映画 イギリス

2007年12月 8日

旅 情

Photo 1955年 <イギリス>

監督

デイヴィッド・リーン

出演

キャサリン・ヘプバーン

ロッサノ・ブラッツィ

イザ・ミランダ

ストーリー

アメリカの地方都市で秘書をしている38歳のジェーン・ハドソンは欧州見物の夢を実現し、ヴェニスまでやって来た。フィオリナ夫人の経営するホテルに落ち着いた彼女は、相手もなくたった一人で見物に出かけ、サン・マルコ広場に来て喫茶店のテーブルに腰を下ろした。しかし、背後からじっと彼女を見つめる中年の男に気づくと、あたふたとその場を後にするのだった。ロマンスを求めてやって来た割には消極的なジェーンなのだった…。

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ロマンスを求めてやって来たジェーン(キャサリン・ヘプバーン)

まず、タイトル・ロールからして上手い。絵で、ジェーンの旅行を見せる。船に乗ってロンドンへ。そして飛行機に乗ってパリへ。そして列車でヴェニスへ…。そして本物の列車になる。

運河を通る水上バスから見るヴェニスの家々が美しい。そして、どこにでもいる騒々しいアメリカ人の観光客…。

そして孤独なジェーンは、寺院の鐘に誘われるままにサン・マルコ広場へ。喫茶店で若い女性にカメラを回していると、イタリアの男性は彼女たちの“脚”に興味を持ってついて行った。唖然とするジェーン。しかし、今度は景色に向けてカメラを回すジェーンの“脚”に注目する男がいた。

   ジェーンに興味を持った男(ロッサノ・ブラッツイ)

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ふと、視線を感じ振り向き、目が合うとジェーンはたちまちアタフタしてしまう。サングラスをかけ、ウエイターに清算を頼もうにも、誰も相手にしてくれない。結局、その男がウェイターを呼び、なんとも情けない気持ちでサン・マルコ広場を後にするジェーン…。

翌日、ジェーンの観光は積極的だ。知り合った浮浪児マウロを従え、カメラを回す。そして彼女はある店で、見事なベネチアン・グラスを見つけた。店主が対応に出てきた。このゴブレットは18世紀のもので1万リラだという。気に入った様子で魅入るジェーン。しかし、店主に「サングラスをはずされては?」と言われ、はずすと、そこには昨日の男がいた。ディ・ロッシという男だ。驚き慌てふためくジェーン…。ヴェニスでの買い物の方法でも2人はもめた。そしてジェーンは根負けし、男の言い値でゴブレットを買った。

Photo_6しかし、ジェーンの孤独は消えず、またサン・マルコ広場に足が向いた。一緒のホテルに泊まっている客がジェーンの視界に入ったので、彼女は1人ではないように見せようと、テーブル側に椅子を倒した。そこにちょうど、ディ・ロッシがやって来る。しかし彼も勘違いし、挨拶だけで通り過ぎて行った…。泣きたくなるジェーン…。

翌日も1人で精力的に歩くジェーン。マウロと、サン・バルナバス広場へ行く。なんとその広場は、ディ・ロッシの店の前だった。彼が店に不在でなぜか安心するジェーン。そしてカメラを回し始めたはいいが、運河に落ちてしまう。なんとも恥ずかしい思いをするジェーン…。ヴェニスには運が無いのかも知れない…。

ホテルに着いてみたら、ディ・ロッシが尋ねてきていた。そして彼は、ジェーンに「運命を感じた」と告白するが、ジェーンは突っぱねる。しかし彼はひるまない。「愛はそう難しく考えるものではない」と。「2人は出会い、愛を感じた。素敵なことだ。どこが悪い?」と。

そこに邪魔者が。同じホテルに住むアメリカの騒々しい夫婦だ。彼女はベネチアン・グラスを半ダースも買い物してきたという。包装を解いて見せてくれた。ジェーンのと全く同じだった…。そして口論になる2人…。しかしイタリア男は口が上手い。今夜サン・マルコ広場でコンサートがあるから一緒に行こう。コンサートの後のことは運命の女神の手に…と行って帰った…。

コンサートの夜、2人は愛を感じあった。花売りが来て、ジェーンはクチナシを選んだ。彼女の説明では、昔、本格的な社交界があって、それに出るためにクチナシをつけようと思ったのだが、1本2ドルもしたし相手は学生だったからあきらめた夢の花だった。

その花をジェーンは橋から運河に落としてしまう。ディ・ロッシが懸命に拾おうとするが、流れて行ってしまった…。そして、いつしかジェーンは彼を「レナート」と呼ぶようになっていた。

翌日、レナートとのデートのためジェーンは、買い物をしめかし込みサン・マルコ広場まで出かけた。しかし、彼は来ない。代わりに「甥」が少し遅れると伝言しに来た。しかし、彼は「甥」ではなく、レナートの「息子」だったのだ。「母親」も健在とのこと。胸がつぶれそうになるジェーン…。そして彼の息子に「来る必要はないと伝えて」と言って、その場を立ち去った。

ホテルに帰ったジェーンは、フィオリナ夫人と滞在している画家が不倫の関係にあり、その橋渡しをマウロがしていることに激怒した。そこにレナートが現れる。ジェーンはレナートが結婚していたことを隠していたことに憤慨していた。「何故?言って!」と責める。レナートは、「怖かった…。始まらないうちから、君が逃げてしまうのが…。」と言う。ジェーンはそれでも責め立てる。「フィオリナ夫人と同類だわ」とさげすむが、レナートは違う。「混同しないでほしい。ただ彼女も生身の人間。責められない。」と言うのだ。なおも責めるジェーンに、レナートは諭すように「君の夢はゴンドラで、ヴェニスの美しさに酔い、甘い歌に聞きほれること。金持ちで若い独身男性との素敵な出会いだった。私は若さも財産も持たない、美男でもなく既婚者だ。」「…だが男だ。…君は女だ。」「“汚い”とか“不倫”とか、ケチをつけず、空腹ならある物を食べるんだ。」と言う。

しかし、気が治まらないジェーンは1人で出かけるという。だが、いつか2人の間の“氷”は解けていた…。そうしてジェーンは「女」としての“華”を咲かせたのだった…。

そして2日間、夢のような日々を過ごし、ジェーンは決断する…。

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― コッテコテの「観光恋愛映画」ですね。ロマンスを求めてやって来たヴェニスで、相思相愛の相手が見つかったはいいが、その相手が(別居はしているものの)既婚者だったという悲劇。

そして、いままでたいした恋愛経験もなく、「恋愛」とは、かくも清潔で美しくあらねばならないという概念が根底から崩れてしまった悲劇。

イタリア人とアメリカ人の「恋愛感」のすれ違いの悲劇。

ジェーンとレナートの悲劇は少しだけ手がとどかなったことだ。クチナシの花のように…。

レナートがいみじくも言うように、ジェーンの“ロマンス”は、「ゴンドラで、ヴェニスの美しさに酔い、甘い歌に聞きほれ、金持ちで若い独身男性との素敵な出会い」だったはず。しかし、本当に愛したのは、「若さも財産も持たない、美男でもない(?)既婚者」だった。

しかし、イタリア男の「一度見つめあったら、押して押して押しまくる」という精神は凄いなぁ…。こんな風に情熱的に愛してほしいと思わせるものがある。

脇役もなかなか。厚顔無恥なアメリカの夫婦は特に傑作だ。これが「アメリカ人万人の代表」というのがいいね。

ただ、ストーリーは時を経て、多少古くなっていると感じずにはいられない。

「働く独身女性」が観光旅行を平気で1人でする時代だし、ロマンスにも積極的だ(こっちから誘うくらいだもの)。アバンチュールと思えば、“不倫”だってなんのそのだろう。「愛しているから別れるの」というジェーンはもう遠い存在でしかない。

しかし、その「古臭さ」がかえって“新鮮”と感じる、ハッとさせられるシーンや台詞もいっぱいだ。

そして、監督のデイヴイッド・リーンであるが、この作品を撮りたかったというわけではなく、荘厳なヴェニスの街を撮りたいから、この作品を選んだ…と言っても過言ではないほど、彼のヴェニスは美しく雄弁だ

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2007年12月 4日

アフリカの女王

Africanqueen 1951年 <イギリス>

監督

ジョン・ヒューストン

出演

ハンフリー・ボガート

キャサリン・ヘプバーン

ロバート・モーレイ

ピーター・ブル

ストーリー

1914年、欧州で戦乱が起こった頃、アフリカのドイツ領コンゴではドイツ軍が村の掠奪を行い、宣教師はそのショックで死んでしまった。彼の妹、ローズ・セイヤーは天涯孤独の身となったところを、食料や郵便を配る「アフリカの女王」号を操る、カナダ生まれの飲んだくれの男チャーリー・オールナットに引き取られた。ローズは兄の無念を晴らしたく、ドイツ軍に復讐を誓うが…。

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兄を亡くしたローズ(キャサリン・ヘプバーン)とチャーリー(ハンフリー・ボガート)

兄がなくなった朝、チャーリーはやって来た。以前とは全く違う風景に愕然とする彼。兄を葬り、ローズはチャーリィと急いで「アフリカの女王」号へ乗った。

「アフリカの女王」号は一見ボロ船だが、積荷をドイツ軍に狙われているらしい。確かに、爆弾・酸素ボンベ・缶詰…連中の欲しいものばかり積んである。

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「アフリカの女王」号に乗ったはいいものの、いきなり舵を頼まれ不安を隠せないローズ。だが、今の場所から脱出する方法を考えださねばならない。

Photo_3 ふと、ローズは船の荷の中に爆発性ゼラチンと酸素ボンベ、水素ボンベを見つける。これを“魚雷”として使えないか?チャーリーは鉱山では機械屋だった。何でも修理出来、何でも作れる。ボンベに爆発性ゼラチンを入れ、“魚雷”を作り、それをドイツ軍最大の砲艦「ルイザ号」へ打ち込めばいいとローズは言ってのけた。あきれるチャーリー…。

翌日、船は順調に進んでいく。ローズの舵取りも随分成長したが、急流に行き当たる。ここは、チャーリーの出番だ。絶妙なタイミングで荒波をかき分け、「アフリカの女王」号は河を進んだ。

チャーリーが、「急流下りはさぞ怖かったろう?」と聞くと、ローズは「全身の血が沸き立つようだったわ。こんな高揚感は久しぶり。聖霊が乗り移ったときの兄の説教以来!!」と興奮していた。「この先はもっとすごい早瀬だ。もみくちゃになるぞ。」と言っても、彼女は「わくわくする。船って最高!あなたが夢中になるわけね。」と、彼の話など聞いちゃいない。またまたあきれるチャーリー…。

Photo_4日没が来て、船を泊めるチャーリー。しかし、ご機嫌ななめだ。ずっとジンを飲んでいる。彼女のとても出来そうもない要求に苛立っているのだ。ローズの提案をことごとく退けるチャーリー。彼のほうがこの川を知っているのだ。川の怖さも…。彼がローズの提案を「約束した覚えはない。」と言うと、彼女はチャーリーをうそつき、そして意気地なしだとなじる。するとチャーリィは「兄貴を亡くして哀れだと思って乗せた。同情につけこみやがって」と言うではないか。

翌日、チャーリィが目覚めると、なんとローズはジンを片っ端から河に捨てていた…。そしてあくまでもローズはチャーリーに、川を下ることを要求し続けていた。もう彼女の言いなりになるしかないチャーリー…。

鳥が飛び立ち、ワニが川に入る…。そして「アフリカの女王」号は進んでいく。厳しい旅が始まった。ショーナ砦ではドイツ軍の銃撃に遭い、エンジンに穴が開くもののなんとか敵をやり過ごし、激流に飲み込まれそうになりながらも川を下った。

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喜びをたぎらせる2人。思わずキスしてしまう2人。そして気まずくなる2人…。自分たちが?信じられないと思う2人だったが、愛する気持ちが2人の間に生まれていた。

しばらくはゆったりと川くだりを楽しんでいた2人だったが、突然滝が目の前に現れ、船を飲み込んだ。何とか生還できたものの、船の損傷は免れなかった。船体自体は無事だったが、シャフトとスクリューをやられていた。修理が必要だ。

Photo_6水中でシャフトをはずし、ふいごで火を起こし、シャフトのゆがみを直し、スクリューの羽根は溶接でつけた。ローズの知恵の勝利だ。いや、2人のいたわりの勝利だ。そして船は動き出した…。

蚊の大群に襲われ、アシの迷路をずっと回った。チャーリーが船を引き、ローズがアシを掻き分けた。しかし、出口は見つからない。2人とも疲れきってしまった。チャーリーは絶望した。ローズはただ神に祈るしかなかった…。

倒れきった2人の下に大雨が降った。その雨が川となって船をアシの迷路から湖へ脱出させてくれた。これはまさしく奇蹟だ。

そこに、ドイツ軍の砲艦「ルイザ号」が現れる。慌てて船を隠すチャーリー。…そして2人は“魚雷”を作るのだった…。

― 「アフリカの女王」号という船を操るカナダ人の飲んだくれの船長チャーリー・オールナットと、厳格な宣教師の妹ローズ・セイヤーが繰り広げる、「冒険物語」。まったく釣り合わない2人がぶつかり合いながら、いたわりあいながら、いつしか愛し合っていく…。

そして、ローズが兄の無念を晴らそうと、ドイツの砲艦「ルイザ号」に「アフリカの女王」号もろとも“魚雷”となってぶつかり爆破させる…という奇想天外な作戦を編み出す。それにはチャーリーは無理だと話を聞かないが、ローズの意志は固かった。

なんとも、ボギー扮するチャーリーが腹立ち紛れに言う、「ガリガリの行き遅れ」にぴったりなキャサリン・ヘプバーンなんである。はじめは、チャーリーに対してお高くとまっている身持ちの固い女性。船の上でも自分の生活時間は変えない。チャーリーが何か皮肉を言おうと、聖書を読んで彼を無視する余裕がある。あくまでもチャーリー川を下れと命令口調な、彼にとってはとっても腹立たしい女でしかない。

ボギー扮するチャーリーは、普段の映画のタフで冷静な男…とは言いがたいが、実に魅力的な飲んだくれの男だ。ローズに「ガリガリの行き遅れ」と言ってしまったため、ジンを全て川に捨てられてしまい、その後は彼女の言いなりにならざるを得なくなる、ちょっと情けない男だが、「アフリカの女王」号のことは熟知しており、一番大切なものなのだ。

そんな2人が、激流に飲まれ、滝に打たれ船をダメにされ、アシの迷路につかまり、もうこれまでか…となる。しかし、神の思し召しか何度も救われ、ついに敵のドイツ軍の砲艦「ルイザ号」を見つけ、チャーリーとローズは“魚雷”を作り、自爆作戦に出る…。

この作品は、ほとんどが2人きりのシーンの映画だ。しかし魅力を振りまいているのは、やはりボギーなんである。ケイト・ヘプバーンもそこそこ健闘はしているものの、やはり「ガリガリの行き遅れ」でしかないのだ。ボギーにとっては新しいタイプの役を挑戦したわけだが、それが魅力たっぷりな可愛らしくもある(と、言っては失礼かな?)男に仕上がっている。アカデミー主演男優賞も納得かなと思わせる。

ケイト・ヘプバーンにとっては、ジョン・ヒューストン監督が指導した、「エレノア・ルーズベルトの笑顔で!」というのが、少々オーバー・アクトにつながったかな?

ジョン・ヒューストン監督が、象狩りに命をかけたという、アフリカの美しい自然にも注目だ。

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