インフアナル・アフェアⅢ 終極無間
監督 アンドリュー・ラウ
アラン・マック
出演 アンディ・ラウ
トニー・レオン
レオン・ライ
チェン・ダオミン
ケリー・チャン
アンソニー・ウォン
エリック・ツアイ
― 2002年 5月…ヤン殉職の半年前
ヤンは手がつけられないほど荒れていた。マッサージ店を破壊するほど荒れていた。何を彼がそうさせたのだろう…。
― 2003年 10月…ヤン殉職の10ヶ月後
ヤンが殉職した事件の調査結果をラウは聞いていた。ラウが脚色して出した書類を検討した結果の報告だ。
特別調査委員会が慎重に検討した結果、証言は信頼できると判断され、ラウが“もう1人のサムのスパイ”ラム警官に発砲し殺害した行為は合法と認められた。…ラウの頭の中で、彼に都合よく作られたビルの屋上のシーンが駆け抜けた。ヤンの額に拳銃が突きつけられていた。そしてラウが説得している。エレベーターが開いた瞬間、ヤンはラム(サムのスパイ)に殺され、ラウはラムを殺した…。
調査結果に聞き入るラウ(アンディ・ラウ)
しかしラウは元の部署、内務調査課へは戻れずに、しばらく“庶務課”で過ごすことになる。ガランとした広い空間にラウ一人。地味な仕事も黙々とこなすラウ…。
新しい人物の登場…冷静沈着なその態度の裏に“嫌味”な姿が見え隠れする「保安部」の警官ヨン。
そのヨンの部屋…クリーニングした制服を届けに保安部にやって来たラウだが、入ることを止められる。警官が一斉に集まりだした。銃をヨンの部屋へと照準を合わせている。1人の男が憤懣やるかたない姿で銃をヨンに向けていた。長年ヨンに協力してきたのに、用無しにされた巡査部長だった。発砲音が保安部中に響き渡る。そして、冷静な顔で部屋から出てきたヨン。ラウは“何か”を感じた。
それから一ヵ月後…内務調査課へ晴れて戻れたラウ。自然に頬が緩む。彼の部屋の机の上にはもう事件のファイルが並んでいた。部屋を見渡し、悦に入るラウ。
復帰に喜ぶラウと同僚
事件のファイルを並べてくれた同僚が、巡査部長がヨンの前で自殺した案件を切り出した。詳細を調査したくても、「保安部」は政治力が強く秘密主義でやりにくい。質問には一切答えないと言う。そして、巡査部長はサムの手先だった。自殺や失踪した警官がここ半年で数名いる。それは全員サムの手先の者だ。サムの死後、別の内通者が口封じに殺したのだろうと同僚は言う。リョン警視が内通者を突き止めろと躍起になっているようだ。ラウ自身、内通者の1人だった。一生隠し通さなければならない秘密だ…。
ヨンとラウ。初めての出会い
ラウが庶務課に忘れ物を取りに来たとき、偶然ヨンがやって来た。駐車場を申請したが、いつ頃借りられるか聞きに来たのだ。用事が終わり歩き出した2人。いつしか歩調を合わせ並んで歩いていた。ラウがヨンに聞く。「シェンを知っているか?」と。ヨンは「余計なことはあまり嗅ぎ回らないほうがいい。」と警告した。
「シェン」という男は、巡査部長が借りていた部屋の名義の代表の男だ。本土(中国)で手広い商売をしている人物だ。巡査部長が使っていたボーリング場のロッカーから一枚の写真が出てきた。写っていたのはシェンとヨンが会っているところだった。シェンは以前サムと取引していた人物だ。もしかするとヨンは“内通者”かも知れない…とラウは思い始めていた。
ヤンの墓の前…医師のリーが墓をじっと見つめる。その少し後ろにラウがいた。
ヤンの墓にたたずむリー医師(ケリー・チャン)とラウ
リー医師は、何故ヤンの心を助けたのか、まだ答えを出せないでいた。知り合って5ヶ月、21回会っただけの男だ。カウンセリングより、椅子で寝ているほうが多かった。そしてその男をまだ愛していた…。墓参りが終わり、リーを送ろうと車に乗り込んだラウ。そのとき、1人の黒ずくめの男が現れた。シェンである。彼は「香港に戻った。」とある男に電話をした。そして相手は「では始めよう。」と答えた。その相手とは、ヨンだった…。
警視庁…まだ犯罪組織課にいたラウたちの許へ「保安部」に来いという連絡が入る。駆けつけるラウたち。ヨンとウォン警視が保安部のドアを開けると、ヤンが椅子にくくりつけられ暴行を受けていた。不気味に微笑むヨン…。ヤンとシェンの弟リャンは商売の話でレストランで会っていた。そのときサムから電話が入る。「灰皿でリャンの頭を殴れ。」という命令だ。訳も分からず灰皿を振りかざしリャンを殴るヤン。そこにヨンたち保安部の連中が都合よく現れたのだ。ヤンとヨンは見つめあった…。
「保安部」のヨン警視(レオン・ライ)
サムの手下共と揉め合うラウたち。後は組織犯罪課に任せるとヨンは言った。サムとその手下が引き上げようとしたとき、ヨンはヤンに待てと言った。ヤンに「俺を覚えているか?」と聞いた。ヤンはただヨンを見つめた…。「俺はお前を覚えている。気をつけろ。」とヨンは言った。これはどういう警告なのだろうか?曖昧な笑顔を残してヤンはサムたちと出て行った…。ウォン警視はヨンに「狙いは何だ?」と聞く。ヨンは涼しい顔で「狙い?任務を全うしている。」と答えるのみだ。
ヤンがリャンを灰皿で殴ったのは、サムの“狙い”の1つだったのだ。シェンの手下がヤンを連れ去ろうとしたとき、キョンはヤンをかばい自分の頭で酒の瓶を割った。そのキョンの勇敢さを称えるように、シェンは不甲斐ない弟に対し、この場から出て行け!!と命令した。そしてヤンの頭に酒瓶を思い切り振りかざした。キョンとヨンが流した血で貸し借りはなくなった。商売の話だ。サムがニヤリとする。全てが計画通りだった。シェンの武器売買にかませて欲しいというのだ。2人はガッチリ手を組んだ。そしてシェンとの取引はヤンに任せられた。
今回は非情な男…サム(エリック・ツアイ)
ウォン警視とヤンの電話での会話…ウォン警視はヤンに「精神科」へ通えと切り出した。何故自分が精神科へ行かなければならないのか?いぶかるヤン。傷害事件ばかり起こし、収監されたくなければ精神科へ行けというのだ。嫌なら刑務所行きになる。
診療所…診察を受けにヤンがやって来た。そしてリー医師のいる部屋の扉を…開けたのは、ヤンの墓参りから帰ってきたリー医師だった。
2003年…家具は布で覆っており、郵便物もたまっていた。ヤンがいつも寝ていた椅子を見つめるリー医師。パソコンを立ち上げ、ヤンのカルテを見る…。彼女はラウに言った。「今も覚えてる。あの晩の言葉。“明日が過ぎれば無事だ”と…。」まさか死ぬなんて…と泣き崩れる。何も言えないラウ…。そして2人は診療所を後にした。ラウは鍵のところに紙を挟んで…。
3時間後…暗いリー医師の診療所。ラウがパソコンと向かい合い、ヤンのカルテを見ようとパスワードを探していた。どんなに打っても「パスワードが違います」という答えしか返ってこなかった…。
夜中の警視庁…ラウは躍起になって警視庁の見取り図を見ていた。その彼の心の中では、「ヨンは内通者かもしれない…。」という言葉が響いていた。自分でヨンを調べてみようと思ったのだ。保安部が見渡せる“穴”に監視カメラを設置しようとしたとき、物音が響いた。ヨンが駐車場から自分の部屋へと向かっていた。ラウはその隙をついて、彼の車の下に小型ナビを取り付けた。しかしヨンが引き返して来た。
緊張の時間
ラウの電話が鳴った。そしてヨンの前に出てきた。話し続けるラウ。電話を切り、2人で他愛ない話をして、ラウは車で出て行った。1人残されたヨン…。彼は車に仕込んであった機械を取り出し、ラウの行動を見た。彼の車の後部でしゃがむラウが写っていた。…そして保安部に向かった。
保安部が見渡せる“穴”にカメラを仕込んだラウは、ずっとヨンを監視していた。仕事も手につかない様子でモニターに見入るラウ。一瞬ヨンがラウを見つめたように見えた。そして金庫からカセットテープを取り出し封筒に入れ、ヨンはそれを持ち車で出かけた。ラウもヨンの車を追跡する。彼の車の下に仕込んだナビで…。ヨンは封筒をポストに入れ、去った。ラウもそのポストへ来た。彼が帰った後、煙を上げるポスト。そこには困惑顔のシェンがいた…。シェンがその場から去る姿を、ラウはずっと追っていた。そしてシェンが消えた。厳しい顔になるラウ…。
リー医師の診療所…泥棒に入られたようだ。現金と腕時計が数点無い。そして“カルテ”が保存してあるPCも…。リーがつぶやく。「PCなんて盗んでも無駄。ロックしてあるもの。パスワードは車のナンバーよ。」と。とっさに彼女の車の写真を食い入るように見るラウ。泥棒はラウの仕業だった。
何台も並ぶモニターに囲まれ、リー医師の診療所から盗んだパソコンを立ち上げるラウ。リー医師がヤンを治療した日々がよみがえる…。
2002年8月16日 初診…リー医師のいる部屋の扉を開けたヤン。リー医師が色々と説明するが、思わぬ美人の医師の登場に顔がほころぶヤン。しかし収監される可能性もあるということを知り、「ウォンのバカ野郎」とつぶやき、彼は出て行った。
第2回 診療…ヤンは死ぬ直前まで、唯一安心して眠れることになる椅子に寝ながら、リー医師の紋きり調の説明を聞き、同意書にサインした。催眠療法で治療すると言われて一瞬焦るヤン。しかしそれを受け入れ、治療に入った。だが、診療には非協力的だった。第3回も4回目も診療は、成果は出ないどころかリー医師は怒りさえ覚えていた。しかし、リー医師が立ち上がろうとしてバランスを崩し倒れたとき、ヤンは彼女をやさしく介護した。リー医師は言った。「あなたを治したいだけ。」だと。ヤンは初めて“素”の笑顔を見せた。
第…回 診療…ヤンとリー医師が抱き合い、時にやさしく時に激しく唇を絡ませあっている…。そして…目覚ましが鳴った。現実か?夢か?それとも妄想か?…ヤンには分からなかった。しかし妄想だとしても、幸せな時間が過ごせたことに満足感を覚えた。
今日はシェンとの取引の日だ。港にヤンとキョンがやって来た。サムがこの取引を2人に任せたと知ったシェンは、険しい顔になり海を見つめ、何かを考えていた。
図書館…サムとヨンが密会していた。それを探るヤン。だが視線が遮られてしまう。リー医師が彼を見つけ寄ってきたのだ。サムがヨンに「俺の手助けをするか?」と聞いた。ヨンは「助け合おう。お互い様だ。」と答える。話が終わりサムが立ち去った。そして、用心深いヨンは視線を散らしながら歩いている。怪しい人物がいないと分かってから彼は出て行った。ヤンはリー医師に救われた。リー医師といると、自分が素直に笑えることに喜びを感じるヤン。
恋人同士のような2人(ケリー・チャン&トニー・レオン)
2003年…ラウの許に一本の電話がかかってきた。それは、昨日サムとヨンが会っていたこと。おそらくヨンは内通者だということ。サムとシェンは数日中に取引をするということだった。この密告者は誰だ?しかしそんなことも考えられないまま、ラウは寝る間も惜しんでヨンを監視していたのだ。またラウの許へ電話がかかる。リー医師からだ。「ヤンからテープが届いた」という。急いで部屋を出るラウ。彼女の許へ急ぐ。そして、ヤンからリー医師に宛てたテープは組織犯罪課に渡すとラウが言った。
リー医師を車で送る途中、ラウのミスで事故が起きた。― 病院…そして声が聞こえた。「明後日、サムとシェンが武器とコカインを取引する。出発前に連絡する。」と言う。「まだサムの信用が薄いな…」という重厚な声がする。やがて第三の声がした。「ヨンは俺に任せろ。」と。ラウ自身の声だった。喋っていた2人はヤンとウォン警視だ。ヤンは疑心暗鬼だが、ウォン警視はラウは有能だから大丈夫だと言った。しかしヤンはウォン警視に言う。「こいつのせいであんたは死んだ」と。ラウを睨みつけるウォン警視。ラウは、あれは事故だったと弁解したが、ヤンは「死を望んだろう?」と容赦ない。ラウは言う。「俺は“善人”になりたいんだ。」と。挽回するチャンスも欲しかった。だがヤンはラウにとって“屈辱”の言葉を吐く。「あいにく俺は警官だ。」そしてラウの額に拳銃を押し当てた…。
現実には、ラウは空の手で椅子を撃とうとしていた…。そして椅子に倒れこんだ。治療を終え、戻ってきたリー医師はいぶかしげに彼を見た。
無心に眠るヤンをリー医師は見つめていた。起きたヤンにリー医師は勧告する。睡眠療法はお互いの協力が必要だ。ヤンの話は全てが嘘だ。真実を話してくれないと助けられないのだと。「何もわからない…。」と言うリー医師。ヤンが微笑みながらグラスの水を飲む。そしてまた声がした…。「わかるもんか。君は俺じゃない。」と、ヤンが飲んだグラスの水を飲んで椅子に寝た。ラウだった。
リー医師は言う。「秘密を守り通すことが利口とはいえない。」と。
ラウの夢なのだろうか…
リー医師が子供の頃の話をする。万引きしたことがあると。店長に見つかったが彼は見逃してくれた。しかし彼女は店長の気持ちを裏切ったのだ。そのことをずっと黙っていた。大学に入り友人に話して、やっと自分が生まれ変われた気がした、と。ラウが、「俺も生まれ変われるか?」と聞く。リー医師が「私を信頼する?」と尋ねる。ヤンとラウは「信頼する。」と答えた。リー医師が質問する。いつ、黒社会に入ったのか?ラウは「入りたくなかった。」と答える。善人でいたかった。なのに、サムの妻マリーに出会った…。ヤンは「そんなことは話せない。」と答える。俺の問題は解決できない。身近な人間を“売る”のが仕事だから…。とヤンは言う。ラウも、いつやめられるのか…生き残るため、身近な人間を“売る”…。過酷な現実に目をそらしたかった。そしてヤンは、「本当は警官だ。」と答え、ラウは「俺は警官だ」と言う。そして「サムの手下でいたくない。」と答えた。呆然とするリー医師…。そして目覚ましが鳴る。現実に引き戻された…。信じられないという表情のリー医師…。ラウは何もかもリー医師に話してしまっていたのだ。そして彼女の中で「明日が過ぎれば無事だ。」というヤンの言葉がこだました…。
2002年…ヤンがウォン警視に流した情報…サムとシェンの取引の日だ。警察も総動員で逮捕に備えていた。しかし「保安部」のヨンが、「作戦中止だ。」と言ってきた。正気なのか?だが“上”からの命令には逆らえない。作戦は中止となった。
2003年…ヤンの姿 ― 警察学校を出て行くとき、振り向いた彼の眼差し ― に思いをはせながら、ラウは着替えようとロッカーの鏡を見た。ヤンが笑っている…。ラウも笑う…。今やラウの中で2人は一心同体になりつつあった。
本土から公安が来て、台湾人の引渡しが行われることになっていた。2人だけを残して保安部の連中は出て行った。そして、人気のない保安部にラウがやって来た。ラウは、保安部の水のタンクに睡眠薬を入れ、その水でコーヒーを飲んだ2人を眠らせておいた。ヨンの部屋に入り、ブラインドを閉め、そしてモニターで研究した通り金庫の鍵を開けた。そのとき、ラウの電話が鳴る。「ラウ、俺のオフィスでお楽しみか?」とヨンが聞いた。2人はお互いに監視し合っていたのだ。しかし目的のテープを取り出したラウは、何も言わず電話を切った…。
保安部へ向かうラウたち
ラウの部屋…目的のテープを手に入れたラウは満足げに微笑み、テープレコーダーを持ち、内務調査課の皆に、自信に満ちた声で「みんな、俺について来い。」と言った。そしてヨンを逮捕するため、保安部へと向かった。
ヨンにサムとの関係を聞きたいので内務調査課に動行するように言った。するとヨンは、ラウに自分の行動がわかってるのか?と聞いた。ラウは自信満々で「もちろん。」と答え、テープレコーダーを掲げた。そこに、黒ずくめの男が人垣をかき分けて歩いてきた。シェンである…。
― あの日、サムとシェンの初取引の日、シェンとヤンは埠頭にいた。しかし、取引するはずのシェンの“荷”は綺麗に消えていた。サムはヤンを裏切り、シェンの“荷”を横取りし、彼の乗った車は埠頭と反対方向に向かって走り去って行った。ヤンは見殺しにされたのだ。ヤンめがけシェンの手下が拳銃を撃ってくる。逃げ惑うヤン。ヤンとシェンがお互いに向き合い、銃声が響いた。ヤンは腕を、シェンは足を負傷する。しかしシェンが何かに気づき、ヤンを盾にして振り向くと、ヨンがいた。シェンはヤンの顔に拳銃を当て、「お前らはグルなんだな?」と言った。ヨンは、「あいにく俺は警官だ。」と言い、警察学校で報告書の書き方が“A”だった。お前たちを殺し報告書をうまく書く…ヨンはそう言ったのだ。しかし、シェンの拳銃がヤンから離れた。「サムの手下ではないな。」と彼は言った。それに応じてヨンも拳銃を下ろし、「あんたもシェンじゃない。」と言うのだ。ニヤリとするシェン。そしてシェンとヤンは見つめ合った…。
保安部…シェンの登場にラウは臆することはなかった。ラウはテープを一緒に聞け、面白いぞと誘う。ヨンの顔に一瞬緊張が走った…。そしてテープの再生。
そのテープにはサムがラウに警察のイヌを探せと、せっついている様子が収録されていた。「ラウ、これが最後のチャンスだ。よく考えろ。」とラウがヨンに向かって言った…。肩を落とすヨン…。同僚はラウを逮捕しようとした。しかしラウは、ヨンこそ本物のラウなのだと言い張る。鬼の形相で、「逮捕に来たのになぜ奴の肩を持つ!」と、そこには正気をなくした男がいた…。そこにシェンが、このテープも聞けとラウに言った。そこにはラウがウォン警視を殺したこと。ラウがサムのイヌだったことを証拠付ける内容の会話が収録されていた…。シェンが、「捕らえろ!!」と警官たちに言う。完全に正気を失ったラウは、拳銃を振りかざしながら誰も寄せ付けず、「何のマネだっ!!」と言っていた。ヨンは「気をつけろと…。」と残念そうに言った。ラウは「なぜ気をつける必要が?」と聞く。「俺は“善人”なのに、なぜだ!!」と言った。警察の中にいるサムの手下を残らず殺したのはラウだった。それなのになぜチャンスをくれない、何故なんだ!!とラウの心の叫びが保安部中に響き渡る。「“善人”になりたい、“善人”になりたい!!」と叫ぶラウ…。「なぜチャンスをくれない!!なぜだ、答えろ!」とまくし立てる。そこにヨンが口を開いた…ラウにとって屈辱のあの言葉を…「あいにく俺は警官だ。」と。ヤンもその言葉を言っていた。そしてラウも「俺も警官だ!!」と言って、ヨンに向けて拳銃を発射した。弾がヨンの胸と額を打ち抜いた。シェンが放った銃弾はラウの肩に当たり、ヤンとヨンが額に弾を受け、崩れ落ちる場面がオーバーラップしながら、ラウも崩れ落ちた…。ヨンの頭の下には血だまりが出来ていた。それを見つめるシェン…。
シェン(チェン・ダオミン)
― あの日がシェンの中でよみがえる…。3人は手をたたき合わせ、無事を喜んだ。実は3人とも「潜入捜査官」だったのだ。シェンは本土の、ヤンはウォン警視の、ヨンは警視副総監直々の…。いつかまた3人で再会しようと言った。シェンは、また会おう、いつの日か…と言って去って行った。ヤンも帰ろうとしたが、ヨンがさえぎる。答えがまだだと。「“俺を覚えているか”と尋ねたろう?お前が警察学校を退学し、俺は優秀賞を取れた。」と言った。ヤンは、分かった。というしぐさをしてみせ去って行った…。
ラウは一すじの涙を流し、自らあごを打ち抜いた…。
ラウの部屋を調べていた警官が、もう1つのテープレコダーを見つける。その中には、ラウが好きだった歌が入っていた…。マリーから貰ったテープだ。ヤンからアンプを買うときにも試した歌だった…。
2002年 12月…ヤン殉職の10日後
ヤンが殺されたビルの屋上でシェンとヨンは会っていた。線香を手向けるシェン…。ヨンは、「ヤンは死んだ。線香なんて何の役に立つ」と言った。そして、まだやるべきことが残っていると。うなづくシェン…。
12年前…ヤンが退学になり、警察学校を出て行く姿を追っていたのはラウだけではなかった。ヨンもそうだったのだ…。
「地獄菩薩本願経 巻上」より
これらのごとき輩は まさに無間地獄に落ちる とこしえに 絶え間なく 終わりなく
いや~…話の解説が長くてすんませんです。「インファナル・アフェア」3部作。これにて終了。類まれなストーリー運びと、個々の俳優の輝き。素晴らしかった。特に俳優の性格づけが秀逸でした。潜入捜査官としての意志の強さで何も話さないヤンと、リー医師に何もかも喋ってしまったラウの意志のもろさ…という対比も良かった。
この3作目ではなんと極悪非道のマフィアになっているサムにちょっと驚きました。マリーの死以来、彼はすっかり変わってしまったんですね。
そして、トニー・レオン演じるヤンは、リー医師に出会ってから随分明るくなりましたね。キスをした妄想に浸り、1人ニンマリしたりする。笑顔がゆる~くて素敵…と言うより可愛い。これは何かに似ている…と思ったら、ウチで飼っている犬に似ていたのでした…。
この映画の最後を飾る主役2人、ヨン役のレオン・ライ、シェン役のチェン・ダオミンは、自然に物語りに溶け込めましたね。ヨンは冷静な物腰で、保安部の部下以外には、“近づきがたい人物”として書き込まれていましたね。メガネの下の無表情な目…。ラウが彼には“何か”ある…と感じるのは無理もないかな。
シェン役のチェン・ダミオンも渋くて素敵なんですよ。黒ずくめの男。密輸や武器取引を大々的にやっているが、実は悪人ではないという男を見事に演じていました。“存在”するだけで、目が彼の方に向いてしまっている…という強烈な個性を持った俳優さんですね。
そして最終作で主役に躍り出たラウ役のアンディ・ラウ。これが素晴らしいのなんのって。警察に潜むサムのイヌを全員始末したはずなのに、ヨンが“内通者”ではないかと言われて、自分ひとりで調べようとする。しかし、彼はたびたびヤンに苦しめられる…。彼にとって最も屈辱的な言葉、「あいにく俺は警官だ」という言葉に。それでヨンがラウに殺されたと言っても過言ではないですね。車で事故を起こしてから、彼に変化が現れる。段々ヤンと同化していく…。そして、正気を失っていく。自分がラウではないと思うようになる。ヨンが本当のラウだと。自分は?もしかしてヤンだと思っていたのかも知れない…。ヤンがよく言っていた、「明日が来れば無事だ。」と言う言葉もすっかり彼の言葉になってしまっていますね。
そして、ヤンの殉職前と殉職後のストーリー運びに感心。書くほうは大変苦労しましたがね。シェンが香港に帰ってきて、ヨンに電話を掛ける。「では、始めよう。」と言うヨンの言葉は、ヤンを殺した男を捜し復讐するために、あらかじめ目星を付けておいたラウを追い詰めることだと思いましたが…どうでしょう?
最後に、シェンがよく言っていた言葉で閉めましょう。「運命は人を変えるが、人は運命を変えられない。」
さあ、次はまたクラシック映画に戻ります。クラーク・ゲイブル特集です。お楽しみにぃ…。
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