映画 スウェーデン

2008年1月14日

処女の泉

11 1960年 <スウェーデン>

監督

イグマール・ベルイマン

出演

マックス・フォン・シドー

ビルギッタ・ヴァルベルイ

グンネル・リンドブロム

ビルギッタ・ペテルソン

ストーリー

十六世紀、スウェーデンの片田舎。ヴェンゲ部落の豪農の一人娘カーリンは下女インゲリを連れて教会にローソクを捧げに行くことになった。インゲリは父なし子を宿していてい、美しい世間知らずのカーリンに嫉妬していた。2人は信心深い母メレータと父テーレに見送られて馬に乗って出発した。教会の道のりは長かった。小川の小屋に差し掛かったとき突然インゲリがここで待つと言い出した。一人先を急ぐカーリンは途中、3人のヤギ飼いに出会う…。

※ ネタバレです。

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父テーレ(マックス・フォン・シドー)に見送られるカーリン(ビルギッタ・ペテルソン)

早朝。鶏が鳴き始める頃、使用人インゲリの一日は始まる。火を起こし、湯を沸かし、天窓を開け、そして“全能の神”オーディンを呼ぶ。

一方、雇い主の大豪農テーレと妻のメレータは神に祈りを捧げる。

その娘カーリンは、母親に甘やかされて育った娘だ。今日も具合が悪いと偽って教会へ届けるローソクを持って行こうとはしない。テーレに促されてメレータはやっと重い腰を上げ、カーリンを起こしに行く。

カーリンは教会へ行くなら絹のシャツと青いスカートをはいていくと譲らない。平日には許されない格好だが、母親は折れてしまう。わがままな一人娘だ。テーレはメレータが娘を甘やかしすぎると思っているが、彼も十分甘い。

やっとカーリンの準備が整って、夜までに教会に間に合うように急いでインゲリを連れて出発した…。

小川に差し掛かり、老人に馬を引いてもらったとき、突然インゲリが「帰ろう!森は暗くて怖い」と言い出した。しかしカーリンは一人でも行くと言う。結局インゲリは小屋に残り、カーリンは一人教会へ向かって行った。

老人は一目でインゲリを自分を同じ人種…オーディンに命を捧げた者と見破った。しかし恐れている。自分が力をやろうと迫った時、インゲリは逃げ出した。そして必死に森の中をカーリンを追うように走った…。

そしてカーリンは3人のヤギ飼いに出会う…。

ヤギ飼いの一人は珍しい楽器を弾き、カーリンの注目を引き、自己紹介した。そして、教会へ行くのが遅くなるので、一緒に休憩を取ろうと誘う。それに乗るカーリン。

カーリンには3人の食事は楽しいものだった。しかし2人の男には目的があった…。

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2人のいやらしい男と1人の無垢な少年…。段々とその素性を見せていく。気づいたカーリンは先を急ごうとするが、男たちはカーリンを犯す…。処女を失い嘆くカーリンに、男は棒を振りかざす。悲劇…死がカーリンに降りかかる。そして2人の男はカーリンの衣装をはぎ、どこかへ逃げ去った。それをインゲリは最初から最後まで目撃していた…。

夜…帰らないカーリンを心配するテーレの許に北から旅の者3人がたずねて来た。中で休めと言うテーレに、旅の者はうやうやしく礼をする。そして食事にありつくが、1人の少年は周りの目に耐え切れず、器を翻してしまう…。しかし、どこまでも優しく接してくれるテーレとメレータや使用人。

深夜…少年の叫び声がしてメレータが3人の許へ行くと、男が彼女に絹のシャツを見せ「死んだ妹のものだ」と言い、買って欲しいと言ってきた。カーリンの衣装だった…。メレータは扉にかんぬきを掛け、テーレに悲しい報告をした。

嘆き、怒りに燃えたテーレは3人の許へ行こうとしたとき、階段の下にいたインゲリを見つけ、「全て話せ」と迫った。インゲレは「悪いのは私だ。殺してください」と言う。ずっとカーリンのことが憎かった。だからオーディンの神に災いを祈ったと言った。そしてインゲリは見たこと全てを話した…。

Photo_3テーレは大木を倒し、その枝で身を清め、3人の許へと向かった。1人は肉切り包丁で刺され、1人は炎に焼かれ、少年は投げ飛ばされ、テーレの復讐は終わった…。

そして、テーレはカーリンを探しに出た。使用人も次々と自然にテーレについて行く。インゲリが案内をした。

そこには、亡骸になったカーリンが横たわっていた。カーリンを抱き上げ嗚咽する母メレータ。

父テーレは神に訴えかけていた。何故なのだ、と。罪なき子の死と私の復讐を見ていられたはずだ。それなのに何故だまっているのだ。私には分からない。しかし私は許しを請います。でないと自分の行いに耐えられない。生きていけない。ここに誓います。我が子の亡骸の上に神をたたえる教会を建てます。罪を償うために必ず建てます。私のこの手で…。と、天を仰いで、そして脱力した。

母メレータと一緒にカーリンの亡骸を持ち上げたとき、頭の下から水が湧き出てきた。水の勢いはとどまるところを知らない。皆はこの泉の水を飲んだ。メレータはカーリンの額にこの水をつけた…。

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― いやぁ、お恥ずかしながら“巨匠”ベルイマン監督作品はこれが初めてなんですが、やはり“巨匠”の名に違わず、素晴らしい作品でありました。

インゲレのカーリンに対する嫉妬心。彼女に災いをもたらそうと毎朝オーディンの神を呼ぶ。弁当に生きたカエルを入れる。カーリンが犯されいる間、見殺しにする…。しかし、オーディンの神がカーリンに災いを呼ぶのを恐れてもいた女。その彼女に哀れを感じる。

2人の男と1人の少年のヤギ飼いのよこしまな思惑。最初からカーリンを犯し、殺し、衣装を奪う目的で彼女に近づく…。事が終わってから、衣装を売りに立ち寄ったのがカーリンの家だったという偶然。1人の無垢な少年はカーリンが殺されるのを見てから、人が怖くなった。テーレの家の食事での失態は、彼は悪に染まっていないと感じ安心させるが、2人の男は何食わぬ顔でカーリンの母メレータに彼女が着ていた服を売る。何事も簡単に悪事を働いてしまえるその厚顔に怒りを感じる。

カーリンの母メレータは、神に従順で厳しい修行もしているが、一人娘カーリンには甘すぎた。その母の甘さがカーリンに悲劇をもたらす。彼女もカーリンにすがるしかない1人の哀れな女だ。

父テーレの復讐と嘆きは、驚愕だ。その神に嘆きをぶつける姿は崇高だ。そのテーレの崇高さに神は応えたのだろうか。カーリンの頭を持ち上げたとき、そこから水があふれ出る。マックス・フォン・シドーがこの“主役”ともいえるテーレを繊細かつ大胆に演じている。これぞまさに驚愕の言葉が似合う。

世間知らずで甘ったれのカーリンを取り巻くこれらの人々のエピソードを絡めたストリー運びは素晴らしく、歯切れ良い。悲劇なのに、ちょっとした甘美な流れを持つ作品だと思うのである。

もっと彼の作品を知りたくなった、素晴らしい映画だった。

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