ヒトラー ~最期の12日間~
監督 オリヴァー・
ヒルシュビーゲル
出演 ブルーノ・ガンツ
アレクサンドラ・
マリア・ララ
コリンナ・ハルフォウフ
ユリアーネ・ケーラー
ストーリー
1945年4月20日、ベルリン。迫り来るソ連軍から身を守るため、ナチス党総統アトルフ・ヒトラーは、ごく限られた身内や側近たちと共に、ドイツ首相官邸の地下にある要塞へ退却。ヒトラーの個人秘書であるトラウドゥル・ユンゲもその中にいた。側近たちはすでに敗戦を確信していたが、客観的な判断能力を失っていたヒトラーだけが、不可能な大逆転の作戦について熱く語り続けていた。そんな中、ヒトラーの56回目の誕生日を皆が祝福する。その頃、ベルリン市内は地獄絵のような様相を呈していた…。
狂気の指導者、アドルフ・ヒトラー (ブルーノ・ガンツ)
「今なら私も、若くて愚かだった当事の私に腹が立ちます。恐ろしい怪物の正体に、私は気づけませんでした。ただ夢中で何も考えず、秘書の依頼を受けました。熱烈なナチではなかったし、断ることも出来たはずです。“私は総統本部へは参りません”と。でも好奇心に突き動かされ、愚かにも飛び込みました。思いもよらぬ運命が待っているとも知らずに…。― とはいえ、今も自分を許せずにいます…。」
これは、ヒトラーの個人秘書、トラウドゥル・ユンゲの言葉である。
この映画は、ユンゲのインタビューと映画と同名の研究書によって書かれた、ドキュメンタリー・タッチの作品である。
―1942年11月、東プロイセン総統本部。ユンゲは見事秘書の地位を勝ち取った。まだ22歳の若さだった。
…そして1945年、4月20日。ヒトラーの誕生日。
忠誠を誓うようなふりをして、ヒトラーの腹を探る部下たち。裏切りの口実を探す…。
敗戦が濃厚なベルリン市内を、市民を見捨てるヒトラー。
そしてベルリン市内の治安が悪化していく中、親衛隊は秩序を失い、市民軍は武器の不足で、ソ連兵の餌食になっていく…。
そして、正気を失い、成功するはずも無い作戦に望みをかけるヒトラー。部下はそんな作戦はソ連軍に通じるはずがないと思っている。だが進言しても、ヒトラーは自分の作戦に益々しがみつくだけだ。
ソ連軍の攻撃が激しくなる中、地下要塞の病院には負傷兵があふれ、いくら薬があろうと、外科手術で兵士の手足が切り落とされていく…。
ヒトラーに最も忠実な部下、ゲッペルスの家族が地下要塞に避難してきた。特に夫人は筋金入りのナチ支持者だ。
ヒトラーはユンゲに避難を勧めるが、エヴァ・ブラウンが最期まで彼と一緒にいるという言葉につられたのか、私も残ると言う…。
ヒトラー、エヴァ、ユンゲ、ヒトラーのもう1人の秘書ゲルダが自殺の方法を話し合う。エヴアは毒で美しく死ぬと言う。ゲルダとユンゲもこの毒を希望した。ヒトラーは2人に渡す。「すまないね、こんな物しかやれん…。」と言って。
4月23日、エヴァ・ブラウンは妹に宛て、遺書をしたためる。
ゲッペルス夫人も遺書をしたためた。
…ゲーリングが裏切った。そして、ヒムラーも西側に降伏を申し入れた。英国のラジオでも公表された。ゲッペルスと共に最も忠実だった部下の裏切り…。ヒトラーのヒステリーが地下要塞に響く。そして、不可能な攻撃作戦を喋り続けた…。
敗戦の色が濃くなるほど、兵士たちは退廃的になってきた。今や乱痴気騒ぎが当然のようだ。
敗戦が決定的になり、ついにヒトラーは、“政治的遺言書”をユンゲに書かせる。
「1914年にわが微力を尽くすべく、先の大戦で志願兵になってから、早くも30年が過ぎた。この30年、私の思考と行動と生活の全ては、国民への愛と忠誠に動かされてきた。何世紀が過ぎても、都市や文化財の廃墟から、戦争責任を負う者らへの憎悪が再生するだろう。責を負う者らとは、ユダヤ民族とその支持者どもだ。」
そしてヒトラーとエヴァは、地下要塞で簡素な式を挙げ「夫婦」となった。
もうソ連軍が数百メートルまで迫っていた。もう一縷の希望も残っていないヒトラーは、エヴァと自殺することにする。遺体は敵のさらしの物になるのを嫌い、ひとかたも無く燃やせと部下に命令する。
…そして総統の部屋から銃声が響く。運び出される2人の遺体。屋外に掘った穴に遺体は無造作に置かれ、焼かれた。
ヒトラー亡き後、部下たちは迷走する。ソ連軍と休戦交渉するも、無条件降伏しか受け入れなれないと突っぱねられる。ゲッペルスだけが、まだ戦うと意気盛んだ。
しかし、ゲッペルスもユンゲに遺言の口述筆記を頼む。
「虚偽はいつか消え、再び真実が勝利する。その時こそ我々の地は、清らかで完璧に…」と。
そして、夫人は6人の子供を毒殺する…。
…ユンゲは地下要塞にいるより、地上へ出たかった。脱出を決意し、ゲルダや兵士と一緒に要塞を出て行く。
外では、ソ連軍最高司令部との合意に基づき、兵士に即時戦闘を中止するよう命令していた。
そして、ゲッペルス夫妻も自殺した…。
荒廃し、ソ連軍が迫る中、外へ出て行ったユンゲの目には地獄絵図が広がっていた。
目標の地点もないまま、歩き続けるユンゲたち…。不意にソ連兵が現れる。兵士たちは抵抗もせず、投降する。
その中をユンゲは歩き出した。途中、少年が手をつないだ。ソ連兵の中を黙々と歩き続ける2人…。
その間に戦争は終結した…。5月7日。ユンゲは少年と自転車で森の中を走っていた。
8日、全戦闘終結で合意。
大戦の死者は5000万人を超え、600万人のユダヤ人が収容所で殺害された…。
「ニュルンベルグ裁判で、恐ろしい話は聞きました。600万人のユダヤ人や人種の違う人々が無残に殺されたと…。これらの事実は大変ショックでした。でも私は、それを自分と結びつけられず、安心していたのです。“自分に非はない。私は何も知らなかった”そう考えていました。でもある日、犠牲者の銘板を見たのです。― ゾフィー・ショル。彼女の人生が記されていました。私と同じ年に生まれ、私が総統秘書になった年に、処刑されたと。その時、私は気づきました。若かったというのは、言い訳にならない。目を開いていれば、気づけたのだと…。」
― ヒトラー最晩年の2年半を個人秘書として過ごしたトラウドウル・ユンゲの回想から始まり終わる、この映画は、“ヒトラー”という怪物の素顔を明かした、貴重な映画だ。
ヒトラーは私人としては、極めて優しい人物として書かれている。愛犬家で、エヴァ・ブラウンをこよなく愛した男。ゲッペルス家の子供に優しく、ユンゲにも気配りを欠かさない人物…。
しかし、“総統”となると人が変わる。敗戦が決定的になると、側近に地下要塞から避難をするように命じるものの、市民の命などどうでもよいのだ。市民が戦うのは、自己責任であると言って突き放す、恐ろしい人物…。人間なのか…と疑いたくもなる。
部下の進言は聞かない。自分のプランしか頭に無い。(パーキンソン病で思考能力が弱っていたという説もあり)
敗戦が決定的になると、無責任にエヴァ・ブラウンと自殺して果てた男。
そして自分亡き後も、戦い続けろと部下に命令していた、血も涙も無い指導者…。
ユダヤ人600万人を死に追いやった男。ドイツ国民も含めて、5000万人を死に追いやった男…。
彼の悪行を並べ立てていくと、とどまる事を知らない。正に狂気の破壊者だ。
エヴァ・ブラウンが、ユンゲに、「彼と15年いるけど、彼のこと、何も知らない…」と言う。ユンゲは「彼は謎だ…。」と言う。
…映画の冒頭と終わりのユンゲの言葉が重い。
| 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)
















最近のコメント