポー河沿いのレストラン、「ドガナ」の経営者ブラガーナの妻ジョバンナは、歳の離れた夫との生活に辟易し、退屈な日々をおくっていた。ある日、若い放浪者ジーノが食堂へやって来て、ブラガーナに雇われた。ジョバンナはジーノに惹かれ、一方ジーノもジョバンナの官能的な眼差しに惹かれ、2人は深い関係になる。彼らは意を決して駆け落ちするが、ジョバンナは経済的に安定した今の生活を捨てられず、一人店へ帰っていった。取り残されたジーノは旅芸人“スペイン人”と知り合い、気儘な旅を続けるが、偶然ブラガーナとジョバンナに再会する…。
ジョヴァンナの歌に欲望を感じるジーノ (マッシモ・ジロッティ)
まず、この映画で感じるのは、ジリジリした夏の暑さだ。空はどこまでも青く(モロクロだがそう感じるの)一点の曇りもない。
そんなところに給油に来たトラックの荷台に乗っていたジーノが「ドガナ」というレストランへ入っていく。そして女の歌に導かれ、調理場へ入っていく。そこには歌いながらマニュキュアを塗っているジョヴァンナがいた。ジーノの登場に驚くが、彼がランニング姿になり逞しい体を見せると、彼女の目はジーノの体に釘付けになる。
ジーノが器用な男と分かると、店の経営者、つまりはジョヴァンナの夫のブラガーナに雇われる。ジーノが店にいると、ジョバンナの目は彼を追い続ける。そしてジーノも彼女の官能的で、あきらかに誘っている態度に惹かれる。
欲望の果て
壊れていたトラックの部品をブラガーナが取りへ行っている間に、2人は必然的に関係を結ぶ。そして自分がどれだけ不幸か語って聞かせるジョヴァンナ。一旦若く逞しい男に抱かれてしまえば、年老いた夫など邪魔者でしかない。夕食の席で夫とジーノに囲まれた彼女はイライラし通しだった。そして彼女の中で“何か”が芽生え始める。
2人はついに駆け落ちする。しかし、今の安定した生活に慣れきっているジョヴァンナは不安を感じ、1人店へと帰ってしまう。
しかしジーノは生まれながらの放浪者。彼女と別れても旅を続ける。汽車に無賃乗車したとき助けてくれた、旅芸人の“スペイン人”と一緒に旅をする。
そんなある日、ジーノは偶然ブラガーナとジョヴァンナに再会する。それで“放浪”は終わった。
ジーノに逢ってもそ知らぬ顔のジョヴァンナ (クララ・カマライ)
ブラガーナはのど自慢大会で優勝し、酒をしこたま飲みご機嫌だ。そしてジョヴァンナはジーノに意味ありげな視線を送る…。そしてジーノも彼女の考えを把握したのだった。
― 大破した車が横たわり、ブラガーナも横たわっていた。ジョヴァンナはついに夫を殺し、ジーノを手に入れた。ブラガーナが入っていた保険金も店も自分のものになったのだ。
店に帰る2人
一方のジーノは罪の意識にさいなまれ、2人で店に帰っても、罪の重さを感じるだけだった。ブラガーノが寝ていたベッド、ブラガーナの心血を注いだ店…全てがブラガーナに結びつく。意外と小心者のジーノは“ブラガーナ”に囲まれて過ごすことに耐えられなかった。店を売って違う場所で再出発しようというジーノの提案はあっさりと退けられた。今やジョヴァンナが主人だった。言い争いが絶えなくなった2人。
ジョヴァンナは店を再開させるにつき、楽団を呼び、華やかに派手に店を開けた。大繁栄のうちに終わるが、店じまいした後には大量の汚れた食器だけが残り、ぐったり疲れきったジョヴァンナが テーブルに突っ伏しているだけだった…。
ジーノにとって重要だったのは、“放浪”のはずだった。それが1人の女にぐらついた為、断念せざるを得なくなる。街の公園で出会った若いダンサーと一時の逢瀬を持つも、ジョヴァンナが忘れられない。
そしてジョヴァンナにとって重要なのは、ジーノと店である。ジーノに愛されなければもう生きていけなくなっている哀れな女。ジョヴァンナの告白で2人の愛は復活するものの、悲劇の結末へと2人は向かっていく…。
この映画には原作があるので(ジェームズ・M・ケイン)、先にアップした1946年版とストーリーはさほど変わっていませんが、イタリアを舞台にした今作は“惨めさ”が支配していますね。46年版はラナ・ターナーという“スター”に焦点を当てていますが、こちらは“スター不在”。ジーノ、ジョヴァンナ、ブラガーナの3人の俳優の演技がストーリーを支えていますね。“視線”が語る作品ですね。
どちらの作品も遜色ない出来だと思います。
ジーノ役のマッシモ・ジロッティは、ヴィスコンティ作品の常連ですね。『夏の嵐』『華やかな魔女たち』そして、ヴィスコンティ監督の遺作『イノセント』にも出演していました。若い頃はハンサムで瞳が綺麗な俳優さんだったんですね。
ジョヴァンナ役のクララ・カマライも、決して若く美しいわけではない女優さんですが、“中年女性の官能の魅力”というものを上手く演じてました。
とにかく“暑さ”が感じられる映画でした。
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